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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
TRAMPLE
48/50

GREATSTRATEGY(後編)

レイダーズ本部跡地。

『では、あれを破壊してみてはどうだろう』

 トールの言葉に、勇も同じく指す方へと注目する。そこにはおおよそ直径5〜8mほどの太さの『大樹』の根があり、退かす事が出来ればレイダー1機分が通れる穴になりそうであった。

「成程、やるべき事は読めた。あの根を取り除けられれば進入が可能だな」

『じゃあアレを切り落としてくれ。再生の可能性も否めないが、なんとか頼むぞ。俺は超兵器の回収をする』

「ふっ、骨が折れそうだな」

 勇は腕をまくり、ブレードを構えて『大樹』の方向へと機体を進める。それに、トールたちレイダー部隊が続く。

 真っ直ぐに目標へと機体を進める一同だが、そこにまたしてもTEの群れが立ちはだかり道を塞ぐ。

「邪魔はさせん!」

 勇は進路を塞いでいるTEにブレードを振り翳して薙ぎ払う。その剣捌きは止まる事を知らず、例えレーザー砲撃を受けようと防御フィールドを駆使して突っ切って行く。

 そして、レイダーアーマーを盾としながらも後ろからトールたちのレイダー部隊が追従し、取りこぼしを倒して行きながら目標を目指して行く。

『『大樹』の根本まで数メートル……本題はここからだ』

 目標の『大樹』の根本まで差し掛かったその時、地面に亀裂が発生しそこから何かが飛び出して一同に襲い来る。

『くっ!流石にこう上手く行かせてはくれないか!!』

 地面から伸びて来たのは、『大樹』の一部の細かい根であった。

 その根はまるで触手のようにトールたちの部隊のレイダーに纏わりつくと、ミシミシと音を立てて締め付けようとする。それを何とかレイダー部隊は振り解こうと奔走する。

『くっ……と、トール隊長!我々に構わず先に行ってください!!』

『しかし!!』

『気にしないでください!!ここはまだ動ける者たちで切り抜けますから!!』

『くっ……死んでくれるなよ、お前たち!!』

 まだ触手に捕まっていない隊員たちの説得に応じ、トールは再び進み始める。

 しかし、その進路をやはり新しい触手が阻む。

「この程度で我々を止められると思うなよッ」

 トールたちの部隊へと伸びて行く触手を、勇のレイダーアーマーが全て切り払う。

『援護助かる!!』

「礼はいい。それよりも、もうすぐで目標地点へ到着するぞ」

 そう言っているうちに、地下格納庫へ伸びる太い根へと辿り着く。しかし、そうしている間にも細かい根の触手は襲ってくる。

 しかし、作戦の遂行のためにレイダー部隊が前に出て触手を次々に排除して道を切り開いて行く。

『勇隊長!!トール隊長!!今のうちに!!』

『すまない!!』

 隊員たちの尽力により、勇とトールは太い根の元まで辿り着く。そして、その根に対して勇はブレードを振り真っ二つに切り裂く。

 切り裂かれた根の、切り離された部分が次第にチリとなり消えていく。反して、『大樹』から伸びている方の根はゆっくりと再生を始めていた。

「今だ!!早く中へ!!」

『了解した!!』

 トールは、先程まで根が張っていた地下格納庫に続く穴の中へと機体を進ませて進入する事に成功した。

 勇はそれを見送ると、再び『大樹』の根の方へ視線を配る。根は再生し切ると、しなやかにうごめいて、まるで目があって睨み付けるかのように根の先をレイダーアーマーへと向ける。

