STANDUP
日本某所。レイダーズ仮設基地。
数時間前、レイダーズ本部は完全に崩壊した。
上空から現れた巨大な飛来物体により、大量のTE群を引き連れてやって来たのだ。
そして現在、TEの襲撃から逃れられた輸送機が、脱出したレイダーズの集合地点へと集まって来ていた。
そしてその集合地点には、シリウス商会が用意した倉庫型仮設基地が建っており、逃げ切ったレイダーズの人員は輸送機を迎えていた。しかし……。
「おい……!ハオとトードは……!!アイツらは戻って来てねぇのかよ!?」
輸送機の積載を考慮し別動していたハオとトードのアトラスレイダーは、いくら待っていても合流する事は無かった。
その事に困惑と苛立ちを抑え切れないブレアは、合流して間もない輸送機に乗っていた人員に掴みかかるような勢いで問い質す。
「おい、どうなんだ!!2人は……」
「アトラスレイダーは……!あの2人は、我々をTEから逃す為に尽力してくれたんだ……!逃げ遅れた、我々の責任だ……」
「っ……!!」
ブレアは行き場のない拳を下ろして黙り込む。彼にも、不測の事態に逃げ遅れてしまった彼らに何も責任がない事は分かっていた。
だが、それを簡単に受け入れられないブレアは機体が降ろしてある簡易格納庫へと向き直り走り出す。
「おいブレア!どうするつもりだ!」
ブレアが走り過ぎるのを見たハンスが、肩を掴んで彼を止める。
「決まってんだろ!!2人を探すんだよ!!」
「無茶なことをするな!!2人の捜索は今ドローンを出してやっている!お前は……少し落ち着いて、次また何か起こった時に備えて休め」
「っ……」
ハンスはもう片方の肩に優しく手を置き、ブレアを宥めて何処かへと去って行く。
残されたブレアは、何も出来ない事に無力さを感じただ歯噛みする他無かった。
レイダーズ仮設基地、会議室。
組み立てられた倉庫の横。嫌に狭苦しそうな小さな小屋が建てられており、その小屋を会議室とし、数名の人員がそこへ集められて会議が行われていた。
「現在、我々はとても厳しい状況にあります。それ故にメンタルに余裕があると見れる者に集まって頂きました」
渚はプロジェクターの電源を入れ、教壇とも言い難いありふれた事務机を前に会議を始めた。
「桂木博士、顔色がよろしくないのでは?」
「えっ?」
渚は指摘されはっとするが、直様向き直って話を続ける。
「いや……多分飛行機酔いよ。それより、まずはこちらの映像をご覧ください」
渚がプロジェクターの映像を切り替えると、そこにはかつて『レイダーズ本部基地だったもの』の様子が映し出される。
「なっ……なんだアレは!」
「あの、落下物が……ここまで巨大になるのか……」
そこには、まるで巨木の如く堂々と伸び、花弁の如く広がった巨大な複数の板を付けた塔が、無数のTEを引き連れて建っている様子が映し出されていた。
「こちらはドローンによって撮影されたものです。現在はドローンを全て破壊されてリアルタイムの映像を提供出来ませんが……少なくとも、こちらが落下物の現状と見て差し支えないでしょう」
「むう……これではあの塔と言うか、なんだろうか……『大樹』のようなものに近付くのは難しいですな」
軍の関係者が顎に手を当て唸ると、周囲の者も釣られるように難しく考え込む。
「『大樹』……そうね、今からアレを『大樹』と仮称します。確かに、現状の戦力で『大樹』を叩くのは難しい。しかしアレをこのままにしておく事は出来ません」
ドローンの映像が切り替わり、別の角度から撮られたものが映し出される。崩れた基地の残骸、逃げ遅れて墜落した輸送機、そして……彼らが1番見たくなかった悲惨な『結果』がそこにはあった。
「アトラスレイダー……そんな……」
「……このままでは、我々も彼らの後を追う事になります……ですが、彼らの生命を無駄にしない為に尽力しなければなりません。そこで」
