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鳥籠の冒険譚  作者: ゆめすむ堂よっし
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嫌われる理由

 何事もない日々が何日か続いた。桜以外の人間と話ができないというのも、なかなか退屈なものだと深海は思った。二人で一緒に過ごす時間は、そんなに多くは無い。深海は基本的に一人でいることを好むからだ。客室にいる時はずっと魔術の修練をする傍ら、桜から初歩的な魔術についての本を借りて読んで過ごしている。脱出前にパッツォとの決着をつけておきたかったからだ。


 深海は、桜といる時は一緒に食事をしたり、紅茶を飲んだりした。公園でデートして以来、二人とも外に出かけていない。せいぜい屋敷の庭を散歩する程度だ。ある日、深海が庭に置かれた椅子に座って、噴水を眺めていると桜がやってきた。


「かけてもいいかしら?」


「もちろん」


 桜は深海の隣にある椅子に腰を下ろした。特に、これといって話があるわけではなかったようで、二人はしばらく取り留めのない話をする。話すうちに、深海がふと思い出したように切り出した。


「そういえば、前から聞いてみたかったんだけど、パッツォはどうしてそんなに桜に執着してるんだい?」


 深海の意外な質問に、桜は少し驚いた。そして小さく咳払いしてから、苦い思い出話をするように肩を竦めて話し始めた。


「アイツは別に私が好きとか、恋愛感情があるとか、そういうのではないの」


「というと?」


「アイツはただ私の家柄が目当てなのよ。前にも話したけど、神崎家は裏の世界では名家なの。それもぽっと出じゃなくて、何代にも渡る由緒ある血筋よ。逆にアイツの家は、魔術師の家系としてはそれほど古いわけじゃない。代を重ねて力をつけ、のし上がってきた家柄ね。その過程で今回のような政略結婚みたいなこともたくさんしてきたそうよ。神崎家とクラインベル家の両家が繋がれば、いよいよ、クラインベル家の地位は盤石なものになる。アイツは人一倍そういうことにも敏感だから。プライドも高いしね」


「なるほどね」


「それにね、アイツは魔術師としてはかなり優秀な方。だから周りからもずっともてはやされてきたのね。だから、最初あった時もすごく高圧的だったわ。『俺様が選んでやったんだから、光栄に思え』って感じでね。だから、私がそれを断ったのがよっぽど腹立たしかったんでしょうね」


 やれやれ、と深海は首を振った。


「プライドが傷付いたわけか。それでこんなストーカー紛いなことを。面倒な男だなぁ」


「アイツは私を一人の女として見てるわけじゃなくて、飾りか何かだと思ってるのよ。私をマントにつける勲章みたいにして、偉ぶりたいのね」


 自嘲気味の桜に合わせて、深海も肩を竦めた。


「パッツォが嫌われるわけがよくわかったよ。確かにそんな奴、願い下げだ。みんなどうしてもっと相手を尊重できないのかな」


 深海はわざと「みんな」のところを少し強調して言ったが、桜はそれには気付かなかった。


「女を物として見るなんて最低よ」


 深海はフフッと笑うと、椅子から立ち上がった。


「あまり良い思い出ではなかったろうに、話してくれてありがとう。部屋に戻って紅茶でも飲もう。クッキーでもあれば言うことないな」


「えっと、クッキーなら確かあったはずだけど」


「素晴らしい」


 深海が歩き出す後を追って、桜も立ち上がった。深海がなぜ笑ったのだろうと少し首をかしげたが、深海がスタスタ歩いていくので、桜は慌てて後を追いかけるのだった。

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