「さぁて、ここからだが……頼んだぞ」


レイダーズ仮設本部、格納庫。

 格納庫では、先程まで作業途中だったウイングレイダーが既に発進準備の段階まで差し掛かっていた。

「す、すげぇ……もう修理が終わっちまった……!!」

「当たり前ッス!!機械オタクの根性はダテじゃないッスから!!」

「そ、そっか……」

 達成感からか、和気藹々とした空気が次第に格納庫に漂い始める。

「じゃ、勿体ぶるのもなんだし早速出撃するぜ!」

 万全の状態となったウイングレイダーに、ブレアが飛び込んで行くように乗り込む。それを見た整備員たちも、格納庫のハッチを開いてせかせかと出撃の準備を始める。

「ブレアさん!!……こんな時に、自分たちは見送る事しか出来ないッス。でも、絶対戻って来るって信じてるッスよ!!」

『ったりめぇだ!!まだまだやりたい事だって沢山あるんだ、命だって惜しい!だから……地球が平和になるその日まで、ぜってぇくたばったりなんかしねぇかんな!!』

 そう言って、ブレアのウイングレイダーは整備員たちにジェスチャーサインを送る。

 そして、再び進路に向き直ってブースターを吹かし始める。

(カレン……お前のためにも、俺は絶対生き残る。それに、勇隊長……アンタにも、絶対生きててもらわなきゃなんねぇからな!!)

 ブレアは覚悟を決め、操縦桿を強く握り締める。

『ブレア・ヒューズ、再び出ます!!発進!!』

 そうして、ブレアを乗せた希望の翼は再度、戦場へと飛び立って行った。


 そんな彼の背中を、大勢が無言で見送る……しかしその様子を、ただただ遠目から無気力に眺める者の視線があった。

「ブレアさん……ひとりで、行ってしまいましたね……。私はもう……皆さんの役に立つ事はもうないのでしょうか……?」

 カレンはぽつりとそう呟くと、格納庫の扉を閉めてとぼとぼとした足取りで仮設基地の外を歩み始める。

 カレンにとって、レイダーズと共に戦った日々はとても充実感のあるものだった。しかし、不安定な情緒を安定させるための薬も次第に効かなくなったために、レイダーでの出撃を止められてしまっている。

 それはフランクリン会長による優しさであったが、カレンはどこか憤りを感じてしまっていたのだ。

 今はなんとか、ブレアの勇気付けによって立ち直れているものの、危機的状況の中で少しずつ気分も落ち込んで来てしまっていた。

(今ここに居たって……私なんて……)

 思い詰めながら歩いていると、遠くから慌ただしい声が聞こえてくる。

「TE群、進路変わらず!!どうなってんの!?」

「『ブルズ』、及びアルゴアーマー部隊、TE群の誘導ならず!!」

 その声は、簡易設置された管制室からの声だった。あまりの慌ただしさからか、扉を閉め忘れたままで作戦を指示していたようだ。

「クソッ!!導線が開けない……このままじゃ超兵器が使えないぞ!!」

「ヤツら、まるで何かに導かれるみたいにここへと進路を固定してやがる……」

(何かに……導かれる……)