『我々シリウス商会と!』
『ウィルソン財団、そして』
『軍が、今こそ一丸とならねばならないと言う事だ』
ハンスが横から入り、手前にノートパソコンを置いてモニターを見せる。そこには、衛星通信を繋いでフランクリン、ミレーナ、矢尾の3人が映し出されていた。
「それでは本作戦、『大樹戦』の説明をいたします」
渚はプロジェクターの画像を、基地の現在の状況を記した図面へと切り替える。
「この作戦の最終目標は『大樹』の破壊です。恐らく、これをこのままにしておけばTEは増殖……例え積載しているTEが尽きたとしても、根が伸び続ければ被害は拡大するでしょう」
「しっ、しかし……アレまで辿り着くには敵が多いのでは……」
『それについては問題ありませんわ』
職員の質問に、ミレーナが答える。
『『大樹』までの進路は、我々が別働隊を使って確保する手筈になってますわ。そのためにわたくしは、逮捕した『カウベル』の中から更生の見込みのある人員を再編成し『ブルズ』を結成しましたわ』
「なんと!」
「『カウベル』の残党……信用出来るのですか……?」
『ええ、それはもう。わたくし自ら顔合わせして面接を行いましたので』
したたかに、画面の向こうからミレーナが笑う。それに続き、矢尾が作戦の説明を続ける。
『そして、我々軍が開発したアルゴアーマーを『ブルズ』と連携させる。それを中心とし、20機編成の8チームに分けてTE群を分断させる手筈だ』
淡々と矢尾が説明すると、今度はフランクリンが割って入るように説明をする。
『それから!彼らには我々シリウス商会から各種武装を提供させていただく所存です!勿論、弾切れの心配をする必要はありません!何故なら、シリウス商会はサポート万全ですからねぇ!!』
パソコンのスピーカーから、フランクリンの地震に満ちた意気揚々とした笑い声が響く。
フランクリンの勢いに流されポカーンとする一同に、渚が咳払いをして説明を続ける。
「……ここまでを作戦のフェーズ1とし、続いてTEを分断して開けた道を通し、超兵器を使って『大樹』を全滅する……これを最終目標、フェーズ2とします」
「超兵器!?あるのですか!?」
職員の驚きの声に、ミレーナが答える。
『ええ、ありますわ。かつてお母様が、様々な裏組織との裏取り引きで流していたものを、『ブルズ』を使ってある程度回収する事が出来たのでそれを使う手筈にしてあります』
「で、ですがそうなると、条約的に問題になるのでは?」
続いて、矢尾が質問に答える。
『問題ない。政府からは今回の作戦にあたって、フランクリン会長と共に交渉を行った。本来なら未検閲の超兵器を無闇に使うのは褒められた行為ではないのだが、骨折り損にはならなかったよ』
『いやっはっはっ、政府には私の友達が多いですからねぇ!まあ、嫌な顔はされましたけどねぇ!』
フランクリンの笑い声に再び呆気に取られる一同。渚も同様に、眉を顰めながら作戦の説明を締める。
「……以上が、今作戦の手筈となります。これから質疑応答を行った後、作戦の振り分けを行いますので、各自メモ等の準備を行うように」
それから、しばらく作戦会議は続いた。
レイダーズ仮設基地、格納庫。
会議室の横、他と同様に組み立て式となる大きなコンテナ。レイダーズはそこを機体格納庫として活用していた。
ブレアはそこで、荷下ろしをしている職員たちを眺めながら途方に暮れていた。
(あの時、俺もあいつらと一緒にレイダーで退避していたら、2人は逃げ切れたのかな……あの時無理にでも出撃出来ていれば、助けられたのか……?いや、そんな気はしねぇ……しねぇけど、納得出来ねぇよ)
やるせ無さに打ちひしがれていると、ふとあるものが目に入る。
(……ん?あれは……カレン?)
ブレアが見たのは、どこかぼうっとして、まるで抜け殻のように意思が希薄に感じられる様子のカレンの姿だった。
(なんだ?調子でも悪いのか?)
