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転生龍達の人間界生活!  作者: 淋淵水零
プロローグ
8/11

6.仲直り

空が白くなり、太陽が顔を覗かせる。

朝が来た。


昨日は思わず飛び出してしまった。あれからずっと飛んでいる。水希はまだ見つからない。何処にいるのか全く見当がつかないし、探しようがない。下手したら、もう会えないかもしれない。本当にどこに行ったんだろう…。

そういや、ここに来てから一人になるのって初めてだよね。前世、よく一人でいたなぁ…。だからこんな性格になっちゃったのかな?

…違うか。



___美空様。


不意に声が聞こえた。

この声、水希だ。


___こっちですよ〜。


「どこにいるの?」


___ちょっと待っててください。


「ん」


どうかしたのかな。


___上です。美空様。


「上?」


そう言われ上を見ると、いつの間にか青くなっていた空にが穴が空いていた。その中に水希がいる。あれ、こんな感じの光景見たことある。

良かった。水希いた…。


___ほら、こっち来てくだい。


んー、水希がいるから安心かな。そう思い、水希のところまで飛んでいく。


___よーし、行きますよ!


「えっ?」


いきなり水希に噛まれたと思ったら、思いっきり引っ張られて穴の中に入ってしまった。




「……ん」


目が覚めたら、眩しい光が私の目を刺した。


___美空様!


「水希? ここどこ?」


あれ、背中がひんやりして…。


___僕の背中ですよ。


「エッ」


起き上がって緑色の地面に降りると、大きな水色の蛇がいた。

嘘。水希って小さい…あ、そういやお前巨大蛇だったな。


___この姿でお会いするのはこの前以来でしたね。


おかげで完全に忘れてた。



「ここどこ?」


地面を見ると、一面原っぱだ。アルェ?


___ふふふ、こちらへ。


水希が私を乗せて前へ進む。どこ行くのかな。


ぐおおおおおおおお!!!


突然、何者かの咆哮が辺りに響いた。

何? ちょっと怖い。


___ご安心を。


水希は一度止まって振り返り、それだけ言うとまた前を向いて進み始めた。いつからそんな大人っぽくなったんだよ。お前。


太陽が輝き、眠くなってくる暖かな時間。


「はっ、はは。意味ワカンネェ」


「始水龍様だ!!」「本当だ!」「始水龍さまー!!」


青色、緑色、赤色の小さな竜三匹に囲まれてます。

シスイリュウ様って何? スイリュウってのは水龍だと思うけど、シって何? 死水龍? デス? デスなの?

やだわ〜、なんかやだわ〜。


___始まりのシ、ですよ。


隣にいる水希がそう教えてくれる。

始まりって何。何で考えてることばれたの。まじ意味わかんないぃ、うけるぅ。

…気持ち悪。やめたやめた。


「始水龍様!」


___心が通じ合ってるんですよ!


「始水龍様?」


「お前それ蛇の姿で言ってるから許されるんだからな」


キラッ、と効果音がつきそうな笑顔で言い放った水希にそう返す。蛇型はめっちゃ可愛いけど、人型で言ったら許さん。絶対に、絶対にだ。あ、落ち込んでる。キシャァ…だって!? 可愛すぎて死ぬ。

私が脳内で悶えていると、青色の竜が近づいてきた。西洋竜だな。可愛い。


「始水龍様!!」

「……」


答えてあげたいけど、口を開いたら変なことを口走りそう。


「始水龍様は他者と喋るのが苦手なんですよ」

「恥ずかしがり屋なの?」「そうなんだー」


誰かがそう言うと、口々にそう言って静かになっていく竜達。

…今の言葉は結構傷を抉った。


「そうなんですよ。ゆっくり仲良くなっていきましょう?」

「「「はーい!!」」」


その言葉を聞くと、元気よく声を揃え返事する三匹の竜。

あれ? なんか聞き覚えのある声…?


「水希?」

「そうですよ」


何…だと…!?


