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Red Rim 黒緋の乙女と円環世界  作者: 32➡1
黒緋の乙女編
10/41

閑環  なぜなにじぇみに その1 『ルチア・アクシスってなあに?』


アイオルビスの機関技術学校に通う少年、正宗くんは双子の姉妹フィズとフォズの経営する喫茶店ジェミニで授業の復習をしているようです。

でもどうやらその内容は、正宗くんには少し難しかった様子。

そこで正宗くんよりもちょびっとだけお姉さんの、他人のお世話が大好きなフィズとフォズ姉妹が立ち上がったのでした。




【正宗】

「えーっと、ルチア・アクシスのこっちにあるのがインジェニー=円環パルログで……こっちがヴァーポルム……うーん、正直複雑過ぎてよく分んないよこの世界!」



【フィズ】

「うふふ、頑張ってるわね正宗くん」


【フォズ】

「そんな正宗くんに……はい、カフェオレ。差し入れよ」



【正宗】

「あ、フィズさんとフォズさん。ありがとうございます。すみません、居座っちゃって」



【フィズ】

「いいのよ、正宗くんは大切なお客様だもの」


【フォズ】

「ねぇ、良かったら私たちが見てあげましょうか?」



【正宗】

「いやいやそんな! これ以上迷惑かけるわけには……」



【フォズ】

「問題ないわよね、フィズ?」


【フィズ】

「うん、お姉ちゃん。だって、他でもない正宗くんのためだもの」


【フォズ】

「ほら。だから遠慮しないで?」



【正宗】

「うーん、それじゃあ……お言葉に甘えて。お願いします」



【フィズ&フォズ】

「はい、お願いされました」



【正宗】

「ふ、ふたりの笑顔が眩しい……っ」



【フィズ】

「それじゃあ、さっそく。今やっているのはどの範囲?」



【正宗】

「ルチア・アクシス世界についてのところなんだけど、形とか位置関係とかが難しくて。さらに円環パルログとかエウゴとかインサニアとかエンブリオ・エクス・ホロロギアなんて次から次に出てきちゃったらもうさっぱり」



【フォズ】

「あー、それ私もそうだったな。でもね、ひとつずつゆっくりやっていけばちゃんと理解できるわよ」


【フィズ】

「そうだ、分かりやすく図にしてやってみましょうか。ちょっと待っててね」



【正宗】

「は、はい」



 ……。



 …………。





【フィズ】

「……んしょっ、と」


【フォズ】

「ふぅ、これでよし」





挿絵(By みてみん)








【正宗】

「こ、これって……」



【フィズ】

「ルチア・アクシスの簡易全体図よ」


【フォズ】

「いわゆる、『天開図』ってやつね」



【正宗】

(まわりになんか余計な落書きみたいなのまであるんだけど……)



【フィズ】

「さて、ご覧のとおりルチア・アクシスはこうやって大きく真ん中の空いた巨大なドーナツ状の世界になっています」



【正宗】

「あ、気付けばなんか凄い自然に始まってる……」



【フォズ】

「このドーナツを4つに区切った範囲、エリアと云っても良いわね。それを円環パルログと呼ぶの」


【フィズ】

「円環パルログにもひとつひとつちゃんと名前が付いているわ。時計回りに上から、インジェニー、ネクタリス、アングィス、そしてヴァーポルム」


【フォズ】

「各円環パルログの名前の後には○○=円環パルログと表記されるわ。だから、誰かに説明する時には今私たちの暮らしているアイオルビスはヴァーポルム=円環パルログの中に在りますとなるわけ」



【正宗】

(……あのバツ印、アングィス=円環パルログのところだけ名前間違ったんだな)



【フィズ】

「さらにこの真ん中の、ドーナツの中心みたいになっているところに楼刻の時計塔――エンブリオ・エクス・ホロロギアが存在するわ」


【フォズ】

「エンブリオ・エクス・ホロロギアからはマルエと云う時計の針みたいなものが伸びていて、短い方が昼間を司るマルエ=セレニタティス。長い方が夜を司るマルエ=ヌビウム……って云うのは前に説明したわね。ふふ」


【フィズ】

「ここら辺は一緒に考えるとややこしいから、また今度詳しくやりましょう」


【フォズ】

「ルチア・アクシスの両端、外縁部と内縁部には海が広がっているわ。外側の海をプロセラルムの地平線、内側の海はウンダルムの果てと呼ばれているのよ」


【フィズ】

「エウゴ……つまり人類生存圏内、それと人類生存圏外を指すインサニアと云うのはその名の通り、現在、この広いルチア・アクシスにおいて人類種が生活している土地とそれ以外の場所を意味するわ」


