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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
TRAMPLE
40/50

RAIDERARMER

4年前。アメリカ軍、某所。

「義父さん……どうして核ミサイルなんか使ったんだ!!」

「地球をヤツらから守るためだ。その為に最善な手段だと我々が判断した」

「だからって……何も核を使うだなんて……母さんだって、あそこに居たかもしれないんだぞ!!」

「何を言っとる……お前も40だろう、いい歳をして、母親離れをしないか」

「そう言う話をしているんじゃないだろ!!」

「……銃を向けるのか。上官であるこの私に」

「アンタはそんな言い方しか出来ないのかよ……息子の目の前でさえ!!」

「血の繋がっていないキサマの事を、私は息子だと思った事など無い!」

「ふ……っ、ふざけるなァァァ!!」


現在。ハワイ某所、ビーチ。

「ん……っ」

 強い日差しの下で、勇は目を覚ました。

「ちょっと、寝苦しそうにしてたけど大丈夫?」

 横で、水着姿の渚がビーチベッドの上で本を読んでいた。

「いやなに、少し悪い夢を見ていただけさ」

「私たちはバカンスに来てるのよ。そう言う辛気臭いのは無しにしてよね。……ほら、あなたもあの子たちを見習って見たらどうかしら?」

 渚が指を指す先、浜辺で遊ぶ者たちの群れが、派手に水飛沫を上げながらはしゃいでいた。

「ほらトード、こっちこっち!!」

「お、おい!あんまり急かすなよ……」

「うふふ、お二人とも楽しそうですねっ」

「は〜ぁ、まるでガキみたいに浮かれてんな」

「アンナもはしゃげばいいじゃない」

 それは、まるで平和なバカンスの様子。しかし、彼らがハワイに来た目的はただバカンスを楽しむ為だけでは無かった。

 事の発端は、数日前に遡る。


数日前。レイダーズ本部、渚の研究室。

『と言う事で、あなた方にはハワイへと向かって行って欲しいのですわ』

 研究室では、渚がミレーナと通信を繋げて会議をしていた。

「成程……確かに海中、それも深海ともなれば、レイダーアーマーの運用試験に最適ね」

『ええ。それに、アレはもう母の居ないウィルソン財団にとっては必要の無い存在ですもの。人類の為にも早急に『処分』するに越した事はありませんわ』

「そうね。じゃあ、あとはこちらで準備を進めるわ。任せて」

『よろしくお願い致しますわ』

 にこやかな笑顔を最後に、ミレーナは通信を終了させた。

 そして現在、彼らはハワイへとブルーバードを飛ばし今に至る。


現在。ハワイ某所、深海。

「ったくよぉ〜……なんで俺だけひとりでダイビングしなきゃならねぇんだよぉ〜」

 コックピットの中でひとり、ブレアがグチをこぼす。それに通信でハンスが釘を刺してくる。

『仕方ないだろ、これもちゃんとしたミッションなんだぜ?』

「つってもよォ!他のみんなは浜辺でキャッキャウフフやってんだろうがよ!?俺だって思いっきりワイハーを満喫してぇんだよォォォ!!」

 狭く暗い空間で嘆きの雄叫びを上げるブレア。あまりの醜態に見ていられなくなったハンスはなんとかブレアを宥めようと試みる。

『まあまあ……俺だってお前を指揮する為にこうやってオペレーターを買って出てるんだぜ?お互い苦労するよな』

『アネゴ、肌綺麗だよなぁ〜。男の体とは思えねぇ』

『日々の努力の積み重ねだよ。アンナも元が良いんだから、ちゃんと手入れすれば将来大モテするよ?』

「いやいや誤魔化せねぇって。後ろで思いっきりなんか聞こえてるから」

 通信機器から漏れ出てくる楽しそうな声に、ブレアは逆に冷静になりツッコミに転じる。

「あーもう!こうなったらゼッテェ作戦成功させて俺もバカンス満喫してやるかんな!!」

