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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
REVENGER
26/50

ALGOARMOR

レイダーズ本部、食堂。

 前日、レイダーズ本部に突如、軍の開発したアルゴアーマーが現れる。

 『来訪者』への新たなる対策兵器を謳う彼らだったが、来訪した本来の目的はデモンストレーション、つまり他社製品との露骨な比較であったのだ。

「はああぁぁ〜頭ん中ぐちゃぐちゃでしんでぇよー……」

 プレートに盛られた朝食を前に、ブレアは深いため息を吐きながら項垂れていた。

「おい、何辛気臭い空気になってんだよ!」

 エプロン姿のアンナが横からやって来てブレアの椅子を蹴る。

「いや、だってそうだろうよ……軍の最新鋭機の比較として戦わされて、その相手がダチって……しかもそれを黙ってていきなり来るんだもんなぁ」

「んな事今更気にしたって仕方ねーだろ。それよかはよ食って機体の整備に行けっての」

「んだよ……へいへい分かりましたよー」

 ブータレながらもブレアはプレートの上のトーストサンドを口に詰める。すると、目の前にスープが置かれる。

「こういう時こそ、しっかり食べなきゃですよ」

「ジュウォンさん……ありがとうございます」

 ブレアは差し出されたスープを流し込む。喉に温かなものが流れていき、幾分か心が落ち着いてくる。

「……っしゃ!やるぜ……やってやる!」


レイダーズ本部、発着場。

 発着場では既に、各隊員たちが準備を済ませて集まっていた。

「なんだ、みんなもう集まってたのかよ」

「まあな。それより、もうあちらさんは向こうに行ってしまったみたいだな」

 トードに言われてブレアは格納庫の搬入口から外を見る。そこには既に、あの目立つ程に大きなアルゴアーマーの姿は消えていた。どうやら先に演習場へと行ってしまったようだ。

(なんだよ、ドリトのヤツ……せっかく久々に会ったってのによ)

 冷たいヤツだなと内心思うブレア。しかし、それぞれの機体に乗り込むレイダーズの仲間を見て、自分も急がなければと感じつつ愛機に乗り込む。

『ブレアさん、行けますか?』

 突然、カレンが通信を入れてきた。

「えっ?いや、大丈夫だけど……どうした急に?」

『はい、先程浮かない顔をされておりましたので』

(俺そんな顔してたのか……)

 ブレアはつい自分の顔に触れる。確かに先程までずっと不安な気持ちではあったが、それが側から見ても丸わかりだったようだ。

「ああ……なんか、昨日からずっと突然過ぎる事が続いてさ。でも演習に支障はないから心配すんなって!」

『そうですか。ですが、何かあれば仰ってくださいね。皆さんのサポートも、わたくしの仕事ですから』

「おっ……おう」

(仕事、ねぇ……何期待してんだろ、俺)

 ブレアは操縦桿を握り直し、レイダーを発進させる。

(……あれ?俺、期待してたのか?うむむ……余計考え事が増えちまった!!)


レイダーズ本部、演習場。

 レイダーズの一同は、レイダーとジープで演習場へと向かう。そして、演習場が近付いてくると、アルゴアーマーのその目立つシルエットが徐々に見えてくる。

「流石に……いつ見ても迫力があるな……」

 目の前に立つアルゴアーマーは所々埃除けの布がかけられており、起動前の最終調整が行われていた。

 そして、その整備班に混じってその巨体を見上げる影がひとつ。そう、パイロットのドリトだ。

 モニターでドリトの姿を確認したブレアは、アルゴアーマーの目の前まで接近すると、コックピットハッチを開けて声をかける。

「おーいドリト!待たせたな!」

「やあブレア!こっちはもう少しで始められるよ!」

 振り向いたドリトの手にはバー状の栄養食が握られており、それを頬張りながら調整に加わっていた様子だった。

 するとそこに、整備員のひとりがドリトに声をかける。

「少尉、もう動かせるよ」

「ありがとう!よし、じゃあ早速始めようか」

「あっ、ちょっと……」

 ブレアはドリトに話しかけようとするが、その声は作業機械の音にかき消されてしまい届かなかった。

「……ったく、友達甲斐がないぜ」

 ブレアは誰に言うでもなく悪態をついた。


 それから、先程まで作業していた整備員たちは退避し、ドリトはアルゴアーマーに乗り込んで演習の準備を完了させる。レイダーズもそれに向かうようにレイダーを立たせた。

 ふと、ブレアが整備員たちの方を見てみると、そこには昨日と同じくジュウォンとアンナが茶を配給している姿があった。

(相変わらずご苦労だな……2人とも、情報収集頼んだぜ)