【フォズ】

「簡単に云えば、主にハモニカ人たちが暮らしているインジェニー=円環パルログと、他種族間交流の盛んなヴァーポルム=円環パルログのふたつを合わせた範囲をエウゴ。それ以外のアングィス=円環パルログとネクタリス=円環パルログを合わせたものをインサニアと呼びます」



【正宗】

「ふんふん。……あれ、でもなんで人類種はインジェニーとヴァーポルムにしかいないんだろう?」



【フィズ】

「うふふ、それはここを見てほしいな」



【正宗】

「円環パルログと円環パルログの……繋ぎ目?」



【フォズ】

「そう。この部分を円環パルログの境界領域、ジョイントといいます」


【フィズ】

「天開図を見てもらうと分かると思うのだけれど、インジェニー=円環パルログの片方はネクタリス=円環パルログと。ヴァーポルム=円環パルログの片方がアングィス=円環パルログのジョイントと繋がっているでしょう?」



【正宗】

「そうだね、ここを通ればリムさんとチャトラみたいに隣の円環パルログに移動できるんでしょ?」



【フォズ】

「ところがどっこい」



【正宗】

「……ど、どっこい?」



【フォズ】

「ネクタリスとアングィスの円環パルログに向かうためのジョイントには、とっても大きな歯車の壁がにょきにょきーっと生えているのです」



【正宗】

(どっこいって何なんだろう……)



【フィズ】

「この壁はクロノスの壁、もしくはクロノラインと云って人類史上2回しか開かれたことがないの」


【フォズ】

「1度目が楼刻暦212年、インジェニー=円環パルログに住んでいたハモニカ人たちが、ヴァーポルム=円環パルログへと進出してきた時。これは今でも開いたままだから、いつでも行き来が可能ね」


【フィズ】

「2度目が楼刻暦998年、インサニア大戦と呼ばれる史上最大規模の戦争が行われた時にアングィス=円環パルログ側からヴァーポルム=円環パルログに続くクロノラインが開かれたのよ。結局、途中で突然そのクロノラインが閉じちゃってアングィス=円環パルログから攻めてきた鬼人種たち……私たちの種族のご先祖様ね。敵地に取り残された彼らはその後、ヴァーポルム=円環パルログ内で生きて行くことになったの」


【フォズ】

「クロノラインはいったいどういう理由で開くのか、また閉じるのかも未だに判明してないから、結果的にエウゴからインサニアへと移動するのは不可能だとされているわ。スカイリヴァーって云う空飛ぶバイクもあるけれど、クロノラインはあまりにも大きすぎて、このバイクでも飛び越えるだけの高度に達せないって訊いたことがあるわね。……あっ」



【正宗】

「……ぐぅぐぅ。……もう、無理……むにゃ」



【フィズ&フォズ】

「……」


【フィズ&フォズ】

「……ふふっ」


【フィズ】

「ちょっと長くなっちゃったね、お姉ちゃん」


【フォズ】

「そうね、今日はこのくらいにしておきましょうか」


【フィズ】

「うん、それじゃあ」


【フォズ】

「おつかれさま、正宗くん――」







 目が覚めた時には、すっかり夜になっていた。

 フィズさんとフォズさんはカウンターの奥に立って、こっちを見ながらにこにこと微笑んでいる。

 はて、僕の顔になにか付いているのだろうか。

 なんだかとてもいい夢を見たような気もするけど、頭がぼーっとして思い出せない。

 それはともかくとして、流石にもう家に帰らないとまずいだろう。

 せっかく勉強を見てくれていたのに途中で眠ってしまったことをふたりに謝罪し、お礼を云って僕は残りの冷めてしまったカフェオレを飲み干す。


 また今度分からないことがあれば、フィズさんとフォズさんに尋ねてみよう。この姉妹なら優しく、丁寧に教えてくれるし。なにより、こっちが照れてしまうくらい近くまで来てくれるので、何て云うかその……とても良い匂いがするのだ。これくらいの役得なら、如何に平凡な僕でも許されるはずである。うん、そうだ。そうしよう。

 授業の復習なんてそっちのけでそんなことを考えながら、僕は席を立った。


 この調子じゃあ明日もきっと、僕の活躍は見込めそうにない。

 そしてやっぱり最後には、アカシャのきーんとする声でどやされるに決まっているのだ。

 



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