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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
REVENGER
28/50

EROSION

日本某所、市街地跡地。

「だあああぁりゃあああァァァ!!」

 ブレアのバスターレイダーが、残存した歩兵TEを真っ二つに断ち切る。

 しかし……戦場にはまだ巨大な影が我が物顔で立っていた。

「ブレア、建物の影に『獣型TE』が潜んでるよ!距離を取って!!」

「オッケー!!」

 ハオの通信を聞いてブレアのレイダーは市街地を駆け抜ける。すると、『獣型TE』が建物を破壊しながらその姿を現す。

「出やがったなバケモンTE!」

 現れた『獣型TE』に対峙するブレア。しかし、目の前の巨体を相手にブレアはまともに取り合うつもりはない。何故なら……。

「こっちだ、怪物!!」

 上空から、また別の影が現れる。

 その正体は、実戦用にカスタマイズされたアルゴアーマーであった。

「落ちろやブタがァ!!」

 アルゴアーマーの両腕から無数の300mm小型ミサイルが射出されると、『獣型TE』へと向かって飛んで行く。そしてその全てが頭部に命中、濃い爆煙が『獣型TE』を包み込むと、その隙を突いてアルゴアーマーの腕が頭部を一撃で粉砕した。

「っしゃあ!!」

 頭部を粉砕された『獣型TE』はチリのように崩れながら倒れ、それを倒したアルゴアーマーは激しく地を鳴らしながら着地した。

 そして、アルゴアーマーのコックピットが開くと、そこからパイロットスーツ姿の女性が脇にヘルメットを抱えて出てくる。

「どうだブタどもが!」


 矢尾博士との会談から数日。レイダーズの体制は大きく変化しつつあった。

 レイダーズには新たに1機のアルゴアーマーが配備、そしてそのパイロットとして軍から軍人のミラ・アルトランド少尉を筆頭に、複数人の軍関係者が配属される事となった。

 それにより作戦の指揮権、または設備の管理等を含めた殆どの権限を軍が掌握する事となる。

 また、先日の会談の約束通りレイダーズには『月面観測衛星』が提供され、それにより月面からのTE飛来にいち早く対応する事が可能になった。

 そして実戦に置いては、常にアルゴアーマー中心の陣形が取られる事となった。

 現在、レイダーズの主導権はほぼ軍に取って代わられてしまっていた。


レイダーズ本部、仮設整備ドック。

 レイダーズ本部の発着場。そこの側に位置する場所に、鉄骨にビニールをかけただけの、ほぼ野晒し状態の仮設ドックが設置されていた。そして、その横に避けるように予備パーツや備品などが雑多に置かれている。

