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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
WAKE UP
3/50

REVENGER

レイダーズ関西基地、陥落地。

「こいつは酷いな……まさかたった1体の『ヒト型TE』がここまでやったのか……?」

「そうです。この基地には、8機のレイダーと戦闘ヘリに戦車がそれぞれ4機待機していました」

「しかし、それも今や全滅か……」

「はい、生き残った者もいますが、皆、負傷しております」

「分かった。すぐに医療班を派遣しよう」

「ありがとうございます!」

 関西基地に着いた勇達のチームは、惨状を目にして言葉を失った。

 破壊された格納庫。焼け焦げた施設内。そして、倒れているボロボロのレイダー達……。

 勇達は急いで生存者の確認をした。

「うっ……」

「大丈夫ですか!?」

「ああ……なんとかな……」

 生存者は7名。うち3名が重傷だった。

「何があったんですか?教えてください。」

「分からない……気が付いたら目の前の天井が崩れて……あ、あ、足だ!!デカい足が、仲間を潰したんだ!!」

 錯乱している負傷者を見て、勇は心を痛めた。

(こんな姿になったら、もうまともに戦う事はできないだろうな)

「とにかく今はゆっくり休んでください。後の事は我々が何とかしますから。」

「すまない……本当に助かるよ……」


 勇たちは重症者の応急処置を終えると、状況を確認する為に一度、仮設置されたキャンプに召集された。

「さっきの話だが、その『ヒト型TE』というのはどこから来たんだ?」

「分かりません。突然現れたのです。恐らくはステルス機能と光学迷彩が搭載されている可能性が大きいと思います」

「なるほど……それで基地は壊滅したという訳か」

「はい。奴は基地の破壊後、すぐに姿を消しました。」

「つまり、敵は我々を天敵として認知しているという事か……」

「恐らくは」

「そうか……しかし、そうなると奴の行方が掴めないな……」

「ええ、どうしたものでしょうか……」

 すると、会議の様子を本部からカメラで見ていた桂木渚が口を挟む。

『ねえ、襲撃を受ける前に変わった事は何か無かったのかしら?』

「変わったこと?」

『例えば、何か敵を引き寄せるような事をした、とか?』

「いえ、特に何もしていないはずです。いつも通り、訓練をしていましたから」

『訓練……いったいどのような訓練を?』

「はい、ついこの間、財団から支給された『超大型二連結式収束荷電粒子砲』の動作テストが行われていましたが……」

「超大型二連結式収束荷電粒子砲のテストだと!」

 その、よく聞き覚えのある名を聞いてトードが驚く。

「それの動作テストなら俺たちもつい昨日行った筈だから、原因はそれだとは言えないとして、何故お前らがそいつを持っているんだ!!」

「それが、実は私達もよく分かっていないんですよね……」

「どういうことだ?」

「はい、実は財団の方で、『来訪者』対策の為に3機を急遽搬送したらしいのです。」

「なんだと……!!条約はどうなっているんだ!!超兵器の複数所持は公的政府機関に目を付けられる危険がある筈だ!!」

「はい、なので、財団側はこの兵器の存在を極秘事項にしておきたかったらしく、我々の部隊にのみ秘密裏に渡してきたようです」

「そんな馬鹿な話が……」

『ウィルソン財団ならやりかねないわね……』

 渚がしばらく考えていると、何かが噛み合ったような顔をする。

『ちょっと待って……もしかして、あなた達は3機の『超大型二連結式収束荷電粒子砲』を同時に起動したりしなかった?』

「はい!しました!」

「おい、まさか……!」

「まさかとは思うが、その砲撃によって発生した衝撃波や電磁波のせいで奴が来たんじゃないのか?!」

『なるほど……』

「しかし、今となってはそれを証明する術は無い。仮にそうだとしても、あの化け物がここに来るとは限らないぞ。」

「あの、今ここには『超大型二連結式収束荷電粒子砲』は無いんですか?」

「ああ、先の襲撃で全て壊れてしまってな。全機レイダーに搭載していたのがあだになってしまった」

「そうですか……」

 しばらく沈黙が続くが、横からハンスが発言する。

「いや、希望を捨てるのはまだ早いかも知れんぞ。見たところ撃墜されたレイダーは無駄なく的確に攻撃を受けているように見えた。それ故に損傷が最小限に抑えられ、使えるパーツが潤沢にある可能性が高い」

