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死に戻り姫は冷酷公爵の生贄に捧げられる  作者: ごろごろみかん。
【現在】リズ──十六歳

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52/73

信じる、ということ ⑷

「………」


ヴェートルが思案するように沈黙すると、その隣でべったり彼にくっついたビビアンが声を出した。その近さに胸がザワザワしたのはリズだ。

今すぐ離れて欲しいと思うし、なんならリズが自分で引き剥がしたいくらいだった。


「支援物資なら私が持ってきましてよ?お使いになられて結構ですわ」


「ビビアン嬢。それは助かるが具体的な量を教えてくれるか?」


アスベルトに尋ねられたビビアンは狼狽えながら彼を見た。ビビアンはアスベルトが苦手なようだ。


「さ、さぁ。詳しいことは分かりませんわ」


「……そう。食糧に加えて、医薬品も必要なんだが、それは?」


「医薬品なんて持ち込んでいるはずがありませんでしょ?でも、食事の質なら保証してよ。ビリー伯爵領は紅茶が有名ですの。美味しい茶葉をいくつも持ち込んできましたわ」


「…………………」


アスベルトの顔にはあからさまに【話にならない】と記されている。

それを見て、デストロイがアスベルトに言った。


「領主から土地を預かってる地主がここにはいるはずですよ。彼に協力を仰いでは」


「既に手紙を出しています。ですが、音沙汰がないところを見るに、何かしら想定外の出来事が起きているのでしょう」


ヴェートルが静かに答えた。

リズは彼らの話を聴きながら、状況の把握に務めた。


(魔術師が運んできた報告書を見るに、現在悪魔病の感染者は三桁を超えて、魔術師も七割程度が重軽傷問わず負傷者が出ている。加えてこの食糧不足。私が王都に戻ってまた駆けつけるでは、到底間に合わない……)


食糧は既に大半が底を尽き、当然医薬品なども不足してきている。


「明日、私は地主を訪ねるためにこの地を出立する予定でした」


「その足でか」


アスベルトが咎めるように言った。

ヴェートルは頷いて答える。さらりとしたアリスブルーの髪が揺れる。


「明日出発すれば、ぎりぎり間に合う計算です。おそらく敵の襲撃は予想されますが、最悪の事態は防げるかと」


「……お前、かなり魔力を消耗しているだろう。確かに高位魔術師のお前なら死にはしないだろうな。だけど、それは死以外の全ての可能性はあるということだ。生きていれば幸運、程度の重症を負いかねない」


「承知の上ですよ」


「……分かった。僕が向かう。この駐屯地で今、もっとも魔力があるのは僕だ。僕が伝書鳩の役割を果たすとしようじゃないか」


アスベルトはため息をついて言った。

リズ、デストロイ、ビビアンは魔力がない。

ビビアンとリズに至っては戦闘力にも乏しい。

アスベルトが地主に会いに行くのが一番勝率があるだろう。

その通りだ。

そこまで考えて、リズはハッとした。


(そうだ……。そうだわ、確か)


慌てて丸テーブルの卓上に広げられた地図を見る。リーズリー領しか記されていない地図は詳しく地名まで書かれていて、記憶を辿る手助けをした。


(確か……この近く、この近くに)


食い入るように地図を見ていたのに気がついたのだろう。対面に座るアスベルトがリズを呼んだ。


「リズレイン嬢?」


「……アスベルト殿下」


ゆっくりとリズは顔を上げた。


「殿下が行く必要はありません」


「……え?」


アスベルトが怪訝な顔をする。

リズはアスベルトではなく地図に視線を落とした。


「この砦のすぐ近くに、リーズリー家が所有する別荘があります。別荘、といっても名ばかりで、実際のところは有事の際に使用する備蓄が積まれています」


「!」


ここまでいえば、リズが何を考えているのかアスベルトにも分かったのだろう。

リズは顔を上げて真っ直ぐにアスベルトに言った。


「私は、リーズリー公爵家の娘リズレイン・リーズリーの権限で、この備蓄を解放します」


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