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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
WAKE UP
9/50

SETTLEMENT

日本某所、森。

 森の中、巨大な何者かがただひたすら身を潜めている。

 それはまるでただそこにあるだけの山の如く、しかしその姿は明らかに山ではない。

 ただ巨大な人の形をしたそれが、眠ったように不動の姿で佇んでいる。

 ただ、静かに……


レイダーズ本部、発着場。

「それでは、健闘を祈る!」

「「「はい!」」」

 発着場には3機の輸送機が、レイダーや武器を積んで発進準備を完了させており、レイダーズの隊員たちが見送りに来ていた。

 彼らはこれから『ヒト型TE』との決着をつけるために飛び立つのだ。

「お前ら、絶対に生きて帰って来るんだぞ」

「はい!必ず生きて帰ってきますよ、ハンスさん」

「帰って絶対祝杯あげるんだから!」

「ハオはただ食べたいだけだろ?」

「えへへ〜」

「お前ら、もう行くぞ」

 勇がパイロットたちを急かす。

「あぁ、分かった」

「行ってきまーす!!」

「行ってきますね、ハンスさん」

 3機は滑走路を走り出し、大空へと羽ばたく。

 そしてそのまま雲を突き抜けて上昇し、あっという間に見えなくなった。

「どうか無事で……」

 研究室に1人、渚が祈りを呟いた。


日本、上空3000メートル地点。

 4人は、作戦開始地点に到着する前に既にレイダーに乗り込んでいた。

「渚博士、顔見せませんでしたね……」

「彼女も忙しいんだ。仕方ないさ」

「そうですよね……でも、ちょっと寂しいな。ただでさえ杉田さんも財団に帰っちゃった後だし……」

「そうだな……」

 そうやって話をしていると、前方に目的地が見えてきた。

「見えた、荷電粒子砲だ」

 目的地には予めチャージ済みの『超大型二連結式収束荷電粒子砲』が3機設置されていた。3機が発射された時に発生する衝撃派や電磁波を感知させて『ヒト型TE』を誘き出すためだ。

