TWINS
あれから数日が経った。
世界では『来訪者』による襲撃が続いている中、日本では暫しの安息の時間が流れていた。
そんな中で、シミュレーションルームでただひたすら、1人で訓練をするブレアの姿があった。
(クソッ…いったい何だってんだよ、どいつもコイツも…!!)
ブレアは不満を募らせていた。
先の戦いでは、初めて組む事になった男がチームの隊長に任命され、その初陣の作戦中に敵が新型機を投入。それにより危機的状況になる中でそれを脱するためにその男が仲間を射殺する光景を目の当たりにさせられた。
サムは死んだ。彼女の死は状況的にも仕方がなかったが、ブレアは未だにそれを割り切る事が出来なかった。
そして今日、マックからある事を告げられる。
「すまない、ブレア。今まで黙っていたが、俺は明日、アメリカの別の隊に転任する事になった」
「!?な、何でだよマック!!何でそんな急に……」
「あんな事があった後だ…言い辛いだろ……」
「それはそうだけどよ……」
確かにあの一件の後だと、言う事は躊躇われるだろう。だが、だからと言ってこんな突然過ぎる別れ方などあんまりではないか……。
しかし、今の自分には何も出来ない事も分かっていた。
(いったい……俺はどうすれば良いってんだよ……)
いつもなら一発も外さない的当ての訓練でも、この日は結局的に掠りすらしなかった。
次の日、朝早くからマックは荷物をまとめて部屋から出て行った。
彼は別れの挨拶を基地の皆と済ませて行き、ヘリに乗って新たな戦地へと向かった。
それを見送ったブレアは、全てに取り残されてしまった気分になり、しばらく呆然としていた。
そして昼頃、基地のグラウンドで惚けていたブレアだったが、輸送機が上空を飛んできたのを見てはっと我に返った。
「……なんだ、ありゃ」
輸送機を見上げるブレアに、せかせかと駆けていた初老の男、杉田という作業員の男が話しかける。
「ありゃあ財団からの補充だな。この間の作戦で結構消耗しちまったからなぁ」
「ふーん……」
男の話を聞きながら、輸送機を見る。
輸送機はそのまま基地の滑走路に着陸すると、物資の搬入作業が行われ始めた。
「お前も見て来るといい。おそらくアレが来てるぜ」
「アレ……?」
杉田はニヤリと笑うと、その場を離れて行く。
ブレアは彼の言った"アレ"というのが気になって格納庫へと足を運んだ。
そこには見慣れない機材がいくつか並んでおり、整備員達が忙しく動き回っていた。
(なんだこの機械…もしかして新しい装備でも出来たのか?)
その時、後ろから誰かに声をかけられた。
「おい、それは俺たちのもんだ。気安く触るんじゃない」
ブレアが振り返ると、見慣れない若い男女が2人立っていた。
「な、なんだお前ら」
「俺達は財団から派遣された『補充』だ」
「『補充』……お前が……」
ブレアは少し警戒しながら、2人の様子を見た。
すると、女の方がブレアの方へ素早く近づいて来た。
「ハァイ!!あなたがここの隊員さんね?私は琳好好。ハオって呼んでね!!」
そう言って握手を求めてきた女性に対し、ブレアは戸惑いながらもその手を握った。
「お、おう……俺はブレア・ヒューズだ……えっと、そっちは?」
ブレアは男の方を向いて名を聞く。男は静かにボソリと返事をする。
「……トードだ」
(トード(ヒキガエル)……ひっでえ名前だな)
言葉を零しそうになるブレアだったが、それを堪えて笑顔を作る。
「そうか、よろしくな、トード!」
ブレアはトードに手を差し出したが、トードはそれを軽く無視すると、格納庫の外へ向かって歩き出す。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!これから一緒に戦う仲間じゃねえか、もっと仲良くしようぜ」
「別に仲間じゃない。それに馴れ合うつもりもない」
「何だよ、つれない奴だな……」