「本当、これどうにかならねーかなぁ」

 アルゴアーマーから降りてきたミラが、そのスカスカな骨の塔を見上げて頭を掻いて不満を漏らす。

「嫌なら出てってくれても構わないけどな」

 その横から、トードが腕を組んで歩み寄ってくる。そしてその後ろからハオも付いて来ている。

「も〜トード!そんなNot(ハオ)な事言わない!ミラさんは今はレイダーズの仲間なんだから!」

「そうそう!あ〜ハオちゃんはよーく分かってんねぇ〜」

 ミラはハオに近付いて肩に腕を掛け、見せつけるように密着する。

「おいコラ、ハオに気安くくっついてんじゃあねぇぞタンカスが」

「ア゛?文句あっかよォ?」

「ちょっとちょっと!喧嘩はやめるッス!!」

 睨み合う2人の間に、アルゴアーマーの整備をしていた花恵が割って入って止めようとする。しかし……。

「ハナちゃんは優しいなぁ〜!そこのエセスカシ野郎たぁ全く違ぇなぁ〜!」

 ミラは止めに入った花恵を空いていた腕で抱きかかえてしまう。

「あ、あうぅ〜止めるッス!!」

「テメェエいい加減にしろや!」

「……やれやれ、Not(ハオ)……」


レイダーズ本部、食堂。

「それでよぉ!そこで渾身の1発を叩き込んでやったってワケよ!」

 食堂では、レイダーズに混じって軍の派遣隊員たちが遅めの昼食を食べており、その中でミラは脇に花恵を抱えながら大声で自らの勇姿を語っていた。

「うう〜」

「おい、もうそいつ離してやれよ」

 お茶を注いで回っていたアンナが呆れて悪態を吐く。

「あ、アンナちゃんも入る?」

「入るかバカ!!」

 そんな様子を、まるで壁でも作っているかのように離れた席でレイダーズのパイロットたちは眺めていた。

「……ごめんね、うちのパイロットが騒がしくて」

 そこに1人の青年が、料理の乗ったお盆を持ってやってくる。

「いや、いいんだけどよ……お前はいいのかよ、あっちで食わなくて」

 ブレアは青年に言うと、青年は静かに笑って横に座る。

「僕だって今はレイダーズで働く一整備員だからね。極力壁を感じて欲しくは無いんだ。それに……」

 青年はブレアの顔を真っ直ぐ見て言う。

「あの時みたいに探りを入れられても、何もないって信用して欲しいからさ」

「えっ、あの時って……」

「ほら、僕らが初めてアルゴアーマーを見せに来た時さ」

 ブレアは、ドリトたちがアルゴアーマーを引き連れてレイダーズの発着場に乗り込んで来た時の事を思い出す。

「あー……お前あの時から居たんだっけか?」

「うん。演習の前にも会った事あるよ」

「そうだっけ?」

「うん。キミとスコア少尉が話してる時にね」

「あぁ……アレお前だったかぁ」

 ブレアが申し訳無さそうに頭を掻いていると、青年が笑顔で手を差し出す。

「僕の名前はジェド・スティンク。よろしく」

「あ、ああ……俺はブレア・ヒューズだ。よろしくな」

 そう言って2人はお互いに固く手を握った。


レイダーズ本部、シャワールーム。

「いやぁー本当、ここって埃っぽくて嫌になるよなぁ」

 食事を終えたミラは、誰も居ないタイミングを見計らってシャワーを浴びていた。

「でもまっ、可愛い女の子がそこそこ居るからいっか」

 そうして悠々と埃と汗を流していると、誰も居なかったシャワールームにもう1人入ってくる者が居た。

「おや、誰か先に入ってましたか?」

 入って来たのはカレンだった。カレンは空いているシャワーの方へ向かうと、顔を覗かせてミラに声をかける。

「お隣、失礼しますね」

「はいよー、お気になさらず〜」

 返事をするミラを確認してシャワーを浴びようとするカレンだったが、ふととある事に気が付いた。

「あら?その首に付いているものは……」

「んあ?ああこれかぁ。N.L.アダプタだよ、知ってるっしょ?」

「いえ……その、それはどう言ったものなのでしょうか」

 ミラは予想外の言葉に少し戸惑うが、暫く考えた後に納得だという表情になり説明を始める。

「V.N.L.S.は分かるよね?このN.L.アダプタってのは、人体を機体に接続する事でそのV.N.L.S.を起動させる為に必要な器具だよ。そっちの隊長さんにも付いてるでしょ?」

