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Red Rim 黒緋の乙女と円環世界  作者: 32➡1
黒緋の乙女編
11/41

第7環 翔破の円環節68日目



「……」

 うん、分かってる。自分の身体のことだし。恥ずかしいけど私も、もう若くないもの。


「…………」

 平気よ、ジョニーの傍に居られるのなら。どんなことだって、私は――


「……、……」

 ――そうね、貴方の云う通り。縁起でもないことを云うものじゃないわよね。


「……」

 ううん。今はもう、これで充分。


 ……。

 …………。

 ……あのね、その。

 こうして、私のどこにも異常がなければ。またいつものように彼の役に立てれば。

 ……ジョニーは、喜んでくれるかしら?


「オヤ、ドウヤラ、スンダヨウ、デスネ。イヤハヤ、アンゲルゼサン、ハ、アイカワラズ、オウツクシイ」

「もうっ、どうして鈴木が先に謂っちゃうのよ!」

「ハテ、ナンノコトデショウカ」


「……」

「あ、貴方までそうやって。……でもまぁ、相手が誰でも褒められて嬉しいのは本当だものね。せっかくだから素直に受け取めておくわ。ありがとう、ふたりとも」

「イエイエ。ササ、コチラニ。ジョニーサンモ、ソトデ、オマチデスヨ」




 時刻はおそらく、昼を過ぎたばかり。アンゲルゼと別れてから、ちょうど一時間が経つか経たないかの頃。

 いつもならもうそろそろ、彼女のメンテナンスは終了するはずだ。

 太った歯車人のファティマン=鈴木が、工房『七人の薄汚い小人とすてきな女王様』内の様子を見に行った。焦らなくても、直に彼女は出てくるだろう。

 ……おや?


「なあ、この看板」


 以前のメンテナンスで訪ねてきた時とは、微妙に変化している店名。

 それについての指摘をボクは、隣でぶすっと不機嫌に突っ立っている幼馴染のドーピーに投げ掛けた。

 ドーピーは一度ボクの顔を睨み上げると、如何にも面倒臭そうに溜息をつく。


「……スノウの仕業さ」

「スノウ? ……ああ、例のジオ・ハモニカから家出してきて突然居座り始めたって話の彼女か。確かに、結構あの子もエキセントリックだもんなぁ」

「頭のイカレた面倒臭い女だよ。怒鳴る事しか出来ないむっつりドMジジイのグランビーが奴の餌食になっちゃってさぁ。挙句にはついこの前、そいつの友達だとか云う協会の女まで連れてきちゃって。……ま、俺はどーでも良いんだけどね。むしろ問題なのは、なんで俺が、こうして工房内から叩き出されなきゃいけないのかってこと」


 アンゲルゼのメンテナンスが開始してからずっと、ドーピーはこのような文句で延々ボクを責め立てていた。まったく、彼は昔から本当に自分本位な男だ。


「女性が中で検診を受けているんだ、ボクらが傍に居たら彼女だって恥ずかしいだろう?」

「歯車人に性別なんて無いってのに、頭おかしいんじゃないのお前?」

「それでもアンゲルゼは正真正銘、ボクにとってのエンジェルだ。だからたとえ幼馴染であるドーピーやキリンジと云えど、彼女のあられもない姿を晒すことなどは……とてもじゃないが出来ないっっっ!!」

「はいはいソーデスカ」


 完全にボクから背を向けて、ドーピーは黙り込む。何故だ、何故ボクの彼女に対する愛が、彼には理解出来ない!?