「荷電粒子砲の発射時間まで、10、9、8……」

 カウントダウンが始まり、3人の緊張が高まる。

「7、6、5、4、3、2、1……ゼロ!」

「総員、対ショック姿勢!」

 勇の指示と同時に機体が大きく揺れる。同時に激しい閃光が発生し、轟音と共に空気が震えた。

「目標地点に高エネルギー反応!」

「よしっ!」

 レーダー士の報告を聞き、3人が歓喜する。

 そして次の瞬間、レーダー士の声色に緊張が混じる。

「反応あり……目標が来ます!!」

「来たか……第一フェーズ終了!輸送機はハッチをオープンしろ!」

「了解!」

 輸送機の扉が開かれ、レイダー達は発進準備をする。

「レイダーズ、GO!!」

「「「GO!!」」」

 輸送機から34機のレイダーが勢いよく地上に向かって降下していく。

 そして遂に、決戦が始まった。


地上、日本某所、決戦地。

 そこには既に『ヒト型TE』が姿を現しており、設置されていた荷電粒子砲を破壊していた。

 勇は空からその姿を確認すると指示を出す。

「レイダー隊、攻撃を開始せよ!」

 レイダー達が次々と『ヒト型TE』目掛けて攻撃を繰り出す。

「くらえぇ!!」

 まずは遠距離部隊による一斉射撃が始まる。その火力は凄まじく、一瞬にして着弾点を中心に大きな爆発が発生した。

「全弾着弾を確認!!目標、無傷!!」

「知ってたけどよ!相変わらず化け物だぜ!!」

「焦るな、こんなものは挨拶代わりだ。本番は地上に降りてからだ」

「了解!」

 レイダーが地上に降りると、今度は散開して敵を翻弄しながら次々に中距離からの銃撃を始める。

「オラァッ!」

「うぉりゃああぁぁ!!」

「この野郎ォ!!」

 怒涛の連続攻撃を繰り出すが、80mの巨体を持つ『ヒト型TE』はそれを思わせない身軽な動きで全て回避した。

「っくっっ!!やっぱ速え!!だが!!」

 ブレアはブースターを激しく吹かして追う。ブレアのバスターレイダーのスピードは勇のグリフィンレイダーに次いで速い。

「負けるかよおおお!!!」

 そして遂に追いつき、養分に下げていたバスター・チェーンソーで斬りかかった。

 しかし、凄まじい回避速度により全て避けられてしまう。

「クソッ!あんなに的がデカいのに当たらねぇ!」

「落ち着け!まだまだ始まったばかりだ、慌てるな」

「あ、あぁ!分かってるよ!」

「ならば次は俺の出番だ!!」

『ヒト型TE』がブレアとの戦闘でスピードを緩めていた所にトードがやって来る。

「輸送機、装備を!!」

 トードが叫ぶと、輸送機から装備が投下され、それをキャッチすると即座に装着を始めた。

「多連鎖グレネードランチャー、ファイヤー!!続いてヘビーマシンガン、フルファイア!!」

 グレネードランチャーからは火炎弾が放たれ、『ヒト型TE』の周囲を取り囲むように展開される。完全に動きを奪われた『ヒト型TE』は弾丸の雨を浴びせられる。

「ガトリングガン、ファイア!!」

 更には両腕に装備された巨大な機関銃から大量の銃弾が浴びせられる。

「次はこれだぁ!!」

 最後に大型のキャノン砲が現れ、砲身が展開しエネルギーがチャージされる。

「喰らえェー!!」

 巨大な砲弾が撃ち出され、それが見事に直撃する。

「どうだ!?」

 煙が晴れていく。そこには、傷一つ付いていない『ヒト型TE』の姿があった。

「ッチィ!!」

「さっすが、まったく効いてないみたいだね」

 後方からハオのレイダーがやってくる。既にハオのレイダーは輸送機が投下した装備を装着していた。

「フルアーマーハオハオ参上!!全弾持ってけえぇぇぇ!!!!」

 ハオは背中から大量のミサイルを発射し、それに合わせてライフルも連射し、さらに巨大なアンカーまで打ち尽くした。

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 ハオはロケットのように猛進していき、そのまま『ヒト型TE』へ到達。