「急成長…」

「そんなとこです」


スッゲー。正直興味なーい。




「「「始水龍さまー、ばいばーい!!」」」

「ばいばーい」


空が茜色になる頃、またまた元気よく声を揃えて言う小さな竜達。可愛い。


「キシャ」

「どうした」


いきなり鳴いた水希に伸びをしながら問うと、いえ、と返事が返ってきた。

何だか少し寒くなってきた。寒い、なんて今世で初めて思った。


「今更だけど、ここどこなの?」

「あなた方が創ったりゅうの世界ですよ。たくさんりゅうが住んでいるんです」


どういうことだってばよ。


「美空様が穴に吸い込まれる前、力を使う練習をしていたじゃないですか」


水希の話にうんうん、と頷く。


「その時、五龍の力が混じり合ってしまい、ここが生まれたのかもしれません」


ちゃんとしたことはわからないらしい。けど、ここを創ったのは私達ってやつは確定らしい。何でそんなのわかるんだよ、と聞いたら、


「皆様の力が辺りを漂っているんですよ」


って言われた。お前そんなことわかるんだね。




「ところで、樹龍達はどうしたのですか?」

「喧嘩した…?」


みずきの問いにそう答えると、驚いた顔をされた。

私が逆ギレ…とまではいかないけど、言い返したらそんな感じの雰囲気になった。

私、感じ悪かっただろうなぁ…。黙って怒られときゃよかった。嫌われたなぁ…。


「どういうことで…?」

「えーと__」


心が繋がってるんじゃなかったのかよ、と思いながら久々の原っぱに寝転がって丸まり、順番にあったことを話していく。丸まった私を守るようにこの前より大きくなった体で丸を作り、私を包んだ水希は黙って聞いてくれている。あったかい。


「…ってことがあったのさ」

「そうですか…」


話を聞き終えると、かける言葉が見つからないらしい水希がそう呟いた。

あ、神龍になったってところは隠してます。創造神様、ソラ様と少し話した、と言っておいた。嘘は言ってない…よね?


「だからまだ来てないんですね」

「?」

「美空様を見つけたら、すぐここに連れてくるって言ってたんですよ」


僕は留守番でしたけどね、と苦笑いで言う水希。

みんなですぐここに来る予定だったんだ。そんな予定あるんだったら説教すんなよ、水希ずっと待ってたんだぞ、と思う今日この頃。



「美空様は、仲直りしたいんですか?」

「できるならな…」


水希に聞かれ、私はそう答える。

すると、水希は微笑みを浮かべた。


「なら、僕も協力します!」


微笑みを浮かべそう言った水希に背を向け、ありがと、と呟く。目の前の赤の混ざった水色の鱗を見ながら、私は眠りについた。最後にクスクスと嬉しそうに笑う水希の声が聞こえた。




ドウシテコウナッタ。


___大丈夫ですよ。美空様。


柄にもなく震える私を落ち着かせるように、背中に乗っている私の方を振り向き顔をすり寄せてくる水希。それに励まされて、前を見る。そこには、一昨日喧嘩した四龍がいた。


「そ、そんなに警戒しないで?」

「……」

「ごめんって」

「……」


麗華ちゃんと陽和が話しかけてくる。ガクブルです。

冷夜と薫樹はジリジリ距離を詰めてくる。ガクブルです。


「はぁ、昨日仲直りしたいと言っていたのはどこの誰でしょうかねー?」

「おま…え…みずきぃぃぃぃ!!!」


水希の言葉に思わず大声を出す。

顔が熱い。今私、俗に言う顔真っ赤状態なのでは…?

ああ、何で涙出てきてっててて。

堪らなくなって、水希から降りて逃げる。

うううぁぁぁぁぁぁ、水希のバァァァァァァァカ!!



「あっ」とか「おいっ」とか後ろから聞こえるけど無視無視。


ダダダダッ


あぁぁぁ、なんか聞こえるぅぅぅぅ!!

はーははは、だがな! 前世で私は、足が速かった方だったんだよ!! 追いつかれるかもしれない!!


