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タイタンレイダーズ  作者: 南ノ森
COW BELL
11/50

STORM

ウィルソン財団、エレナの部屋。

「あの様はどう言う事ですか?最新鋭機で戦って、こちらが1機撃墜されて逃げ帰ってくるなんて」

「へっ、なんて事はない。奴とはいつでも戦えるからな……それに玉置勇は強い。あの程度の男では無い筈だ。それにβが撃墜されたのは奴自身の油断のせいさ」

「言い訳はよろしい。それに問題はγです。いつでも撃てる状況でただ銃を突きつけているだけとは……私は彼に一番期待していたのですがね。あなた以上に」

「おいおい、俺は特別仕様スペシャルなんだぜ?」

「私が与えたスペシャルです」

「まぁいいさ。とにかく今度は新しいβを探して作戦を遂行するさ。γについては……まあ、適当に躾しておこう。奴はマムには逆らえないからな」

「分かりました。では次の指令があるまであなたに一任します。期待してますよ、α」


レイダーズ本部、整備ドック。

「あーあー、ボロボロにしちまいやがってよぉ」

「……」

「おいブレア、最近身が入ってねえみてえだがよ、任務くらいまともにやってくれよな!」

「……」

「……うーん、こりゃマズイな」

 数日前に起こったウィルソン財団の襲撃事件により、レイダーズの士気は著しい低下を見せ、しばらく重い空気が流れていた。

 その事件でブレアは敵を1人撃墜、その事を引きずってるのか機体も大破させてしまったのだ。

「ったくよ、なんかみんな暗いというか、何も変わってないのは俺だけか?」

「よう、ハンス」

 そこに、任務から戻ってレイダーから降りてきた勇が声をかけてきた。

「あー、ここにも居たな、変わらない奴が」

「そうでもないさ。俺も例の件に関してはだいぶ応えている。だがそれよりも辛いのは渚だろうな……彼女はあの件で一番責任を感じているのか、しばらく研究室に引きこもっているんだ」

「ああ、その事は俺も心配している。だがよ、お前も無茶だけはするなよ?杉田さんが居なくなって、グリフィンレイダーを完璧に整備出来るのはお前しか居なくなってるんだからよ」

「分かってるさ。じゃあまた後でな」

「おう、無理すんじゃねぇぞ」

 2人は別れてそれぞれの場所へと向かった。

「状況最悪はあいつも一緒か。ま、これはこれで俺も動きやすいんだがな」


レイダーズ本部、ハオの自室。

 一方、ハオも例の事件により心身に影響を受けていた。

 かつて仲間だったトードが、財団の送り込んだ部隊の兵士として攻撃してきた事が、彼女の心に深い傷をつけていた。

「……トード、どうして……」

 ハオは手にカエルのお守りを握りしめながらベッドの上で泣き続けた。


ウィルソン財団、地下基地ドック。

「おい、γ、出るぞ」

「……」

「γ、分かっていると思うが今回の襲撃、お前がヘマすれば大事な彼女の名を墓石に刻む事になるぞ」

「分かってる」

「ならもう行くぞ。新しいβも加わった事だからな」


レイダーズ本部、渚の研究室。

 例の事件後、渚は激しいストレスを抱えて研究室を封鎖し、勇以外の何者も中に入れることは無くなっていた。

「渚、俺だ」

 勇は扉の前に立ち声をかけると、しばらくして扉が開いて渚が現れた。

「勇……」

「入るぞ」

 勇は力強い手で扉を開けるが、渚は特に抵抗する事なく招き入れる。

「渚、閉じこもるのは別に構わないが、せめて一度くらい風呂に入れ」

「うん……でも今はそんな気分じゃないの」

「そうか」

 勇はそのまま部屋に入ると、暴れたのか資料が散らかっているのを見てため息をつく。

「また派手にやったな」

「ごめんなさい……」

「問題ない」

 しばらく、ただただ沈黙が流れ続ける。

「……勇」

「なんだ?」

「私、これからどうしたらいいのかな?私……私が『ムーンストライク計画』を完成させられなかったから財団が手を切ってあんなもので攻めてきて……みんなに迷惑をかけて……」

「しょうがないさ。大量の宇宙用レイダーを月に運ぶ計画なんて、1人でこなすのは無理なのを財団は最初から分かっていたんだ。それに、俺たちが戦っているのも計画を完成させるためだ。そして、その防衛力を造ったのもお前だ……お前は誇っていい」