 オペレーターの言葉に、思考を巡らせるカレン。だが、さほど深く考えずともその原因の思い当たる先は見えていた。

「もしかして……!」

 考えるより早く、足が動く。その向かう先に……おそらくその原因があると確信して。


レイダーズ仮設本部、研究室。

「…………」

 研究室では、渚がひとり静かに、椅子にかけて作戦の成功を祈っていた。

 しかし、その静寂を打ち壊すようにとてつもない音が部屋に響き渡る。

「!??」

 渚は驚いて振り向くと、そこには息を切らしたカレンが、ドアを蹴破って立っていた。

「ちょっと!!かっ、鍵かけてた筈なんだけど!?」

「しっ、失礼します!!」

 カレンは詰め寄ろうとした渚を押し退けると、研究室の奥に、脳波計測器を付けられて立て掛けられていた『来訪者』の本体の入った容器を持ち上げる。

「なっ、何やってるのあなた!?それはようやく手に入った貴重なサンプルなのよ!?」

「でも!!……もしかしたら、コイツが原因で、TEの群れがここを狙っているのかも……知れません」

「可能性だけで無茶な事をしないで!!人類存続のために、それは絶対に必要なのよ……!!」

「だからって、このまま黙って何もしないなんて、私には出来ません!!止めないでください!!」

「っ……!!」

 渚は勢いに飲まれて押し黙ってしまう。とにかく目の前の蛮行を阻止せねばと言葉を探すが、頭に過ぎるのは、今も戦場で命をかけて戦っている、愛する男の顔だけであった。

「……私は止めたわよ。もしこんな事をして何も無かったら、責任は取ってもらうからね」

「……感謝、いたします……ッ!!!」

 カレンは例を述べると、とてつもない勢いで容器を地面に叩きつける。しかし、重要なサンプルを保管する為に頑丈に作られた容器は壊れる事なく地を跳ねる。

「これ……でもッ!!!」

 今度は、ダメ押しにとでも言うように容器を踏みつける。

 その結果、無駄に強固に作られた義足による渾身の一撃は、地面に叩きつけても破壊されなかった容器を見事に粉砕する。

 そして、容器内から飛び出し空気中に晒されたサンプルは、奇妙な音を発しながらチリのように細かく崩れていき、そのまま跡形もなく消滅した。

「……これで、状況が変わっているかも知れません。管制室に行って確認しましょう」

「……」

 渚はただ一度、黙って首を縦に振った。


日本某所、レイダーズ仮設本部から数千メートル地点。

「くっ……面倒くせぇ!数も減らねぇし、こっちの誘導も全然効いちゃいねぇ!!いったいどうしろって……」

 全く変化の見せない過酷な戦況に苦戦を強いられるミラたちの部隊。だがその時、TE群の動きが急に変化し、見るからに鈍くなり始める。

「な……っ?いったい何がどうなってやがる……?」

 しかし、それを見た全員がこれを好機と捉えると、すかさず体制を整え始めた。

「な、何が起こってるか分かんねぇけど、とにかくチャンスだ!!今のうちにこのクソッタレどもを導線から切り離すぞ!!」

『了解!!』


同時刻。レイダーズ本部跡地。

「くっ……まだまだ!!」

 時を同じく、勇はトールが地下格納庫から『超大型二連結式収束荷電粒子砲』を見つけるまでの間、進入口を守るために地表に出現した根の触手を相手に奮闘していた。

 長い格闘の末に切り刻まれた根は、何度も何度も再生を繰り返し、最早その形は歪なものへと変貌していた。

 勇は尚もその触手を切り払うも、戦況に適応して形の変わった触手はその左腕を縛り上げ、そのままレイダーアーマーを投げ飛ばす。

「この程度で……ッ!」

 宙に舞い上がったレイダーアーマーは、すかさずワイヤーアームを射出して再び距離を詰める。しかし、再び勇の体に痛みが走り抜ける。

「ッぐうっ……」

 巻き取られるワイヤーのスピードに任せて、巨体が『大樹』の幹に突っ込んで行く。そして、レイダーアーマーは『大樹』の破片と共にそのまま地面へと落下してしまう。

「かハ……ッ……」

 なんとか起き上がろうとするも、手足が痺れ始め、酷い耳鳴りも聞こえてくる。

「チイッ……!こんな事で……情け無いとは思わんか……なあ、勇ッ!!」

 目の前に、次第に『大樹』の触手が集中して襲い来る。それがレイダーアーマーに巻き付くも、ブースターを目一杯吹かして飛び上がり、更に回転を加えて全て引きちぎる。

 そのまま空中へと飛び上がった勇は、真上から戦況を確認する。どうやら、触手を相手しているうちにTEの群れがこちらの方へと集中して来てしまっていたようであった。しかし、それは同時にTE群を導いていた何かが消えた事を示しているようでもあった。

「敵の動きが変わった……?いや、今は気にしている余裕はない。コイツで纏めて一掃する……!!」

 勇は空中で予備動作を行うと、そのまま勢いよく着地。それと同時に最終動作……レイダーアーマーの両アームを合わせる。

「エレクトリック……スパアアァァク!!」

 勇の叫びが轟くと、その場から広範囲へと雷撃が駆け抜けて行き、周囲に蔓延っていた触手やTEを次々と焼き尽くして行く。

 そして、粗方の敵を一掃し終えると、背部に備えられていた外付け式のバッテリーをパージする。先程の放電攻撃によって、既にレイダーアーマーのバッテリー残量は110%へと差し掛かっていた。

