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第56話 暗根ヤミは、コミュ障で、友達が欲しい。

 ──ツルギとの最終戦前、迷宮内にて。


「僕の力が……失われる?」


 ヤミはツルギとガレンの下へと疾走する中で、ワンとトゥから伝えられた言葉に衝撃を受けた。


『えぇ、アンタの力は神にも届くし、いずれ神になってもおかしくない程のもの。だけど、それは今じゃないの』


 僕の状態は本来であれば、何十年もかけて肉体の研鑽を積んだ果て、【想いの力】に耐えられる肉体を作り。

 そして何度も使うことで、【想いの力】そのものに馴染んだ状態で至れる領域に、無理やりなっている状態なのだそう。


『急いだ代償は、力の喪失。0になるとは言わないが、今後はこれまでのような事象は起こせない出力にまで低下するだろう』


「そうですか……そうなると、皆さんとも」


『──あぁ、お別れになるね。君側から、僕らへの通信(パス)は、完全に途切れることになる』


 その言葉に、寂しくならないと言ったら嘘になる。だけど、文字の上からですら伝わってくる思いが言う。


「それじゃあ、また。いつか」

『あぁ』『えぇ』


 今生の別にはならないと、互いに信じている。

 それに、僕からあちらへの発信が無理なだけで、彼らは僕を見ることはできる。

 1人じゃない。それが分かっているだけで、大丈夫だ。


 走るヤミの目に、迷いはなかった。


 ◇◆◇◆◇


 ──病室、1週間後。


 様々な事情聴取も終わり、体の痛みもようやく取れた。ほとんど完治状態になり、病室で退屈しているヤミの所に、連絡が届いた。


『検査と聴取が終了し、面談が可能になった』


 そして今、自分の病室とは異なる病室の前にいた。警備の探索者にお辞儀をして、一呼吸。緊張の面持ちでノックをした。


「──どうぞ」


「失礼します」


 部屋の中からの返答をうけ、ヤミは扉を開いた。その部屋の中にいたのは。


「......こんにちは、ツルギさん」


「よう、ヤミ」


 ―—人間、赤武ツルギであった。


 何を言おうか、ずっと悩んでいた。でも、いざその場に立つと、出る言葉は一つだけだった。


「ヤミ、本当に悪かっ―—「ツルギさん」」


 謝罪の言葉を覆い隠すように、言葉を割り込ませる。

 謝るのはきっとお互いさまで。お互いに、互いの謝罪は求めていない。だから僕は、空気を読まずに言った。


「僕と、友達になってください」


 何もかも関係なく、ただそれだけを願って。

 ツルギはその言葉に浮かんだ涙を拭って、笑顔でうなずいた。


「こちらこそ」


 ◇◆◇◆◇


「―—これで準備おっけー、かな?」


 無線で動くカメラは、もう動かない。すでに懐かしく感じるLANケーブルを腰に取り付け、映像を確認する。


「音声も、映像も問題なし」


 これまで配信していたサイトと同じ見た目なのに、アカウント内の配信していた映像は消えていた。また、1から。


 最初の時と違うのは、応援してくれる人が増えたこと。自信が少しは付いたこと。

 そして最初と変わらないのは、


「こんにちは探索者の暗根ヤミです。友達が欲しくて、配信を始めました!」


 胸の中で激しく燃える、その願いだ。


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