怪しい人に会いました。
まだまだ、書くのに時間がかかりますが、、、新しい登場人物が出てきます。
タイトルのCopyの意味もやっと書けました!
開いたドアから入って来たのは、白衣を着た初老の男性だ。
ヒゲを蓄えるその顔には微笑みがあり、俺は少しだけ警戒心を薄めた。
「おお~ちゃんと見えてるか? 聞こえてる? 体動く?」
矢継早に質問を浴びせながら近づいてくると、汗とタバコとコーヒー
というテンプレワンセットの臭いが鼻をつく。
「今のとこ問題ないよ。 おっちゃん誰? ここどこ?」
自分の記憶にある自身から発せられるの声との違いに戸惑いながらも
質問を返す。今は状況を把握しなければ・・・。
「ここは私の研究室だ。 自分が誰か把握できるかい?」
「俺は野神 晶。 おっちゃんは何者だ?」
「おおそうだった。私はロウ。俗に言う科学者だ。」
「科学者? なんで科学者が・・・そもそも今の状況は・・・」
まだ混乱の収まらない頭で周囲を確認する。謎の機械を除けば
他にはベッドと洗面ぐらいしか見当たらない簡素な作りになっている。
改めて鏡を見れば、知らない顔が不安そうに見つめ返していた。
「ちゃんと説明するよ。動けるなら隣の部屋へ行こうか。」
そう言われ鏡から目を離す。ベッドから降りようとした時に初めて
自分が下着以外何も身に着けていない事に気付く。
男としてはまだ耐えられる状況だ。女性ならとても恥ずかしい状況に
なっていたかもしれないが、姿が変われど生物学的に男であることは
間違いないのでそのまま立ち上がる事にした。
立ち上がり、自重が足に乗った瞬間に突然の痛み。
動けない事はないが筋肉痛のような痛みが継続している。
意識して体を動かしてみると、あちこち痛い。全身筋肉痛だ。
「おっちゃん・・・体痛いんだけど。そもそも顔も変わってるのはなんで?」
傍らに立つロウという人物は「そりゃそうだろう」的な顔をしながら
俺の動作を見守っていた。
「説明するから。あちこち痛いかもしれんが頑張ってくれ。」
そう言いながらドアの向こうへ消えていく。
俺はぎこちない動きをしながらロウを追いかけた。
ドアの向こうはさっきの部屋とは違い、生活感あふれる空間だった。
謎のコンソールがあるが、周囲のデスク上には書類やらメモやらが
乱雑に散らばっており、ロウが科学者だと言っていた事を思い出す。
「とりあえずその椅子にでも座って。コーヒーでも飲むか?」
「ああ・・・じゃあお言葉に甘えて。」
ロウは手早くコーヒーを入れたマグを2つ持ちながら、俺の対面の椅子へと
腰をおろした。
「何から説明するべきかな・・・何が聞きたい?」
「とりあえず、俺の姿が変わっている事からかな?」
ロウはタバコに火をつけながらうなずき、ゆっくりと話し始める。
「私は人を造る研究をしていてね。クローンとかアンドロイドとか
そういうジャンルの研究をしているんだ。 ずっと実験を進めていくうちに
クローン体とアンドロイドを合わせる事が出来るようになった。」
なんかSFな話だけど、生体アンドロイドって事か?SFアニメでは結構
好きな話だが・・・でも記憶には実際にそんな事が行える科学力は
世界に無かったはずだけど・・・。
「多くの失敗を重ねたが、実験は成功し一つの素体を造ることに成功した。
それが君だよ。野神晶くん。」
「ええ?・・・じゃあ俺は俺のクローンって事になるの?」
「いや。君という存在が使われているのは記憶の部分さ。 完成した素体は
生きてはいるが、意識が無い状態でね。中身がカラだったんだよ。」
「なんとなくだけど・・・OSの入ってないパソコンみたいなもの?」
自分の推測が正しいかはわからないが、この手のジャンルは好きである。
ロウは嬉しそうに頷きながら話を勧めてくれた。
「そうだ!やっぱり話が早いな・・・君のような人間が当たってよかったよ。
私は素体に魂・・・記憶を組み込む為に新たに開発を進め、ある物を完成させた。
コレだよ。 どっかで見ただろう?」
差し出された物は俺が自分のパソコンを修理した時に組み込んだ謎のパーツだ。
「ああ!それ! ネットで買ったやつ! 仮想空間の安定と解像度向上に
オススメって書いてあった・・・」
「なかなかお値打ち品だったろ? パッケージにもこだわったんだ。」
「確かに見た目すごく良さそうで・・・怪しいとは思ったけど安かったし
ちょうど金欠だったんだよ。 パソコン不安定だったから。」
言い訳しかしてない気がするが、事実だ。良い給料じゃなかったし
ボーナスは他のことに突っ込んでいたから余裕は無かった。
不調のパソコンをなんとかしようと、苦肉の策で追加したのだ。
「このパーツはユーザーの記憶を一部コピーするようにできている。
その記憶データを私のところに転送させて使用したんだ。」
「記憶データって、すごい量になるんじゃないの?」
「だから一部なんだよ。必要最低限さ。君は仕事や家族の事、友人の事など
覚えているかな?」
「そういや・・・・・思い出せないっていう表現なのかな?