「あにゃっ」


いきなりお腹に太いものが巻きついて行く手を阻んだ。ついでに走ってた勢いで、ぐえってなった。結構痛かった。苦しかった。

みずきのばか……。





「ぐるじい」


麗華ちゃんに締められてます。抱きしめる、じゃなくて締める、だ。抱き、何てものは存在しない。

真面目にさっきのよりも苦しいかもしれない。


「美空ちゃんー!!」

「はなじぇ」


も、無理…。ありがとう。


「さよ…な…ら…」

「麗華離してやれ!」

「えーんーりゅーうー?」

「ゴメンゴメンゴメン!!」


バッと効果音がつきそうな勢いで私を離す麗華ちゃん。あ、ちょ、もうちょい考えて。今、体から力が抜けてて立てない。

どんどん地面が近づいてくる。…あ、ダメだ。ちょっと地面とキスしてくる。そして結婚するんだ。

おい待て私、何考えてるんだ。一生独身で生きていくと決めたじゃないか。いや違う、仕事と結婚するんだっけ? 本気で何考えてるんだ私。思考回路がなんかおかしい気がする。麗華ちゃんに締められたせいだ、そうだそうに違いない。


「っと」

「よっと、危ないよ。麗華ちゃん」


あれ? 地面が近づいてこない…?

少し考えてから、私が止まっているんだと気付いた。両肩を掴まれているらしい。その時、上から「ブフッ」と吹き出す声が聞こえた。何だよ、声に出てたのかよ。




「本当にごめん」

「いい」


普通に立ち上がってからずっと、麗華ちゃんに謝られている。別に気にしてないし、そこまで謝ることでもないと思う。

助けを求めて、水希を見たが首を横に振られた。おのれ水希。助けろください。


「美空も良いって言ってる」


薫樹、あなたが神か。いや、私も神龍か。神龍って神様類なの? 薫樹の方が良いって、絶対。

おっしゃ、麗華ちゃんが薫樹の方見た!


「でも」

「逆に困らせてる」

「あ…」


麗華ちゃんがまたこっちを見る。私は咄嗟に横を見て、別に気にしてないですよ風に振る舞う。

あ、冷夜と陽和だ。完全に空気と化している。私的には別にそれで良いんだけどね。片方掴みかかってきたやつだし。怖いからね。


「美空ちゃん…」


いつになく弱々しい声で私の名前を呼んだ麗華ちゃん。黙って声のする方を見ると、泣きそうな顔をしてこっちを見ている麗華ちゃんがいた。

え、どした…?


「私のこと嫌い…?」

「はっ?」


どうしてそうなった。意味わからん。

思わず声出しちゃったのは仕方ないことだと思う。

…嫌い? か。嫌いってわけでもないし、大好きってわけでもない。…多分。

んー…。


「…別に」


麗華ちゃんの後ろを見ながら言った。

考えた末、出た答えがこれだった。

だ、大好きでもないし…ねぇ? 好きって言うのも告白みたいじゃん?


「そっか」


安堵したように言う麗華ちゃん。いいのか、これで。言ったの私だけど。


___素直じゃありませんね。


何がだよ。


___大好き、と言えばいいのに。


「別にそんなんじゃない」


___またまたぁ。


何がまたまたぁ、だよ。勘違いすんなや。

水希と話している私を、後ろにいる龍達がニヤニヤと見ていることに私は気付かなかった。


「俺は?」

「お、俺のことは? 嫌いか?」


薫樹と冷夜だ。

この二龍も大好きでも嫌いでもない。ていうかどうでもいいだろ、私からの好感度なんて。遊び半分で聞いているに違いない。


「別に〜」


水希に目を戻しながら少し投げやりに答えてしまったけど、二龍とも何も入ってこないから平気だろう。


「美空ちゃん」


誰だよ。ほっとけ。

そう思いながら、声の主の方を見る。


「僕…ねぇ、何で目をそらすの」


安心しろ、目をそらすのはいつものことだ。


「…僕のこと嫌い?」

「………」

「ちょ、何で黙るの」


黙りたい気分だからだよ。


「ねぇちょっと」

「……」

「泣く」

「陽和が泣き喚こうが何しようが私には関係ない」

「酷くない?」


ドSが見る影もないですね〜ニヤニヤ。


「くっ…」

「ふっく…」

「………」


うん、とりあえずそこ三龍、震えるのやめようか。


___仲直り、成功ですかね。


少し前のように、賑やかになった中で水希がそう呟いた。


「だね」


私は小さくそう返し、少しだけ笑った。

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