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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
TRAMPLE
42/50

ESCAPE

レイダーズ本部、発着場。

 約2時間前、管制室のコンピューターが捉えた驚愕の映像により、現在基地の中はほぼパニックに近い状況にあった。

 その原因は、ヨーロッパに降着するとされていたTE群が進路を変え、ここレイダーズ本部基地の真上に落ちてくるという予測計算であった。

「急げ!ありったけの荷物を積むんだ!!」

 発着場では、杉田の指揮の元で職員たちが次々とブルーバードに荷物を搬入している。

「無理ですよ杉田さん!もう間に合わないっす!!」

「無茶でもやるんだよ!!少なくとも主力のレイダーくらいは入れるんだ!!」

 そう急かしている間にも、上空からはハッキリと燃え盛る黒い塊が真上まで迫って来ている。

「クソッ……まさか基地を放棄する日が来るなんてよ……」

「とにかく、今は急いでどうにかここを離れましょう!我々まで巻き込まれれば元も子も無いですから……!」

「ああ、分かってら!」

 ブレアたちレイダーのパイロットも、レイダーの武装類やパーツなどを運び込んでいる。しかし……。

「おい!もう入らないのかよ!?」

「仕方ねぇだろ!これ以上詰め込めるスペースなんてねぇよ!!」

 ブルーバードの格納庫内は既に積載可能な重量まで達しており、オーバーホール中のレイダーだけでなく、現行で稼働しているレイダーを全て格納させる事もままならない状況に陥っていた。

「おいおい!どうにかして積み込む事出来ないのか!」

 焦るブレアに、荷物の管理をしていたジュウォンが駆け寄って説明する。

「無理ですよ!もし全てのレイダーを格納出来るまでに荷物を減らしたとしても、食糧や必需品の数が足りなくなります!そうなれば、基地を失った我々は生活が困難になって反撃の機会を失ってしまいます……!」

「そんな……!でも、マジにどうにもなんねぇのかよ!?」

「なりません。ブルーバードでない輸送機も、新体制で増えた人員を乗せるので精一杯なんです。それに……問題は、レイダーアーマーを積んだ事による積載量の計算の狂いです。それを下ろせば全ての問題は解決しますが、残念ながら切り札を失う事になりかねません……」