「まあまあ、トードっていっつもあんな感じだから、気にする事ないよ!!」
「そ、そうなのか?」
「うん。でもね、トードってああ見えて優しい所もあるんだよ」
「そ、そうか……」
(何だアイツ、よく分かんねぇやつだな……)
格納庫から去りゆくトードが、こちらを振り返って声をかける。
「ハオ、お前も来い!」
「ほーい!!」
2人はそうして去って行った。
残されたブレアは、彼らの背中を見送りながら呟く。
「……アイツらと、上手くやっていけるかなぁ……」
そんな不安を抱きつつ、ブレアは搬入された物資を確認するため格納庫内を見て回る。
すると、機体のチェックのために来ていた勇と出会す。
「あ……」
「……」
勇は気にしていないようだが、気まずい空気が流れる。
だが、このまま黙っている訳にもいかない。勇気を出して、ブレアから口を開く。
「よ、よう……隊長」
「……何か用か」
「い、いやその……さっき格納庫に来た2人組の補充が来たんだけどよ……あの2人、どんな連中だ?」
「知らん。財団は決して人材の情報を明かさないし、俺も聞く気はない」
「そ、そうか……」
そう言うと、勇は再び機体の整備に戻った。
その後ろ姿を見ながら、ブレアは拳を硬く握る。
(クソッ……!!アイツは正しい判断をした…でも俺、まだ腑に落ちねぇよ…)
ブレアはずっと悶々とした気持ちを抱えたまま、自分の部屋へと戻る。
自室の扉の前まで戻ると、両隣の部屋が静かな事に、なんとも言えない寂しさを感じる。
普段であれば、両隣の部屋にはサムとマックが居たのだが、今はもう2人は居ない。
「畜生……」
小さく悪態をつくと、ブレアは自分の部屋に入った。そしてベッドに腰掛けると、そのまま横になる。
「……ちくしょう……」
何度も同じ言葉を繰り返していると、不意に端末から着信音が鳴り響く。ハンスからだ。
ブレアはそれを見ると、飛び起きて電話に出た。
「はいもしもし、ブレアです」
『何やってるブレア!機体の調整をするんだろ?今すぐハンガーに来い!』
「は、はい!!」
ブレアは慌てて準備をして、急いで格納庫へと向かった。
格納庫に着くと、そこには先程の輸送機から降ろされた新装備があった。
「これが……新しい装備か」
ブレアが見上げるその装備には、以前のものよりも大きなバックパックが取り付けられている。
さらに、腰には何やら物騒な物が下がっていた。
「これって……チェーンソーか……?」
「ああ、コイツは新兵器のバスター・チェーンソーだ!……まだ試作型だがな」
新装備におどろいていると杉田が話しかける。
「杉田さん!」
「おう、どうだこの武器は?お前さんの近接特化型の機体に合わせた、パワータイプの武器だと思うんだが……」
「ありがとうございます!!これがあれば、もっと強くなれます!!」
ブレアは目を輝かせながら、そのチェーンソーを見つめていた。
先の戦い、敵が送り込んできた新型兵器『ヒト型TE』……それが操る頭部から生える無数のムチの前では、通常の機関砲や大鉈では太刀打ち出来なかった。
しかしこれが有ればヤツにも対抗出来ると確信する。ブレアにとってそれは希望にも見えた。
「よし、早速テストを行うぞ。パイロットスーツを着込め!」
「はいっ!」
ブレアが意気揚々として着替えをしていると、背後からトードの声が聞こえてきた。
「随分大層な武器だな。木こりにでも転身したのか?」
「あぁ!?なんだテメェ喧嘩売ってんのか?」
「そいつで敵を完璧に叩き潰せるつもりでいるのかと言っている」
「どういう意味だよ」
トードの言葉の意味がよく分からず、ブレアは聞き返す。
「いいか、敵は遥かにデカい。その上、余裕で大気圏を突破して地球で破壊活動が行える程強固だ。今までは敵が怯んだ隙を突いて脚の関節などを狙い撃破してきたが、新型が出て来た事でより戦況が悪くなった。これからは、そんな悠長な戦い方じゃ勝てない」
「だから何だってんだよ!」