そこにあった感覚はあるけど、顔とか名前とかわからなくなってる。」
「上手くいってるようだな。 君は経験や知識はあるが他の事は覚えていない。
言うなれば、経験値とステータスを引き継いだ別キャラに近い存在だ。」
なるほど、突き詰めればよくわからない所は多いがなんとなく理解できた。
記憶フォルダの一部分だけコピーして、別のマシンにインストールした。
そのコピーされたデータを元に新しいマシンを稼働させたってことか。
でも・・・コピー元は?オリジナルはどうなった?
「ロウ・・・さん?だっけ。なんとなく理屈はわかったけど、コピー元って
どうなったの? 死んだ?」
まだ結婚もしていない。人生これから面白くなるハズだったのに。
「死んでないよ? データ転送時にパソコンの一部は壊れて、記憶も混乱したかも
しれんがすぐに立ち直ってそのまま生活してるだろうさ」
ん?記憶のコピーとかして死んでないの?パソコン壊れるだけ?
「君はあくまでコピーだ。 パソコンの記憶媒体に保存されたデータを元に
復旧されたようなものさ。 データを転送出来るかは運次第だったからね。」
「そういえば・・・あの時データがコピーされてるって言ってたような。」
「だろう? 異層への転送は膨大なエネルギーを使うから、通常の電力では
まかない切れない。 落雷時の過電流を使って異層間転送をするよう
プログラムしておいたが、こうも上手くいくとは。」
ロウはニヤニヤしながらタバコをくわえていた。
実験・・・イタズラが成功したような悪ガキの顔だ。
「じゃあ俺のオリジナルはそのまま生活してるってことなの?
一体あの後どうなったんだよ。」
「知らん。 私は記憶のコピーが欲しかっただけだ。」
「俺、結婚したの?あれから彼女できたのか? まっとうに生きたのか?」
「知らんよ。 さっきも言ったが、一時的に記憶の混乱はあっただろうが
その後はパソコン修理して、一件落着だろう。 きっとまっとうに生きただろうさ。」
かなり不安要素は多いが、信じよう。俺のオリジナルはきっとあの後も
それなりに楽しい人生を送ったに違いない。
でも気になるな。 そんな人と結婚して家族になったのか、子供はいるのか・・・。
「なあ、ロウさん。 記録とか残ってないの? 戸籍的なやつ。」
「記録? どうやって手に入れるんだ。 特定異層への干渉はもう無理だぞ?
君のデータを受信した時に吹っ飛んだからな。」
異層?何言ってんだこの人。ここは日本じゃないのか?日本語喋ってるだろ。
「日本なら戸籍データとか残ってるハズだろ! そもそもなんだよ、異層って。」
「日本? ああ・・・君の居た所か。 異層って言うのは、一つの世界とは
異なる平行世界みたいなもんだ。」
「なにそれ。 じゃあここはどこなんだよ?」
また混乱してきた頭を整理しながら、絞り出すようにロウに問いかける。
平行世界とかまるでアニメじゃないか・・・嫌いじゃないけど。
いや、むしろ大好きだ。
「ここは、スマートレス。 私は失われた知識・・・ロスナを有する科学者だよ。」
Fantasyはいつになったら出てくるのか。
異層と言われる世界に産み落とされた晶はどうなるのか。
頑張って進めて行きますので応援いただけると幸いです。