第1話 相棒は最弱霊獣ダンゴムシ?
俺の名前は、リク=サクラ。十八歳。
この世界での最初の記憶は――“転生した”という事実だった。
たしか、あのとき……バイクを走らせていた。
朝の交差点。
信号が変わるその瞬間――突如、視界に飛び込んできた大型トラック。
衝撃の記憶のあとに、目覚めたのは、見知らぬ空だった。異世界。
「動物が好きなら、霊獣使いの枠に飛ばしてあげるわ」
そんな声を最後に、俺は“霊獣使いの家系”に転生していた。
リク=サクラ。
前世の名前は咲夜だった。似てるけど、もう別の人間だ。
咲夜は、終わった。
だからこそ、今度こそ――人生をやり直したい。
……リクとして、生きるために。
──
新しい世界は、まるで絵本のようだった。
レンガ造りの家々が並び、石畳の道ではマルシェが開かれている。
空には魔力の風が吹き、不死鳥や竜が悠々と飛んでいた。
この世界には、“霊獣”と呼ばれる魔力を持つ生き物が存在する。
そして成人の日になると、霊獣使いの適性を持つ者は王都に集められ、“契約の儀式”を受けるのが伝統だ。
父は水竜の使い。
母は隼の使い。
俺にも、きっと何か――強く、美しい霊獣が宿るはずだ。
そう信じて、胸を躍らせながら、俺は王都へ向かった。
───
神殿には、各地から集まった若き霊獣使いたちが並んでいた。
契約の儀式では、中央にある“黒い石碑”に手をかざす。
すると、その者にふさわしい霊獣が召喚される――それがこの世界のしきたり。
「聖竜フレア!」
「雷神鳥ライガ!」
「火竜ルキア!」
次々と名前が呼ばれるたび、場内は歓声に包まれる。
どの霊獣も力強く、美しく、まるで英雄の相棒そのものだった。
そして――俺の番が来た。
心臓がうるさく鳴る中、石碑に手をかざす。
(頼む……カッコいいの来い!)
石碑が、ふわりと光った。
静寂の中、召喚の声が響く。
「……ダンゴムシの霊獣。ダンドドシン!」
「…………は?」
神殿が、一瞬で凍りついた。
そして次の瞬間、俺の肩に――ズシッと何かが乗る。
「よっす! おいらダンドドシン! ダンさんって呼んでくれ!」
現れたのは、手のひらサイズの……ダンゴムシ。
甲殻はツヤツヤ黒光りしているが、どう見ても、あの虫だ。
会場がざわつく。
「虫……?」「いや霊獣らしいぜ」
「うわ、ハズレ引いたな」「俺だったら泣くわ……」
嘲笑が、突き刺さる。
俺は、こういう“笑われ方”に慣れていない。
悔しくて、恥ずかしくて、思わず目を伏せた。
だが、そのとき――
肩に丸まっていたダンさんが、ぽつりと呟いた。
「おいら……見た目で損するタイプ。でも、よろしくな!」
その声は、どこか温かくて。
まるで、誰よりも俺の気持ちをわかってくれているようだった。
───
こうして、俺と“最弱”の霊獣の旅が始まった。
異世界での人生――その幕開けは、静かで、丸っこくて、ほんのり湿り気のある冒険だった。
続く
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登場人物紹介
◎リク=サクラ 18歳 175cm
本作の主人公。
ダンゴムシの霊獣「ダンドドシン」と契約した青年。
前世の名前は咲夜。
“最弱”と呼ばれる霊獣と、自分の人生からもう逃げないと決意する
◎ダンさん(本名:ダンドドシン) 300歳
手のひらサイズのダンゴムシの霊獣。
土を豊かにする魔法が使える。
湿り気がないと死んでしまう
【出版社様へ】
ダンゴムシが世界を救う物語は、他に例のない唯一無二の作品です。
「弱くても、必ずできることがある」というテーマを、感動と冒険で描きます。
現時点で商業化の予定はございません。
どうぞお気軽にお問い合わせください。