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大人になりきれない20代

江戸の町はずれ、この区域に名前はない。現代で言ったら・・・歌舞伎町の


あたりだろうか、今だに昔の街並みが残るこの街は、皆に、無法地帯と言わ


れている。反天異人勢力、通称≪攘夷浪士≫または、≪レジスタンス≫が、


幕府からの追跡を逃れるために、この付近に来ていることからそう呼ばれて


いるらしい。その、3丁目に彼の家は存在していた。


歳は20と少しと言ったところだ。前の世界も含めるとしたのなら、約35歳


になる。前の世界からの持ち越しの緑色の髪に、透き通ったエメラルドの


ような瞳。この世界には珍しい色合いだ。天異人が来てからは、そうでも


ないのだが・・・。持ち越したのはそれだけではないが今はいいだろう。


・・・彼はふと過去の事を思い返してみる。




「俺がこの世界に来て、20年ちょいくらいになるか・・・。


こっちで物心ついたときにはもう1人で戦っていたんだよな・・・。


考えてみりゃぁ、前の世界の寿命より長く生きてんだな。」



 

前の世界・・・つまりは現代、またはそれに限りなく近いパラレルワールド。


そこに彼はいた。




「あれは確か・・・」







「・・・ゃん。・・ちゃん。ちょっと聞いてるの!」



幼馴染みの声が聞こえる・・・考え事をしていたらしい、そろそろ返事をしない


とまずいだろう・・・



「ん~?どした?」


「どした?っじゃないでしょう!!今日のテストの事よ!!」


「そいつを聞くか・・・いいだろう。ふっ、撃沈したぜ・・・」


「かっこつけてる場合じゃないでしょう・・・進路どうすんのよ・・・」


「大丈夫だよ。いざって時に俺は力を発揮する」



11月頃だったのだろう、はっきりとしないががテストが終わった日の帰り道。


この日からの記憶が無くなっているらしい。名前も忘れた幼馴染みと軽口


をたたきあいながらいつもどうりの帰路をたどっていた。


いつもどうりに進んでいた日常、それが崩される日が来るとは、この時は


思ってもいなかっただろう・・・妄想はしていたわけだが・・・。



「で、どうするの?」


「・・・まあ、いざとなったら親父の多対一二刀流の道場を継いで・・・


なんやかんやで・・・」


「まだ、あんなことやってんのー、バカなことやってないで、まじめに勉強


したら?」


「バカなことって言うなよ・・・でもまあ確かにそうだよな・・・」



じつは現代では彼の父親が良くわからない流派の刀術で道場を開いていた。


どういうわけかわりと人の集まる道場だった。かく言う彼も気がついた時


には大人用の木刀を両手でふり回せるようになっていたわけだが・・・


部活動でも剣道部に入り、全国大会に出場しているわけだが・・・さすがに


生粋の一刀流には、勝てないらしく準優勝という結果になっている。それだけ


でも十分・・・それ以上に凄いことなのだが本人はまったく気にしていないらしい。



「あんたが私の言うこと聞くなんて・・・雪でも降るんじゃないの?」


「やかましいわっ!俺だってなぁ、将来の事くらい・・・」


「ほんとにー?」


「ああ・・・ホントだよ・・・っ」



この時だ・・・ドォォンという音とともに大型トラックが突っ込んできたのは・・・。


その先にいるのは、彼らだ・・・


彼の思考はこの時、高速に回転していた・・・時間が引き延ばされトラック


がゆっくりと迫って来る・・・。


そして、彼の意識は暗転した。






彼はこの時、名も忘れた幼馴染みはどうなったのだろうかと考えた・・・。


死んだのか・・・・・・・・・・助かったのか・・・・・・


あいつの事だから、助かっているのだろうとまとめ、考えを打ち切る。


今日も仕事が入っているのだ。彼はおもむろに立ち上がり、コーラのボトル


を片手に窓から、かつて世界の中心と言われた江戸の中心部にそびえる宇宙船の


ターミナルと今まさに飛び立つ魔導宇宙船を見る。彼はボトルのコーラを飲み乾すとつぶやく。



「たった20年そこらだってのに・・・ずいぶん変わっちまったなぁ・・・」



鉛色に垂れさがる曇天は、彼の人生を現すようだった。かつて異界で暮らして


いた者の名前は≪怒龍 銀時≫




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