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【2話】交換条件


「ここを出ていく気かい?」

「そうよ。この場所にとどまっている理由がないもの」

「次は決まっているのかい?」

「……それはまだよ。でもとりあえず、人が集まっているところを目指そうと思ってるわ」


 今のレティスには、金もなければ住むところもない。

 仕事と宿を早急に見つける必要があった。

 

 人が集まるところ場所に行けば、その二つはあるはずだ。

 

「ねぇ、この近くに街はある?」

「ここからそう離れていないところに、『バテラン』という小さな田舎町があるよ」

「ありがとう。そこを目指してみるわ。詳しい場所を教えて」

「……うーん、やめておいた方がいいんじゃないかな」

「なんでよ?」

「君、なにか訳アリなんだろ?」


 レティスの背中がびくんと跳ねる。


「君のわき腹の傷は、誰かにつけられたものだった。それと、靴にもいっぱい泥がついていた。察するに、誰かに殺されそうになってグドラの森まで逃げてきたんだろ?」


 ティオールの推察は大正解だ。

 実力が高いだけじゃなく、頭の方もかなりキレるらしい。


「そんな状況で顔を見られるのは、よくないんじゃないかな?」

「……」

 

 レティスはなにも言わないが、心の中では強く認めていた。

 人が大勢集まるところへ出ていくのは、確かにリスクが大きい。漆黒の影に情報が漏れてしまうかもしれない。


「そこで、だ。ひとつ提案がある」


 ティオールの口元が楽し気に上がった。

 

「この家で暮らすというのはどうだろう」

「…………はい?」


 その提案はあまりにも予想外。

 レティスは青色の瞳を大きく見開いた。


「俺は一人暮らしなんだけど、仕事が忙しくてね。家事と両立するのは結構大変なんだ。家事をしてくれる人を探していたんだよ」

「……つまりあんたは、私に住み込みで家事をしろっていうの?」

「その通り。衣食住は俺が保証しよう。その代わりに、君は家事をする。交換条件さ。働かざる者くうべからず、ってね」

「……わかった。その話を受けるわ」


 見知らぬ男と共同生活というのは抵抗があるが、森の中にあるこの家は身を隠すには最適の場所。

 ティオールの提案は悪い話ではなかった。

 

 多少の不満はあれど、ここは我慢すべきだろう。

 

「よかった。これからよろしくね、レティス」


 ティオールが差しだしてきた手を、レティスは少し不機嫌そうに握った。

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