心配になったブレアは、先程まで打ちひしがれていた事も忘れてカレンの側まで歩み寄る。
「どうした?気分でも悪いか?」
「あっ……ブレアさん」
振り向いたカレンの顔は、まるで深いぬかるみに沈んでいるかのように疲れに飲まれたようであり、ブレアは一瞬戸惑うも即座に言葉をかける。
「疲れてるのか?まあこんなんじゃ無理もねえよな……」
「いえ……これはその、そう言うのではなくて……」
目を背けて言葉を濁すカレン。しかし、その様子にブレアは余計に心配になってしまう。
「だったらどうしたんだよ?そんな辛そうな顔で何も無いなんて事は無いだろ?」
「……」
一拍、唾を飲んで気持ちを整え、カレンはゆっくり口を開いて不調の理由をブレアに告げた。
「最近、薬の効きが悪くなってる気がするんです。だからと言って、あんまり量を増やすのも良くないのは分かるのですが……。それで、その……だから、この倦怠感は、ただの副作用ですから大丈夫……」
「カレン……」
カレンのその言葉を聞き、ブレアは少しマズいと感じ内心反省する。おそらく、カレンにとって精神安定剤を服用している事には触れられたくはないことだろうと知っていたからだ。
「そんな申し訳なさそうな顔をしないでください。私は病んでるんです……その事実は、最初から変わりませんから」
「……それでも!辛そうな顔は見てられねぇよ……!」
ブレアはカレンの目を真っ直ぐ見てそう言うが、それはカレンにとってはあまり気分の良い言葉ではなかったようで、彼の真剣な心の内が伝わる事はなかった。
「……ごめんなさい。でも、わたくしはそうやって無責任に心配をされるのは……嫌です」
そう言ってカレンはふらつきながら格納庫を去る。ブレアはただ、バツの悪い顔でその背中を黙って見送るだけだった。
(すみません、ブレアさん……あなたが私の事を思ってるのは分かってます……でも、薬に頼っても頼らなくても辛い今の自分を、誰かに任せたくは、ありません……)
カレンは、自らのそんな重い心情をブレアに背負わせないようにあえて突き放していた。その胸の内は知られないまま、彼女はブレアの視界から消えて行った。
「カレン……俺は、こんな時に何もしてやれないのかよ……」
ブレアが俯き歯噛みしたその時、基地内に警報が鳴り響く。
「な、なんだ!?」
『緊急事態発生!各員は至急、会議室へと急行せよ。繰り返す、各員は……』
日本某所、レイダーズ仮設本部から数千メートル地点。
地響きが鳴り響く。それは一度や二度に渡らず、もはや数え切れない程に鳴り響いた。
一歩、また一歩と、その足音は確実に彼らの側まで近付いてくる。
TEの群れの足音が……地獄の門の蝶番が、着実に希望を踏み潰さんとただひたすらに鳴り響く……。
レイダーズ仮設本部、会議室。
数分前、仮設本部内にけたたましく警報が鳴り響き、各人員が狭い会議室に集められていた。
「みんな集まったわね。緊急事態よ」
渚はそう言うと、プロジェクターの映像を投映する。
そこには、TEの群れが一方を目指して行進している姿が映し出されていた。
「な、なんだよこれ……」
「これは先程飛ばしたドローンによって撮影されたものです。TE群の進行方向は……ここよ」
渚が真剣な表情で指を真下に向けて言うと、静寂の中で生唾を飲む音が鳴る。
「つまり……せっかく逃げたってのにまた追われなきゃなんねぇってのかよ」
「奴ら、なんでここが分かったんだ……!」
一同が響めく中、勇は渋い顔で冷静に質問を返す。
「何か策はあるのか?このまま手をこまねいているだけでは無いだろう?」
「ええ、もちろん。合流予定の財団の『ブルズ』と協力し、この事態を打開します」
「えと、その『ブルズ』ってのは……?」
「それについては時間が惜しいので後で説明します」
「お、おいおい」
ブレアの疑問に、渚はスパッと遇らう。その事に誰も言及する事なく、今度は他の職員が質問をする。
「で、だ。その『ブルズ』ってのはいつこっちに来るんだ?」
「早くて30分……少なくとも50分以内には来ると思われます」
「……それは、ヤツらがここに来るまでの時間に間に合うのですか?」
「間に合わないでしょうね」
それを聞き場が響めき出す。しかし、渚は真っ直ぐに目を向けて言葉を返した。