 暗い閉所に、ただひとりだけの叫び声が響く……。


同時刻。

 深い、深い闇の中。

 それは、まるで鯨のように海の中を悠々と我が者顔で泳いでいる。だが、それは鯨よりも遥かに大きい……。

 そして、それは目を光らせながらヒレで海水を掻き分け、何かを察知して『目標』へと進んで行くのだ……。


ハワイ某所、ビーチ。

「……そろそろかしら」

 先程まで本を読んでいた渚が、テーブルの上のレシーバーを手に取ってハンスに通信を繋げる。

「どう?デカい魚は釣れたかしら?」

『ああ。ヤツめ、見事に超音波発生装置に引っかかりやがった。目標地点までだいたい1000m前後……へっ、優雅に泳いでやがるぜ』

「そう。じゃあ早速、人魚姫には泡になってもらいましょう」

『オッケーだ』

 そう言ってハンスは通信を切る。

「始まるか」

「ええ」

 勇と渚の2人は遠く海の向こうを見据える。彼らの視線の先、恐らく今回の作戦が行われる予定地点を……。

「俺が出迎えられれば良かったのだがな」

「ダメよ。今後はあなたをレイダーに乗せる気は無いわ」

「……はぁ。俺にV.N.L.S.を使わせないためか」

 勇が軽く頭の後ろを掻きながらため息を吐く。彼は渚が自分の身体を心配している事には当に気が付いていた。

 そしてそれに、渚が真剣な表情で彼の現状の再確認を行う。

「そうよ。元々V.N.L.S.は、コンピュータに人間の動きをトレースさせてOSに学習させ、優秀な補助AIを作るためのもの……」

「分かっている。そして、機体の性能を向上させるのはただの副産物なのだろう?耳タコだよ」

「単純に機体が手足になってるに過ぎない。強くなってるのはあなたの生身の技量の問題……だからこそ、拡張された肉体を動かすために負荷がかかるのよ」

「……」

「それに……そもそも体の負荷を考慮して、N.L.アダプタ移植者のパイロット寿命は長くて2年。あなたはとうにそれを超えてるの……それに診断書も読んだでしょう?味覚以外にも所々体がボロボロ……次アレを使ったらあなた、死ぬわよ。その事をちゃんと理解してね」

 勇の肩に手を置き、優しく言う。


ハワイ某所、深海。

 作戦開始まで数分前、ブレアはコックピット内に取り付けられた魚影探知機を眺めていた。

 探知機には小さい影がちらほらと映っている。

「コイツらに網ほっぽって獲ったら何日分のカルパッチョが作れるんだろうなぁ」

 などと呟いていると、探知機が今までと違う影を映し出す。それは、まるで貨物船が海中を泳いでいるかの如き大きなものだった。

「来なすったか……行くぜ!!」

 そう言って操縦桿を握ると、先程まで暗かったモニターが海中を映し出す。

 それはまるで水族館のように、色とりどりの魚が悠々と泳いでいた。しかし、その魚たちは急に危機を察知して散り散りになる。

 そして……その異形が魚たちの間から姿を現した。

 その姿は、鯨のように長い胴体を持ち、長い二股の尾と、横腹に計8つのヒレを付けた、50mはある怪物だった。

「レイダーアーマー……GO!!」

 ブレアが合図を出すと、岩の間からそれが飛び出し姿を見せる。

 それは、太い両腕と短い脚を持つ、アルゴアーマーを彷彿とさせる姿だっが、その胴体には新型のレイダーが搭載されていた。

「流石だぜ……海中なのにスムーズに動きやがる!」

 レイダーアーマーは水の抵抗をものともせず、そのまま『クジラ型TE』へと真っ直ぐ進んで行く。

「っしゃ、まずはコイツからだ!クラッシュハープーン発射!!」

 レイダーアーマーの左腕に装備された、2機の大型の槍『クラッシュハープーン』が放たれると、それはそのまま『クジラ型TE』へと突き刺さる。そして、クラッシュハープーンに繋がれたワイヤーを巻き取りながら接近を試みる。

