出逢い。
グルグル回る鏡の先は静かな場所で、木々が立ち並ぶ森の中らしき所だった。
「ここが人間界?」
辺りを見回しベスに聞いた。
「知らないけど悪魔達を追いかけて来たんだからそうでしょ?」
「掟の森と変わらない景色ね」
私達が鏡から出た場所は、どうやら何処かの森らしい。
木々が沢山ある静かな場所で、太陽の光が一筋差し込んでいた。
「ともかく悪魔達を捜さないと。 厄介な事になりかねないわ」
「そうね。 まず気配を探りましょ」
ベスに乗ったあたしは空の上から悪魔達の気配を探った。
異界の者は必ず強い気配を残してしまう。
反対にあたし達も探られてしまうが、聖水をかせているので心配ない。
天界のお祖父様ありがとう。
「何か感じる?」
「うーん。 まだ……」
「悪魔の目的って何なの?」
「何か誰か捜してるみたいな感じだった。 人間界に逃げた人?」
「聞いた事ないわね。 そんな話……」
「悪魔の王だかが、捜すくらいだからよっぽど何かあるかもね。 あたしも聞いた事ないけど……」
暫く飛んでも何の気配もない。もしかしたら気配を消しているかも知れない。
だけど、人間には悪魔など見れないはず。
それにあたしが追いかけたの知らないし、おじじ様達は人間界に行けない。
大体あたしの存在すら知らないのに。
悪魔が捜してる相手って、やっぱり秘密か何か持ってる?
ひとまず広い場所へ降り立った。
森の入り口の前の草原の様な場所。
誰かに見つからないとは思うけど、念のため草が生い茂っている方がいい。
近くに川が流れている。本来異界の物を口にしてはいけないが、喉が渇いたので水を飲む事にした。
予め大丈夫か調べてからね。
「これからどうする?」
ベスの質問に 「そうね。とにかく神経を集中させて捜すわ。 あ、 結構疲れるのよ? 力使うし」
水を飲みながら答えた。
「そろそろ行きましょう」
ベスに乗ろうとした時、あたしは何かを感じ、そちらの方を見た。
「何? どうかした?」
「待って……。 何か感じる。 あっちの方から」
「悪魔?」
「……違う。 他の気配……」
「他の?」
「とにかくあっちに行きましょ!」
ベスにまたがり、気配のする方へと飛んだ。
邪悪な物ではなさそう。強いて言うなら同じ波長?
家が点々と並ぶ上空を飛ぶ。
段々と強くなるなって来たので、降りて捜す事にした。
「この辺りから何かを感じるのよね」
閑散とした場所にポツンと一軒の小さな小屋の様な家が建っていた。
「この家から?」
「ええ……。 同じ波長の様な物を感じる」
あたしは小屋の周りをグルリと回った。
特に変わった様子はない。しかし確かに感じる何か……。
「戸を叩いてみたら?」
「え? 叩くの?」
「悪魔じゃないんでしょ?」
「人間には姿が見れないのよ?」
「人間じゃないかも知れないじゃない?」
そうベスに言われ、家の戸を叩いた。
暫くして、ギィーっと音を立てながら戸が開く。
「誰だ…?」
扉の中から低い声が聞こえ、誰かがそっと覗く様にこちらを見た。
私と同じくらいの男の子がじろっと警戒している。
「誰だ……?」
明らかに私の方を見ている?
「貴女見えるの?」
「何が?」
「え? 私の事……」
「あんた、 人間じゃない? 悪魔か……?」
言われて凄く驚いた。
「あ、 悪魔じゃないわ! 魔女よ!」
「あなたこそ誰? 私の事見えるの?」
質問の最中、空が騒がしくなった。
黒い何かが群れになって旋回している。
「とりあえず来て!」
腕を掴まれ家の中へ引っ張り込まれた。
「結界張ったのに……」
そう言うと窓を開け、聞いた事のない様な言葉を呟いた。何かの呪文?
空へと手を振りかざす。
すると黒い群れが散り散りになっていく。
「な、 何? 何が起きたの?」
あたしの頭はパニックをおこした。
一体あの呪文は何?
「やれやれだけど、 ここには居られないな。 あんた……。 オレを捜しに来た?」
テーブルの椅子に腰掛け、私を見た。
黒い髪はサラサラしていて、ママと同じ感じ。 でもきている服は見たことない。
「悪魔を追って来たらあなたの気配を感じたの。 あなた悪魔に追われてるみたいね? でもあたしと同じ様な魔法が使えるから……。 魔界の人?」
「魔界……。 父さんが言っていたが、 まさか本当だとは思わなかったよ。 オレの名前は
天 。 呪術の使い手。 まあ魔法みたいなもんだな。 呪術師は独特の格好してるから、 不思議だよな。 着物って言うんだ。 正式には違うけど、 説明面倒だからいいや」
天は屈託のない顔で笑った。
「呪術師……? 魔界と関係あるの?」
まるで話が分からない私。
「父さんは魔界とやらに住んでたらしい。 ある時人間界に降り立ち、 呪術使いの母さんと知り合った。 掟だか何だかで二人はこの世界で普通に暮らしたらしい。 オレが生まれた頃から悪魔に追われる様になったとか。 オレは特別な力を持ってるみたいだから」
「魔界の人と……。 で、今はお二人は?」
「人間になった父さんは病気になってしまって。 母さんも懸命に治そうとしたけど無理だった。 で、 二人仲良く天命を全うしたよ」
「では天界にいるかも知れないわ!」
「天界? あ! 所であんた誰だ?」
「あたしはシオン。 魔女よ。 パパは天界の王子だったの。 ママは魔女。 お祖父様に聞いてあげるわ。 あたしと一緒に来て」
「へー。 魔女か。 何か面白そうだな。 悪魔もうるさいし、 一緒に行くよ」
不思議な男の子との出会いをしたあたしは、天をお祖父様の所へ案内する事になった。