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第八話 霊獣[サソリ]使いミカ

 腰まで届く長い髪が顔の半分を隠し、全身は黒づくめ。

その雰囲気は、どこかだるそうで、それでいて油断ならない。

「あぁ……そこにいたんですか? 霊獣[サソリ]使いのミカさん」

「ひど〜い言い方」


 ミカはくすっと笑い、リクを見る。

ミカは、ふとダンさんに視線を落とした。

「……ねえ」

「あなたの肩にいるのって……」


一瞬、言葉を探すように間が空く。

「……霊獣[ダンゴムシ]?」


「そうだぞ! おいら霊獣ダンゴムシのダンドドシンだ!」

胸を張るダンさん。

ミカは、わずかに目を見開いた。


そして――すぐに笑顔に戻る。

「……へえ」

「本当に……いたのね」


「え? どうかしましたか?」 リクが首をかしげる。

「ううん」


ミカは視線を逸らし、くすっと笑う。

「なんでもないわ」

「……ゆっくり調べ物していってね」



「ミカさん、聞きたいことがあるんだが……」

エトは淡々と問いかけた。

「……コウモリの霊獣について、過去に記録はありますか?」

ミカはふっと視線を上げ、こめかみに指を当てる。

「……一般の記録では過去四百年以内では、確認されていないわね」


「でも――百五十年前の大戦の時、王族がコウモリの霊獣を使役して、敵陣に火薬を投下した記録はあるわ」


「王族の能力は、公開されないはずでは?」

リクが思わず口を挟む。

「ふふ……」


ミカは肩をすくめる。

「亡くなったあとにだけ……ね。生前は決して口外禁止。もし見てしまった者がいれば、即座に箝口令が敷かれる……それくらい重要なのよ」

(そうなんだ……)


 リクは、ハンナの言葉を思い出す。

――『ドラコが霊獣ミカエルだってこと、誰にも話さないで』


「その時の王族は、二百体のコウモリを同時に操っていたそうよ」

「……二百体」


リクは思わず息をのんだ。

「……すごいですね。そんなこと、すぐに出てくるなんて」


 エトはミカに親指を向ける。

「ミカさんはな、ここにある書物をほぼすべて記憶している。この記録保管庫と共に生きてる人だ」

「えっ……」

ミカはくすっと笑い、再び椅子にもたれかかった。


「ミカさん……十年ここで暮らしているからな」

「えっ……?」


「さっき、マタイさんが過去捕まえたスパイの話しただろ?……ミカさんが元スパイ」

「えっ!」

 

「そうなの〜元罪人なの〜」

顎に手を当てる。


ついリクはソソソと後さずりして、エトに耳元でささやく


「……いいですか? 元スパイの人、こんな重要な記録保管庫の中にいて……」


「ふふ……リク君、大丈夫よ」

「私もこの記録保管庫から出たらサソリの毒が脳に刺さるようになってるの〜」


「ここの記録保管庫は特殊な魔石で作られている。霊獣の能力をオートで発動するようになっているの」


「えっ……」

「ここの記録が漏洩する事はないわ」

自分のこめかみを示す。




ミカはふっと視線を上げる。

「……ダンドドシン。いいこと、教えてあげる」

「この王国サハラの聖書ね……改ざんされているの」

「えっ?」

思わずリクが声を上げる。

「もし、機会があれば……他国の聖書を読んでみなさい」

「きっと、書いてあることが違うわ」

「……なんで?」


「ふふ……私が言えるのはここまで」

 ミカはそう呟きながら、ほんの一瞬だけダンさんを見つめた。

 

 その目は、どこか不思議なほど優しくて。

まるで、昔から知っていた存在を見るようだった。


  


続く

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