0.昔という名の今
ギャーギャー喚く、私のずっと下にいる人たち。
私は、自分の家のベランダに椅子を置いてそこに立っている。
下から、やめろ、はやまるな、危ないよ、いろんな声が聞こえてくる。
…うるさいな。
私が何しようが、私の勝手だ。あの人たちには関係ない。
もういい、面倒くさい。
私は、ベランダの柵に登り、
「…よっと」
そこから飛び降りた。
「キャー!!」「えっ、何して!?」
たくさんの悲鳴、戸惑いの声が聞こえる。
何?私が肉の塊になるところ、見たいの?
そう思いながら落ちていく。
目を瞑ると、たくさんの思い出が脳裏をよぎる。
…家族のこと、知り合いのこと、あいつらのこと。
これが走馬灯ってやつかな?
こんなの、いらないんだけど。
___じゃあねー。
最後に言ったの、いつだっけ…?
最後に言われたの、いつだっけ…?
…覚えてないや。
___それでさ。
次の人生、あんな日々を送れたらいいな。
ふと目を開くと、目を見開いた見知った顔がいた。
こんな弱い私みたいにならないで。
こんな私の事、忘れないで。
ごめんなさい、ごめんなさい。
ずっとずっとずっと、みんなの幸せ、願っているよ。
「ばいばい」
そう言い、見知った顔に私は精一杯笑って見せた。
最後って、こんなに長く感じるんだね。
ありがとう、さようなら。
_______最後に聞こえたのは、私の名前を叫ぶ声だった。