「ですので、その間は我々の現在の戦力を持って時間を稼ぎます。現段階での戦力はあまり期待は出来ませんが、少なくともここで足掻かなければ後がない……そう言う状況なのです」
その言葉を聞き、この場にいる皆が覚悟を決める。
レイダーズ仮設本部、格納庫。
組み立て式の格納庫では、作戦に備えて2機のレイダーとレイダーアーマーの整備が急ピッチで行われていた。
「いいかブレア。まずは整備性と機動性の高いアトラスレイダーを先行させ、俺たちはその間にレイダーアーマーを万全に整備する。攻撃力の高いレイダーアーマーなら、そこらのTEくらいは余裕で倒せる筈だ」
「あ、あぁ……」
杉田がブレアに作戦の詳細を説明するが、ブレアはどこか身が入っていないような様子だった。
「おいどうした?こんな状況になって困惑すんのも無理ないが、お前が働いてくれないとこっちも命がかかってんだぜ?」
「わ、分かってるよんな事はよっ!大丈夫だから任せとけって!!」
「本当かぁ?」
うすら髭の生えた顎を掻いて頭を傾ける杉田だが、大方その浮かない顔の要因について見当がついていた。
「……まあなんだ、ままならねぇってのはもどかしいよな」
「な、なんすか急に?」
「あの2人、とうとう助からなかったみてぇだな」
杉田のその言葉を聞き、ブレアはどこか最初からそう気付いていたように目を伏せて黙って俯いた。
「……自分が出撃出来てれば、って、そう思うか?」
「……いや。あの状況じゃ、俺が出てもむしろやられていた」
「そうか。……勇の事、責めてるか?」
「そんな事……そういう訳じゃ、ねぇんだけど」
ブレアは硬く拳を握る。本心を押さえつけようと耐えようとするが、それでも抑えられずに口から溢れ出してくる。
「隊長の……イサミの言ってる事は正しい事を言ってんのは分かってるよ……。でも……でもっ!ハオもトードも、まだ17だったんだ……!」
震える拳を抑えようと反対の手を重ねるが、その手も震えが止まらない。
「納得したくても……飲み込めってんだろうけどよ……そんな事」
「そんな事ぁしなくていい」
杉田のその言葉を聞き、はっとしてブレアは顔を上げる。
「いいんだ、無理に飲み込もうとしなくても。サムの時だってそうだ、お前は結局まだ納得してねぇんだろ?」
「そ、そう……だけど、よぉ」
「ならそれでいいんじゃねぇか?例え勇の言い分が正しかったとしても、お前のどっかにシコリが残ったまんまじゃ気持ち悪いだろうがよ」
「杉田さん……」
ブレアは、先程とは違い穏やかな顔で杉田の言葉に耳を傾ける。しかし、今度は杉田の方が怒りの表情を見せる。
「と言うかよォ!勇も勇で言い方ってモンがあるだろ!!なんだあの仏頂面は!!」
「おっ、おいおい!杉田さんが怒ってどうすんだよ!」
「だからな、帰ったらアイツと腹割って話してみろよな。心配してたぞ、勇のヤツも」
「……はいっ」
返事をするブレアの声は微かに震えていたが、それでもハッキリと、真っ直ぐな声で答えた。
その時、ブレアは横目に出撃の準備を進めるカレンの姿を見る。杉田もそれに気が付いて、ブレアの背中を押すように促す。
「まだウイングレイダーは調整が済んでねぇ。今のうちに声かけてやりな」
「……ありがとうございます」
ブレアは礼を言って、カレンの元へと駆け寄って声をかける。振り向いたカレンの表情は、先程と比べて比較的明るくなってはいたものの、万全と言える様子ではなかった。
「ブレアさん……」
「カレン、気分は……良さそうとは言えないようだな」
「……」
カレンは何とか笑おうと口角を上げるも、やはり不恰好な笑みになってしまい、つい顔を背けてしまった。
「ごめんなさい……もう、行きます」
「……なあ、帰ったら……お互いちゃんと話しよう。カレンが……前に俺に言ってくれたみたいにさ」
「……」
カレンは軽く振り向いてブレアの方を見たが、黙って軽い会釈をした後にそのまま機体の方へと向かって行った。
ブレアはその背中を見送ると、自分の機体の方へと歩みを向けるが、その時こちらへと駆け寄る人物に気が付く。
「あっれ、ジュウォンさん?」
「す、すみません!カレンさんはもう行ってしまわれましたか!?」
「え?行った……けど、いったいどうして……」