「確かにそうですね!」

「しかし、うちの基地の整備士は全員瓦礫の下敷きになってしまった……残念だが、修理は不可能だろう」

「それなら問題ない。うちから杉田さん達を呼べばいい」

「ああ、すまない……本部の皆さん方、ありがとうございます」

「いえいえ、礼には及びませんよ」

『これでようやく話が進みそうね……』

 それからしばらく話し合いが続いた結果、まずは生き残った者達の回復を待つ事に決まった。そして、その間に勇達は杉田達が到着するまで基地の復旧作業を手伝う事になった。


数時間後……。

「よし、とりあえずはこんなところかな……」

 勇たちのチームは倒壊した施設内の修復を終えていた。

「お疲れさん。勇」

「これくらいどうという事無い」

 涼しい顔の勇の横では、ブレアが息を切らしながら汗を流している。

「ふぅ……流石にしんどいぜ……」

「全く、情けないな。もう少し鍛えたらどうなんだ?」

 今にも死にそうな表情のブレアをトードが鼻で笑う。

「うるせぇな。俺はレイダーが上手けりゃそれで十分なんだよ!!」

 喧嘩するブレアとトードをハオが間に入って止める。

「はいストップ!こんな場所での喧嘩なんてハオじゃないよ!!」

「すまない……」

「わりぃ……」

「分かればいいよ。さて、そろそろ杉田さんが到着した所だから迎えに行こっか!!」

 すると、遠くから杉田たち整備班が歩いてくる。

「よぉ、お前ら!待たせたなぁ!!」

「杉田さん、お疲れ様です」

「おうよ!ところで俺に見てもらいたいものってどれだ?」

 勇は施設の修復作業と同時に行なっていた回収作業で集めた、破壊された超大型二連結式収束荷電粒子砲を指した。

「ああ、これかぁ……見た感じはさほど損傷は無いような見えるが、こいつを直して欲しいってこったな!」

「はい、お願いします」

「分かった!!任せておけ!!」

「ありがとうございます!」

 こうして、勇達は『超大型二連結式収束荷電粒子砲』の修理を待つ事にした。

 しかし、結果は意外にも早く出た。それもあまり良いとは言えないものだった。

「こいつはちと厳しいかもしれんな……3機全ては修復出来んかもしれんぞ」

「そうですか……」

「すまんな……だが、パーツをかき集めれば2機分は何とかなるはずだ。ただ、それでも完全に元通りになるかは分からねぇ。」

「分かりました。そこまで修復出来るのなら十分です。本当に感謝します」

「ああ、そう言ってくれると助かるよ。」

 それを聞いたトードが厳しい表情で話に入る。

「ちょっと待ってください。まさか俺らの機体の荷電粒子砲で1機を代用するつもりですか?」

「そうだ。何か問題があるか?」

「ありますよ。そもそも荷電粒子砲の発射にはチャージが必要です。それにジェネレーターの冷却が必要になりますし、もし奴を誘き寄せる為に一発放った場合、作戦実行中に即座に撃てませんよ!」

「それは俺たちでフォローする。お前たちはその間に準備を整えて確実に奴を仕留めてくれ」

「無茶を言ってくれる……」

「頼んだぞ」

「……了解」

 渋々了承すると、勇達は基地に戻る。


 基地に戻った後、勇は杉田に通信を入れる。

「どうだ?修理は順調か?」

『ああ、なんとかな。今は砲身内部の掃除をしている所だ。』

「分かった。引き続き頼む」

『任せとけ!!』

 通信を終えると今度は自分のレイダーの整備に取り掛かる。その横ではトードが先程のやりとりをハオとブレアに話していた。

「つまるところ、俺たちが次の砲撃を行えるまで、ブレアは隊長と一緒に囮役を務めてもらう事になる訳だ」

「ま、そういう事ね」

「おいおい、マジに言ってるのか?相手は『ヒト型TE』だぜ!いくらなんでも無理があるだろ!!」

「いや、これは命令だ。仕方がないさ」

「ちっ……仕方ねえ……!お前みたいなのでも、死なれたら寝覚めが悪いからな!!」

「お前こそ、俺たちがパルフェ・ガンを打つ前に死んだら盛大に笑ってやるからな」

「上等だ!!」

「お前ら、そろそろ作戦会議の時間だぞ!!」

「はい!!」


 3人は勇の元に集まるとテントに向かった。

(いよいよ奴との決戦が始まるのか……果たして勝てるのか?)