「もらったあぁぁぁぁぁ!!」

 そして、『ヒト型TE』の胸部に向かって右腕に装備したパイルバンカーを繰り出した。

「いっけえええええ!!」

 しかし、その一撃はなんと片手で弾かれてしまったのだ。

「嘘っ!?」

「離れろ、ハオ!!」

 勇が叫び、咄嵯にその場を離れる。

 その直後、『ヒト型TE』の頭部に無数に生えたムチの激しい鞭打が繰り出される。

「総員散開!!」

「「了解!」」

 勇の指示通り、散開する。

「くそっ!!」

「大丈夫か、ハオ」

「うん、平気」

「よし、まだ戦闘続行可能だな」

 3人はまた距離を取りながら再び敵に攻撃を試みる。

「ブレア!お前が囮になれ!」

「了解!任せろ!」

 勇が指示を出し、それにブレアが応える。

「ヘイヘーイ!こっちだデカブツ!!」

 ブレアは挑発するように大声をあげ、敵を引きつける。

『ヒト型TE』はブレアに釣られ、ムチによる集中攻撃を繰り出す。

「おっと!当たるかよそんなもん!!」

『ヒト型TE』が完全にブレアに集中している所に、背後を取った勇が一気に接近する。

「今度こそ貰ったぞ!!」

 振り下ろされたソーンマチェットの刃は『ヒト型TE』のムチを一発で全て切り倒し、そのまま背中をバッサリと斬り伏せた。

「よっしゃ!!」

「流石勇隊長だ!」

ハオ!!」

「いや、まだだ」

 背中を切られて大幅にダメージを受けた『ヒト型TE』だったが、それでもなお倒れない。

「しぶといな……」

「でなくては話にならない。行くぞ、お前ら!」

「「了解!!」」

 4人は攻撃を再開する。

 トードとハオは中距離から銃撃による猛攻で敵の動きを鈍らせ続ける。勇とブレアはその隙を突いて近距離からの斬撃を繰り出す。

「よし!このまま押し切るぞ!!」

「了解!」

「おう!」

 しかしその時、『ヒト型TE』の頭部が変形し、まるで大きな口を開けたような風貌になる。

「なっ!?」

「これはまさか!!」

「あの時のムカデ型と同じかっ!!」

 次の瞬間、口内からレーザーが放たれ、4人は急いで避ける。

「うおっ!?」

「くううっっっ!!」

「っぶねっ!!」

 全員がなんとかレーザーを避けきる。

「助かった……」

「危なかったな……」

「あんなの聞いてないよ!」

「だが、奴は墓穴を掘ったようだな。自ら弱点を作ったようなものだ」

「弱点って……う、嘘だろ!?」

「まさか、あのレーザー発射口に攻撃を!?」

「そういうことだ」

「マジかよ……じゃあどうやって近づけば……」

「それは心配無い。俺が奴を仕留める」

 勇はそう言うと、輸送機からありったけの武装を呼び出し、隊員たちに装備させる。

「コイツで奴を引き止めておいてくれ。その間に俺が攻撃する。もしレーザーが来るようなら構わず回避に専念しろ」

 勇は部下たちをその場に待機させ、単身で『ヒト型TE』に接近した。

「隊長!一人でなんて危険すぎるよ!」

「勇隊長!」

 ハオとトードは勇を制止しようとするが、勇は気にせず進む。

「グリフィン、お前は俺の翼だ……頼むぞ!V.N.L.S起動!!フルリンケージ!!」

 勇が叫ぶと、グリフィンレイダーのモニターに『Variable Nerve Link System』の文字が浮かび、装甲がスライドしてスラスターが展開する。

「行くぜ!!」

 勇はブースターを吹かし、加速して『ヒト型TE』に迫る。

『ヒト型TE』は勇の存在に気付き、すぐに反応するが既に遅い。

 勇の乗るグリフィンレイダーは凄まじい速度で飛び回り、あらゆる角度から攻撃を加えた。

「うおおおおぉ!!」

『ヒト型TE』も口内からレーザーを発射して応戦するも、グリフィンレイダーには当たらない。

「喰らえッ!!」

 勇は尚も両手に握るソーンマチェットを振り回す。『ヒト型TE』はそれを一身に避けるが、他のレイダーから繰り出される銃火器やミサイルによる攻撃により動きが阻害される。

「そこだッ!」

 遂に至近距離まで詰め寄り、ソーンマチェットを『ヒト型TE』のぽっかり空いた口に突っ込んだ。

「終わりだ!!」

 その瞬間、激しい閃光と共に爆発が起きる。爆風によって周囲の瓦礫が吹き飛ばされた。

「やったのか?」

 煙が晴れていく。そこには、頭部が吹き飛び、全身ボロボロになりながらも立ち尽くす『ヒト型TE』の姿があった。

「くっ……しぶといな!!」

「だが計算内だ……切り札は既に『揃っている』!!」

 勇が叫んだ直後、既にドッキングして『パルフェ・ガン』のチャージを済ませたハオとトードが後方から現れる。

「チェックメイトだ」

「うおおおお!!」

「波あぁぁぁ!!」

 パルフェ・ガンから放たれた荷電粒子の柱が『ヒト型TE』に命中、そのまま完全に消し炭になるまで放射し、凄まじい爆発を起こす。

「どうだ!!」

「や、やった……のか?」

 やがて爆煙が晴れていく。そこには、完全に原型を失い消し炭になった『ヒト型TE』の残骸があった。

「や……」

「やった……!!」

「私たち……勝ったんだ!!」

 3人は喜びの声をあげる。

「ああ、俺たちの勝利だ!!」

 勇が勝利宣言をする。

 こうして、タイタンレイダーズは『ヒト型TE』決戦に勝利し、見事撃破した。

 皆が喜びを噛み締める中、ブレアは拳を強く握って呟く。

「サム……俺たち、勝ったんだぜ。お前の仇は討ったからな……」


レイダーズ本部。

「諸君、今日は祝勝会を行う。準備が出来次第始めるからそれまでは自由にしていてくれ」

 勇が指示を出すと、各々が部屋を出ていく。

「ねぇ、勇隊長」

「ん?なんだハオ」

「私、ちょっと外の空気吸ってくる」

「分かった。あまり遠くへ行くんじゃないぞ」

 ハオは外に出ると、大きく深呼吸をした。

(ふぅー、気持ちいい風)

 すると、そこにトードが現れる。

「やぁ、ハオ」

「あれ、どうしたのトード」

「いや、俺も一緒に行こうと思ってね」

「そうなの。なら、2人で行こっか」

 2人は並んで歩き出す。

「ねぇハオ」

「何?」

「さっきの戦いだけどさ」

「うん」

「よく頑張ったな」

 トードは優しく微笑みながら言う。ハオもニッコリ笑いながら応える。

「ありがとうトード。でも、まだまだこれからだよ」

「そうだな。まだ始まったばかりだからな」

「うん、頑張ろうね」

「あぁ……もちろんさ」

 その後、2人は仲良く談笑しながら基地へと戻って行った。


 次の日、基地にトードの姿は無かった。

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