初めての恋。
「ありす、将来、何になりたい。」
「うーん。そうだな。きららは何になりたいの。」
「私は、お母さんみたいな上級魔法使いになりたいな。うん、きっとそうなる。」
「そうだな、あたしは、お嫁さんかな。そう、お嫁さん。」
今日は、いつもの登校日。いつものように、二人は学校に行きます。
「あ、ゲラゲラ先生、おはようございます。」
「おはようございます。ゲラゲラ先生。」
「おう、頑張っているな。」
「おはよう、きららさん、ありすさん。」
「げ、出たな。レン。」
とありすが言い返せば。
「出たな、とは失礼ね。おはようございます。ありすちゃん。」
ここで、私の紹介を。そう、私、早乙女レンは、ノートブック魔法学院で学んでいる、下級生ソルジャーです。ソルジャーとは何かって。
そうですね。まずその説明からしなければなりませんね。武器、魔法、精錬、そして、聞き出し、と、それはもう、ありとあらゆる、ミッションを、正確に、遂行するために開発された、私のために生まれてきたといっても過言ではない、職業です。
そして、私の家は、父親が、ペンシル裁判所長官、母は、きっての、エリート大学卒、そして、私のフィアンセは。
「おい。大丈夫か。お前たち。」
「イレース様。」
とは、三人の黄色い声。
「あの、大丈夫とは。大丈夫とは、私の体、私の心、私の。レンの。」
「あ、こんにちは、ありすって言います。よろしくお願いします。」
「へえ。アリスさんて言うんですね。そちらの方は。」
「如月きららと申します。」
「きららさんか。よろしくね。」
「あの、レンは、レンは。」
「じゃあ、俺は授業あるから、行くね。」
イレースは逃げ出した。
「つくづく、運の強い方たちね。上級魔法使い様に対しての態度を気をつけなさい。」
と、レン。
「うん。」
と、私は答えたけど、ちっともそんなこと思ってなかったんだ。
私は、少しだけ思ったの、好きって。
今まで思ってなかったんだ。男の子たちに対しても、父親に対しても、いっつも、うるさい奴って思ってた。けど、今回は違うんだ。
ちょっとだけそんな自分が好きになった。
退屈な授業、もう、うんざり。ニセモノの、剣を振ってみせたり、魔法のどうでもいい歴史聞かされたり。
「ああ。もうやだ。」
「どうしたのよ、ありす。」
「きらら、授業退屈。」
「そんなこと言っちゃだめだよ、ありす。」
「だってつまんないんだもん。」
「そういうの甘えだよ。」
私もそういう風に感じてたんだ。あの少しやさしくなれる感触はきっと、ありすも、きっと同じなんだと思う。だけど、私は、エルフ。きっと、恋なんてしない。
続く。