 だが……それでも敵の数はまだ相当数が生き残っている。

 渾身の一撃を放ち、その上疲労から余韻を飲まざるを得なくなった勇。しかし、その上空から『飛行型TE』が飛来してくる。

「しまっ!!油断を……」

『油断をしていると背中からバッサリだぞ』

 動きを止めた勇の背後から敵が接近して来たその時、ひび割れた地面からアトラスレイダーが飛び出すと、そのまま『飛行型TE』を一刀両断、真っ二つに斬り捌いた。

『待たせたな』

「トール……助かった」

『礼はいい。とにかく今はコイツを受け取れ』

 そう言ってトールは『超大型二連結式収束荷電粒子砲』の後部、大型ジェネレーター部をレイダーアーマーに接続する。

『砲身は任せておけ。だが……コイツでいったいどうするつもりだ?』

「例え誘導による導線の確保を行うにも、この数では限界がある。ならば……超兵器を配備出来るだけの導線をコイツで確保する」

『なるほどな。単純で良い』

 勇の提案にトールは頷くと、『超大型二連結式収束荷電粒子砲』の前部、砲身の部分を超兵器の設置点に群がるTE群へ向ける。

 そして、その後方からジェネレーター部を連結させ、エネルギーの充填を始める。

「発射3秒前……1……0!!『パルフェ・ガン』、シュートッ!!」

 エネルギーが充填され、トールが印した照準に従い、勇が引き金を引く。そして砲身から荷電粒子の光が柱となって放たれると、次々と射線上のTE群を焼き尽くして行く。

 そして、その後にはただ焼け焦げた平地のみがそこに残った。

『パルフェ……なんだ、それは?』

「いやなに、こっちの方が聞き慣れているもんでつい、な」

『Perfect gunか……大層な名を付けたものだな』

「まあ……そうだな」

(ついうっかり部下の付けた愛称が口に出たとは言えんか)

 勇は照れ隠しにはにかむ。だがその時、何かが外れるような、金属がズレるような大きな音が響き渡る。

 モニターの表示を見ると、レイダーアーマーのバッテリー残量が底を突いており、稼働不可を示すアラートが鳴っていた。

「もう限界か……まあいいだろう、ひと山は超えたのだから、問題ない」

 そう言って、レイダーアーマーからグリフィンレイダー改をパージする。その時、同時にV.N.L.S.が解除されると同時に、激しい頭痛と吐き気、そして寒気が襲い来る。

「っ……クッ、ハァっ……」

『お……だ……ぶか?』

 トールからの通信が聞こえてくるが、機械の不備などではなく、勇自身の聞き取れる音が籠り聞き取り辛くなり始める。

『おい!こうしている間にもまた敵が増え始める、油断は出来ないぞ!』

「あ、ああ……」

 なんとか息を整えると、ハッキリとは聞こえないが多少声を聞き取りやすくなる。それでもまだ、気分は悪くなる一方であった。それでも、なんとか順調に作戦が遂行される事に安堵する。

 しかし次の瞬間、周囲に地響きが鳴り渡る。そしてその震源は……勇たちのすぐ側、『大樹』から起こっていた。

『こ、今度はなんだ!?』

「く……っ……」

 揺れと共に、地面から再び触手が伸びてくる。しかしよく見れば、その触手は基地の機材などの機械類が絡み付いており、それが次第に寄り集まって形を形成し始める。

『あれは……なんだ……?』

「……レイダー……なのか?」

 そこに立っていたのは、『大樹』の根により形造られた偽りのレイダー……『マッドレイダー』だった。

「レイダーの偽物とは、いい度胸だな……良いだろう、俺が相手になるッ!!」

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