「……くっ、それじゃあもうこれ以上手はねぇって事かよ……!」

 悔しさに拳を固く握るブレア。そこに、ハオとトードが荷物から手を離して声をかけてくる。

「大丈夫!私たちは乗らないから!」

「は!?の、残るって……どう言う事だよ!?」

「そのままの意味だ」

「だから!それがどう言う事なんだよ!?」

 取り乱すブレアの肩に、トードが手を置いて意図を説明する。

「乗せられないのなら乗せなきゃ良いんだ。レイダー単体でなら、輸送機に乗せなくても自力で移動すれば問題が無いからな」

「だ、だったら俺もレイダーで出るぜ!それならより荷物を乗せられ……」

「ダメだ!脱出のために主力レイダーを2機も稼働させれば、移動だけで燃料を余計に食うんだ……だから、レイダーに乗って逃げるのは、俺たちだけで充分だ」

「そう言うこと!じゃ、あとでついてくから先に行っててね!」

「お、おい!!」

 ブレアの呼びかけに応える事もなく、そう言って2人はアトラスレイダーが待機している場所へと駆けて行った。

「な、なんでだよ……クソッ」

 拳を震わせるブレアの手を、カレンが握って引き寄せる。

「ブレアさん、行きましょう。もう限界が近いです」

「けどよぉ!」

「大丈夫です……絶対、大丈夫ですから……だから、わたくし達も生きなきゃ……」

「カレン……」

 ブレアの手を握るカレンの手は、とても冷たく、微かに震えている。不安なのは自分だけではない、皆同じなのだと気付いたブレアは、勇気を振り絞ってその手を握り返した。

「……行こう。そして、生きてまたこの地球ほしのために戦おう」

「……はい!」


そして、脱出の準備が全て整った。

『ブルーバード……テイクオフ!!』

 機長のアナウンスが機内に響く。そして、ブルーバードのジェットから炎が吹き上がると、巨大な機体はゆっくりと、徐々にスピードを上げながら前進を始める。

 その横で、職員を乗せた輸送機もちらほらと離陸を始めていた。

 そして……ブルーバードは、大量の荷物と人員をその巨体に乗せて空へと飛び立った。

「トード……ハオ……」

 ブレアは窓から基地の滑走路を見る。そこには、2人が乗っているアトラスレイダーが飛び立つために滑走路を直進しているのが見えた。

「おい……」

 ブルーバードに乗っていた職員が声を掛けて指を指す。こそには、先程まで上空に見えていた黒い塊が、大きな破片を撒き散らしながら目の前まで迫っていた。

 その破片は辺り一面に散り散りと落ちていき、それを輸送機はなんとか避けようと奔走している。だが……。

『くっ、破片が多い……!』

『なんとして避けろ!!仲間が乗って……』

 避けきれず……破片を受けて空中で散っていく輸送機。1機……2機……と、どうしても避けられなかった輸送機が少数機出てしまう。

「あぁ……!!」

「……」

 悲しみ、怒り、そしてどうしようもなさが機内に漂う。しかし、それでも彼らにはただ見ている事しか出来なかった。


「ああもう!破片が多い!!」

「落ち着けハオ!冷静に見据えれば問題ない!」

 上空に迫る巨大な物体が振り落とす破片を避けながら、ハオはアトラスレイダーを走らせる。

 やがて上空のそれは、身にまとう炎の熱が機体内に感じられる程に迫ってくる。

「あっつ!!」

「ヤバい!このままだと……」

『総員、衝撃に備えろ!!』

 その時、ブルーバードからの通信が入る。

「おいおい無茶言ってくれる!!」

「あーもう!対ショック!!」

 2人は衝撃に備え身を低く構える。同じく、それぞれ輸送機に乗っていた職員たちも衝撃に備える。

 そしてその直後……。

「っづぁっ!!」

「うわあっ!!」

 その、巨大な塊が基地の真上へと墜落し、大量の瓦礫を吹き飛ばしながら盛大に基地を破壊する。

 そして、その衝撃波によって空中を飛行する輸送機はバランスを崩してフラつき、地上を走っていたアトラスレイダーも吹き飛ばされて転がって行く。

『っッ……おい!ハオ!トード!!大丈夫か!!』

 ブレアからの通信が入る。それを聞いたハオは期待をなんとか立たせる。吹き飛ばされたアトラスレイダーは、派手に転がって行ったにも関わらず、その頑丈さから問題なく体制を立て直す事が出来た。

「も、無問題!それよりそっちは?」

『あ、ああ……』

 ハオはモニターを確認する。先程の衝撃波による各輸送機の墜落は無かったようで2人は安心するが、残存する仲間の無事を確認してすぐ、墜落したそれに向き直る。

「あれ……TE、だよね?」

「じゃなきゃ……なんだってんだよ……」

 2人の目の前に聳え立つその異様な物体は、おおよそ70mはあろう巨大な黒い塊であり、それは今もミシミシと音を立てながら表面の黒い焼けた破片のようなものをボロボロと剥がれ落としている。

