2.5 とある闇龍の水龍観察
闇龍くん視点です。
「____!!」
そいつは何か叫び、
グサッ
俺を刺した。
聞こえるのは、クラスメイトの悲鳴、先生の焦った声。そして、そいつの狂ったような笑い声。
「___」
俺の最後の声は、悲鳴に紛れて、誰にも届かなかった___。
俺は気が付くと、何もない荒地にいた。
何故俺は生きている?あの時、死んだはずだ。
…わからない。
「う…あ…あ…」
ここはどこだ?誰もいないのか?
怖い、不安で押しつぶされそうになる。
「ひ…と…?」
ふと、声が聞こえた。
声のする方を見ると、
「やっぱり人だ…良かった…」
そこには、クリーム色のふわふわ髪の男が安堵したように座り込んでいた。
「よかった、本当に良かったよ…安心した!」
俺はそいつと話した。何故ここにいるのか、ここはどこなのか。それは、そいつもわからないらしい。もちろん、俺もだ。
「そういえば君、名前なんていうの?」
「え?ああ、俺は…」
名前を聞かれ、答えようと思い口を開くと、
「あ…れ…?」
「どうかした?」
思い…出せない…?
なんでだ?俺は…俺の…名前…。
「…そういうのは、自分から名乗るんだぞ」
誤魔化した。名前がわからない、なんて答えられる勇気、俺にはなかった。
「それもそうだね。えーと、あれ?」
「?」
どうかしたのだろうか。
まさか…こいつも…?
「な、なんでだ…?名前、名前…僕の…名前は…」
こいつも思い出せないのか…?
「…ごめん、わかんないや」
「そうか…。俺と同じだな」
「そっかぁ」
「「ははは」」
二人で笑いあう。
「あれ?新しい子が来たみたい…」
「……」
後ろから声が聞こえ、俺達は振り向いた。そこには、朱色の神をした女と、こげ茶の髪をした男が立っていた。
ドサッ
「「!?」」
目の前に何かが落ちてくる。
地面を見るとそこには、水色の髪をした女が倒れていた。
「…………すー」
「寝てるみたいだね…」
クリーム色の奴が言った。
よく今ので起きなかったな…。布団どころか、畳等でも何でもない地面に落ちたのにな。さすがに起きるだろ、と俺は思った。
しかし、水色のそいつは全く起きる気配がない。気絶してるのか?
「…すー……すー…」
「………」
いや、寝てるな、これ。
「すー…すー…」
埒があかないので、起こすことにした。
「起きろー」
「すー…」
声をかけてみるが、起きない。
「おーきーろー」
「…すー」
体を揺すっても起きない。嘘寝じゃねーの?これ。
クリーム色の奴も、呆れた顔をしている。そりゃそうなるわな。
「ここは、王子様のキス…「何言ってんのお前?」…」
クリーム色の奴が変なこと言ってやがる。
そんなこと絶対しないからな。
「お!き!ろ!!」
「すー」
ダメだ、全く起きない。噓寝だろーこれー。
「おきろ!!」
「ん…」
顔を近づけて言ってみる。
可愛いな…いやいや、何思ってんだ俺!!