 しかし、『クジラ型TE』は身を激しくのたうつとクラッシュハープーンを振り解いて、尾部の2本の尾をレイダーアーマーへ打ち付けようとする。

「ッぶねっ!!だがレイダーアーマーはダテじゃねんでなァ!!」

 『クジラ型TE』の尾は、海中でも素早く動くレイダーアーマーの右腕のアームにより掴まれ、捕まえたと言わんばかりに振り回され、岩壁に打ち付けられる。

「次だ!!」

 岩壁に打ち付けられた敵に対し、今度は右腕が変形して大きなブレードが出現、そしてそれを未だ掴んだままの『クジラ型TE』へと振り下ろす。

 しかし、先程振り回した衝撃か、はたまた自分から切り離したのか、相手は尾を残して逃げ出しそれを回避する。

「あークソ!逃すかよオラ!!」

 ブレアは即座に敵に向き直り、再びクラッシュハープーンを放つ。しかし、今度は槍状の先端が展開し、クローの様な形状に変形する。

 そして、そのクローがヒレを掴むと、二度と逃がさないと言うようにレイダーアーマーは脚部を地面に固定させる。

「っしゃ!」

 しかし、今度は『クジラ型TE』の全身の鱗状の装甲が展開すると、そこからミサイルの様なものが無数に発射され、レイダーアーマーへと向かって来る。

「おわッ!!」

 そして、そのミサイルは全てレイダーアーマーへと直撃して派手に爆煙と砂煙を上げる。しかし……。

「……っとと、忘れてたぜ。流石はアルゴアーマーの技術で作っただけはある」

 ミサイルが直撃する瞬間、レイダーアーマーの防御フィールドが発動して直撃を防いだのだ。

 ミサイルを防ぎ切ったレイダーアーマーは、再びブレードを構える。すると、構えたブレードの根本が引き出されて伸び、大型のブレードになる。

「ナマスにして魚のエサにしてやらァ!!」

 ワイヤーを巻き取りながらブレードを振り下ろそうとしたその時、千切れた尾が再生、更に再生された尾の先端にはノコギリの様なものが付いており、『クジラ型TE』はそれを振り回してブレードを弾き飛ばす。弾き飛ばされたブレードは、そのまま根元が抜けてしまい海底へと突き刺さってしまう。

「なっ!」

 それに気を取られている間にも、更に尾の斬撃は次々と繰り出されてくる。

「くっ!!」

 斬撃が繰り出される度、モニターに表示されている電力のメーターが260%、250%……と次第に下がって行く。

「装甲に傷がいかないのは良いけどよ……このまま思い通りにさせてりゃ補助電力の無駄使いだな……」

 そう言っている間にも尾による追撃はより激しくなる。

 次第にイライラが募って行くブレア。仕方がないと言ったように、レイダーアーマーの最大の兵器を起動させようとボタンを操作しようとする。

「こうなりゃ使うしかねぇか……『エレクトリック・スパーク』をよ……!」

『それはダメよ』

 しかし、それは渚の通信によって遮られる。

「ちょっ、どうしてダメなんすか!」

『1つ、この海域には原生してる海洋生物が多い。そのため環境を破壊する事になるわ。2つ、威力が高い分消費する電力も多い。もしそれで倒せても、電源が切れると酸素供給が絶たれて救助までに助からない可能性があるわ』

「じゃあどうするんですか!」

『それなら御提案かありますわ!』

 そこに、ミレーナが話に割って入ってくる。

「ミレーナさん!?」

『このまま超音波発生装置の場所まで敵を誘導してくださいまし』

「はぁ!?だ、だがよ……」

『お早くなさいまし!』

「ッづぁあもう!しゃあねー!!やるか!!」

 ブレアはレイダーアーマーの脚部を地面から離すと、そのまま『クジラ型TE』に引っ張られながら超音波発生装置を目指して海の中を突き進む。その勢いは凄まじく、ブレアの体にかなりの負荷が襲い掛かる。

「っグォぉっ!!」

『気をお抜きなさらないでくださいね。予定地まであと少しですから』

「無茶っ……言うなッ……」

 しばらく引き摺られて行くと、海底に何やら大きなコンテナの様なものが見えてくる。恐らくそれがミレーナの狙いだとブレアは悟る。

「アレ……かッ」

『今!!』

 ミレーナの叫びが聞こえるや否や、何処からか複数のミサイルが『クジラ型TE』へと向かって飛んで来て、そのまま直撃する。

「のわっ!?こ、こっちまで殺す気かよ!?」

 しかし、それが功を奏して『クジラ型TE』は推進力となるヒレを損傷し海底に付す。

『今ですわ!レイダーアーマーからレイダーを下ろしてコンテナを開けて下さいまし!』

「お、おう……!」

 ブレアは言われた通りに、レイダーアーマーからレイダーを下ろしてコンテナを開ける。すると、中から大量の泡と共に何やら大きな筒の様なものが現れる。

『バニッシュメントディスカッシャー……端的に言えばクソデカパイルバンカーですわ!元を辿れば数ヶ月前、お母様が武器商人から横領の裏仕事の為に運んでたもの……それをお使いなさいまし!』

「今サラッとやべー事言ってたけど……まあいい、分かったぜ!!」

 そう言ってブレアはバニッシュメントディスカッシャーをレイダーアーマーへ取り付ける。その間に、『クジラ型TE』は再生を完了させ、ヒレがあった場所からクモのような脚を伸ばす。