「……とにかく、今はそんなものの相手をしている暇は無いんだ。一旦退避して体制を……」

 トードがそう言おうとしたその時、足元のアスファルトがひび割れて行き、何かがそこから飛び出して来た。

「ひゃっ!!」

「何だ!!」

 アトラスレイダーはそれを避けて、正体を確認する。それは、まるで根のように太くうねった物体であったが、その大きさは一言に木の根と言うにはあまりにも巨大だった。

「なっ何これ!?」

「くっ、ヤツの一部か!?ともかく構ってる暇は……!!」

 しかし、それは再び後ろ側からも出現する。そして、それに気を取られているうちにも次々と根は至る所から出現してくる。

「チッ!囲まれたら厄介だぞ!飛べ、ハオ!!」

「了解っ!!」

 ハオはアトラスレイダーのブースターを吹かして飛び上がろうと試みる。しかしその時、複数の閃光がアトラスレイダーへと集中して飛んでくる。

「わっ!!」

 ハオは何とか右側の盾を展開して防ぐ事が出来たものの、盾はその熱量によって融解してしまう。

「そんな……盾が……」

「油断するな!敵を視認するんだ!!」

 目の前に立つ、閃光を放った影から逃れるために木の根の裏へと隠れ、2人はモニターの映像を確認する。すると、閃光の放たれた先に立っていたのは……3体の『ヒト型TE』だったのだ。

「嘘!?なんでこんな所に『ヒト型TE』が……!?」

「それより……見ろ、あの落下物を……」

 トードが指を指した先……基地に落下した物体の様子が、明らかに変化していた。

「さっきよりも……あからさまにデカくなってやがる……!!」

 それは、先程まで覆っていた黒い外殻が全て剥がれ落ち、中に存在していた物体がまるで水を吸ったスポンジのように膨らんで行き、何倍にもその身を巨大にして行く。

『おいハオ!トード!!早く逃げろ!!こっちからでもやべぇのが見える!!』

「それは……分かってるけど……」

 一瞬困惑するハオ。それでも何とか気を取り直して逃げようと試みるも、その目の前に再びTEが立ち塞がる。

「なっ!?どう言う事だ!!さっきまであんな所に居なかった筈なのに……!!」

 予想外の事態にトードも戸惑いを見せる。だが、ハオはその事態についておおよその検討が付いていた。

「多分……アレだよアレ」

「アレって何だよ!」

「ほら!渚博士の言ってたなんとかってヤツ!」

「……まさかヤツら、休眠状態で10ぶわの1に収縮して、破片の中に潜んでたってのか……?」

「そうそれ!!」

 ハオは後部座席に振り返り指を指す。それを邪魔そうにトードは退かす。

「それが分かった所で結局は事態が最悪って事だろ!?いったいどうする……」

『どうした!!いったい何が……』

 突然、ブレアからの通信が途切れる。

「ちょっ、ブレア!?」

 2人は焦って空の向こうを確認する。すると、ブルーバードは既に豆粒のようなのサイズに見えるほど遠くまで飛び去っていた。

「大丈夫だ、通信圏外に行っただけだ。むしろ、奴らから無事に離れることが出来た証拠だ」

「なら、良かったけど……」

 そして、再びTEの群れの中心に聳え立つ、未だその全体を巨大化させて行く物体の方へと目を向ける。

「アレと……アイツらをどうにかしないとな……」

「うん。まだ逃げられてない輸送機に乗ってる人たちもいるもんね……!」


日本某所上空、ブルーバード機内。

「クソっ、何がどうなってんだよ!!」

 ブレアは、ブルーバードのコックピットに侵入して、備え付けられていた通信機からハオとトードに通信を入れていた。しかし、それも通信圏外まで飛び進んでしまったために強制的に遮断されてしまった。

