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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
TRAMPLE
47/50

GREATSTRATEGY(前編)

日本某所、レイダーズ仮設本部から数千メートル地点。

『こちらレッド1。レッドチーム、目標へ到達』

『こちらブルー1。あー、ブルーチームも到達』

『グリーンチームも同じく』

『……なあ、もう作戦決行してもよくねぇか?』

 数分前、レイダーズ本部基地にウィルソン財団率いる『ブルズ』と、軍とが協力して結成された戦闘部隊が合流した。そして、彼らは作戦を決行すべく作戦目標地点へと向かっていた。

 しかし……ブルーチームのリーダーと思われる女が、全部隊が集結していないこの状況で苦言を呈していた。

『気を急くな、ブルー1。まだ作戦に必要な人員が揃っていない』

『けどよぉ、アレを見てみなよ。たったひとりで戦ってやがるぜ』

 ブルー1のアルゴアーマーが指を指す先、そこには1機のレイダーアーマーがTEの群れと戦っていた。

『あんな死に急ぎ野郎、このままほっとくとマジに死ぬぜ?』

『命令違反だぞ、独断での行動は控えろ』

『いーや、アタシゃ決めたね!ってかもう遅ぇわ』

 レッド1が警告したのも束の間、ブルー1は目の前のTE群に対してグレネード弾を1発ポンとお見舞いしてしまう。

『なっ!?』

 そして、グレネード弾はそのまま群れの中心で派手に爆発を起こす。

『へっ、まるでバースデーのクラッカーだぜ!次はピニャータ割りと洒落込もうや!!』

『クソが!!誰の誕生日を祝うってんだよ!!』

 ブルー1の勝手な行動に剛を煮やしたレッド1たちは、チームを分散させて半ば無理やり作戦を決行する事になった。

 そして、ブルーチームが作戦に従い散開した隙を見計らい、ブルー1がレイダーアーマーにコンタクトを取る。

「あーあー、こちらブルー1。アンタもしぶとく生きてんだね」

「その声……ミラ少尉か」

「へっ、昇格してもう中尉だよ」

 そう、ブルー1としてブルーチームを率いていたリーダーの正体は、かつてレイダーズと共に戦っていたミラであった。

「撃たれた傷はもういいのか」

「問題ねぇよ。それよかアンタこそ釣り上げられた魚みてーにせかせかと息してんじゃねーの」

 彼女の言うように、勇の息遣いはモニターを介さずにスピーカーのみでの会話からでも分かるくらいには荒くなっていた。

「なぁに、こんなものは鍛錬の日々を思えばまだまださ。それよりも今は目の前の敵に集中すべきではないのか?」

「んな事ぁ分かってるよ!でもよ、そんな死にかけで戦われてもこっちの調子が狂うんだよ!!」

 ミラは物凄い剣幕で怒鳴るが、対して勇は荒い息のまま冷静に黙する。

 そして、ゆっくりと呼吸を整えると再び口を開いた。

「お前は以前に言ったな。いつか俺が死ぬと……だが、それが今だとしても俺は後悔しない。俺は常に何が最善かを考えた結果が今だからだ」

「お得意のヤマトダマシイか?そんなもん分かんねぇっつっただろうがよ!!」

「……ヤマトダマシイ……か。そんなもの、俺には最初から無いのさ」

 勇はそう言って笑うと、再びTEの群れへと向き直って刃を引き抜く。

『こ、こちらブルー4!TEの群れが分散しません!!』

『ブルー5同じく!!コイツら……一方を目指したままこっちの事なんか気にしちゃいねぇ!!』

 突然、ミラの元にチームから援護要請の通信が入る。それを聞いたミラは舌打ちをした後、諦めたようにため息を吐いた。

「あークソ!勝手にしろ!!言っとくけどアタシはテメーの骨なんか拾ってやんねぇかんな!!」

「ああ」

「その代わり……ゼッテェ無駄死にはすんなよ……!!」

「……ああ!」

 2人はそう言葉を交わすと、お互いに違う方向へと進み出す。1人はTEの群れへ。もう1人は、かつて基地のあった場所へと……。

「しかし……アイツ、たった1人でどうしようってんだ……?」


 ミラたち本隊がTE群と対峙している間に、勇は『大樹』目掛けて機体を全速前進させていた。というのも……。

(積載の関係上、『超大型二連結式収束荷電粒子砲』を運ぶ事は不可能だった。しかし、裏を返せばヤツの根元まで漕ぎ着ければ使える……特に、レイダーアーマーなら単機で充分に出力が足りる。そして恐らく……保管されているのは、『大樹』から手前、約50m付近。厳重管理が必要な超兵器を管理するために使用される地下格納庫なら、地上よりもダメージは少ないだろう。どちらにせよ早急に回収が必要になるな……)

