ビン詰の夢
朝、目を覚ますと真っ先に枕元のメモ帳を見る。
そこには、いまさっきまでの夢の内容が書かれている。
ボク自身がほぼ無意識で、夢うつつの状態で書いたものだ。
『書いた』といっても、速記文字とも筆記体ともつかない文字らしきものが羅列してあるだけだ。
『書いてある』ということを確認すると、内容を吟味することはせずにページを破り取る。
ボクはベッドから起き上がり、机に向かう。
机の上に用意しておいた小さなビンを手に取った。
透明な瓶の中には、水色の液体が少量はいっている。
そのビンのなかに夢の書かれた紙を放り込み、ゴム栓でフタをした。
紙に水が染みるのを待ち、ビンのクチを指で持ち、試験管のように細かく振る。
ビンの中で紙は、ぶつかりあい、小さく破れ、撹拌され、やわらかく溶け出す。
五分も経たずに夢の書かれた紙は、繊維の一本も残さず液状化する。
ビンを机の上におき、液体の波が静まるのを待った。
数十秒で動きは治まるが、ボクはさらに待つ。
そうしていると、ビンの中の『紙だった液体』が動き始める。
液体は、ふつふつと湧き立つように動き、じょじょに形を成してゆく。
それは、紙に書かれていた、ボクが夢で見た光景だった。
真夏の田舎で一軒家の日本家屋、その畳敷きの居間で、ボクが大量の布に埋もれながら呻いていた。
真昼間にも拘らず直射日光を浴びながら、汗だくで布を押しのけようとしている。
――布団が多すぎるのかもしれない。
そんな反省をしつつ、ボクはシールを取り出して年月日を書く。
ビンの中の光景を覆うようにシールを張り付ける。
そして、机の一番下の引き出しを引っ張り出した。
中には、さきほどのビンと同じものがギッシリ詰まっている。
手を突っ込み、押し分けるようにして隙間を作ると、今日のビンを詰め込んだ。
引き出しを戻して、ボクは一息つくように大きく伸びをした。
そのとき、天井が丸く黒くなっていることに初めて気がついた。
見覚えのある、ゴムの蓋だ。
足元には水色の液体が満ち、周りを見渡すとカベが透明なガラスになっている。
その外から、寝ぼけマナコでボクを見つめる大きなボクと目が合った。
どうやらまだボクは夢の中にいるらしい。