 ……ふぅ。そうだな、少し落ち着こう。彼にもきっと、彼の考える愛の形と云うものがあるのだから。

 ああ、しかし一度彼女の事を考えてしまったら歯止めが利かない。今すぐにでもこの扉を開けて、中にいる愛しのマイエンジェルに頬擦りし、キスをしたい。くそう、幾ら何でもちょっと遅すぎないか? いったい何をやっているんだスニージーと鈴木のふたりは。……いやいや、彼らの腕は本物の職人のそれだ。信用しているからこそ、ボクはこうして大切なアンゲルゼを任せているのだし、疑うだなんて畏れ多い。でも、じゃあ……なんでこんなに遅いんだぁぁぁ。


 ――はっ。まさか定期メンテナンスとは名ばかりの、いかがわしいほにゃらら的なことがボクの知らないうちに行われているのではあるまいか。そ、そんな。アンゲルゼはボクのエンジェルだっ。ボクがそう呼ぶのを彼女が仮に、そうこれは仮にだよ。仮にっ、嫌がったとしてもっ、それはもう嘘偽りのない事実であり、運命なのだ! だから、彼女の身になにかあったかと思うと、ボクは……ボクはっ。


「――なにをやってるのジョニー、そんな蛆虫みたいにくねくねして……気持ち悪い」


 唐突に開かれた工房の扉から現れたアンゲルゼが、いつもと変わらない鋼鉄製の表情でボクのことを見つめていた。

 堪らなくなってボクは彼女の冷たい体へと吸い込まれていく。


「マイエンジェルっ」

「ばっ。や、やめてって何度も云ってるでしょ、その呼び方っ!」

「綺麗だよ。どれだけ時が経とうとやはりキミは……美しい」


「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!」


 ボフッっと頭から白い煙を噴き出して、アンゲルゼは固まった。彼女のそんなところもまた、愛らしい。


「オヤオヤ、オアツイデスネ、オフタリサン。ヒュー、ヒュー」

「……」


 彼女の後ろからスニージーと鈴木のふたりもそろそろと出てきた。


「……ていうか、アンゲルゼをぶっ壊そうとしてるのは他でもないお前なんじゃないの?」


 呆れたような口調でドーピーが主張してくる。なにを馬鹿な。ボクはこうして、彼女への愛を純粋に表現しているだけに過ぎないと云うのに。

 そうだ、きっとドーピーはボクとアンゲルゼの深い愛情に嫉妬しているに違いない。やれやれ、ボクの幼馴染にも困ったものだ。ここはひとつ、がつんと云ってやらねば。


「男の嫉妬は醜いぞドーピー。まあアンゲルゼほど美しい存在を前にしてしまえばその気持ちも分かるけれどね。しかし残念ながら、彼女の心も体も既にこのボク、ジョニー・センデルスのものだ。そうだね、アンゲルゼ?」

