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第12話「覗く者」

諸事情により今後の投稿頻度を不定期とさせて頂きます。

イズモに連れられやってきたのは同ビルの20階、その1番奥の部屋。廊下や扉など内装は至って普通のマンションなどと遜色ない作りだ。

アマグモビルは1階から5階をアマガサキグループの会社、6階から12階までをトレーニング・エリア含む階層、13階から25階までがアマガサキグループ直属部隊の社員寮となっている。表向きは大企業が所有するビルとして公表している。


「こんな奥まで部屋があるんですね」


3人がいる階層は辺り一帯が普通のマンションより豪華に作られている。エレベーターを降りたその時からレッドカーペットが引かれており、汚れを落とす共用のスペースまで完備している。


「隊員が増えるかもしれないから余分に作ったらしいが、そこまで隊員が増えるわけでも減るわけでもないから持て余してるのか現状だな」


辺りを見渡していたテルマにひとつの疑問が浮かぶ。


「イズモさん、皆さん綺麗好きなんですか?やけにどこも綺麗というか…」


「綺麗好きってわけではねぇな。任務で家にいること自体少ねぇから汚くなることの方がまずねぇ。ここは帰る拠点程度の認識だな」


説明を聞き納得したような表情を見せるテルマ。


「もはやどこでもいいって感じですね」


「割と大半はそんな感じな奴だな、これから会う奴を除いてな」


少し含まれた表現に疑問が浮かぶ二人。


「どういう人ですか?」


「アイツは喧しい奴でな、細かいとこ口うるさいし、引きこもり体質だからか俺ら戦闘部隊とは正反対な奴だな…ただし、能力はホンモノだ」


この場に来るまで明かされなかったアスカという人物、そしてその能力。フーマとテルマの考えは未だ疑問のみであった。


そして3人はある部屋の前まで来た。入口には2015と部屋番号が書かれいる。


「どんな能力なんですか?」


「それは本人に聞け、ここで言うのはちとはばかられるしな…おい!アスカ!俺だ!イズモだ!」


イズモは部屋に着くなりいきなり扉をドンドンとたたき出す。フーマとテルマが少し引き気味で半歩後ろに下がる。


「え…チャイム押したらいいんじゃ…」


「アイツを呼び出すにはこっちの方が確実だ。アイツはチャイムで出るタマじゃねぇ」


とイズモが叩き続けたその時、ドアノブがいきなり下がり始める。開きかけた扉の奥から深い溜息が聞こえる。


「…チャイムでも出ますよ。あなたが押さなければ」


扉が開き、部屋の中から前髪で目が隠れ、ジャージを着た人が出てきた。


「…あ…あなたが…アスカさん」


「…ええ、初めまして。私がアスカです。お待ちしてましたよ、フーマさん…テルマさん…」


挨拶を交わし、フーマとテルマは自己紹介がてら握手を交わす。


「イズモさん、僕たちのことって伝えてましたっけ?」


「いいや、伝えてねぇ。待ってたってことは…見てたな?」


その質問にアスカはもう一度溜息をつく。


「あんなの見ざるを得ないでしょう。電話がかかってくるとしたら任務しかないようにしてますからね、あなた以外であってほしいという思いで見たまでです」


「俺以外であってほしい理由がわからねぇが、とにかく部屋入らせてもらうぞ」


「家主が言う前にズカズカと入ってくるその神経が嫌なんですが…まぁお二人共どうぞ」




玄関でさえ男が横に3人並んでも余裕があるほどの広さを保っていたが、それ以上にリビングは広く、その広さを活用して壁には様々な本がびっしり収納された本棚や壁の一面を閉めるほどのモニターが三人の眼前に広がっていた。