「……俺たちが本当の戦い方ってのを見せてやるよ」
「あぁ?」
日本某所、廃墟街。
戦いの痛ましい爪痕が残る中、開けた場所に2機の輸送機が着陸する。
輸送機からはそれぞれ2機ずつ、計4機のバスターレイダーが出撃していた。
その中の1機、背面に何やら巨大な機械を背負い、肩に『蛙』の文字のペイントが施された機体が現れる。
「あれがトードのレイダー……何というか、パーソナルペイントがそのまんまだな。しかし……」
やはり注目する部分は、背面の謎の機械だろう。
「あれはいったい何だ……まるでデカいジェネレーターみたいだ」
「それは実際に見て貰えば分かる。それより、何だあの武装は」
トードが指すもの……『鷹』の文字のペイントの機体、勇のレイダーだ。
ブースターは標準のもの、武器は2振の大鉈と一丁のライフルだ。
「質素というか、貧相だな。アレでよく戦場に出れるな」
「まぁ、アイツらしいと言えばそうだが……」
そして今度は、ハオの機体が姿を見せる。
「ハァイ!お待たせ!!」
ハオの機体の左肩には『兎』の文字がペイントされている。しかしそれよりも、その特異な装備に驚いた。
通常なら背部に付いているブースターは両腰に付け変わっており、両肩にミサイルポッドとレドーム、両腕甲部に中型マシンガン、胸部には強固そうな追加装甲、頭部には上に伸びた2本の板のようなアンテナ、さらにはこれまた用途不明の筒のような物が背部に装備されていた。
そして極めつけは、両手に持った大型バズーカだ。
「お前、それ本当に使う気か……?」
「もちろん!コレが一番使いやすいんだもん!」
「マジか……近接装備が一切無いが大丈夫なのか……?」
ツッコミを入れるブレアに、代わりにトードが答える。
「問題ない。ハオは元々遠距離戦が得意だからな」
「そ、そうなのか……?」
「そもそもお前が心配する事ではない。むしろ今から自分の心配をする事になるんだからな」
「何!?」
ブレアがトードの言葉に反応すると、ハンスからの通信が入る。
『お前ら、準備が整ったぞ。これから実践練習及び機体の動作テストを行う。』
ハンスがそう言うと、上空から複数の機影が確認される。実践練習用のドローンだ。
『これより実戦形式による訓練を開始する。目標は無人機25体全て、撃破しろ!!』
「了解!」
そうして実践が始まると、4機は一斉に散開し、それぞれ目標となるドローンに向かって飛ぶ。
「よし、まずは1体目……」
ブレアがドローンに銃口を向ける。しかし、引き金を引く前にドローンが撃墜されてしまう。
「んなっ!?」
驚くブレアの眼前には、既にトードの機体が迫ってきていた。
「よそ見してんじゃないよ!!」
「うわああああっ!!」
ブレアは慌ててブーストを吹かし、その場から離れる。
「く、クソッ!!」
ブレアは体勢を立て直すと、再びドローンへ狙いを定める。
「喰らえ!!」
ブレアは上空からドローンに向かって突撃する。ブレード状の足部がドローンを捉えると、そのまま銃口を向けて今度こそ撃ち落とす。
「よっしゃ!!」
「ふっ、戦い方が低レベル過ぎる」
ブレアが振り返ると、そこには一度に2体のドローンを撃ち落としたトード機が立っていた。
「な、お前いつの間に……」
「ノロいんだよ!!」
トードはそう吐き捨てるように叫ぶと、ブレア機に向かって突撃してきた。
「うおっ!!何やってんだよ!!目標が違うだろ!!」
「うるさい!!黙れ!!」
ブレアの機体はそのまま押し倒され、地面に叩きつけられる。
「く、くそ!!」
「そこで大人しくしといて貰おう。その間に残りのドローンを……!」
トードがドローンに狙いをつけようとしたその時、遠方からの狙撃により体制を崩し、狙いが逸れて銃弾が空を切った。
「何!?」
狙撃が行われた先には勇の機体がライフルを構えていた。
「妨害がアリなら、これもオーケーという事だな?」
「貴様……!」
勇はライフルの照準をトードの機体に合わせ、発砲した。
