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そして人はいなくなっちゃいました [その9]

作者: ゆらら

↓併せてご覧下さい


1話目:聖魔光闇さま http://ncode.syosetu.com/n3089r/

2話目:真野優さま http://ncode.syosetu.com/n3101r/

3話目:日下部良介さま http://ncode.syosetu.com/n3133r/

4話目:大塚紗也さま http://ncode.syosetu.com/n3372r/

5話目:ふぇにもーるさま http://ncode.syosetu.com/n3460r/

6話目:円藤さま http://ncode.syosetu.com/n3494r/

7話目:Miyukiさま http://ncode.syosetu.com/n3718r/

8話目:MOWさま http://ncode.syosetu.com/n4404r/


本作は、9話目です




そうだ、確か……


僕は、記憶の糸を手繰り寄せ、懐かしい同級生の顔をひとりずつ思い出していた。

会わない期間があまりに長かったから、すぐには気がつかなかったのだが、いずれも小中学校時代をともに過ごした大切な友人たちだ。

懐かしい面影は、そのまま残っている。

だが、皆、話し方というか口調まで変わらないのは、性格も変わっていないということなのだろうか。


なにか不思議だ。

あれから、十年以上も経っているのだ。当然いろんなことがあったはずなのに。


自分のためにつくられた偽者、ってどういうことだ?


疑いを抱いた途端に、眼前の光景が水で薄めたように滲んで、かき消えてゆく。



はっとする。

まどろんでいた意識が急速に覚醒するような感覚。



気がつけば、小学校の校庭の桜の木に背を凭れ、その根元に腰を降ろしている自分がいた。


傍らには、いくつかのビール缶が空になって転がっている。


何時間かまえに、客も店員の姿もない無人のコンビニから頂いてきたものだ。


その後、酔って眠り込んで夢でも見ていたのだろうか。


どこからどこまでが現実なのか、どこが夢の始まりで終わりなのか、

すべて嘘であってくれたら、どんなにいいか……



不自然な体勢を長く続けていたためか、身体の節々に痛みを感じる。

その痛みだけは、紛れもないリアルな感覚だった。


僕は、上着のポケットから携帯電話を取り出し、半ば期待しながら、半ば諦めながら、発信履歴を辿り、順にボタンを押していった。


「おかけになった番号は、現在電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため……」


最後までアナウンスを聞かずに、次の番号に架けるが、

妻、友人、会社、親、

昨日と同じで、どれもつながらない。


やがて、ピピッ、ピピッ、と電池切れを告げる勘に障る電子音が響き、どうにもならない怒りと絶望にまかせて、それをグラウンドに思い切り投げつけた。


ガシャッ。

自分の過去が壊れる音だった。

僕にとって、親しい人が消えるということは、過去が消えるのと同じ意味だったのだ。




昨夜はただ消滅する恐怖から逃れたい一心で、安全な区域へと向かったが、今は、たとえばこの世界に己の肉体が唯一残ったとしたら、そのほうが恐怖だと思う。


これが悪魔の仕業であっても、神の裁きだとしても、いっそのこと、今すぐ、僕も消して欲しい。


そもそも、なんでこんなことが起きたんだ?


僕が、そう望んだ結果だというのか?


それとも、すべて仕組まれたことなのか?



それは、ほんの閃きだった。


家族を含めた人々が消えた時間、自分は大阪府内にはいなかった。

人がいない現象に気がついてから兵庫県へと向かい、県内に足を踏み入れて暫くして、母子が消えるのを目撃した。


つまり、時間と場所は少し違うが、大阪府と兵庫県との境目付近に居たわけだ。


最初は仕事で伊丹市とその付近。後はJR線路沿い尼崎市とその付近。


両市は厳密にいうと兵庫県なのだが……


間違って、というか大雑把に、大阪府として認識される場合がある。


隣接しているし、兵庫県っぽくない感覚がある。

尼崎の市外局番は大阪市と同じ06だったり、伊丹には大阪空港があったりするからだと思うが、たしか、伊丹では、もう人の姿を見た記憶がないし、尼崎にもすでに人は居なかった。



ということは、実は、この現象を引き起こしているモノは、思い違いか間違いをしていることになる。

都道府県別、という秩序ある区分けが、正確ではないのだ。



神格ではない。非常に人間的、というより幼稚……?


ごく最近。誰かのそういう間違いを正してあげたような気がするが……




チャリリ。ガサリ。


そのとき、鎖を引きずる音がして、背後の桜の木の陰に小さな人の気配を感じた。


「○○ちゃん」と名前を呼ぶ。


その人物を、僕は知っていた。


意外ではなかった。



「きみは、たくさんの人をどこに消したの?

そして、なぜ夢や幻を僕に見せているの?」

怒らないように、できるだけやさしい言い方で尋ねる。

相手は、まだ小学生なのだから。



「パパ、どうしてわかったの?」





[その10]に つづく


これはリレー小説です。


進捗状況、その他について詳細は、聖魔光闇さま宛お問い合わせください。


第10話は、雪人さま執筆予定です。

よろしくお願い致します☆


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― 新着の感想 ―
[一言] 面白い♪ 続きが楽しみですね(*^_^*) 四話担当です!
2011/03/08 10:45 退会済み
管理
[一言] 最後に出てきた子供は……。 気ならないと言えば、嘘になります。 既に予想の範囲外に突入したこの物語を、どのように完結させれば良いのか……。 次の著者様の内容に期待しましょう。 この度…
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