表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

【5話】フェンリル


 ティオールと暮らし始めて一週間。

 

 レティスはすべての家事を、完璧にこなせるようになっていた。

 もう失敗なんてしない。

 

 そんなレティスを、ティオールは毎回褒めてくれた。

 それは悪い気分ではなかったが、同時に少し恥ずかしかった。不思議な気分だ。


 ただともかく、ここでの生活は悪いものではない。

 

 少なくとも漆黒の影にいたときの、殺伐としていた日々よりはずっといい。

 これからもずっとそうしていきたい、なんて思っている。



 その日の朝。

 レティスとティオールは、テーブルに向かい合って朝食を食べていた。


「今日は君に、新たな仕事を授けようと思う」


 ティオールの口元が楽しそうに上がった。


「……別にいいけど、なにをさせるつもりよ?」

「食材調達だ。森に生えているキノコを採ってきてほしい」

「悪いけど、キノコの種類には詳しくないの。間違えて毒キノコを採ってきちゃうかもしれないわ」

「それは大丈夫。心強い先生をつけるから」

「先生?」


 レティスが首をかしげると、同時。

 

 ドンドンドン! と、激しい音が出入り口のドアから聞こえてきた。

 力いっぱいに体当たりでもしているかのような、すいぶんとぶっきらぼうなノックだ。


「おっと、噂をすればちょうどきたようだな」


 ティオールが席から立ち上がる。

 ご機嫌そうに玄関まで歩いていき、ドアを開けた。

 

 瞬間、レティスは青色の瞳を大きく見開いた。


「嘘……フェンリルだわ」


 そこにいたのは、銀色の毛並みをもつ巨大な狼――フェンリルだった。

 

 フェンリルはとてつもない力を持っており、神獣とも言われている。

 さらには、めったに人前に姿を現さないこでも有名だ。


(……すさまじい雰囲気ね。圧倒的な力を持っているわ)


 こうしてフェンリルを見たのは初めてだ。

 

 並々ならぬ雰囲気を纏っている。

 神獣の名に恥じない、強大な力を秘めていた。

 

「コイツは俺のペット、フィードだ。この森の中で暮らしているから、キノコには詳しいよ。彼を連れていけば間違いはない」

「誰がペットだ。我と貴様の関係は契約で結ばれた由緒ある――」

「はいはい。難しい話はしなくていいよ。そんなことよりもさ、レティスに挨拶してきたらどうだ」

「……まったく。貴様というやつは」


 ため息をついたフィードは、ゆっくりと足を動かす。

 レティスのすぐ手前までやってきた。

 

「そなたがレティスだな。ティオールから話は聞いている。我はこのグドラの森に住まうフェンリル、フィードだ。よろしくな」

「……えぇ。こちらこそ」


 まだ事態を受け止めきれていないレティスは、困惑しながら返事をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