COUNTER
レイダーズ本部、物資搬入口前廊下。
搬入口前では現在、発砲を受けた2人の被害者の応急処置が済んでいた。それも、先程まで野次馬として見ていた者たちが、カレンの指示を受けて救命用具を急いで持って来ていたためであった。
「……これで、どうにか一命は取り留めましたね」
「……あの、カレンさん。すみませんでした」
「謝らないでください。人が目の前で撃たれるのを見て、冷静でいられる訳が無かったんです。むしろわたくしこそ、ぶってすみませんでした」
優しく微笑みながらも、心から申し訳無さそうに謝るカレン。それを見て、花恵は再びゆっくりと涙を流し始める。
「……ミラさんは……じ、自分を庇って撃たれたんです……。ジェドさんが……ジェドさんはっ、多分、ミラさんが庇う事を分かってて、狙って来ましたから……」
「……そうでした、か。でも、悪いのは撃った方です」
「でも結局、ミラさんは……ミラさんは、自分が軽はずみに行動したからっ……!」
「でも、あなたが応急処置をしたから、彼女は助かりました。……あなたのおかげなのですよ」
カレンは泣き続ける花恵の頭を優しく撫でる。そこに、数人の男たちがタンカを運んで来る。
「さ、早く2人を医務室へ運びましょう。まだまだやる事は沢山ありますよ!!」
「っ……はいっ!!」
レイダーズ本部付近、市街地跡地。
ジェドが乗り込み出撃したアルゴアーマーを追って、勇のグリフィンレイダー改は旧市街地の廃墟群へと向かっていた。
そして、崩れた街の真ん中にそのアルゴアーマーは立っていた。
「見つけたぞ」
「おや、隊長さんだけかい?なーんだ、つまんねー」
「……その声はジェドか」
「へぇー、僕らってそんなに接点無かったのにちゃんと名前覚えてくれてんだね!!」
スピーカーから、わざわざ相手の神経を逆撫でするようにねちっこい拍手の音が聞こえてくる。しかし勇はそれに動じず口を開く。
「ジェド、今すぐ投降しろ」
「チワワがよ、鳴いてんじゃねぇぞ。蹴飛ばされたかなけりゃ消えろや」
「……どうやら、引き摺り下ろしてゲンコツを叩き込む必要があるな」
そう言ってムラマサを引き抜き、アルゴアーマーに立ち向かう。
「やってみろよ、オッサン!」
同時刻、レイダーズ本部、整備ドック。
ハンガーでは、トードが乗り込むバスターレイダーと、ハオが乗り込むアトラスレイダーの再調整が早急に行われていた。
「まったくよ!急に注文を変えられたら溜まったもんじゃねぇや!!」
「だから急ぐんだよ!とにかくバスターレイダーは動けば問題ないからちゃっちゃと調節してくれ!」
「じゃあ尚更急かすんじゃねぇよ!!手元が狂うだろうが!!」
トードと杉田が互いに文句をぶつけながらも、着実にバスターレイダーを動かせるように調整が進んで行く。
その横で、アトラスレイダーの武装の変更も着実に進んで行く。
「ミサイルにマシンガン、それにバズーカ……うん、好だね。このまま付けられるもの全部付けちゃって!」
ハオの指示によりアトラスレイダーには、両肩にミサイルポッド、両腕甲部に中型マシンガンが装備され、背面には2丁の大型バズーカが懸架されていく。その上、アトラスレイダーの最大の特徴とも言える両肩のシールドは外されてしまっている。
「でもいいんですか?接近専用の武装がひとつも無いですよ?」
「無問題!むしろこれが私のガチ装備なの!!」
ハオは整備員に笑顔を向けて親指を立てる。
「なるはやで頼むね!勇隊長が待ってるんだから!!」
レイダーズ本部付近、市街地跡地。
その頃、旧市街地廃墟群では激戦が繰り広げられていた。
「オラオラオラオラ!!」
アルゴアーマーのミサイルが飛び交う。そのミサイルはグリフィンレイダー改には命中せずに殆ど建物に当たり、その上爆発力もさほど無い為コンクリートの表面を削るだけで、倒壊による足止めにはならない。
それでも削られたコンクリートの雨は降り注ぐ。そのコンクリートのカケラを無視し、時には大きな破片を避けながら勇はアルゴアーマーを追跡する。
「大口を叩く割には逃げてばかりか」
「バァーカ!俺1人でテメーらをぶっ殺せるわけねぇだろがよ!!」
「……やはりな。俺もお前も、所詮時間稼ぎと言う訳か」
「当ったりィ!この場所を選んだのも、通信塔が立ってるからだよ!!」
勇が瓦礫の雨を避けている隙に、アルゴアーマーが建物の間を縫って影へと隠れる。20mの巨体も、高いビル群へと逃げ込めば充分隠れる事が出来る。
「今から10分もせずに、『カウベル』の残党らがレイダーズ本部基地を襲撃する!勿論ドリトもブレアもだ!ちと繰り上げになっちまうがよ、何も問題ねぇ!!テメェはここで俺と2人でランデブーさ!!」
「そうか」