「かなりの本と資料、それにモニターの数が多いですね…仕事用ですか?」


「えぇ、これらはいずれも僕の仕事道具ですね。あ、左手の奥にトイレがあるのでご自由にどうぞ。それと今お茶菓子をお出ししますのでその部屋で寛いでいてください」


「お構いなく」


「世話んなるぞ」


腰掛けようとしたイズモをアスカは手で遮り、すかさず静止させた。


「…あなたは直立不動でずっと立ちっぱでいてください」


「なんだとゴルァ!」


怒り心頭のイズモを横目にテルマはトイレに向かった。


「じゃあ話が始まる前に僕はトイレに…」





それから五分ほど経過し、テルマが部屋に入ったところでアスカがオフィスチェアに腰掛けた。


「じゃあテルマくんもトイレから帰ってきたことですし、自己紹介でもしますかね 。そこの人と同期のアスカって言います。天日隊ってところで隊長補佐してます。よろしく」


「「よろしくお願いします」」


「……それで、どこまで話した?」


「今ん所は命力だけだ。そっから先を頼んだ」


「わかりました…では改めて説明しましょうか」


(それだけしか説明していないのかコイツは……)


少しだけ呆れながらもアスカはパソコンを起動し、ファイルからとある資料を画面に映し出す。画面には3Dの人体が映っていた。


「命力とは、全生物の体の中に流れている生命エネルギーです。無機物でなければ基本的にどの生物にも量に差はあれど必ず宿っている力です」


説明と一緒に画面の資料も移り変わる。画面の中の人体が淡く光り出す。


「命力が持つ力は生命維持と身体能力の促進・補助です。私たちが生きる上で酸素や水などと同じくらい大切な物になります。しかし、これを認識できている人はあまり多くありません」


「今回、あなたたちの模擬試合で強さに決定的な差が出た原因はこの命力を扱っているかどうかです。あなたたちは何も着ずに素っ裸でマシンガンを持った軍隊に突っ込んでいくようなことをしたのです。当然、一般人がその行動を取れば負けるのは目に見えますよね?」


「確かに……」


「それほどの差があったとは……」


例えを聞いた二人は先程の試合を鮮明に思い出す。あの戦いにおいて確かな手応えを一切感じなかったこと、そして相手のタフさに先読みなど違和感が多く感じられた。


「そこで、命力を使えるようになるにはなんですが、本来は時間をかけて命力以外の全てを感じた後に命力を感じることで使えるようになります」


「命力以外の全て……?」


「ええ、血管・神経・骨・筋肉・皮膚・体毛などなど……ありとあらゆる自分にわかる情報を全て感知します。そうすると、一つだけ浮き彫りになる管が見えてきます。それが命力です」


「わからないものを探すより、分かるものを避けていけばわからないものが見える……ということですか」


「その通り…ですが、あなたたちの能力を見るに正攻法以外で引き出してもいい基準に達していると思います」


彼女の言葉を聞いたイズモとアスカは突然立ち上がり、フーマとテルマの背後に立った。

その行動に二人は困惑した表情を浮かべる。


「……な、何する気ですか?」


「今からあなたたちに私たちの命力を当てます。あなたたちに眠る命力を刺激して活性化させることで認識しやすくなります」


「但し気ぃつけろよ、さっきも言ったが命力は生命エネルギーだ。今からやるのはその蛇口を全力で開く行為だ。お前らが早く知覚しないと垂れ流し続けたせいで死ぬからな」


「「早く言ってくれ!!!」」


イズモの遅すぎる忠告に驚きを隠せない二人の反応を他所に後ろから淡い光が輝き出す。

フーマとテルマの体に向け手をかざし、光を二人に流し始める。


「どうだ?命力感じるか?」


命力を流し込まれた二人の体も徐々に光り出す。


「これが、命力……優しくて温かい光だ……」


「これを扱えられたら、さらに強くなれるのか…」


新たな感覚に高揚する二人にイズモとアスカはさらに強く命力を流した。


「これで君たちに眠る命力を起こせるはずだ、ここからはあまり時間をかけることはできない」


「すぐに終わらせる」


「死ぬ訳にはいかないからね」


イズモとアスカの二人が命力を流すことをやめた瞬間、フーマとテルマの内側から命力が溢れ出す。

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