いざ、人間界へ。
取り敢えず誰の気配も無くなったので、ドアの外に出た。
「これからどうするの?」
「とにかく。 じじ様達の到着を待つ前に人間界にこれ以上行かない様にしないと」
あたしは辺りを見回した。
「悪魔達は何処に行ったのかしら? 」
「さあ。 作戦でも練りに何処かへ行ったのは確かだろうけど……」
ベスの言葉に足が震える。
「やだぁ。 沢山いるって事よね?」
「そりゃそうでしょうよ。 ともかく偵察部隊が帰るなり動き出すはずよ? その前に目的を知らないと」
薄暗い廊下は先が見えないくらい長い。
燭台も何か趣味悪い物だし、窓もない。
あたし達は取り敢えず長い廊下を歩いた。
「何か気配感じるわ。 こっちの方から」
あたしは何かの気配を感じ、そちらの方へ歩き出した。
「天使のカンてやつ?」
「分からないけど……」.
パパは天使だからなのか知らないけど、直感的能力が備わっていた。
身を守る上で必要らしい。
「あっ! こっちに大きなドアがあるわ! 」
廊下を進み、つきあたりを曲がった所に大きなドアがあった。
これもまたいかにもって言うドアで、黒くて変な装飾されているドアだ。
再び鍵穴から中を覗いた。
「誰かいる……。 ちょっと聴いてみるわね」
あたしは魔法を使い中の話を聴いた。
「して……。 人間界におったのか? 」
「申し訳ありません……。 見つかりませんでした……」
「そうか……。 まあ仕方あるまい。 魔界も天界も動けぬ。 ゆっくり捜すとしよう。 あの時は邪魔が入ったからな。 今は邪魔する奴はおらぬはず」
「ちょっと気になる事が……」
「何だ? 申してみよ」
「はっ! それが魔界から力強き物がこちらにやって来ていると、 見張りの者が申してきました」
「何? それはまことか? 何故こちらの動きが……。 確かあの者には娘がいた。 しかし掟を破り森の中にいるはず。 それなのに……」
部屋の中は先ほどの部屋同様広くて、言うなれば王座の間の様ね。
あの立派な椅子に座っているのが悪魔の王?
「何か分かったの?」
「じじ様達がこちらに向かっているって」
「じゃあ、 早くしないと! 人間界に送りこまれてしまうじゃない」
「そうね……。 でも何処から人間界へ行くのかしら」
あたしは暫く考えた。
魔女の端くれ。見つけなきゃ。
「誰か来る!」
いそいで柱に隠れ、持っていた聖水を念のためかけた。
より強い効力がつくからだ。
ドアが開かれ、悪魔の手下みたいな者が出て来た。
やっぱり角が生えている。他はあたし達と変わらないのに。
「着いて行きましょう」
後ろからゆっくりつける。
足音を立てない為に空中魔法を使った。
「全く……。 人遣いの荒い王だ。 人間界へ直ぐに悪魔を送れなんて。 一度に無理だって言うのに」
何やら愚痴ですか?
「色々大変なのね……」
裏庭みたいな所に出た。
ガーデンハウスみたいな建物が端に建っていて、何人かの悪魔が前にいた。
「今から人間界に行く。 王の命令だ。 魔界の者がこちらへ向かっている。 直ぐ様人間界へ行く様に。 そこで人間界に残った者と落ち合えとの事だ」
建物の扉が開かれ、悪魔が中に入って行った。
「シオン。 私達も結局行かなきゃならないみたいね……」
「仕方ないわ。 行きましょう」
悪魔が入って行った建物の扉を開けた。
中はこじんまりとしていて真ん前に鏡が置かれているだけだ。
「さあ行くわよ。 いい?」
あたしとベスはグルグル渦巻く鏡の中へ飛び込んだ。