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鳥籠の冒険譚  作者: ゆめすむ堂よっし
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エピローグ

―10年後―




「チェックメイト」


 深海はビショップの駒を静かに置いた。これで完全に詰みである。パッツォはしばらく盤面を睨め付けたあと、うぅむと唸った。


「降参だ。お前の勝ちだよ優一。本当に喰えない男だな。その頭脳、我がクラインベル家のために使ってくれるなら、手厚い待遇を約束するぞ」


「有難い話だけど、遠慮しとくよ。僕は誰かの下で働くのが苦手だからね」


 二人はクラインベル家の応接間で、チェス盤を挟んでソファーに座っていた。


「お前は変わらんな」


 パッツォは少し遠い目をしている。最初に出会ってから10年が経過していた。


「アンタは変わり過ぎかもね」


 深海がクスクス笑っていると、応接間のドアが開き、小さな女の子がちょこんと立っていた。


「ぱぱ、ままがそろそろごはんできるよって」


 パッツォは女の子のところまで歩いていき、女の子を抱き上げた。金髪の髪と、端正な顔立ちはそっくりだ。


「二人とも夕食の準備ができたわ」


 遅れて顔を出したのは桜だ。一児の母になった桜は、落ち着いた雰囲気が漂う大人の女になっていた。しかし、素直な真っ直ぐな瞳は、高校生だった頃と変わらない。


 深海はといえば、伸び放題の髪を後ろで束ね、無精髭も生えている。高校を出た後の深海は、すぐさま旅に出た。いろいろな国を当てもなく放浪し、一か所に根を下ろすことはなかった。今回も、そんな旅の途中で、クラインベル家に寄ったのである。


「せっかく久しぶりの再会だから、腕によりをかけて作ったの。今夜はゆっくりしてってね」


 ずっと旅を続けている深海にとっては、温かい団欒の時間というのは本当に久ぶりだった。パッツォも桜も、みな良い顔をしている。そんな光景を眺めていると、深海も束の間の安らぎを感じるのだった。


 また明日には放浪の旅に戻る。すべては通り過ぎていく。だからこそ、その一瞬一瞬を、深海はしっかりと噛み締めようと思うのだった。





―END―



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