「えっ、そうなんですか?」

「そうだよ?まあ、あっちのは初期型だから結構普段も大きいだろうけどねぇ」

 ミラもそう言いながら顔を覗かる。すると、彼女の方もまたカレンの脚に目が行く。

「ほーう……そっちにも立派なの付いてんねぇ」

「この義足ですか?こちら、我が商会の誇れる商品でして、最新式のコンピューター制御により……」

「あー分かった分かった!ほら、お湯が勿体ないから、シャワー浴びた後でじっっっくり聞くから!!」

「はい、それでは後ほど!」


レイダーズ本部、食堂コテージ。

 コテージでは、勇と渚が紅茶とケーキを嗜みながら会話をしていた。

「してやられたわね……全く」

「ああ。あの男、レイダーズを軍下に置くのは後でいいと言いながら結局は現状、事実上は軍の掌に載せられたも同然だな」

「あなたが安請け合いであの男から衛星を買ったからじゃないの」

「相手方の顔色を見る為だ、致し方無いだろう?」

「……まあ、そうかもね……」

 渚はそう言ってため息を吐く。

 ふと、渚は勇の顔を覗く。その顔には、どこか疲れが浮かんで見える。

 その様子に渚は頬に触れて顔を正面に向けさせる。

「……ちょっと大丈夫?無理はしてないでしょうね?」

「あ、ああ……さっき出撃から帰って来たからな。それに、あのアルゴアーマーが来てからは特に無理をする機会もない。V.N.L.S.を使う事も無くなったよ」

 そう言って勇は笑って見せるが、それに渚は申し訳無さそうな顔をする。

「……」

「おいおい、そんな顔をするなよ。俺は仕事をしているだけだぞ」

「そうじゃなくって……」

「V.N.L.S.の事だろう?気にするな」

「あなたが気にしなくても!……アダプタの移植手術を指示したのは私なのよ。気にするなってのが無理あるでしょ」

 渚は困ったようにため息を吐いて椅子に深く座る。

 そこに、紅茶とお菓子を持ってハンスとジュウォンが相席を求めてくる。

「お2人さんよ、オヤツ時くらい辛気臭い顔しなさんなよ」

「そうですよ。せっかく焼いたお菓子が不味くなりますよ」

 そう言ってジュウォンはクッキーの乗った皿を置く。皿に盛られたクッキーは、形のいい物から歪なものまで様々だ。

「……これ、型抜いたのあなたじゃないでしょ」

「アンナに手伝って貰ったんです」

「ふふっ、だろうな」

 勇は笑ってクッキーを口に運んだ。


レイダーズ本部、整備ドック。

 昼食を食べ終わり、格納庫ではレイダーズと軍の両陣営の整備員が行ったり来たりを繰り返しながら慌ただしく機体の整備を行っていた。

「おいお前ら!明日には出撃出来るように整備を急げ!!」

 格納庫中に、杉田の迫力のある大声が響き渡る。

「ひえぇ……杉田さんいつもより飛び抜けて怖ぇ……」

「そりゃそうッスよ。昨日の今日で関東に襲撃があれば落ち着いてられないッスから……あれっ?」

「昨日の今日……いや、今日の明日?まあいいや、さっさと済ませちまおうぜ!」

 作業をしながらブレアと花恵が話をしていると、そこにジェドが駆け寄ってくる。

「手伝うよ。アルゴアーマーの方はもう済ませたから」

「早いな、もう終わらせたのか!」

「うん、残りは現地で調整出来るから。だから今はレイダーの整備を済ませよう」

 そう言ってジェドは工具箱を片手にレイダーの整備を始める。

「でもいいのかよ、お前軍の整備員だろ?」

「言っただろう?今はレイダーズの整備員だって」

「そうか……ありがとうな」


 そうして、3人は暫くレイダーの整備を行い、明日の出撃に向けて一通り準備を整えた。

「よし……っと!ジェド、花恵ちゃん、そっちは?」

「こっちは終わったよ」

「こっちもバッチリッス!」

 顔に油汚れが付くのも気にせずに作業をしていた3人の前に、スポーツドリンクを飲みながら基地内を巡回していたミラが歩いてくる。

「おーおー、みなさん性が出るねぇ」

「おう、今更来てもやる事ねーぞ」

「その気は元々ねぇよ!てか、あんたパイロットだろ?整備なんて整備員に任せりゃいいだろ?」

 ミラが汗を拭き、髪を掻き上げながら言う。それにブレアは、腕を組んで堂々と発言した。

「分かってねーなぁ。愛機ってのはな、パイロット自ら手をかけてやってこそ輝くもんなんだよ!」

「えっそうなんスか?」

「そうかなぁ?」

「えェっ!?」

 ブレアは花恵とジェドのとぼけた反応に思わずポカンとしてしまう。それを見ていたミラは吹き出して笑ってしまう。

「ダッセ!!スベってやんの!!」

「るせーよ!!」

「まあ、どうせ誰かの受け売りの言葉だろ?軽々しく受け売り使うなんてのは中身ねぇ奴がやる事だぜ」

 ミラはそう言いながら、どさくさに紛れて花恵を脇に抱き込む。

「ヒェッ」

「とにかくだ、戦場でアタシの足引っ張るようなマネしなきゃ何でもいい。次も引き立て役バッチリ頼むぜ」

「あ、あうぅ……たっ助け……」

 そんな花恵の助けの声も虚しく、ミラは彼女を抱きかかえながら何処かへと消えて行ってしまう。

 その背中を見送った2人は呆気に取られて顔を見合わせる。

「なあ、あの女っていつもあの調子なのか?」

「まあね。あの傲慢……豪快な性格は軍でも困りものだよ」

「マジかよ……んなヤツがこれから戦闘の中核だなんて先が重いぜ……」

「はは……ご愁傷様だね」

「うるさいよ」

 お互いに乾いた笑いをするブレアとジェド。そこに、カートにお茶を乗せて回っていたカレンが歩み寄ってくる。

「お2人とも、お疲れ様です!」

「おっ、おう!ありがとう!」

 カレンの手から、プラスチックのコップに注がれた紅茶を受け取って礼を言うブレア。同じくジェドも紅茶を受け取る。

「カレン、今日も情報収集か?」

「ええ。と言っても、聞いて回った限り疑わしい所なんて無いように思えます」

「そっか……大変だなぁ」

 ブレアはそう言って紅茶をすする。

「僕らって、そんなに歓迎されてないのかな?」

 ふとジェドが疑問を投げかける。

「渚博士が疑心暗鬼過ぎるんだよなぁ。まあ、前にも騙された事あるし仕方ないけどさぁ」

「しかし、わたくしはただ仕事であれば従うだけなので」

 そう微笑むカレン。

「……なあ、そんなに仕事が大事か?」

「ええ。わたくしには、フランクリン会長に御恩がありますから。なので、会長が御贔屓するレイダーズのサポートは、とても大事なお仕事なのです」

「……そっ、か」

 ブレアは頷くと、カートの上に乗った紅茶を取ってコップに注ぎ、カレンに手渡す。

「ま、あんまり気を張り過ぎんなよ。カレンもさ、俺たちにとって大事な仲間だし、無理して体壊したら心配だしさ」

「あっ……ありがとうございます……」

 予想外の事に一瞬戸惑うが、カレンは素直にコップを受け取る。プラスチックのコップは、じんわりと紅茶の熱を彼女の手に伝える。

 そして、彼女はゆっくりと紅茶を口に入れた。

「……あったかいですね」

「そうだなっ、あったけぇな」

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