「ちぃっ……!」
トードは咄嵯に回避、攻撃を逃れる。
「このやり方は悪手だったな!しかしやられっぱなしも癪なんだよ!!」
トードの機体が銃撃をしながら勇の機体へ接近する。しかし勇はそれを全て避けきると、一瞬で裏を取り機体の喉元に大鉈を向ける。
「気は澄んだか」
「ちいっ……そんな装備でこれ程までに……!!」
トードは大人しく引き下がると、そそくさと去って行った。
「……礼は言わないからな」
「別に。ただ躾をしただけだ」
「そうかよ」
ブレアが機体を起こすと、ハンスから通信が入った。
『おいおい、別にトラブルは構わんが、あまり機体に傷を作るなよ!』
「すいません、次からは気を付けます」
『ったく……まぁいい、まだドローンは19体残ってる。直ちに続行しろ!』
「はい!」
その後、ブレア達は連携しながらドローンを撃破していった。
トードは相変わらず協調性が無いため、度々衝突していたが、徐々にその実力を発揮し始めていた。
「そこだ!」
ブレアが放った弾丸がドローンを貫き墜落させる。その横では、トードが別のドローンに銃弾を放ち撃破していた。
『よし!2人とも調子が出てきたな!この調子でどんどんやっていけ!』
「了解!」
「フン……」
一方その頃、ハオは単独で行動し、着実に撃破数を重ねていた。
「……ふふん!今日の調子は好だね!」
ハオは自信満々に言い放つ。
このまま調子良くドローンを撃墜していると、トードから通信が入る。
「ハオ、あれをやるぞ」
「あれね、オッケー!」
ハオが返事を返すと、トードの機体がハオの方へ向かう。
「アイツら、何をする気なんだ……?」
疑問に思うブレアだが、その様子を見てある事に気がつく。
なんと、残り全てのドローンがまるで一直線に並んだように集まっていたのだ。
「頭を使ってのはこう言う事なんだよ!」
「なっ!!アイツ、ドローンを引きつけていたのか!!」
ブレアが驚いているのも束の間、トード機とハオ機がそれぞれ用途不明だった装備を展開させると、それをドッキングさせたのだ。
「合体だと!?」
ブレアは驚愕するが、それと同時に嫌な予感がした。
「よし、これで終わりだ」
「行くよー!!」
2機のレイダーが、ドッキングさせた武装をチャージさせると、凄まじい勢いで発射した。
「な、なんだありゃあ!?」
ブレアが驚くのも無理はない。それはまるで太い光の柱のように天高く伸びていき、その先にあったビル群をまとめて消し飛ばしてしまったからだ。
「ふっ…これこそ俺たちの最大の武器、『超大型二連結式収束荷電粒子砲』だ」
「にれん…何て?」
「縮めて『パルフェ・ガン』!!」
「パ、パルフェ……??」
「メガ盛りって事!!」
「気にするな、ハオの趣味だ」
「は、はぁ……」
呆然とするブレアに、ハンスから通信が入る。
『ご苦労さん。どうやら機体の動作は良好みたいだな』
「はい、問題ありません」
『そうか。しかしブレア、お前に関してはまずまずだったな』
「え?」
『ほらだってよ、使わなかっただろ?バスター・チェーンソー』
「あ……」
ブレアは新装備の動作テストも兼ねていたと言う事をすっかり忘れていたようで、言われてから思い出す。
『せっかく用意したんだから使って貰わないと困るぜ』
「す、すみません……まだ慣れなくて」
『そうか、まぁ最初はそんなもんだろう。とりあえず今回はこんな所だな。さっさと戻って飯にしようや』
「はい……」
『それじゃあ帰還してくれ』
「了解」
こうして実戦訓練は終了した。
それから基地に戻った4人は夕食を済ませ、各々の時間を過ごしていた。
「パルフェ・ガンか……名前はともかく、とんでもない威力だったな……ん?」
ブレアが先程の訓練を思い出しながら夜道を歩いていると、トードが何処かへ向かって行くのが見えた。
「この先って確か、墓地だよな……」
基地の裏には、簡易的な墓が並ぶ墓地がある。トードはそこへ行ったようだ。
