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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
COW BELL
21/50

CALDONEN

アメリカ某所、ウィルソン財団周辺。

 レイダーズはウィルソン財団の兵士『カウベル』と、それを指揮する『牛飼いのカルドネン』との戦闘を開始、勇はカルドネンとその配下のヴェルベットと対峙するのだった。

『ヴェルベット、良いものを見せてみろ』

『ああ……わーってるよ』

 ヴェルベットのブラスティレイダーは2振の大鉈を両の手に握ると、勇のグリフィンレイダー改にゆっくりと歩みを進めてゆく。

「ムラマサ……起動ッ」

 勇はグリフィンレイダー改の腰に帯刀したムラマサを引き抜き、それを横に構える。

『へへっ……嬉しいねぇ。人生の幕引きがお前との死合になるとはねぇ』

「ヴェルベット、やはりお前の体は限界か……」

『まぁな……。でも俺は夢見心地だなァ……こうして死に目にお前と、愛を語れるんだぜェ』

「そうか。だが俺は貴様の愛を否定する。そして俺は、真に愛するこの星のために必ず生きて勝利する!」

『言うじゃァねェの……来いよ』

「ヴェルベット……覚悟ッ!」

 勇はムラマサを上段に振り上げ、そのまま一気に振り下ろす!。しかしヴェルベットはそれを左手の大鉈で受け止めた。

『ヒェアッ!!』

 ヴェルベットはそのまま左の大鉈でムラマサを地面に押さえつけると、右の大鉈を振りかぶる。

「ハッ!!」

 勇はその右腕を左手で受け止めて、ヴェルベットの機体を蹴り飛ばして再びムラマサを構える。

「どうした?俺はまだ本気じゃないぞ?」

『知ってるよッ』

 ヴェルベットも再び大鉈を構える。

 勇は間合いを詰めてムラマサを何度も振る。それをヴェルベットが後退しながら大鉈で何度も受け流す。

 やがてヴェルベットが足を止めると、ムラマサの上段からの振りを両方の大鉈で受け止めて弾き返す。

『ハアッハッハッハッ……楽しいッ楽しいゼ勇ィ』

「……ッ、ヴェルベット……」

 再び、お互いが得物を構え、今度は膠着状態に持ち込まれる……。

「……」

『ハッ……ハッ……』

 2人の読み合いは、まるで水の中を静かに揺蕩うようにゆっくりと、しかし確実にその瞬間に向かって進んでいく。

「…………」

『…………』

 勇とヴェルベットはお互いに睨み合う。先に動いた方が負ける、そんな予感すら覚えるほどに静かな時が流れる。

 しかし、その静寂は意外な形で破られることになる。

『ヴフゥッ』

「!?」

 ヴェルベットが急に咳き込む。勇にはその時の様子を目視する事が出来なかったが、彼の口からは大量の血が溢れ出していた。

『ヒュゥ……ッ……ヒュゥ……ッ……ヒヒ、ッ。コイツは傑作だなァ』

「何があった……?」

『ウルセェよ……俺はよォ、早くお前とケリ付けたいんだよォ』

「……」

『ハァ……ふぅ……。V.N.L.S、起動』

 ヴェルベットがブラスティレイダーのV.N.L.Sを起動させる。機体が装甲を展開させ、スラスターを露出させる。

 そして、それと同時にヴェルベットの肉体には猛烈な痛みが全身に駆け抜ける。

『ッッッグアアァァァッ!!』

「ヴェルベット!!」

 ヴェルベットは持っていたありったけのモルヒネを腕に刺すと、機体のスラスターを吹かせて勇に突撃する!!