「さあ、キメるぜ……!!」

 再びミサイルを放つ『クジラ型TE』。しかし、レイダーアーマーはそんなものなど物怖じせずにそのまま突き進んで行く。

「バニッシュメント……ディスカッシャアアアァァァ!!!!」

 ブレアはレイダーアーマーの右腕に取り付けられたバニッシュメントディスカッシャーを『クジラ型TE』に突き立て、必殺の一撃をその胴体に打ち込む。そして、その一撃を受けて『クジラ型TE』は派手に爆散する。

『別に音声認識ではありませんのよ?』

「わ、わーってるよ!せめて気分よくトドメをささせてくれよ!!」

 ツッコミを入れられて少し照れ臭くなるブレア。しかし、モニターに映ったとある物に気付く。

「ん?……あれって……」


ハワイ某所、ビーチ。

 先程戦闘を終えたブレアは機体から降りると、先程までバカンスを楽しんでいた皆の出迎えを受けていた。

「おつかれ!」

「おつかれさん」

「おつかれさま」

「おう、ありがとうな」

 やり切ったという風なブレア。カレンはその横に向かって行き、彼の傍に抱えたヘルメットを受け取る。

「おつかれさまです、ブレアさん」

「……おう。ありがとな、カレン」

 目の前で、まるで真夏の日差しのような笑顔を見せる水着姿のカレンにブレアはつい顔を赤くしてしまう。その様子を見た一同は、あからさまにニヤニヤとニヤけ笑いを浮かべだす。

「な、なんだよ!」

「別にぃ〜?」

「いやな、お前も隅に置けないと思ってな」

「ぁんだよそれ!!」

 照れ隠しするように突っかかるブレア。それを茶化すように盛り上がる一同と、一歩後ろからその様子を眺め、勇はどこか微笑ましい気持ちになる。

(これでまた一歩、未来に近付いたな……。いつか、皆があんな風に笑い合える日が来ると良いのだがな)


 それから、やがて日が傾き、海の向こうには赤々と夕陽が水平線を染める。

「おーい、カレン!」

 海辺に立つ岩に、カレンは海に足をつけて座っている。そしてそこに、焼きそばの乗った2つの皿を持ってブレアが歩いてくる。

「杉田さんが焼きそば焼いてくれたってさ!ほら、カレンの分!」

「ありがとうございます!」

 カレンはブレアから焼きそばの皿を受け取る。その時に、不意にブレアの手にカレンの手が触れ、お互いに一瞬ドキッとしてしまう。

 それからはしばらく、2人は無言で焼きそばを口に運ぶ。しかし、次第にその空気にお互い耐えられなくなって行く。

「えと……」

「あの……」

 つい言葉がぶつかり、再び口を噤んでしまいそうになるが、ブレアは勇気を出して口を開く。

「……カレンはさ……俺の事、どう思ってんのかな……的な、さ」

「……どう、と、言いますと」

「……いや、なんつーかさぁ……アレがさ、まだ、だなぁって……」

「あっ……」

 そう、あの結婚式の日からしばらく、カレンはブレアの告白の返事を保留したままであったのだった。

「あってなんだよあって!?」

「あっ、いやその……なんと言うか、今じゃなきゃダメなのかなぁって……」

「今じゃなきゃ、って……おいおい、コクってから結構経つんですけど!」

 ブレアはわざとらしく不満げな態度を見せる。

「それは、ええと……」

「……」

 カレンは誤魔化し笑いをし、足をバタつかせながら思案に耽る。

 水飛沫が舞い、そして夕日に照らされた彼女の義足が、ブレアの顔へと光を照り返す。

「うっ」

「ごめんなさい!」

「いや、いいよ別に……」

「あはは……すみません」

 それから2人は目が合い、見つめ合う。そして、照れ臭くなってつい笑ってしまう。

「っははは!」

「うふふっ!」

「はははっ!は〜あ……」

 一通り笑い、ブレアは乱れた髪を掻き分けながら一息付いて言う。

「まっ、いいさ。待つよ俺。いくらだって待つ」

「でもそれって……」

「カレンがまだ踏み切れねぇってんなら、いくら急かしたって意味ないからさ。妥協した返事よりも、ここ1番に気持ちを込めた返事のがやっぱ良いからさ」

「ブレアさん……」

「それまでよ、良い返事聞くために俺、イイ男でいるからさ!」

 親指をめいっぱい上に突き立て、カレンへ突き出す。カレンにはそんなブレアの笑顔が、2人を照らす夕日よりも眩しく見えた。

「……ふふっ、なんですか、それ」

「へへっ」


 やがて、夜闇が地平を包み、星々が空を照らし出す。

 そこに浮かぶ大きな月に、影がひとつかかっていた事は、まだ誰も知る由は無かった。

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