「おきろ!!!」
「ふぁい!?」
やっと起きたか…。
俺が退くと、そいつも起き上がる。
青い少し虚ろな目。長い綺麗な水色の髪。異色だな…クリーム色の奴もだけど…。
あ、後頭部押さえてる、そりゃこんなとこで寝てたらな…。
突然、水色の奴が考えるような仕草をする。冷静だな、こいつ。
「おい?」
声をかけても、返事がない。
と思ったら、ひらめいたと言わんばかりに手をポンとやり、
「死後の世界?」
とドヤ顔で呟いた。
「違うよ」
見事に即答した、クリーム色の奴。
いや何でしゅんとしてるんだよ。
少しすると、水色の奴は元通りになり、諦めたような顔をしている。
「大丈夫?」
「いや、絶対大丈夫じゃないだろ」
クリーム色の奴の言葉に、そっと呟く。
「大丈夫で…す、うん」
自分の髪を見てショックを受けたようにそう答る水色。
「明らかに大丈夫じゃないよな」
「だね〜」
まぁ、わかるけどな。
こんな状況になったら、誰だってそうなる。
あ、そういや…。
「なぁ、こいつもだと思うか?」
朱色の奴と、こげ茶の奴の入ったことを思い出し、クリーム色の奴に話しかける。
「さっきの反応見る限り、多分ね…」
ため息まじりに言う、クリーム色の奴。
「はぁ…」
だよなぁ…。仲間が増えて、嬉しいというか、何というか…。
「とりあえず、この話はあの二人が帰ってきてからか?」
「…帰ってこれるの?目印も何もないし、もう夕方だし」
言うな、不安になる。
でも、その通りだよなぁ…。
「それは、信じて待ってるしかないだろ…。
…水色の奴、知り合いが帰ってくるまで待っててくれ」
「ごめんね、頼むよ」
何だか偉そうになってしまった…。
水色の奴は頷いてくれたが、内心どう思ってるんだろう…。
暇だな…。
クリーム色の奴も結構暇そうにしている。
座りたいが誰も座ってないので、座りにくい。地面もゴツゴツしてるし…やめるか。
ふと視線を感じ下を見ると、水色の奴がじっとこちらを見ていた。虚ろな目に見上げられ、ドキッとする。あ、全然恋愛とかじゃなくて。いや本当に。俺小さい奴が特別好きとかないから!!
目が合うと、すぐそらされる。何だ?人見知りか?
こちらを見上げのをやめ、暇そうに手をブラブラとしたり、ズボンを引っ張って伸ばして嬉しそうにしたり、何なんだ?こいつ。
そういやこいつ、俺達に名前とか聞かなかったな。好都合っちゃ好都合だが…。
そんなことを考えていると、二つの大きな影が現れた。龍だ。
「…帰ってきたか」
「おかえりー」
水色の奴の方を見ると、目をキラキラさせながらも、焦っているように見える。わかりやすいんだか、わかりにくいんだか…。
そんな、水色を引きずるクリーム色。やめてやれ。
そう思いながらも、俺は苦笑を浮かべる。
あ、あいつ泣き出した。うっわ、クリーム色すごい笑ってる。もしかしなくても、あいつドSじゃねーの?
さすがにまずいと思い、クリーム色から水色の奴を離し、撫でて落ち着かせる。
「うっ…うぅ…ぐす」
ったく、泣かせやがって…。
翌日の朝。
水色の奴に、とりあえずわかっていることを話した。いやなんで無表情でいられるんだよ…。
あー、足が痛い。なんでゴツゴツした地面に全員で正座してんだよ。意味わかんねぇよ。
「………」
「…………」
「…………………」
すごい気まずいな…。一応全員初対面だもんな。仕方ない。
そして、俺にはどうすることもできない。誰か任せた。
「…ね、ねぇ?」
沈黙を破ったのは、意外にも水色の奴だった。ちょっと酷いかもしれないが、あいつは隅っこで一人遊びとかしてそうなイメージがある。
「ぜ、前世みん…皆さんどんな人…だった…でしたか?」
少し俯き、口元を長めの袖で隠しながら、もごもご言う水色。口下手だな。
「…口下手なの?」
言ってやるなよ。ああ、ほら完全に俯いた。
「…前世か」
「私高一女子!!」
「中二だな、男だ」
朱色の奴と俺が答える。
断じて厨二病とかではない。
水色の奴は顔を上げた。良かった良かった。
「俺は高校二年だ」
「あ、僕も中二。君は?」
全員の年齢を聞き終わると、水色の奴はガーンと効果音がつきそうなくらい落ち込んでいるように見えた。どうしたんだ?一番年上か?