「もう、勝手にして!」


 固く伸びた歯車の腕で、アンゲルゼはボクの身体を突き飛ばした。ははは、可愛いやつめ。

 既に工房内へと戻って行ったドーピーは、今のボクの話を全然訊いていなかった。

 むぅ。また後日、彼にはしっかりとボクの考えを述べてやらねばならないな。


「……ところでジョニー、今後の予定はいいの?」


 顔を背けたアンゲルゼが嫌にツンケンした口調で謂って来る。

 そうだ、あまりにも舞い上がり過ぎて忘れてしまっていた。

 ボクは立ち上がり、スニージーと鈴木のふたりに頭を下げ、口の縛った小袋を差し出した。


「騒がせてしまいすまなかった、ボクらはこの後に大切な用事があるので行かねばならない。これは僅かだが謝礼だ。受け取ってくれ」

「騒いだのはジョニーだけでしょうが」

「……」

「ハイ。ジョニーサンモ、オゲンキデ。アンゲルゼサン、オダイジニ」


 ふたりと別れの言葉を交わし、ボクとアンゲルゼは踵を返す。

 さて、これから雲海層8階の喫茶店にでも行って次の作戦会議を――


「――おい待った、ジョニー」


 後ろからボクの名を呼ぶ声が聴こえた。

 振り向くと軒先からドーピーが歩いてくる。その手には、ボクの仮面を持っていた。


「おっと、ごめんごめん。忘れていたよ」

「ナチュラルに忘れて行かないでよね、こんな物騒なもの」


 ドーピーが無造作に投げたそれを、ボクは受け取る。

 銀色の縁に豪華な装飾を施した、仮面。アンゲルゼの次に大切な、ボクのたからもの。

 4年前の、あの盗まれた夜から……ボクにとって無くてはならないものとなった、力。

 銀影を象徴するその仮面を付けたボクのことを、巷ではこう呼んでいるらしい。

 世紀の大怪盗、シルバー・ファントムと。




 喫茶店ジェミニのソファへと腰を下ろすと、店主である双子の姉妹が冷水の入ったグラスを持ってやってきた。

 ボクは店の名物であるドーナツと、アイスティーを2つずつ注文する。


「待って」


 対面するアンゲルゼが、それを制止した。


「歯車人である私は人間と同じような食事をすることが出来ないことを、ジョニーも分かっているでしょう? なのになんで貴方はいつも、私の分まで注文するのよ」

「恋人と同じものをふたりで注文することが、そんなに不思議かい?」


 いたって真面目に答えたボクに、アンゲルゼは呆れたように溜息を洩らした。

 それから彼女は勝手に姉妹へと顔を向けて、今の注文をひとり分キャンセルしてしまった。


「代わりに、フレーバーオイルを頂戴。味はそうね、ドーナツ風味には出来るのかしら?」

「ええ、取り揃えていますよ」


 姉妹の右側、姉のフォズが笑顔で受け答える。


「それじゃあボクもそれと同じ――」

「以上でっ!」


 追加注文しようとしたボクの言葉を、アンゲルゼが無理矢理に遮った。それを見たフィズとフォズの姉妹はくすくすと笑いながら、テーブルの端に伝票を書き残しカウンターへと戻って行った。


「なるほど、恋人同士なら半分個にすると云う手もあったな。愛しいキミの気持ちを察することが出来なくてすまなかった」

「お馬鹿、そうじゃないでしょ。ジョニーが歯車人用のオイルなんて飲んだら、喫茶店よりも病院に行かなきゃいけなくなるじゃない」

「構わないさ」


 彼女のレンズ型の瞳を見つめて、そう答える。鉄面皮である彼女の表情は決して変わることはないが、ボクには今、アンゲルゼが感じた感情が掌に伝わるように理解できた。


「なぜ怒っているんだい?」

「別に。そうやって私の事なんて無視して、好きなようにやればいいのよ。それで貴方が具合を悪くして倒れようが入院しようが、私は知らないから」

「ボクはキミを残して倒れたりはしないよ」

「だったら、なんで」

「アンゲルゼが歯車人だとか、ボクがハモニカ人だとか、そんなことは実にちっぽけな話じゃないか」


 彼女の動作が、一瞬止まる。

 そう、正に今ボクが自分自身で口にしたように、アンゲルゼは歯車人で、ボクはハモニカ人だ。生粋の純血であるわけではないけれど、それでもボクの血には確かに、ハモニカ人のそれと同じものが通っている。碧色の瞳がその証拠だ。

 人類種、中でもハモニカ人と歯車人の関係と云うのは至極単純明快な、主人とその隷従として確立している。歯車協定……かつて千年以上も過去に起きたとされる奏銀戦争(ベルム・アルゼンタム)の結果からしても、それは抗うことの出来ない決定的な事実。歯車人は、人類の奴隷、道具として生きて行くことを運命付けられた種族だった。


 アイオルビスの中流貴族であるセンデルス家に生まれたボクと、代々センデルス家に仕える歯車人だったアンゲルゼにとってみれば、それこそが彼女の考える常識なのだろう。

 でも、そんなのは世界が勝手に作り上げた『世界のための常識』だ。

 愚かな常識だと、過去と歴史を否定する気などボクには更々無い。それは学者や政治家、もとい時代と文化が判断すれば良いだけのこと。各々が好きなように判断すれば良いのだ。

 だからボクは――ジョニー・センデルスと云うひとりの男は、アンゲルゼと云う恋人を愛している。世界も種族も関係ない。ボクにはボクの、ボクだけの心で、アンゲルゼを愛しているだけのこと。たったそれだけの話なのだ。