「……ありがとう」

「気にするな。それより、そろそろ出てこい。ずっと引きこもっていたら体が腐っちまうぞ」

「……分かった」

 渚は立ち上がりシャワーを浴びると、久しぶりに外に出たせいか軽く眩しさを感じた。

「少し、痩せたか?」

「そうかもね。でも、あなたもあんまり顔色良さそうに見えないわよ?」

「そうかな?俺は……」

 その時、基地内に警報が鳴り響いた。

『警告!財団の『カウベル』が再び出現!!総員戦闘配備!!』

「……行ってくる」

「……そう、頑張ってね」

「ああ」

 渚の部屋を出た勇は格納庫へと向かい、グリフィンレイダーに乗り込む。

「おい勇!出るのか!!」

「ああ」

「いいか、各レイダーは万全の整備とは言えない!気を付けろ!」

「了解」

 グリフィンレイダーは出撃し、基地の外に出た。

「……こうなったら、仕方がないな。俺も手を打つか……」


レイダーズ本部、発着場。

「ハオ、ブレア。機体は整備不十分だ、気をつけろ」

「……」

「……」

 2人からの返答は無い。しかし立ち止まる訳にもいかない。

 勇は目の前の敵に目を添え、歩みを進める。

『来い、玉置勇。貴様の命運もここまでだ』

「随分な挨拶じゃないか。お前こそ覚悟しておけ、今日ここでお前を潰す」

 グリフィンレイダーは敵のαに向かって突撃していく。

『ふっ、愚か者め!』

 敵は背中のスラスターを吹かし、グリフィンレイダーの攻撃を回避した。

「なに!?」

『ふん、どうやら機体が万全では無いようだな。動きが鈍いぞ?』

「くそ、何故このタイミングで!」

 動作が鈍くなったグリフィンレイダーに対し、αは大鉈を振り下ろす。

「くっ、舐めるな!」

 グリフィンレイダーはソーンマチェットを構えて攻撃を受け止める。

「ぐぅ、うおお!」

 なんとか弾き返すが、やはり動きがぎこちない。

『ほう、まだ抵抗するか。だがこれはどうかな』

 αが笑うと、左右からβとγの機体が出てきて銃を構えた。

「!!隊長!!」

 γ……トードが勇に向けて銃を構えているのを見たハオは叫び、γに向かって突撃する。

「トードに……こんなことさせない!!」

 ハオはγの機体に掴みかかり勇から引き剥がす。

「もうやめて、トード!こんな奴らの言いなりになって戦うなんて絶対間違ってるよ!!」

『……』

「お願い!何か言ってよ!答えてよ!!」

『……俺は、財団の兵士だ。ただ任務を遂行するのみ』

「そんな……」

 ハオは溢れる涙をそのままに、必死にγを押さえ込み続けている。

『おっと、そっちのお仲間は隊長思いでいいねぇ。でもあっちはまだずっと呆けてるぜ?』

 ブレアはレイダーの中で震えていた。また無意味に誰かの命を奪ってしまう。そんな恐怖が彼を襲っていた。

「ブレア!何をしている!敵を目の前にして何を立ち止まっている!!」

『説教をしている余裕があるのか!』

 αはグリフィンレイダーの背後に回り込み、ソーンマチェットを持つ腕を掴み上げる。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 勇は必死に抵抗するが、全く抜け出すことが出来ない。