 2人を横目に確認し、再び目の前の大きなそれを睨む。

 「それじゃあ始めよう」

 ドリトからの通信が入る。それを合図に、レイダーズも各種武装を構える。

 そして、勇もレイダーズに合図を送った。

「演習開始!レイダーズ、GO!」

「「「「了解!!」」」」

 合図と共にレイダーズ各機が散開し後退して備える。それと同時に相手のアルゴアーマーも動き始める。

「アルゴアーマー、起動!」

 ドリトが両手に握ったレバーを倒す。すると、アルゴアーマーが両腕を振り上げ、かけられた布を吹き飛ばす。

「ごめんだけど、手加減は苦手だよ!」

 ドリトが叫ぶと、アルゴアーマーのブースターが火を吹き、真上に高く飛び上がる。

「そう来たか……だが!」

 勇がライフルを構え、アルゴアーマーのブースターを狙って射撃する。しかし、ライフルの弾丸は当たらなかった。

 ライフルの弾丸は、アルゴアーマーが展開した防御フィールドによって弾かれたのだ。

「成程、そう来るか……」

「隊長、関心も良いですけどお相手方が突っ込んで来ますよ!」

 トードが勇に注意を促す。同時に、上空からアルゴアーマーが勢いを付けて飛び込んで来るが、各機はそれを避ける。

「デカいのに素早いじゃねぇか!」

「まあね!でなきゃTE相手に戦えないからね!」

 ドリトはそう言うと、アルゴアーマーの大きな腕をアトラスレイダーの方に向け、その向けたアームを射出して来た。

「なっ!?」

「ヤバっ!!」

 ハオはそれを何とか避ける。しかしそれは囮であり、もう一方の腕からもアームが射出されており、それにアトラスレイダーは捕まってしまう。

「きゃっ!?」

「ハオ!トード!」

「大丈夫だ!」

「うん!アトラスレイダーならこれくらい!!」

 ハオはアトラスレイダーの出力を僅かに上げて行く。すると、アトラスレイダーの両腕が徐々に広がって行き、何とかアームから脱出する。

「よし!」

「流石にやるね!」

 アトラスレイダーの脱出を確認したドリトはアルゴアーマーの射出したアームを繋がっているワイヤーで腕へと回収する。

「ならこれで!!」

 すると今度は両腕から複数のハッチが展開すると、300mmの演習用小型ミサイル弾が役100発程発射され、各レイダーへと降りかかる。

「うおっ!?やっべ!!」

「きゃあ!」

「これは流石に、迂闊に近付けませんね……!」

 レイダーズはミサイルを何とか回避しようとするも、ミサイルは各レイダーへと次々に被弾して行く。しかし、然程ダメージを受けた様子は見られなかった。

「目眩しさ!小型ミサイルなんてTEには効かないから、敢えて威力は度外視して生産性を推している!」

 そう言いつつドリトは次のミサイルを放ちながらホバリングで駆け回る。

「くっ!コイツは『ヒト型TE』に匹敵する厄介さだなァ!!」

 何とかミサイルを回避して接近を試みようとするブレアだが、やはり防御だけで手一杯になってしまう。その時、カレンから通信が入る。

「ブレアさん!申し訳ありませんが、暫く盾にさせて頂けませんか?」

「カレン!いや別に良いけどよ、ハオたちじゃなくて俺でいいのかよ」

「ええ、アトラスレイダーなら単機であれくらい何とか対応出来ますし、防御で手一杯で全く手が出せない役立たずのブレアさんを盾にした方が一番かと」

「言い方ァ!」

「それでは失礼します!」

 そう言いながら、カレンのストームレイダーがブレアのバスターレイダーの後ろに付く。それを確認したブレアも、バスターチェーンソーを盾にしながら素早く移動するアルゴアーマーを追って行く。