 彼女はきっと、納得しないだろう。彼女だけではない、多くの人がボクのことを奇人変人だと蔑むのは分かっている。分かっているのだけれど、それでもボクは、ボクの心に嘘をつくことなど出来ないんだ。

 アンゲルゼと同じ眼で見て、アンゲルゼと同じ感覚で知りたかった。ボクは、アンゲルゼのすべてが欲しかった。同時に、アンゲルゼにもボクのすべてを知ってもらいたい。

 それこそがボクの考える、『ジョニー・センデルスの常識』だった。


「またそんな事、昔からなんでもかんでも自分勝手に押し付けて……こっちの都合なんてまるで考えないし。それで私を丸め込めるとでも思っているの? お生憎様、私はジョニーのことなんて……」


 ぶつくさと不満げに紡いでいた彼女の言葉が、その末尾で淀んだ。


「私はジョニーさんのそう云うところ、とても素敵だと思いますけどね。白馬の王子様って感じがして」

「もう、お姉ちゃん。すみません、お待たせしました」


 計ったようなタイミングで、フィズとフォズが注文した品を運んできた。

 ドーナツとフレーバーオイルの甘い香りが、ボクらの間に充満する。


「べ、別に私だって、ジョニーが嫌いだとかそう云う意味じゃなくて……もうちょっとこう」

「ストローが2本無いじゃないか、これじゃあ恋人飲みが出来ないぞ!」

「そーゆー変に偏った思考をどうにかしろって云ってるのよ!」


 ボクが姉妹に対して由々しき事態を訴えていると云うのに、アンゲルゼはまたしても頭から蒸気を噴き出して文句を述べてきた。


「ふふっ、アンゲルゼさんは本当にジョニーさんの事を愛していらっしゃるのね」

「当然さ、なんたって彼女はボクのエンジェルだからね」

「だーっ、今の流れでなんでそうなるのよ!? アンタたち事前に打ち合わせでもしてるわけ!?」


 激昂するアンゲルゼから逃げるように、姉妹はそそくさと退散していった。その顔はとても楽しそうに微笑んでいたが、ボクとしても数少ない理解者である彼女たちの対応に悪い気はしなかった。



「――それで、身体の調子はどうだい」


 あまり彼女の頭から煙を蒸かせ続けるのも、ボクとしては本意ではない。それはそれでとても愛おしいのは変わらないのだけれど、店内を白煙に包み込ませるのも極めて衛生的ではないだろう。

 アンゲルゼは僕らで云う『眼』の役割を持つアイ・カメラを駆動させたり、腕部の関節を伸縮させたりして動作を確認する。


「問題なさそうよ、極めて良好。スニージー様々ね」

「それは良かった」


 彼女からの返答にボクはようやく心から安心することができた。

 眼前に置かれた黄金色のドーナツを、フォークとナイフで一口大に切り分ける。


「ごめんなさい、ジョニー」


 唐突にアンゲルゼは謝罪の言葉を述べた。


「なぜキミが謝るんだい?」

「だって、私の身体が動かなかったせいで……この前はジョニーひとりで仕事をしていたのでしょう?」

「なんだ、そんなこと」


 ボクは切り分けたドーナツを口に運びながら、心配性なアンゲルゼをちいさく笑い飛ばした。

 それでも彼女はどこか落ち着かない様子でもじもじとしながら、添えられたマドラーでフレーバーオイルをかき混ぜ揺蕩う模様を描いている。


「前回のは単なる下準備に過ぎないさ、本命を確実に射抜くためのね」

「もう作戦は決まっているの?」

「ああ、ターゲットは大聖堂(カテドラル)だ」


 方舟教団のアイオルビス拠点となる教会、大聖堂(カテドラル)