「ブレア!お前は何故軍人になった!!」

「なんで、って……俺は、俺は誰かを殺すためじゃなく……国を、誰かを守るために軍に入って……」

「だったら迷うな!目の前に居るのは我々の思いを踏み躙る悪しき存在だ!今ここで倒さなければ、我々が守るべきもの全てを破壊する!」

『思いを踏み躙るだと?そんなもの一銭の価値にならん。それに無駄を産んでいるのは貴様らだろ』

「黙れ!金のために命を奪うクズめ!!」

『クズで結構』

 ジリジリと追い詰められる勇を見て、ブレアは決意を固める。

「……そうだ、俺は……俺が守るべきは……!」

 レイダーの操縦桿を握るブレアの手は震えていた。

 だが、それでも彼は前を向いて機体を動かす。

「うおぉぉぉ!!!」

 ブレアのレイダーはαに機関銃を向けると、突撃しながら発砲した。それにβが向き直り対応する。

「俺は、守りたいものを守るためにお前らと戦う!!」

 覚悟を決めたブレアは向かってくるβ機と戦闘を開始した。

『ふん、だが状況は変わらずだ』

「それでも、俺は諦めない……!!」

 そんな時、1機の輸送機が上空を飛んできた。

「……来たか!!」

 ハンスがそれを見て叫ぶと、輸送機の中から1機のレイダーが出てきて、そのまま戦場に向かって飛び降りた。

「!あれは!!」

『なんだ、見たことが無い機体だ。あんなのはデータにも無かったぞ』

 戦場に現れたのは、真っ白な、丸いボディの機体だった。左肩には風を思わせるペイントが、右肩には『SIRIUS』と書かれたロゴが施されていた。

『貴様、何者だ』

『はい!わたくし、シリウス商会のサポートセンター受付けのカレン・オルソンです!』

「!!?」

 あまりにも予想外の答えが出てきたので周囲に居た人間は戸惑いを隠せなかった。

『サポートセンターのオペレーターがレイダー乗りとは笑わせるな。お前のような者が戦場に出てこられては邪魔でしかない。消えろ』

 αはβに指示を出すと、βは目標をブレアからカレンに変えて銃を構える。

『申し訳ありません、当商会は小悪党からのクレームは一切受け付けておりません!その代わり、我がシリウス商会の主力商品『ストームレイダー』のご紹介をいたします!!』

 カレンの乗った白いレイダーはサスマタを取り出すと、向かってくるβの機体を一瞬で薙ぎ倒した。

『こちらは向かってくる敵をいなす『対TE用牽制ロッド』!!』

「は、速い……!!」

「と言うより、素早いな」

 2人は謎のレイダーの加勢に気を取られていたが、冷静になった勇がブレアに指示を出す。

「ブレア!手が空いているならハオを助けてやれ!」

「あ、ああ!了解!」

 ブレアは指示を受けハオと拮抗しているγに向かって走る。

「ハオ!」

 ブレアはγに向かって機関銃を放つ。γはしがみつくハオのレイダーを引き剥がすと、回避をしながら応戦してマシンガンを撃つ。

「お前!マジにトードなのかよ!?もしそうなら何故あんなのとつるんでやがる!!」

『お前には分からないだろうな。あの女の下で飼われる家畜に選択権があると?』

「その言葉……マジにお前なんだな……!!心底呆れたよ!!」

 接近戦になる2人が大鉈を構えて鍔迫り合いになる。

『お前は友だと思っていたよ。だが所詮はぬるま湯の中で育ってきただけのボンクラだ!!』

「お前こそただの頭でっかちじゃねぇか!!お前……自分の都合で友達泣かすのかよ!!」

『……俺だってそんな事したくは……!』


 サスマタで敵をいなしていたカレンは、それを仕舞うと今度はライフル銃を取り出した。

『お次にこちら!対『来訪者』用装備『パワーライフル』!!こちらはTEの装甲を貫通する威力を持っていますが、その分反動が大きいので扱いにご注意ください。また、弾数も10発しかありませんのでこちらもご了承ください!!』

