僕が勇者になる
ドベッと倒れた。受け身も取れずにお腹から。い、いたい。
「おい、大丈夫か、ロイ?」
「だ、大丈夫。ちょっと転んだだけだから」
「あ〜あもうお前、これから入学式だろ?制服も汚れるし、だいじょぶか?」
「だいじょうぶだよ、えへへ…」
えへへじゃないだろ、とツッコまれながら立たせてもらった。僕が汚れをぱっぱと落としていると、キャンの手が光だし、僕の制服についた汚れが消えていった。
「ありがとうキャン」
「これ、魔法で汚れが見えないようにしているだけだからな。帰ったらちゃんと洗濯しろよ」
「はーい」
「は〜ぁ。ほんとに大丈夫か?ほんとうに勇者になる気がするあるのか、ロイ」
「あるよ、ちゃんと勇者になって村を守るんだから。」
そう、僕は勇者になる。そう決めたのだ。
僕の生まれ育った村を守るために、僕は勇者になる。
「この村が…なくなる!?」
お母さんから告げられた突然の話に耳を疑った。この村がなくなる。そんなことが起きるなんて。
「ど、どういう事?この村が無くなる!?」
「そう。そういう条約が中央で決められたらしいの」
「で、でもこの村は勇者が出た村だから無くならないって、隣のおじさんがお話ししてくれたよ!?」
「それも遠い昔の事だからね。それに、そういう条約はないのよ」
勇者が出た村はなくならない。実際そんな条約はない。ただ、村のみんなが栄誉ある村を残そうと努力した結果、自然とそういう雰囲気になったもので、中央で正式に決められた事ではないのだ。だから、今回のような話も当然ありうるのだ。
「・・・ほんとうに、決まっちゃったの?」
「そうらしいのよ。一応3年間待ってくれるって話…。」
ここは中央と少し離れた『カリコン村』。中央とは一つ町を挟んでおり、反対側には森が広がっている。魔王から攻められるルートで防衛拠点にするならわかる。しかし、ここは魔王城からは真反対にある村で、村の住人は少ないが平和な村。それが急に無くなるなんて。
「…ちょっと…出かけてくる」
「うん、いってらっしゃい。晩御飯までには帰ってくるのよ。」
なにも答えられなかった。いつもならわかってるよぉと返事をして走っていつもの場所に向かう。でもそんな気力もない。足が勝手に動いていく。何も考えられなかった。
そして…。
「おーい、ロイ!そんなところで塞ぎ込んでどうしたんだ!」
いつも遊んでいる木の上に座っていると、下から声がした。毎日この木で一緒に遊んでいるキャンの声だ。キャンは隣町に住んでいる僕の親友。ちょっとお調子者だが、根はいいやつで僕がこの木に登れるようになったのもキャンのおかげだ。
「僕が住んでる村、無くなるんだって…」
えっ!と隣にきたキャンが驚く。信じられないと驚くキャンに、先ほど聞いた話をする。
「そんなこと…あるんだ。勇者が出た村って聞いたのに」
「うん、僕も驚いてる。3年間待ってくれるらしんだけど…」
新しい家も見つけないといけない、お母さんの手伝いもしないといけない。そんな事をしていると2年なんてあっとういまだ。それに、毎日遊んでるこの木ともおさらばしなくちゃいけない。そうなるとキャンとも離れ離れになる。やだな、せっかくの親友なのに。
「ならさ、お前が勇者になればいいんじゃね?」
「・・・え?」
突然すぎてよくわからなかった。僕が勇者?
「・・・どういう事?」
「だから、ロイが勇者になればいいんだよ。勇者の学校は確か2年間だったはず。2年で卒業してパーティーを組んで魔王を討伐すれば、偉大な勇者様を出した村を取り壊すなんて起きない!そうだろ!」
「確かにそうだけど・・・僕が勇者になんて・・・」
「大丈夫だって。この木にも登れる様になったんだから、勇者にだってなれるって。」
「それとこれは別だと思うけど。」
「いけるいける、何なら俺も一緒に入ってやるから。一緒に勇者になろうぜ!」
キャンのこういう明るくて前向きなところに僕はいつも救われている。そして僕にも勇気をくれる。だから一緒にいる。
「う〜ん・・・わかった。キャンが行くなら一緒に行く。そして勇者になってやる!」
「よし!その意気だ!一緒に勇者になるぞ!」
「「おー!」」
二人で木の上で腕を上げて落ちそうになった。あぶなっと言って二人で笑った。
「・・・あれ?でも、どうやって勇者の学校に入学するの?試験とかあるのかな?」
「そんなのは知らん!何とかなるだろ!」
キャンの明るいところはいつも救われているけど、なんか巻き込まれてる気もするな。
こうして、僕の『ロイ・K・サントス』の勇者になる為の学園生活が始まるのである。
はじめまして、宝来星太と申します。初めて小説を書いてますので、拙い部分もあると思いますが、温かく見守ってくれると嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします。