「……少し様子を見るか」
ブレアはトードの後を追う。すると、そこにはトードの姿があった。
「……!!」
トードが立っていたのはサムの墓だった。そしてトードはその墓に花を添えた。
「トード、お前……」
「ん?」
ブレアが声を掛けると、トードはこちらを振り向く。
「何だお前か」
「お前、ここが誰のお墓なのか知ってるのか?」
「……さあな。だが、戦いに散っていった者たちだという事は知っている」
「……」
「何だ、俺が死者を悼んでいるのがそんなに変か」
ブレアは考えるようにしばらく黙っていたが、少し恥ずかしげに、夜空を見上げて話を始める。
「……そいつはよ…サムは、俺の仲間だったんだ。気持ちいいくらいに明るくて、場を明るくしてくれる、いい奴でさ……」
「……」
「でも、さ……俺たちを助ける為に、ただ1人犠牲になる事を決意し、散ったんだ……俺は、見ているだけしか出来なかった……」
「……そんな事、よくある話だろ」
「ああ、そりゃそうだよ。けどよ……俺には、仲間の事を忘れて次に進めっていう風には割り切れないんだよ……!」
「……」
「……なぁ、教えてくれよ。俺は、どうすればいい……?」
ブレアは泣きそうな声でトードに問う。すると、トードは静かに口を開く。
「……忘れる必要は無い。散った仲間の思いの分だけ強くなればいいだけの話だ」
「……!」
意外な答えだった。もっと冷たく突き放されると思っていたから。
「……そうか、ありがとうな。ちょっとは気が楽になったような気がするよ」
「ふん、話が終わったならさっさと寝る事だな」
「あーあーはいはい、分かったよ。お前も早く休めよ」
ブレアはそう言って立ち去ると、トードはまたサムの墓に目を向ける。
「……お前らの死は決して無駄ではないみたいだな」
そう呟くと、トードはその場を後にした。
翌日、一同はけたたましい警報の音で目を覚ました。
『緊急事態発生!!警戒レベル5発令!!』
「な、何だ!?」
全員が慌ててブリーフィングルームに駆け入る。
「ハンスさん、これはいったいどうなっているんですか!!」
「まだ分からん……!!気付いたら関西基地が壊滅しちまってるんだよ……!!」
「映像、出ます!!」
スクリーンの映像を見ると、そこに映し出されたのは地獄絵図のような光景だった。
『緊急報告!!現在、関東支部の部隊が『来訪者』のTEとの戦闘で陥落!!敵影確認……『ヒト型TE』です!』
「なんだと!?」
「『ヒト型TE』……あの時落とした筈じゃ!!」
獄炎の中で揺らめく黒い影が、既に崩壊してしまった関西基地の中心でぬらりと立ち尽くす。
『警告!『ヒト型TE』と思われる機体が出現!至急、迎撃をお願いします!』
「クソッ!!一体何が起こっているんだ!!」
「とにかく、やるしかない!!」
勇の一言で全員出撃準備を整え、外へ出る。しかし……
『……!?目標……ロストしました!!』「は?」
「どういう事だ!!」
「おいおいおいおい……冗談じゃないぞ……!」
ハンスの言う通り、レーダーに映っていたはずの『ヒト型TE』の反応は忽然と消え失せていた。
「くそっ!!何なんだ!!アイツ、死んでなかったのかよ!!」
「落ち着け!恐らくは……ステルス機能か何かを使っているのかもしれない。今は奴を追う術がないだろう!」
ハンスは焦るブレアを宥める。
「それにしても妙だな。今までずっと動きが無かったのが気になる」
「確かに……あのミサイルを受けて無事だったならここ数日の間に一度くらい襲撃があってもいいくらいだが……」
勇とハンスが話し合っていると、怒りの収まらないブレアが声を上げる。
「何だっていい、今度出て来たら叩き潰すまでだ!!」
「そうだな。それまでに俺たちは奴の出現に向けて準備をする必要がある。とにかく被害の状況を確認するために関西基地に向かおう」
「分かりました!」
「行くぞ」
こうして、彼らは関西基地へと向かった。