 カレンはパワーライフルでβの機体の脚を撃ち抜くと、バランスを失った機体は倒れて動けなくなった。

「凄い戦闘技術だ……なんだあのレイダーは」

『そして、最後はこれだぁ!!!』

 カレンは更に背中のブースターに装備していた長物を展開させると、その側面から光の刃を出現させた。

「なんだあれは!?ビーム兵器か!?」

『こちらは『レーザーマチェット』!!これがあればどんなTEもバッサバッサと一刀両断!!それではトドメと行きますよぉおお!!』

 カレンがレーザーマチェットを振り下ろすと、コックピットを避けてβの機体をあっけなくバラバラにしてしまった。

『ふぅー、ざっとこんなもんですね!いかがでしたか?』

「なんだあのレイダーは……とても今までのレイダーと格が違う」

『それでは、そちらの機体にもパフォーマンスを……』

 カレンが視線をαの方に向けると、αはグリフィンレイダーを蹴り飛ばしてβの機体のコックピットに向かって射撃し、そのままβ機を爆破、破壊した。

『捕虜になるくらいならその程度の部下は必要無い』

「何!?奴め、自分の仲間を……!!」

『なかやか賢しいですねぇ』

「よくも……許さん!!」

 グリフィンレイダーは立ち上がり、ソーンマチェットを構えながら再びαに向かう。

『その機体ではこれ以上は無理です!』

「黙っていろ!」

 しかし、意外にもαはあっさりと引き下がった。

『邪魔が入ったが、今回はここまでにしておいてやる。だが、次会う時は容赦はしない』

 αはそのまま基地の外へと出て行った。

「待て!!」

 グリフィンレイダーはその後を追うが、途中でスラスターが壊れてしまい、そのまま落下してしまう。

「くそっ!ここまで来て……!」

『応戦を御所望でしょうか?』

「いや、いい」

『はい!分かりました!ではお次に……』

 カレンはパワーライフルを構えると、ブレアと対峙するγの機体に向かい進み出した。

『小悪党を撃墜します!』

 カレンの接近を確認したγはブレアの機体を蹴り飛ばすと、αに続いて撤退を始める。そして、カレンが撤退するγに向かい戦闘を開始しようとするのを見たハオが呼び止める。

「やめて!!お願い!!」

『はい!分かりました!』

 カレンは意外にもあっさりと答えると、構えたパワーライフルを収めた。

「えっ?」

『お客さまの頼みであれば仕方がないですよね!』

「あ、ありがとう……」

『いえいえ!お役に立てたなら光栄です!』


レイダーズ本部、整備ドック。

 そこには、先程戦っていた白いレイダーと、それに乗っていたパイロット……オレンジのウェーブがかった髪と、やや褐色気味の女性が立っていた。

「改めて自己紹介します!わたくしはシリウス商会のサポートセンター受付けのカレン・オルソンです!」

「俺は玉置勇。レイダーのパイロットだ。よろしく頼む」

「はい!勇様!お話は伺っております!」

「話?一体誰から……」

「はい!それは……」

「ここからは俺が話そう」

 ドックで勇とカレンが話をしていると、そこにハンスがやってくる。

「ハンス、どういう事だ」

「ああ、まずはどっからかな……そうだな、まずは俺がシリウス商会のスパイだって所からの話だな」

 ハンスのまさかの発言に一同全員が泡を食ったような顔になり驚愕した。

「なんだって……?だが、それじゃあ今までの行動が説明できないぞ……」

「まあそこはアレだな、上がレイダーズを支えろってうるさくてな。シリウス商会は元々ウィルソン財団を良く思ってなくてな、それを探るためにレイダーズに潜入したんだがどうも商会はお前らの事が可愛くなったらしい」