 そう思いながら『大樹』を目指していると、道中に再びTEの群れを捉える。

 レイダーアーマーへと3体の『飛行型TE』が目標を付けると、一斉に光の拡散弾を放ち始める。

「無駄だ!」

 無数の光の弾は、レイダーアーマーの防御フィールドによって全て弾かれる。それでも尚猛攻を続ける『飛行型TE』へと、レイダーアーマーを飛び上がらせて斬りかかる。

 しかし……。

「っ……くっ!!こんな時に……」

 全身にピリつく痛みが走り、渾身の斬撃は狙いが外れて片羽根を切断する程度の傷のみに止まってしまう。

 3体の内1体はそのまま墜落するも、動きを止めてしまったレイダーアーマーへと再び攻撃が集中し始める。

「くっ……」

 防御フィールドでどうにか防ぐ事は出来ているものの、激しい猛攻を受け身動きが取れなくなってしまう。

 次第に、防御フィールド展開によってバッテリーが200%を切る……。

「舐めるな……!!」

 耐えかねた勇は牽制用の低威力ミサイルを放つ。ミサイルは宙を飛び交うと、空中で拡散弾と接触して逃げる隙を与える。

「コイツは仕返しだ!」

 勇はブレードを構えながら1体の『飛行型TE』に接近すると、その途中でもう1体に向けて脚部からミサイルを発射、そのまま2体同時に撃破する。

「次!!」

 撃破した敵が塵になって行くのを確認し、今度は先程倒し損ねて地へと落ちた方の敵へと目を向ける。

 片羽根を損傷した残りの1体は、まだ残っている羽根を自切した後に、損傷した部分を再生変異させて形態を変えていた。

 その両羽根のあった箇所からは、もはや羽根とも言えない、翼竜の翼とも鎌とも取れる物が生えて来ていた。

「やはり姿を変えたか」

 その『飛行型TE』だったものは、鎌状の脚を大振りにダバダバとバタつかせながらレイダーアーマーへと向かって行く。

 だが、それだけなら不調である今の勇1人でも対応出来るが、周りにはまだ大勢のTEが押し寄せて来ていた。

「コイツは厳しいな……無駄死にしない約束は守れないかも知らんな」

 その時一瞬、勇の脳裏に作戦会議の時に見た映像が蘇る。

「あの2人も……こんな景色の中で果てたのだろうか」

 そんな言葉が、無意識に口から溢れ落ちる。

 窮地の中、向かって来る巨大な敵に構える勇。しかし次の瞬間……爆発が巻き起こり、敵の鋭利な前脚のひとつが吹き飛んで行く。

『どうだ。まだ本部の連中に引けを取らないだろう』

 そこに現れたのは、色以外はハオとトードが乗っていたアトラスレイダーと同じ見た目の機体だった。

「何者だ」

『俺はトール。トール・FA・レイだ。何者と言うか、まあ確かに俺らは1度だけしか居合わせた事がないからな』

「1度だけ?」

『ああ。グリフィンレイダーのデモンストレーションの時にな』

 それを聞き勇は、通りで覚えていない訳だと納得する。しかしそれと同時に、あの頃を思い出して頼もしさを感じる。

『とにかく、この先のザコは俺たちに任せてくれ』

「ああ、助かる」

 トールに礼を言うと同時に、後方から再び複数のバスターレイダーが乱入し次々と『歩兵TE』を撃破して行く。

 対峙する敵の数が少なくなり、勇も戦闘体制を整えて『鎌付きTE』へと再び目標を付ける。

「さて、お膳立てには全力で応えねばな」

 レイダーアーマーがブレードを構えると、それに立ち向かうように『鎌付きTE』が立ち上がる。

 そして、『鎌付きTE』が鋭い鎌状の脚でレイダーアーマーへと駆けて行く。

「無謀にも来るか……考えも無しに、ご苦労な事だ」

 『鎌付きTE』が鎌を振り下ろす。勇はそれをブレードで防ぎ、左腕のアームを射出しようと構える。しかし……そのアームは反対側の鎌によって妨害され、射出されずに跳ね返る。