そう言っている間に、格納庫のシャッターが上がってカレンのストームレイダーが出撃し、猛スピードで走り出し姿が遠のいて行ってしまう。
「……間に合いませんでしたか」
「な、なあジュウォンさんよ……いったいこりゃどう言うこったよ」
「カレンさんは本作戦から外されている筈なんです。精神科医との定期メンタルケアの診断で……これ以上は戦いを続けられないと」
「は!?それって……」
『ここからは私が話そう』
不意に、どこからか男の声が聞こえてくる。その声の正体は、ジュウォンの握った通信機から聞こえてくるフランクリン会長のものだった。
「なっ!?あ、アンタ、フランクリン会長……だよな?いったいカレンに何が?」
ブレアは、普段の明るく豪快な振る舞いとは違う重い声で話すフランクリンに驚きつつも、どうにか話を聞き返す。
『彼女はねぇ、例の『来訪者』従来の日から重度の精神疾患に見舞われていてねぇ……暫くは薬とカウンセリングで様子を見ていたんだけど、今処方している薬じゃあ、もう……』
「そんな!!じゃあなにか!?アンタらはカレンの病気を分かってて今まで戦わせてたってのか!?」
『それが彼女の望みだったから……家族を殺され何も無くなってしまった彼女の、唯一の生きる希望だったから……私には、止められなかった。これは商会ではなく、私自身の責任だ。すまない、言い訳のしょうもないよ』
通信機の向こうで、誰に見られるでもなく頭を下げるフランクリン。その言葉を聞いたブレアは彼の誠意を信じつつも、やはり完全には納得する事が出来ない。
「だからって……そんなのはアンタらの理屈だ!それに、俺に謝られたって困るぜ……」
『ああ、そうだね……だから、キミにお願いしたい。カレンを連れ戻して来て欲しい。これは、キミだから頼めるお願いなんだ』
「っ……!」
フランクリンの頼みを聞いたブレアは、一拍思考の時間を置くと静かに疑問を投げかけた。
「……アンタは、どうして俺じゃなきゃダメだって思うんです?」
『キミの事を話している時の彼女がね……とても楽しそうだったから。それじゃあ理由にならないかな』
「……あーもう、会長さんには敵わねーな!!」
ブレアは参ったと言う風に、照れ隠しにわざとらしく返答する。
『ありがとう、本当に……』
「まあこっちは頼まれなくたって行くつもりだったんだがよ。んじゃ、早速行ってくるわ」
そう言ってレイダーアーマーの方へと歩みを進めようとするが、そこに杉田が割って入る。
「おいブレア!まだレイダーアーマーの整備は終わってないぞ!!」
「はぁ?じゃあせめてウイングレイダーだけでも出せねぇのかよ?」
「出せるにゃ出せるが、ありゃレイダーアーマーに搭載してこそ本領を発揮する機体だぞ!危険すぎる!!」
どうにか止めようとする杉田だったが、それでもブレアの気は変わらない。
「今俺が出なきゃ!!……俺は、カレンを助けたいんだ」
そう真剣に訴える彼の姿を見て、杉田は参ったとと言う風にため息を吐いた。
「は〜あ……ったく、しょうがねぇな!いいか、レイダーアーマーの整備はその大きさ故にまだ時間がかかる。だから整備が完了し次第、オートでそっちに届ける。いいか、その間に死んでくれるなよ?」
「そっちこそ、俺が死ぬと思ってんすか?」
「へっ、違げえねぇ」
余裕の笑みを見せるブレアを見て、杉田も釣られて笑って見せる。そして、整備を終えたウイングレイダーに乗り込むブレアの背中をこの場の全員が見送った。
「さぁ〜て、そんじゃ一丁人助けと洒落込みますかっと!」
ブレアは意気揚々とウイングレイダーの操縦桿を握る。そして、ブレアは自らに課せられた仕事を成すために機体を出撃させた。
背面のブースターを吹かすと、ブレード状になっている脚部が鉄板の床を滑って前進し、ゆっくりと格納庫の出口へと向かう。
その時、モニターの隅に勇の姿が映る。発進するブレアを見送るため、わざわざ出向いて来たようだ。
「……」
「……」
彼を見送る勇を、ブレアもまた目を向けて発進シークエンスに入る。
「じゃあ、行ってくるぜ」
ウイングレイダーのブースターが変形すると、空中航行用の翼が展開され、スラスターに火が灯る。
「ブレア・ヒューズ、ウイングレイダー……出る!!」