「ったくしゃーねぇ!カレン、突っ込むぞ!!」

「はい!!」

「考えたじゃないかブレア!でも近付いた所で無駄なんだなこれが!!」

 ドリトがそう言うと、アルゴアーマーの左腕に内蔵された砲弾を発砲する。

「うおっ!?」

 ブレアはその砲弾を何とか避ける。砲身から放たれた弾は地面に当たると、緑色のペイントをぶち撒ける。

「どうしても近付けさせないつもりだな!」

「落ち着いてくださいブレアさん!弾速は然程早くありません、的確に避けてください!」

「無茶言う!だが了解した!!」

 ブレアはミサイルの雨を受け止め、砲弾を避けながら何とか接近を試みる。

「無駄無駄!そんなんじゃアルゴアーマーには近付けないよ!!」

「おい!俺らを忘れんじゃないよ!!」

 トードが叫ぶと、アトラスレイダーの背面の砲身からマシンガンが放たれる。しかしそれは当然フィールドに防がれて当たらない。

 更に、それに重ねて勇もライフルで応戦する。当然それも当たる事は無かった。

「粘るねぇ!でもこれくらいじゃアルゴアーマーは傷付かないよ!!」

 ドリトは露払いをするべく振り返り、砲弾を勇たちの方へと向けて発砲した。

 アトラスレイダーはそれを盾で防ぎ、グリフィンレイダー改は身軽にかわす。

「おい、ドリト。俺たちに構ってていいのか?」

「なっ!?イサミ隊長、どういう……」

「余裕は油断に繋がるという事だ」

 勇の言葉にドリトが振り返るとそこには、砲弾とミサイルの雨が2人の方に集中した一瞬を狙って、ブレアのバスターレイダーの構えるバスターチェーンソーを踏み台にした、パワーライフルを構えたカレンのストームレイダーの姿があった。