「ふっ、まだまだだ」

 勇は慌てずに体制を立て直すと、再び勢いを付けてブレードを振り回した。

 ブレードは勢い良く相手の鎌に斬りかかると、その鎌を粉々に粉砕して行く。

 鎌を粉砕された『鎌付きTE』は、反撃のために残りの鎌を使って斬りかかろうと試みるも、その度にブレードによって粉砕されて行き、遂には身体を支えられなくなり大きく転倒して動けなくなってしまう。

「再生に必要なエネルギーが残っていないな。残念だったな」

 身動きが出来ずに手も足も出なくなった『鎌付きTE』に対し、勇は慈悲を与える隙も見せずに素早く細切れに切り裂いて撃破する。

 倒されて塵になった『鎌付きTE』を、もはや見向きもせずに再び勇は進路に向き直る。

『終わったようだな』

「いや、今からだ」

『ああ、そうだな』

 勇とトールが話している間に、『ブルズ』と軍の合同チームが合流し始める。

『イエローチーム、現着』

『同じくパープルチームも現着だ。後は任せろ、ヒーロー』

「了解した」

 勇はこの場を本隊に任せ、トールたちの部隊と共に目的地へと機体を向かわせた。


レイダーズ仮設本部、格納庫。

 その頃格納庫では、先程ブレアとカレンが帰還し、ボロボロになったレイダーの修理が行われていた。

「頼む、急いでくれ!俺は隊長ん所に行かなきゃならないんだ!!」

 ブレアは整備員に混じりながら、傷付いたウイングレイダーを共に整備する。

 そこに、見覚えのある人物がやってくる。

「大丈夫ッス!この整備、急ピッチで済ませる方法があるッス!」

「花恵ちゃん!!」

 現れたのは、しばらく休暇でレイダーズを離れていた、整備員の花恵だった。

 花恵は、手に持っていた図面を見せながら説明をする。

「ウイングレイダーとストームレイダーには共通のパーツが多く使われている、所謂コンパチ仕様ッス。ウイングレイダーの損傷具合を見れば、ストームレイダーのパーツを少し拝借するだけでかなり時短出来るッス!」

「け、けどよぉ……そうなったらストームレイダーは……」

「それは……仕方ないッス。ストームレイダーの修復は資材の不足もあって現状は不可能ッス。それに……パイロット、カレンさんは……」

 それを聞きブレアは思い出す。そもそもカレンを連れ戻しに出撃した理由が、彼女を前線から引き離す為だった事を。

「……だったら、頼む。手伝ってくれ」

「勿論ッスよ。そのために戻って来たんスから!!」

 花恵は自信満々にそう言うと、何処からかありったけの工具を取り出す。よく見てみると、彼女の腰には工具がこれでもかと詰まったポーチが備わっていた。

「お、おう……すっげぇ頼もしいな……」

「ほらほらブレアさん!突っ立ってないでさっさと修理するッスよ!!」

「あっ、ちょちょっ……押さなくってもわーってるって!!」


同時刻。レイダーズ本部跡地。

 本部跡地では、勇たちの即席チームが先行して『大樹』の目の前まで辿り着いていた。

 しかし、『大樹』の周辺には未だ大群を成したTEがそこかしこを徘徊していた。

『それで?次の作戦はどうする?』

「地下に格納されている超兵器を掘り起こす」

『どうやって?』

「さあ」

『さあって』

 あまりにもあっさりと無策の事実を述べられたので、トールは呆気に取られる。しかしそんな事にも構わず勇はニヤリと笑む。

「なぁに、場当たりは慣れている」

『全く、レイダーズの隊長だった男が、それでよく生きてこられたものだな』

「そう褒めるな。とにかく地下格納庫への進入経路をどうにか確保しなくてはな。正規の進入口は『大樹』に阻まれて使えない……」

『なら地面をぶち抜くのはどうだ。シンプルでいいじゃないか』

「いや、瓦礫による損傷の影響を考慮し、破損はなるべく避けたい」

『そうか……』

 そう言われてトールは黙って辺りを見回す。すると、彼は『大樹』の根本……否、根そのものへ注目をする。

『では、あれを破壊してみてはどうだろう』

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