勇のグリフィンレイダー改が、隠れていたアルゴアーマーの真上から飛び降りて着地する。
「だが無駄だ。俺の自慢の部下たちはお前らには屈しないさ」
「へぇー、でもその自信はどこまで続くかなぁ!!」
立ち向かうグリフィンレイダー改に、アルゴアーマーは再びミサイルを放つ。
レイダーズ本部、医務室。
医務室では、先程応急処置を受けた2人が早急に運ばれ、更に輸血等の処置を受けてベッドへと運ばれていた。
「ジュウォンさん、アンナさん、手伝っていただきありがとうございます」
「いいえ、こう言う事は手が多い方がいいですからね」
「気にすんなよ。アタシは丁度やる事が無かったんだ」
一通り処置を終えて、安全を確認した一同は安堵する。
しかしそこに、渚が医務室の扉を開けて用件を告げる。
「みんな、悪い知らせよ。通信塔からキャッチした通信で、『カウベル』の残党がここに来る事が分かったわ」
「!!」
一同はその言葉に驚く。
「それは……どのような戦力を有しているのでしょう」
「少なくとも、分かったのはレイダーが数体とアルゴアーマーが1機。ブレアとドリトも乗り込んで来るみたいね……」
「そんな!ブレアさんが……」
「カレンさん……」
そしてそれを聞いたカレンは一旦何かを考え込む。しばらく考え、それから思い付いた事を話す。
「……確か、今基地にはアルゴアーマーの予備パーツがありますね?」
質問を問われた花恵はそれに答える。
「え、ええ……確かに予備が1機分組めるくらいはあるッスけど……」
「じゃあそれを組んじゃいましょう!それを基地の守備に使います!」
「ええっ!?無理ッスよ!!例え組めたとしても、N.L.アダプタを接続しなきゃ動かないッス!!」
「つまり、アダプタのインプラント手術を受けた人でないと使えないと……」
再びカレンが思案に入る。すると急に、アンナがあからさまにわざとらしくソワソワし出す。
「……アンナさん、トイレならここを出て左ですよ」
「おいィ!!ちげーよ!!アタシなら乗れるって言いてーんだよ!!」
それを聞いた周りの者たちは一斉に驚く。それはそうだ、ここにいる一部の人間は子供であるアンナが元傭兵だと言う事を忘れていたからだ。その上、今まで彼女の口からはアダプタのインプラント手術を受けた事は一度も語られた事は無かった。
「ダメだアンナ!キミを戦わせる訳には行かない!!」
「あ?なんでだよアネゴ!!」
「アルゴアーマーを動かすためにかかる負荷は計り知れない!その上、おそらくキミのN.L.アダプタは勇隊長と同じタイプ……負荷の軽減はされていない筈だ!!」
出撃をする気だったアンナをジュウォンが一生懸命止めようと説得を試みる。しかし、アンナの決意は固いようだ。
「いいやアネゴ、それでもアタシは出るぜ。はぐれ者のアタシをレイダーズは仲間として受け入れてくれた……その恩を返したいんだ!」
「そんな……キミは今まで充分恩を返してきたじゃないか!」
「んなガキのお手伝い程度で恩返しになるかよ!それに今は手段を選んでる場合じゃない……そうだろ!」
アンナは不敵に笑うとカレンに向き直る。カレンはその目を見て、強く決心する。
「……ええ、今は一刻も早く手を打たなければなりません。使える物は全部使いましょう!!」
「そうね。それで、こっちも『使えるもの』の用意があるのだけど……」
レイダーズ本部、整備ドック。
ハンガーでは、既に2機のレイダーが発進準備を済ませていた。
「よっしゃ!これでいつでも出撃出来るぜぃ!!」
「よし!ありがとう杉田さん!!」
『おいお前ら!ちょっと出撃は待ってくれ!!』
出撃を目前に、突然ハンスからの通信が入る。
「おいハンス!どうしたよ!!」
『『カウベル』の残党らがこちらにやって来る!今出撃したら本部がガラ空きになってしまう!!』
「!?なんてこった!!」
トードはそれを聞き酷く慌てる。
「ちょっ、ちょっと!?じゃあ隊長はどうするんですか!?このまま1人で戦わせる気ですか!!」
『まあ慌てるな。それについては渚博士が何か対策を考えているらしい』
「そ、それっていったい……!」
『いや、聞いてはいないが、自信ありげな様子だったから問題は無いだろう。恐らくはな……』
「ちょっ、なんですかそれは!?」
思わず両平手を叩きつけながら大声になってしまうトード。それに、ハオがコックピットから身を乗り出して言葉をかける。
「大丈夫だよ!ここは渚博士を信じてみようよ!」
「だが根拠は……」
「ない!でもそれでいいじゃない!!」
ハオはただ笑顔で呼びかける。それにトードも諦めたように折れる。
「あーもうしゃあない!とにかく俺らは基地防衛に務める、それで良いんだな!」
『ああ、任せたぞ!!』