「振り向きましたね……!」

「なっ!?だがしかし!!」

 アルゴアーマーは再びフィールドを発生させる。

 しかし、カレンはそれを待ってましたとばかりに瞬時に狙いを付け、そのままパワーライフルを放った。

「っグァっ!!」

「っくぅっ!!」

 パワーライフルを放ったストームレイダーと、それを支えていたバスターレイダーはその威力に吹き飛ばされる。

 そして、その弾丸はアルゴアーマーのとある一点を狙って突き進んで行く。それは……。

「まさか!」

 パワーライフルの弾丸は、強固なフィールドをその勢いのまま貫き、アルゴアーマーの胸部に装備された、展開状態で露出した防御フィールド発生装置を砕いた。

「しまった!イサミ隊長の言葉はフェイクか!!」

「そうだ。それ以前に、俺たちに気が向いた時点で既に罠の中に居た」

「……やられたね」

 ドリトは観念したかの様子でアルゴアーマーを停止させる。

 一方、パワーライフルの反動で吹き飛ばされたブレアとカレンは、レイダーを横転させたまま身動きが出来なくなってしまっていた。

「すみませんブレアさん……反動を抑える態勢を取る暇がありませんでした……」

「いや、いいさ……むしろあの一瞬であんな所に狙いを付けられるカレンはスゲェって」

「いえいえ……」

「お前ら、イチャつくのも良いがまだ演習は終わってない事を忘れるなよ」

 勇が茶化し混じりに説教する。

「イチャついてねーよ!!」

 しかし、バスターレイダーは何とかギリギリ動くものの、ストームレイダーはピクリとも動かなかった。

「申し訳ありません、どうやらライフルの反動に耐えられなかったみたいです……」

「あちゃー……しゃーなしだ、後は任せな!」

 軋む音を立ててバスターレイダーが立ち上がる。

「まったく、流石に激戦を共にしたチームの連携は素晴らしいよ!でもね、こんな事で戦えなくなるアルゴアーマーじゃないんでね!!」

 するとアルゴアーマーは、まるでドリトの叫びに呼応するかのようにカメラアイを光らせ、まるで雄叫びを上げるように音を立ててジェネレーターを回転させた。

「総員備えろ!」

「これが切り札ッ!!」

 アルゴアーマーは両腕を上に向けると、腕の装甲がガバッと展開、まるで稲妻のように電気が走り、その状態で両アームを合わせた。

「『エレクトリック・スパーク』ッ!!!」

 ドリトの叫びが轟く。それと同時に、両腕から展開された放電シャフトから周囲へと電流を迸らせる。

「!?」

「んなっ!!」

 周囲に撒き散らされた電流は、残存しているレイダーをショートさせ機能を停止させた。

「これを使ったら、流石に演習にならないと思ってあっためておいたんだ」

「マジかよ……」

 一同は驚愕するが、ただひとり顔色を変えずにレシーバーから無線通信を入れる者がいた。

「確かにコイツなら一撃必殺に成り得るな。だがしかし、初動から何がしたいのか丸わかりだな」

 勇がそう言うと、再びグリフィンレイダー改が起動を始めた。

「電気が通っていなければショートなどはしない。まあ、賭けに勝っただけだがな」

「何を!!」

 アルゴアーマーがアームを飛ばしてくる。しかしグリフィンレイダー改はそれを難なくかわす。

「ミサイルを撃ってこないな。残弾が無いのだろう?」

「クソぅ!!」

 アルゴアーマーは近付いてくるグリフィンレイダー改から距離を取ろうとする。しかし、先程よりもスピードが出ない。

「チクショウ!動きが鈍い!!」

「勝ちを急ぎ過ぎたな。電力低下でノロマになっているぞ」

 そう言っている間にも、グリフィンレイダー改はムラマサを片手にアルゴアーマーの目の前まで接近していた。

「負っ!?」

「終わりだ」

 グリフィンレイダー改のムラマサがアルゴアーマーの首を落とす。巨大な頭が地に落ち、ガシャンと大きな音が響いた。

「クッ……はぁっ。やっぱり流石だなぁ、イサミ隊長は。負けたよ」

「いいや、正直俺も賭けに出なければ勝てはしなかっただろう。それに……」

 勇はコックピットから出ると、同じくコックピットから出て集まった仲間たちに顔を向ける。

「俺の自慢のチームが居たからこその勝利だ」

 その言葉を聞いて、パイロットの一同は嬉しそうに笑う。

「……そっ、か」

 そして、負けたドリトも同じく笑顔になる。


レイダーズ本部、発着場。

 一同は演習を終え、本部へと戻っていた。軍の整備員たちも、アルゴアーマーの各パーツを輸送機へと積み込み終えている。

「おいおい、ドリト……もう行っちまうのかよ」

「うん。もうやりたい事も終わったし、博士からは早く帰って来いって言われているんだ」

 親友の早い家路に心残りな顔をするブレア。それはドリトの方も同じだった。

「もっと色々話したい事とか沢山あったんだけどね……」

「ああ、俺もだぜ……」

 肩を落とすブレアだったが、それを見たドリトが真剣な顔で口を開く。

「……なあ、ブレア。キミもアメリカに来ないか?」

「え?俺が……?」

 ドリトの意外な言葉に驚くブレア。しかし、その顔はゆっくりと微笑みへと変わる。

「……ありがとな。でも、その誘いは応えられねぇ」

「どうしてだい?」

「俺にはよ、レイダーズがあっからさ」

 そう言ってブレアは基地の方を振り返る。

「レイダーズ、かあ。でも、それって半ば無理矢理入れさせられたようなものだろう?キミが『元軍人の受刑者』だったから……それに財団の規約も変わったし、キミは既に保釈金分の働きをし終わっている筈だよ」

「そういう話じゃねえんだよ。俺は……自分の意思で、地球を守りたいんだ。ここに居る、仲間たちとさ」

「……そっか。ブレアは余程ここが居心地いいんだね」

「まあなっ」

 ドリトは優しげな笑みを浮かべる。それにブレアも照れ臭そうにニカッと笑った。

「それじゃあ、また会おう、ブレア」

「ああ!またな!!」

 そうして、ドリトを乗せた輸送機が飛び立つ。それをブレアは笑顔で見送る。

「……」

 ドリトは輸送機から小さくなって行くブレアを見下ろす。その顔は寂しそうな表情をしていたが、それは別れを惜しむ寂しさとはどこか違っていた。

「ブレア……ちょっと、残念だなぁ」

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