ブレアは不安を抱きながらも、自分に言い聞かせるように言った。

「大丈夫……きっと上手くいくさ……」


朝、作戦開始時刻。

 関西基地陥落地から離れた距離に位置する場所に、遠隔操作された2機の超大型二連結式収束荷電粒子砲が設置される。

 そしてさらに、ハオとトードのバスターレイダーが指定の位置に着くと、武装を展開しドッキングさせ、パルフェ・ガンを発射可能な状態まで変形させる。

「よし、いつでもいけるぞ!」

「こっちもハオだよ!」

「よし、じゃあ始めるぞ!」

「はい!」

 勇の合図と共に、超大型二連結式収束荷電粒子砲が起動される。

「超大型二連結式収束荷電粒子砲、照射!!」

「うおおおぉ!!」

「いっけえぇ!!」

 遠隔操作された砲台と2機のレイダーから放たれた荷電粒子は、一直線に目標に向かって伸びる。

 すると、3本の光の柱が宙に伸びると同時に、周辺の機器に異常が発生する。

「これだ!思った通りの反応だ!!」

「やったぜ!!」

「よし、急いで奴を迎え撃つ支度だ」

「はい!!」

 勇とブレアは急いで迎撃の準備を整える。

 しばらくすると、荷電粒子砲を撃ち終わり3機の砲台のうち、突貫で修理された2機はショートして動かなくなり、残り1機は予定通り距離を置いて冷却シークエンスに入った。

「これで、あとは待つだけだな……」

 その瞬間、大地に衝撃が走る。

「なんだ!」

「まさか、もう来たっていうのか!?」

「くそ!少し早すぎるか!!」

 すると、衝撃がした方向から何かが向かってくる。姿は見えないが、歩みを示す足跡は続いてくる。

「来たか……!」

 勇はライフルを構える。

 そして、次第に姿がはっきりと見えてくる。

「出やがった……『ヒト型TE』……!」

 その姿は以前と全く変わらなかった。それはつまり、あの時のミサイル攻撃に効果が無かった事を示していた。

「あの野郎……無傷でいやがったのか……!」

 ブレアが歯ぎしりをする。

「落ち着け。焦って勝てる相手じゃない」

「分かってるよ……!」

「まずは様子見だ……行くぞ!!」

「はい!!」

 勇とブレアは駆け出すと、『ヒト型TE』に接近する。

「はあぁ!!」

 勇はブレードを振るが、それは空を斬るだけだった。

「くっ……!速い……!」

「どこだ!どこにいる!」

「そこか!」

 ブレアは銃を構えて乱射するが、これも当たらない。

「クソッ!80mの巨体が何だってここまで動き回れるんだよ!!」

 2人が苦戦している中、本部の防衛チームが小型ミサイルで援護する。

 ミサイルが射出されると、『ヒト型TE』は動きを止めて迎撃態勢をとる。

「今のうちに態勢を立て直すぞ!!」

「はい!!」

 勇達は一旦後退すると、右腕に装備した装置を構えた。

「奴が丸裸になった瞬間、タイミングを合わせてワイヤーを射出するぞ!いいな!!」

「了解!!」

『ヒト型TE』は頭部の触手をムチにしてミサイルを全て叩き落とした。

 その瞬間を見計らい、ブレアが接近した。

「ぶっつけ本番だけど……これしか無い!!」

 ブレアは腰に帯刀したバスター・チェーンソーを取り出し起動する。

 すると、チェーンソーの刃は高速で回転を始め、派手な火花を散らした。

「その鬱陶しいニョロニョロをぶった斬ってやる!!」

 紅く発光する程に熱を込めて回転する刃を敵のムチ目掛けて振り回す。

 すると、まるで紙を切るかのようにスパっと切断され、向かってくるムチはあっという間に地に落ちる。

「どうだ!!」

 ブレアはそのまま飛び上がり残りのムチを叩き切ると、一気に距離を置く。

「ブレア、行くぞ!3、2……」

「1!!」

 武器を失った『ヒト型TE』に向かってブレアと勇のレイダーがワイヤーを射出する。ワイヤーは敵の体に狙い通り巻き付いた。

「よし!次は奴の気をこちらに向けて荷電粒子砲のチャージ時間を稼ぐぞ!!」

「はい!!」

 勇とブレアは『ヒト型TE』を繋ぐワイヤーを地面に固定すると、それを中心に周りを走り回り始めた。

