プロローグ
初投稿です。つたない文章ですが、読んでいただけると幸いです。
―今、ある世界で『伝説』と呼ばれた勇者が、死んだ―
戦死であった。
勇者の祖国の者はその死を心から悼み、相手の国は歓声を上げて喜んだ。
勇者の魂は天へと昇り、そのまま ―光― になるはずであった。しかし、勇者の強大な魂は天への門をくぐることができなかった。故に、神は天使に命じた。
「この物を転生させよ。魂を削り、門をくぐれるようにするのだ。」
「はっ!御心のままに!」
そして、勇者の魂には新たな生が与えられた。
「なぜだ、なぜ平和であることを拒む!?誰もが争わない平和な世界にすると言ったではないか!!」
「そんな世界を本気で我々が望むと?夢物語は己の妄想だけにしてください、『魔王陛下』。」
「なぜわからぬ!?平和は何よりも尊いということ―ガハッ!?」
「ごちゃごちゃうるさいんですよ。我々魔族はね...争う種族なんですよ。平和なんてものを望むのは、あんたらみたいな日和見主義の奴らだけです。まあ、あなた方に理解してほしいなどとは思っていません。平和を望んだ魔族も残りはあなただけ。良い政治を敷いていたあなたに免じて、楽に殺してあげましょう。」
「くっ、やめろ!まだ遅くない!!今からでm...」スパンッ
「最後まで五月蠅い魔王だ。」スチャ
....
---ふむ、世界は平和にはなりえませんか...彼女には期待をしていたのですが、仕方がありませんね。ですが、彼女の魂の輝きはなかなかに尊い。故に、もう一度だけ『生』を差し上げましょう。---
平和を望んだ魔王の魂は、新たな『生』へと旅立った。
.....
「うむ。我の命、ここで尽きるか...」
巨大で、あらゆる色に輝く竜はうなった。目の前には90万以上の死体。そして、戦いに生き残った強者たちの姿があった。
「あんたが見守る世界は終わった。これからは俺たち人間が、巨大な力におびえることのない世界を創る!!」
「それもまた良しだろう。だが、その道は甚く険しい。覚悟をしておくがよい。」
「どんな道であっても、俺たちは止まらず歩き続けよう。それをここで死にゆく『古神龍』である貴様に誓おう!!」
「精進するがよい、『英雄』たちよ。」
その言葉を最期に、竜はこの世を去った。
―—...
「へぇ、まさか君が滅んじゃうとはね~。予想外のことが起こるもんだね。まあ、面白いからいいんだけどさ。」
子供のような声が響いた。竜は自分が今、真っ白な空間にいることに気づく。そして、自分の前にいる『地上で最強の自分をはるかに凌駕する存在』を真っ先に警戒した。
「...何者だ?」
「君を含むすべてを創った者だよ。君を創ったときは、すごく楽しくてさ~。つい色々カスタマイズしちゃったんだけど、他のを創ってたらめんどくさくなっちゃってね~。君ほど強い存在はできなかったんだよ。だけど、弱い個も少しの強者とたくさんの個を率いることで『絶対的強者』をも超えられる。君も僕も今更こんなことを学ぶとはね。ハハハッ」
「それで?われの魂をどうしようというのだ?じっくり嬲ったりでもするつもりか?」
「それも楽しそうだけどね~。残念ながら違うよ。まあどうなるのかは『覚醒』したときのお楽しみってことで。」
「むおっ!?」
竜の魂は、光の渦の中に消えていった。
—ある国は、悲しみに暮れていた—
にくいほどに晴れ渡る空を見上げ、人々はつぶやく。
「どうか、あの方を連れて行かないでくれ。」と。
この日、この国で…いや、全世界でもっとも慕われ、敬われた『賢女王』の命に幕が下ろされようとしていた。女王の側近も、大臣たちも、騎士たちも、国民たちも、挙句には他の国の民たちすら涙を浮かべていた。この女王が成した偉業を挙げるといとまがないくらいに、素晴らしい王であった。女王は最後の力を振り絞り世界の人々に声を届ける。
「妾は、ここまでのようだ。この国の、この世界のことをもっと見て、聴いて、感じていたかったが、これも仕方なかろう。妾は天に昇り、そこから、永遠に、見守っていくとしよう。女王として、そして、この世界を愛する一人の人間の一人として、皆に最期の願いを聞いて欲しい。皆で創った、この平和を...永久に...」
「女王様!?女王様!!女王様~~~~!!!」
最期の願いを言い終え、女王は召された。
「む...うむ...?妾は寿命を迎えたはず...」
女王はやたら意識がしっかりしていることに違和感を感じた。そこに無機質で抑揚のない声が響いた。
「選びなさい。『新たな生』か、『永遠の安息』か。」
「何者じゃ?その問いの意味はなんじゃ?」
「言葉通りの意味です。あなたは、地上で数々のことを成した。今までにいたすべての人間が『できなかった』もしくは『やらなかった』ことを成し遂げて見せた。その褒美として、新たな生を得る選択肢を提示したのです。」
「よくわからぬ。だが、再び生を得るというのは興味がある。」
「では、その選択肢を実行します。-輪廻の環よ、この者に祝福を—」
そこで再び女王の意識はなくなった。
~とある世界の天界~
ここで今、一柱の女神と8対の翼をもつ天使が言葉を交わしていた。その後ろには多くの天使が控え、二者の言葉に傾聴していた。
「私にも、『期限』が来たようですね...」
「女神様!?女神様にも『期限』があるというのですか!?」
「あります。この姿で発生し、この姿のまま『期限』を迎える。初めからわかっていました。故に、今日までにあなた方を造り、世界を創り、見守ってきました。そして私は、役目を終えた...」
「女神様!!あなたはまだ消えてはならない存在です!!あなたがいなければ我々は!この世界は!!」
天使は叫ぶ。
「黙りなさい。」
「ッッ!?」
絶対である女神の声に天使は黙らざるをえなくなった。そして、今までに見せたこのない笑顔で、女神は天使に言った。
「私の後はあなたに任せます。他の者を、私が創った愛しの世界を...頼みましたよ。」
「っっ!はっっ!!」ボロボロ
大粒の涙を流しながら返事をする天使を満足げな顔で眺めた後、女神の姿は光の粒子となって消えてしまった。
—この時、女神は忘れてしまっていた。自分が発生し、自分が『期限』迎えるまでのこと。それに、『そのあと』があったことを—
どうしよう、プロローグが1話で終わらなかった。プロローグ2話目も投稿します。
なお、この作品では、シリアス成分が非常に少なくなる予定ですのであしからず。
-追記-
文字制限をよく見てなかったorz
1と2に分ける予定だったものを繋げました。