『ウオオオッ!!勇イィィィィ!!!』

「哀れな男ヴェルベット……その勝負受けて立とう!V.N.L.S起動ッ!フルリンケージ!!」

 勇もグリフィンレイダー改のV.N.L.Sを起動する。グリフィンレイダー改は装甲を展開させスラスターを露出させる。

「これがキサマの覚悟か……そんな悲しい覚悟、俺が斬る!」

 勇はムラマサを腰に再び帯刀させると、高速で向かってくるヴェルベットを真正面で睨む。

『勇イィィ!!』

「……さらば、ヴェルベット」

 勇はムラマサを抜き放ち、居合切りの要領で一閃を放つ。それはヴェルベットの機体を切り裂くと同時に、コックピットブロックにも到達した。

『グバァッ……!』

「……」

『ヘッ……ヘヘッ……嬉しい……ナァ……』

「……ッ」

 やがて、ヴェルベットの機体は力無く地面に倒れ伏す。

『…………』

 勇は倒れて動かなくなったヴェルベットの機体を背に、ただ静かに刀を腰に帯刀し直した。


『見事だ。見事な『茶番』だったよ。オーケストラのホールできらきら星を聴かされた気分だ』

「カルドネン……ッ!」

『時にレイダーズのキサマ、音楽は好きか?』

「今は貴様の声ですら騒音だ!黙っていろ!」

『そうか、俺は好きだ。特にレクイエムは良いものだ』

「……貴様と音楽談義をする気は無い」

『俺にはレクイエムを超えるクラシックは他には無いと考えている。そうだ、お前にも聴かせてやろう。お前が最期に聴く音楽だ。至高のひと時をお前に与えよう』

 カルドネンはオープン回線で音楽を流し始める。そして、カルドネンの謎のレイダーは両手に拳銃のような武器を持ち、勇のグリフィンレイダー改に銃口を向ける。

「無駄だッ!」

 勇はムラマサを引き抜くと、その切っ先を向けて突進してゆく……。

『……お前のレクイエムを奏でろ』

 それを迎え撃つカルドネン。カルドネンは構えた2丁の拳銃を放ち、向かい来るグリフィンレイダー改の構えをブレさせる。

「……ぐッ」

『ハハハハハハハッ!!さぁ、楽しもうじゃないか!!!』

「この……ッ!」

 それでも勇はムラマサを振るい目の前の敵を斬り伏せようとするが、それをカルドネンの乗るレイダーはひらりとかわしてみせる。

『俺にとって戦場こそ真に美しいと言える景色……大地は血に染まり、人々は永遠に安らかに眠る。それこそ鎮魂歌を奏でるに相応しいホール足る』

「貴様に命を語る資格は無いッ!!」

『いいや俺ほどに命を語れる者など居はしないだろう!戦地で戦いながら育った俺には分かる!人は常に血を求め命のやり取りを謳歌するために生きている!』

 カルドネンは両の手の銃でムラマサを弾き返すと、勇の機体に向けて次々に弾を放つ。勇はそれをムラマサで防ぎつつ、再び距離を詰めながら言い放つ。

「戯言を!貴様はただの哀れな殺戮者に過ぎん!!」

『ならば貴様はどうだ!貴様は正義を振り翳し、向かってくる命を絶つためにその剣を握るのだろう!その血に塗れた手で貴様は誇りを持って誰かと手を繋げるのか?否ッ!断じて否だ!!』

「……ッ」

『所詮は力を力で殺しているに過ぎんのだ!そこに横たわるヴェルベットも貴様に真の正義が有れば殺さずに済んだかも知れんなァ?』

「……ッ!!」

『ククッ……ハハッ!!いいぞいい音色だ!貴様の絶望の音色はまるで踏み潰された小鼠の悲鳴ように美しい!!』

「ッ……黙れえぇッ!!」

 勇は再び、ムラマサを両手に握り敵に向かって走り出す。

『いいぞ、もっとだ……もっと聞かせてくれ……』

「この……ッ」

 勇はムラマサを横に薙ぎ払う。しかし、それをカルドネンは余裕で受け止めてしまう。

「!!」

『フンッ……』

「なッ!?」

 カルドネンは勇のムラマサを受け止めると、そのまま押し返し、逆に勇の機体を押し倒してしまう。

『甘いなぁ甘いぞ!甘すぎるぞ!!こんなもので俺を殺すつもりだったとは!!』

「グッ……離せッ!!」

『無理もない。哀れだからな、タネ明かしをしてやろう。このアークレイダーにもV.N.L.Sは搭載されている。しかし、貴様とヴェルベットが集めてくれたデータから算出した、より最適化された神経接続機構だがな!その上、最適化されたV.N.L.Sはこの機体を起動した時点で発動するようにプログラムしてある。つまり、常に俺は最高のパフォーマンスを発揮できるという訳だ』