「どうだ!こっちだ!!」

「こっち向け!!」

 勇達が挑発を繰り返すと、身動き出来なくなった敵はひたすらに首を動かしている。

「トード!まだか!!」

「焦んなよ!もうちょっとだ!!」

 『超大型二連結式収束荷電粒子砲』の冷却が完了するまで、あと10秒。

「よし、冷却完了!!いつでも撃てるぞ!!」

 トードの報告を聞くと、勇は叫んだ。

「ハオ、パルフェ・ガンを!!」

「了解!!」

 それを聞いたハオが引き金に手をかけたその時だった。

 『ヒト型TE』の方からギリギリと音がしたと思いきや、バチバチとワイヤーが千切れ始め、あっという間に拘束が解かれてしまう。

「嘘だろ!!?」

 一同が驚くや否や、『ヒト型TE』は砲撃準備が整ったトードとハオを睨むと高速で接近する。

「!?ヤバい!!」

 ブレアと勇が敵を追う。

 しかし、とても追いつける距離ではなかった。

「くっ……!間に合わねぇ!!」

「まだ諦める訳には!!」

 ハオはレイダーに装備したミサイルを発射して抵抗すると、『ヒト型TE』の動きが一瞬止まる。

「いまだ!!」

 ブレアがレイダーを上昇させると、バスター・チェーンソーをフル回転させ、『ヒト型TE』へ向かって振り落とした。

 『ヒト型TE』はそれに気付いて回避を試みるも、勇の放ったライフルに妨害されて身動きが取れず、ブレアのバスター・チェーンソーがヒットした。

 ダメージを受けた『ヒト型TE』は左腕を切断、そのまま膝をついて動けなくなった。

「撃て!!」

「了解!!」

 勇の指示でハオがパルフェ・ガンを放つ。

 荷電粒子砲は真っ直ぐに『ヒト型TE』へと向かい直撃すると、爆発が起きる。

「やったか?」

 爆煙が晴れる。

 そこには、胴体にぽっかり穴の空いた『ヒト型TE』の姿があった。

「やったぜ!!」

「よっしゃあ!!」

 一同が喜びの声を上げる。

「ああ……終わったのか……」

 勇も安心し、その場に立ち尽くす。

「これでようやく、サムやみんなの仇が取れたんだな……」

 そう呟いた時、異変が起きた。

 『ヒト型TE』がゆっくりと立ち上がると、胸部の穴から無数の触手が伸び、それらが絡み合うと瞬く間に傷口が塞がってしまった。

「なっ!?」

「再生だと……」

「そんな馬鹿な!!」

 勇達は突然の事に動揺する。

 すると『ヒト型TE』は距離を取り、そのまま超高速で何処かへと消えてしまった。

「逃げたのか……?」

「追わないと!」

「ダメだ、もう反応が無い」

「ロストしたのか!?」

「おそらくな……」

「ちっくしょう……!」

 ブレアは悔しさのあまり、モニターを思い切り殴りつけた。


 その後、勇達はすぐに関西基地陥落地に戻った。

「奴の討伐に失敗したか……」

「すまない……」

 ハンスの言葉に、勇は頭を下げて謝った。

「仕方がないさ、奴は未知の相手だ。誘き寄せる手掛かりが手に入っただけでも合格点だよ」

「そうか……」

 しかし、その横では悔しそうにブレアが肩を落としていた。

「作戦は上手く行ってたのに……結局、何も出来なかった……!」

「ブレア、気持ちは分かるが今は落ち着け。また次の機会があるさ」

「次……ですか……でも、次勝てる見込みは……!」

「大丈夫だ。必ず勝てる」

「え……?」

 勇の意外な言葉にブレアは驚いた。

「たとえ奴が再生しようとも、お前のバスター・チェーンソーで奴にダメージを与え続ければ光が見える。奴が逃げた所を見ると、再生後はかなり消耗していた筈だ。追い討ちを与えられる隙を作る事が出来れば勝てるかもしれない」

「隊長……!」

「それに、もう少しすれば財団から『アレ』が届く」

「アレ、とは……?」

 ブレアが疑問に思っていると、モニターから渚の声が聞こえる。

『勇、本部基地に例のものが届いたわ。全員、至急戻ってちょうだい』

「来たか……『グリフィンレイダー』!!」

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