 全13の階層によって成り立つ黄昏の天空都市アイオルビスの天辺たる極海層13階にそれはある。


「円環奏府に次いで、ついには教団にまでお尋ね者にされちゃうのね」


 深く落胆した様子でアンゲルゼは溜息をついた。


「なぁに、裏ではコンコルディア協会やリインカーネーションもシルバー・ファントムを追っているって話だ。今さらひとつ追手が増えたところで変わりはしないさ」

「そこまで理解しているのに、なんでわざわざラスボスにまで喧嘩を売りに行くのよ貴方は」

「欲しい物があるからに決まっているだろう」


 至極当然の理由を問うアンゲルゼに、ボクは至極当然の返答をして氷の浮かんだアイスティーで喉を潤す。

 冷たく爽やかな紅茶の風味と、甘いドーナツの組み合わせは抜群に相性がよかった。


「安心してくれ、アンゲルゼに危害は及ばせない。キミのことはボクが命をかけて守ってみせる」

「はいはい、またそういう勝手なこと言って」

「本気さ、キミさえ納得してくれるのならボクは今後ひとりででもシルバー・ファントムを続けて行く覚悟がある」

「なによそれ……私は邪魔なお荷物だってこと?」


 見るからに誰が見ても不機嫌だと分かる声色でアンゲルゼはボクを睨み付けた。どうやら今の言葉は彼女の扱いにミスマッチだったようだ。


「誤解しないでくれ、ボクはキミに危険が及ばないようにそう提言しているんだ」

「あっそ、それは親切にどうもありがとうございます」


 ふいっと頭部を横に向けてアンゲルゼはぷりぷりとしていた。どうも今日はいつにも増して機嫌が悪い。


「だからって私はジョニーの傍から離れるつもりなんてないから」


 この手の話題になると決まってこの論調である。まったく、素直じゃないマイエンジェルだ。


「それなら、やはりキミのことはボクが」

「結構です、ジョニーに守られなくても自分の身くらい自分でなんとかするわ。むしろ、私が貴方を守ってあげるわよ。そのよく動く頭と口はともかく、腕っ節はてんでひ弱そうだもの」

「それは心強いね、宜しく頼むよアンゲルゼ」


 強がってみせる彼女の健気な姿がとても愛らしく思えて、ボクは苦笑を堪えることが出来なかった。

 作戦決行日は明日の夜。ボクとアンゲルゼ、ふたりでひとりのシルバー・ファントムが狙う次なる獲物は大聖堂(カテドラル)に祭られた白金製の方舟、遍く生命の創造主たるカルネア像だ。

 準備は万端、ボクとアンゲルゼの力が合わされば盗み出せないものなどありはしない。不安要素と云えば因縁の相手とも呼べる階層警備隊の火埜蔵隊長くらいのものだ。だが、如何に彼と云えども今回ばかりは流石に手も足も出せないだろう。そのためにボクは三日前の罠を用意しておいたのだから。




 夕焼けのオレンジが店先の路面を照り返しボクたちの作戦会議もまとまりつつあった頃、何とも賑やかな客人が店内へと入ってきた。


「さぁって久々のドーナツ集会だし気合入れてくわよっ! フィズさん、フォズさん、いつもの5個ね!」


 5人組の学生がボクらのすぐ後ろの席へと雪崩れ込んできた。


「あ、ジョニーさんとアンゲルゼさんだ。こんにちはー」

「やぁ、青春を謳歌する学生諸君。しばらくだね」


 キリンジが世話になっている鍛冶屋の孫娘さんであるナギと、ドーピーの妹であるアカシャがいち早くボクたちの存在に気が付く。

 互いに軽く挨拶を済ませると、ドーナツ集会なる催しを開始した彼らは各々に雑談を開始した。


「そう云えばシルバー・ファントムの最新情報なんだけどさぁ」


 警備隊見習いの猫耳少女、コラットの声でボクとアンゲルゼの動作がぴたりと硬直する。

 どうも彼女たちはシルバー・ファントムの動向を推測し、その話題でもって会話に華を咲かせているらしい。

 背後から聴こえてくる5人の声に、ボクとアンゲルゼは顔を合わせてにやにやと秘かに笑った。



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