「クソッ……」

 勇のムラマサを弾き返した後、再びカルドネンの銃撃が勇を襲う。勇はそれを防ぐが、やがて体勢を崩されてしまう。

『このように!』

 カルドネンのアークレイダーが、グリフィンレイダー改のコックピットに銃を突きつける。

「……キサマは、哀れだ」

『ほう、負け惜しみに俺を哀れむか』

「キサマは戦場でしか生きた事が無い。戦場でない場所で生きるのが耐えられない哀れな男だ。だからキサマは『カウベル』という駒をかき集め、それを統率することで自分の居場所を確保しているに過ぎない。それが無ければキサマには何も残らない」

『……』

「ヴェルベットも、そんなキサマに利用され、そして死んだ……。ヴェルベットは確かに愚かで、救いようの無い悪人だ。それでも、奴は俺に執着する程度のくだらない生き甲斐は持っていた……。その点、お前は違う」

『……』

「本当の意味で、空っぽだ」

『フッ……フッハッハッハッ……!いいぞ!実にいい音色を吐くじゃないか!そうさ、俺には戦場しか残っていない!!それ以外に何も無い!!だからこそ俺は戦場を提供してくれる財団に感謝しているんだよ!!』

「……」

『俺は俺の存在意義のために戦う!そして、その果てに死ぬ!!素晴らしい人生だと思わないか!?』

「……やはりお前は哀れだよ。キサマの生き方は『来訪者』以下だ。キサマの理想の先にはチリも残らない」

『そうか、ならお前のレクイエムで俺を満たせ!』

「……」

 勇は無言でムラマサを構える。その様はまるで雨に打ち付けられようとも不動の岩の如く、されどその瞳に宿る意志は灼熱の太陽の如く熱く……。

「ムラマサ……『共鳴』」

『安らかに、眠れ』

 カルドネンは構えた銃の引き金を引く。そして次の瞬間、引き金を引いている筈のアークレイダーの腕は宙を舞っていた。

『ッ!?』

「……」

 勇の放った一閃によって、アークレイダーの右腕は肩口から切断されていた。

「カルドネン……お前のお粗末な演奏は聞き飽きた。さあ、幕引きの時間だ」

『なっ、何だ!剣が見えなかったぞ……!』

 カルドネンに渾身の一閃を放ったムラマサの刀身は妖しい紫色の光を輝かせており、カルドネンは一瞬、その刃が消えたように見えた。

「『共鳴』……V.N.L.S発動時にムラマサに神経を集中させる事で瞬発力を飛躍的に向上させる機能だ。お前のV.N.L.Sでは俺のムラマサは捉えられない」

『……チィィ!!』

 カルドネンは残った左手の銃で勇のムラマサを撃つが、勇は難なくそれをかわす。

「無駄だ、その程度じゃ当たらない」

『クソォッ!』

 カルドネンはスラスターを吹かせて後退しようとするが、ムラマサの一閃がそれを許さなかった。

「逃さない……!」

『グアァッ!』

 勇のムラマサは、カルドネンのレイダーの左腕を切断した。

『グッ……グウゥッ……』

「カルドネン……お前の騒音をここでかき消……ッッ!!」

『共鳴』の猛攻により怯むカルドネンだったが、そんな相手を前にして勇は足を止めてしまう。

『は……ハハハッ!!やはり前時代のV.N.L.Sだな!!そんな攻撃を続ければ相当な負荷になるのは目に見えていた筈だろうに!!』

「……」

『ククッ……だがな、本当はここで終わりにしたかったがな……こちらももう手詰まりだ。オマケに、君の仲間もここに集まって来たみたいだ。喜べ、全員無事らしい』

「……」

 カルドネンの言う通り、勇が振り返るとそこにはレイダーズの機体が誰一人欠けることなくこの場所へと向かっていた。

「隊長!無事ですか!?生きてますか!?」

「ああ……な、なんとかな……」

 全員が勇を囲んで心配そうな表情で見つめてくる。そんな中、カルドネンの機体にエレナ・ウィルソンから通信が入る。

『『牛飼いのカルドネン』、まだ戦いは終わってませんよ!早く『カウベル』の増援を呼びなさい!そしてそのお粗末な犬を殺すのです!』

『悪いな、エレナ・ウィルソン。お前たちとの契約はここで終わりだ』

「!!」

『!?な、何ですって!?』

「カルドネン!どういうつもりだ!」

『俺は気付いたんだよ。俺は何もない空っぽの男だ。何も無いし何一つ得ることの無い哀れな男だ。だがな、それに気付かせてくれた男が居る。俺はそいつがこれからもっと強くなるのが楽しみで仕方ない!だからこそ、そいつと殺し合えるこの世界が必要だ……世界が滅べば戦争出来ないからな……!』