そんな俺の考えは、次の言葉で吹き飛んだ。
「…小六。女」
「「「「……………」」」」
マジかよ。一番年下だった。
それにしても、小六!? 嘘だろこいつ。冷静ってレベルじゃないだろ。何があってこんな性格になった…。
「_____」
水色の奴が何か言ったが、聞き取れなかった。
また何か言おうと水色の奴が口を開いた瞬間。
「キシャッ」
水色の奴の後ろに、突然大蛇が現れた。
「キャァァァァァァ!!」
朱色の奴の悲鳴。
「「っ!?」」
「……」
俺とクリーム色の奴の息を飲む音。
こげ茶の奴は、口を開けたまま放心してる。…なんか馬鹿っぽい。
「はぐっ」
「ふぇい!?」
ズシャッ
!?!?!?
大蛇が水色の奴を食った。足だけ出ている。
助けようにも、どうすればいいのかわからない。
大蛇が尻尾を振っている。それだけでドシンドシンと音がなる。かなり嬉しそうだ。
「キシャッキシャッー!」
大蛇が口から水色の奴を出した。
食いはしないのか?
「キシャッ!」
いや、あれ怖いだろ。いきなり大蛇の顔が真ん前にあるなんて。
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
静かな荒地に、水色の奴の悲鳴が響き渡った。
パシンッ
「…はっ」
猫騙しされた。誰に?
「おかえり」
水色の奴が俺を見上げながら言う。その目は何だか恨めしそうだ。
…何で平然と蛇連れてんだよ。何で小さくなってんだよ。意味わかんねぇよ。
「お、おう?」
動揺で変な返事しちまった。
水色の奴はそれを聞き、近くにいたこげ茶の奴に視線を移した。そして、猫騙しをしようとした。が、あと少し手が届かないらしい。諦めたのか水色は、こげ茶の奴の後ろに移動し、膝カックンをした…っておい、無理だったからって何手刀で膝攻撃してんだ。こげ茶の奴、何でそれでカックンってなんないんだ。おかしいだろ。てか気づけよ。戻ってこいよ。
諦めてこっちを見る水色の奴。目がやれ、と言っている。普通に声かけろよ。何でそんな方法で気付かせたがるんだよ。
はぁ…、付き合ってやるか…。
こげ茶のやつに近づき、猫騙しをする。
「…!!」
「おかえり」
「? ただいま」
何でそんな冷静に答えられるんだよ。俺もう着いていけない。
「あぁぁきゃぁぁぁぁぁ」
「……」
「!?」
「…?」
突然奇声が聞こえ、驚く俺達。いや、驚いてるの俺だけだな。水色の奴は、またかって顔してる。こげ茶の奴は不思議そうな顔してるだけだ。
何だ何だと振り向くと、朱色の奴が奇声をあげていた。あれ正気か?
「なぁ、あれは…」
「めんどくさいから後」
朱色の奴を指差しながら、水色の奴に聞くと、なかなか冷たい答えが返ってきた。そりゃないだろ。
クリーム色の奴は、固まってる。放心してるな。戻ってこい。
ぱしん
「はっ…」
「おかえり」
「う、うん?ただいま?」
まーたやってんのか。
やらないとダメなのか、あれ?
次は朱色の奴だな。
…おい、何蛇と戯れてんだ。朱色の奴どうするんだよ。
てか、よくあんな蛇と戯れられるな。目が鋭いし、情けないが俺には怖くて無理だ。あ、両手で顔覆った。大丈夫か、あいつ。
「…はっ」
「おかえり」
「う、うん?…うおっ」
何だ今の。あぁ、蛇に驚いたのか。
「ねぇ、あの子もしかして、僕達全員にあんなこと言ってるの?」
「…あぁ」
クリーム色の奴に聞かれ、答える。こげ茶の奴は、相変わらずの無表情で水色の奴を見ている。
変な奴が来たものだな。この先、不安しかなかったが、少し癒された気がする。死んでしまったが、これから龍として頑張ってみるか。ここにいる、変な奴らと一緒にな。
ありがとうございました!!