「なるほど、それで俺達を助けたと。」

「ああ、俺もお前らが気に入ったからな。お前らはいい奴らだよ、だから助けたかった……それだけさ。その上、シリウス商会はお前らを手放す気は無いようだぜ」

「……つまりそれは、今後も仲良くやってくれるという事か」

「ああ、それに会長もレイダーズのスポンサーになる事を約束してくれたよ。資金の出資もしてくれるそうだ」

 ハンスの言葉を聞いて勇達は喜んだ。

 これで資金不足の問題は解決される上に今後の戦いも楽になるとハンスは言った。

「待ちなさい。私はそれを簡単に容認出来ないわ」

 全員が安堵の表情で喜んでいると、先程まで引きこもっていた渚が口を挟んだ。

「ハンス、あなたは私たちのためにこれまで多大に活躍してくれたわ。でもあなた、商会に設計図を売ったわね」

「売ってない!……渡しただけだ」

 それを聞いた渚は呆れてため息を吐く。

「全く……どっちでもいいけど、とにかくあなたの行動は問題だらけよ。商会がスポンサーになったからと言って、信頼に亀裂が入る行為は困るわ」

「そりゃ悪かったって!でもよ、お前らのためにシリウス商会傘下のシリウス重工が役に立つと思って会長に『1機だけ』という約束で作ったんだ!本当だぜ!」

「……信用出来ないわ」

 ハンスが弁解するが、渚は聞く耳を持たなかった。だが、そこでカレンが口を挟む。

「あの~、もしよろしければ、今すぐ会長にお繋ぎいたしましょうか?この場に呼べば、すぐにでもご覧になれますが」

「出来るのか!?」

「はい!わたくしはサポートセンターの受付ですので!それに、会長も皆さんとお会いしたいと仰せになっていましたので」

「へぇ、流石はサポートセンターのオペレーターだな。よし、じゃあ早速繋いでくれ」

「はい!かしこまりました!少々お待ちくださいませ!」

 カレンはそういうと通信機器を起動させ、しばらくすると画面に随分と胡散臭そうな、やや太めの男が現れた。

『やあやあ皆さん初めまして、私がシリウス商会の会長フランクリン・ブックマンです!!以後、お見知りおきを!!』

「は、はじめまして」

 フランクリンのテンションに圧倒されながらも、勇はなんとか挨拶を返した。

『ふむ、君がレイダーチームの隊長の玉置勇くんですか。そしてそちらがタイタンレイダーズの創設者の桂木渚博士……と』

「はい、お初にお目にかかります」

 フランクリンは渚をじっと見つめ、次に手元にある紙をめくりながら話し出す。

『うーん、中々に素晴らしい経歴をお持ちですね!しかし、その若さでレイダーを開発するとは驚きましたよ!是非とも我がシリウス商会に欲しい人材ですねぇ!』

「ありがとうございます。私としても、あなたのような方にスカウトして頂けて光栄に思います」

『はっはっは!これは嬉しい!いやー、実に愉快だ!えーとでは、今回の件についてこちらから説明と釈明をさせていただきます』

「はい、お願いします」

『実は我々シリウス商会は以前よりウィルソン財団の影の部分について探っておりましてね!財団の党首エレナ・ウィルソンはこれまで裏社会で動くフィクサーとして暗躍していたのですが、財団を設立してからは怪しい程に地球の平和のためにお金を使うようになったのを不審に思った我々は財団の内部に潜り込み、内部調査を進めていたんです!』

「はぁ……それで、どうして俺たちを助けようと?」

『それは簡単な理由です。エレナ・ウィルソンは必ずレイダーズ、もとい桂木渚博士を切る……と確信したからですねえ!!彼女には色々と聞きたいことがありましたからねえ!!……おっと失礼!つい熱くなってしまって……』

「いえ、大丈夫ですよ。しかし、それならば何故レイダーの提供などをしたのでしょうか?いくらなんでも危険過ぎませんか?」

『確かに我々の行いが褒められたものでないことは承知しております。しかし、現にあなた方は財団への攻撃を受けたではありませんか!我々はそれを見越し、レイダーを提供させていただいたのであります!』

「そうだったのですね……しかし、それでも疑問は残ります。何故そこまでして……」

『簡単な事です!商会の商品は常に人のために無ければならない……それがシリウス商会のモットーなのです!なので戦争の道具を売るために人の命をも奪える財団……いや、エレナ・ウィルソンが私は許せません!だから、彼女を叩き潰す為にレイダーを開発したのですよ!』

「そうだったのですね……わかりました」

 フランクリンの言葉を聞いて、渚はもう一度質問する。

「では……あなたにとってレイダーとは何だと思われますか?」

『そうですねぇ……とても有要な商材だと思われます!そう、とても素晴らしい防衛力ですよ!』

「なるほど……」

 それを聞いた渚がため息をついて頭をかくと、根気がポッキリ折れたように項垂れた。

「分かったわ……あなたの言い分はよくわかった。もう好きにしてちょうだい……あのレイダーは特別措置として受け取っておくわ」

「おい、いいのか」

「いいわよ。だって、ここまで言われたら何も言えないじゃない。それに、悪い人間ではないみたいだし……」

「そうか……ならいいんだが……」

「それとハンス……あなたについては後で協議します。心しておくように」

「はいよ。ったく……おっかねえ女だぜ……」

『では、これで私の話は終わりとします。これからもシリウス商会とレイダーズをよろしく頼みましたよ』

 渚は立ち去りながら手を挙げて返答の意思を示すと、整備ドックから消えていった。

「これで一件落着だな……」

「ああ、そうだな」

 こうして、シリウス商会との騒動は幕を下ろした。

 シリウス商会と和解したレイダーズはその後、シリウス商会の支援を受けて更に勢力を拡大させ、遂にレイダーズはシリウス商会の傘下に入った。

 これによりシリウス商会はレイダーズのスポンサーとなり、レイダーズの機体はシリウス重工で開発され、レイダーズ本部に配備される事になったようだ。もちろん全ての開発権はこれまで通り渚に一任されている。


ウィルソン財団、訓練所。

「おい、γ。何故呼ばれたか分かるな」

「ああ、知っている」

「貴様、何だあの無様な戦い方は。機体を破壊するだけの事が難しいか?たとえお前のお気に入りが乗っていてもお前なら殺さずに勝てるはずだ」

「……機体が整備不良でな」

「下手な言い訳はいらん。お前には失望したぞ。もういい、この事はマムに報告する。良い結果になるといいな」

「……チッ」

「舌打ちをするな。次はないぞ」

 αはそれだけ言うと、部屋から出て行った。

「……クソが」

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