「カルドネン……」

『俺は『カウベル』を解体し、ただの傭兵として一からやり直す……そして勇、お前にまた出会った時に満足に殺す』

「ああ、望むところだ」

『エレナ・ウィルソン。お前は俺を満たせなかった。お前の音は騒音以下、鬱陶しい蚊の羽音のようなものだ』

『き、貴様ァッ!』

『じゃあな。次会う時までに『来訪者』の兵隊の足の裏にへばりついていたら鼻歌で笑ってやるよ』

『カルドネン!!』

 カルドネンは通信を切ると、そのままレイダーズに背を向けて飛び去ってゆく。その後ろ姿は何処か満足げだった。

「ま……待てッ!!……クソッ」

 ブレアが追おうとするが、勇がそれを止める。

「ブレア、俺たちは任務を達成させた。俺たちは勝ったんだ」

「隊長……」

『はいはいみんなお疲れ様〜!では今度は私たちの番だからねぇ〜ゆっくり休んでねぇ〜!』

 今度はフランクリン会長が通信を入れる。フランクリンはどうやら複数人の武装した人員を呼んだようだ。

「か、会長!これは……」

『彼らはFBIだよ!エレナ・ウィルソンを逮捕するために呼んだのさ!!』

「な、なるほど……」

『彼女には『カウベル』を扇動した疑いがあるからね!それに彼女は財団の最高責任者だからね!責任を取らせるためにも、我々は彼女を拘束しなければならない!それが我々の1番の狙い!つまり……』

 フランクリンの通信に、今度はミレーナが割って入ってくる。

『その隙を突いて私が母の椅子を乗っ取り、最高責任者の首をすげ替える作戦なのですわ!』

『そういう事だよ!そして丸洗いされた財団は我々の傘下になるの!これで『カウベル』は壊滅!あとはエレナ・ウィルソンと、その背後関係を調べるだけさ!!』

 2人の意気揚々とした言葉に、一同は安堵の表情を浮かべる。

「つまり、これで一件落着となる訳ですね」

『うんうん!みんなよく頑張ったよ!ご褒美に何か美味しいものでも食べさせてあげるからねぇ〜!』

「ええ、でもまあとりあえず、疲れたので食事よりいいベッドが欲しいです……」

「俺も同じ意見ですよ……」

「ほんと、疲れたよね〜」

「そうだな、ご苦労さん」

「わたくしは少し物足りなかったですかねぇ」

「カレン……は〜ぁ」

 こうして『カウベル』との壮絶な戦いは一時解決、レイダーズは勝負を納めて日本へと帰って行ったのであった。


アメリカ某所、刑務所。

 エレナ・ウィルソンはレイダーズとシリウス商会の働きにより今まで行ってきた黒い実態を明るみに晒されて逮捕、監獄に入れられていた。

「やあやあエレナくん!居心地はどうかな?」

「最悪ね。家畜小屋みたいだわ」

「お母さま……」

「ミレーナ……私は貴女の事は信じていたのですが……まさかこうまで憎まれていたのですね……」

「はい、そうですわ。貴女はお父様の地位を欲して、それを手に入れるためにお父様を……私を裏切った。それが許せないのですわ……」

「……」

 エレナは、自分の娘を鋭い目で見つめる。しかし、その視線は軽蔑でも怒りでもなく、悲しみによるものであった。

「ですが……お母様、私は貴女が憎い。でも、それと同じくらいに貴女を愛しているのです……」

「ミレーナ……」

「この服も、宝飾品も、私が口にしたものだって……全てお母様の与えて下さったもの……そしてそれらは、貴女が親身に私のためを思って選んでくれたもの……その思い出だけは、どんなに汚れても消えない……愛しているんです、本当に……!」

「ミレーナ……私の可愛い子……こんな母親を許してください……!愛しています……心の底から……!ごめんなさい……!ごめんなさい……っ!」

「お母様……貴女のした事は決して世間は許さないでしょう……だから、お母様……罪を償ってください……それが、今の私にとっての救いです……」

「ありがとう……ございます……!」

「…………」

 エレナは涙を流しながら、自分を見つめる娘の手を握り締める。そんな2人を、ミレーナの付き添いで来ていたフランクリンとシリウス商会の職員が黙って見守っていた。

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