 ブレアは、もどかしさと焦りをマイクにぶつけ、勢いよく扉を跳ね飛ばすように開いて格納庫へと走り出した。

「ブレア、どうする気だ」

 走り出すブレアに、通路の壁にもたれかかっていた勇が声をかける。

「2人を助けるんだよ!!でなきゃどうなるか分かんねぇじゃねぇかよ!!」

「そりゃ無理だ!」

 通路の向こう、格納庫の方向から杉田がやって来てブレアを止める。

「どうしてっすか!!」

「あん時急いで荷物を詰め込んだせいでハッチの前が詰まってレイダーを出せねぇんだよ!!」

「じゃあなんすか!!このままあの2人を見殺しにして、俺らはのこのこと逃げ出せって言うんすか!!」

「ブレア!」

 杉田に掴み掛かるように叫びブレアの肩を、勇が掴んで止める。

「だって、だってよ……!」

「俺たちは……何としても犠牲を最小限に生きなきゃならない。お前がここで無茶を通して出たとして、ここに残る皆に大きな損失を与える事になる」

「じゃあアイツらは損失じゃねぇってのかよ!!」

 今度は勇の胸倉を掴んで突っかかるブレア。その事に、勇は微動だにせずただ黙ってそれを見返す。

「……アンタは……そうやってまた仲間を切り捨てんのかよ……!」

「……」

 勇の胸倉を掴む手が、怒りから小刻みに震える。その震える手と、彼の刺すような眼差しに、その瞳の中に滲む感情が今沸き起こったものではない事を勇は悟る。

「……もし、お前が俺を憎むならそれで構わない。俺は……それでも俺は隊長として、小を生かすために大勢を危険には晒せない」

「っ……!」

 ブレアは捨てるように掴んだ手を離すと、目を合わせる事なく何処かへと去って行く。

「……アイツ、本当はサムの事完全に飲み込めちゃいなかったんだなぁ」

「いいんだ、杉田さん。アイツはこれまでよく堪えてきたんだよ……それを分かって、ずっと俺に着いて来てたんだ。あの日、俺の手を取った時も……」


レイダーズ本部跡地。

 謎の物体の落下地点では、ハオとトードが勢力を上げて、突如大量に出現したTE群に対して逃げ遅れた輸送機の防衛に当たっていた。

『うおおおぉ!!逃げ切れええぇぇぇぇ!!!!』

 1機の輸送機に、『飛行型TE』が光線を放ちながら追ってくる。その猛攻に、輸送機は必死に機を揺らしながら回避を試み逃げる。

 その時、『飛行型TE』の腹部にまるで流星のような重たい衝撃が走り、その体躯は崩れながら落ちて行く。

「いいぞハオ。冷静に狙いが付けれている」

「冷静っても、これでも焦ってんだけどね……!」

 先程の衝撃の正体……その先、地上には、ハオとトードの乗るアトラスレイダーが『速射型超高威力電磁砲』を非変形状態で放っていた。アトラスレイダーは、変形の手間を省くため瓦礫を背にしている。

『助かった!ありがとう!!』

 輸送機の機長は例を言うと、速度を上げて輸送機を飛ばす。

「トード!輸送機はあと何機!?」

「今のが最後の輸送機だ。だが……今度は俺たちが逃げる版、だがな……」

 トードはレーダーで敵機影を確認する。その数は確認出来るだけでも数十機はあり、とてもじゃ無いがたった1機のレイダーで立ち向かうには無謀な数であった。更に……。

「ここを切り抜けるにも、さっきので『サンダーパルフェガン』は残り2発……その上、砲身が温まり切っていて排熱まで撃てないと来たもんだ」

「……じゃあ、どうすんの?」

「オーバーヒート覚悟で次弾を撃つか……いや、得策じゃないな。幸いこの機体は1、2回踏まれた所で潰れるようなヤワな作りじゃあない」

「えと……つまり?」

「一か八かで突っ切る」

 それを聞きハオは目を丸くする。それは、その無謀な作戦だったからではない。彼らしくない、あまりにも愚直で真っ直ぐな作戦だったからであった。

「……それ、マジなの?」

「ああ、他に策なんてないからな」

「Oh no……」

 流石のハオも、この状況でその言葉を聞いて両の手で顔を覆う。

「どうしたハオ、その程度で怖気付いて。俺たちの旅はいつだって命懸けだったろう?」

「いくら!なんでも!!……まあトードが言うならそれっきゃないんだろうけどもね!!」

 そう言って諦めたように、覚悟を決めてハオは操縦桿を握り直す。そして、トードがスイッチを操作すると、アトラスレイダーの背面ブースターが展開して火が入る。

「アトラスレイダー……」

「GO!!」

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