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吸血鬼ですが、何か? 第1部 復活編  作者: とみなが けい
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吸血鬼を復活させたらこれが本当に…

吸血鬼ですが、何か?



                とみなが けい





とうとうこの時がやってきた。

とうとうこの時がやってきたのだ。


俺の名前は吉岡彩斗よしおか さいと

俺はさえない32歳の社畜だった。

とんでもないブラック企業で散々にこき使われて働けなくなれば屠殺される運命の、未来も何もない男だったが、5か月前にロト6で大当たり2億5千万円を当ててめでたく社畜を卒業した。

東京都23区外のほど良く田舎なそこそこ駅近な場所に中古だが5LDKのそこそこ広いマンションを買い、そこそこの家賃収入を望める物件をいくつか購入して安定収入(経費税金を差し引いて手取り60万円ほど)を手に入れた。


安定収入を手にしたオカルトマニアの俺は、残った数千万円の金をつぎ込んで色々偽物を掴まされた後、遂に本物の吸血鬼が入っている棺を手に入れたのだ。

ここまでたどり着くのに胡散臭い偽物を何度も掴まされて酷い目にあってきたが、ついについにアルゼンチンの片田舎の教会に密かに隠されていた吸血鬼入りの棺(海外通販4,780,000円)を手に入れた。

しかも、吸血鬼を復活させてしもべとさせるマニュアルもおまけに付いているという信じられないほどのレアな一品なのだ。


それがはるばる船便で運ばれて俺のマンションに運び込まれたのが数日前。

それから数日の間ネット翻訳で苦労しながらマニュアルの解読に成功して吸血鬼を復活させ俺のしもべとさせる方法を手に入れた。

儀式に必要な道具や吸血鬼が暴走した場合に速やかに退治できる道具もネット通販を駆使して手に入れた。


素晴らしい世界だ。

金と時間に不自由が無ければネットで何でも揃う。


厄介だったのは吸血鬼に捧げる生贄とするうら若き処女だったが、マッチングアプリを駆使してオカルト好きな女性を何とか手に入れた。

アプリのやり取りで今まで手に入れたまがい物の呪物や書籍の写真を見せ、彼女の気を引き、ついに俺の部屋に招き入れることに成功して様々な呪物(まがい物)を披露して気を許した彼女に睡眠薬入りのハーブティーを飲ませて眠らせることに成功した。

本当に処女かどうか確かめるのが大変だったがネットで調べた「処女かどうか見抜くための14の質問」を事前に彼女に試して易々とクリアしているので間違い無い。


只の生贄用にしか考えていないので、彼女が名乗った名前は忘れてしまった。

確か、マリンとかマロンとか…まあ良い、処女の乙女なのだ。

処女の乙女は睡眠薬入りハーブティーのおかげで、部屋の中央に置かれた棺の横に置いたベッドでぐっすり眠っている。

生贄用に定められた昔風のドレス「東欧ルーマニア18世紀祭礼用ドレス(海外通販326700円)」を着せて(ドレスのサイズが彼女の体より大きかったがホッチキスを駆使して何とか寸を詰め、ドレスの胴回りも詰めた)その頭にはユーチューブを見ながら苦心して作った名もなき花の頭飾りも付けた。

生贄用の処女の乙女も、切れ長の目を閉じて長い黒髪を広げベッドに横たわっている。

見ようによって気品を感じる顔立ちに豊かな黒髪。

吸血鬼の生贄には最適だ。


そしてマニュアルには載っていなかったが雰囲気は大事だよねと言う事でフード付きの昔風の黒いローブを着た俺は期待に打ち震えながら午前零時を待った。

落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながら俺は時間が来るのを待った。

吸血鬼の気付用に手に入れた黒いめんどり(アマゾン31000円)が籠(アマゾン4300円)の中で時折けたたましく鳴くのがイラついたが、完全防音に改装した12畳の寝室の中なので一切問題はなかった。


いよいよその時間が近づいてきた。

俺は最終確認で必要なものが全部そろっているか何回も確認した。

後数分で儀式を始める。

俺は蘇った吸血鬼が暴走するときに備えて羊皮紙で覆いが付いたごつい十字架「吸血鬼撃退用強力十字架(アマゾン39000円)」を首に下げた。

左右のポケットには大振りのニンニクひと玉づつ、ベルトの腰の後ろには「吸血鬼退治用トネリコの杭木槌セット(アマゾン52800円)」も挟んである。

更に最終手段として強力な紫外線ランプを部屋の四隅の天井に仕掛けてあり、手元のリモコンで付けることができるようにしてある。

伝承によると吸血鬼は日光などの紫外線でその身が亡びると記してある。

これで万全だ。

万が一吸血鬼が暴走してもこれで対処できる。


俺は防音寝室に入ると雰囲気つくりに設置したLEDライトにスイッチを入れ、CDプレーヤーでパイプオルガンで奏でるおどろおどろしい音楽をかけた。


雰囲気大事だからね。


そして部屋の隅のパソコンから吸血鬼復活の呪文を録音した音声を流した。

はじめは自分の口頭で唱える予定だったが難しいギリシャ語の呪文をうまく覚えられず、何度も噛んでしまう事に嫌気がさして、半日かけて音声を吹き込みパソコンでうまく言えたところをつなぎ合わせた。


俺は棺に近づき「隠者のバール(メルカリ47000円)」と呼ばれる錆が浮いたバールで慎重に蓋をこじ開けた。

棺の蓋がずれてゆくと、中からかび臭い、そしてかすかに生臭い臭気が上がって少しむせた。


呪文をパソコンで流しておいて良かったと俺は思った。

むせて呪文が中断してしまうと手順を一からやり直さなければならないからだ。


棺の中には半ばミイラ化した30代半ば位に見える吸血鬼が横たわっていた。

東洋人っぽい顔立ちに少し不安を覚えたが服装は100年ほど前の洋装紳士の物だったので大丈夫!と自分に言い聞かせ、俺は胸のポケットに入れた翻訳機の電源を入れた。

蘇った時に言葉が通じないと大変な事になりそうだからな。


俺は籠から出しためんどりの足を掴んで吸血鬼の顔の上にかざすとベルトに挟んでいた「悪魔召喚儀式用サタンナイフ(メルカリ74890円)」を抜いた。

実はこれが俺にとっては非常にハードルが高い作業だった。

俺は基本的に動物が好きだし生き物を殺すのは苦手なのだ。

もしも首を切る対象が黒猫だったりしたらこの計画はとん挫していただろう。


『このめんどりは後で俺が美味しくいただきます』と心の中で唱えてナイフを振ってめんどりの喉をかき切った。


めんどりの首から汽笛のような音を立てて吸血鬼の顔に鮮血が降りかかった。

まだバタバタと暴れるめんどりの足を歯を食いしばって握っていた俺の目に、吸血鬼のミイラがめんどりの血を、まるで砂に水がしみ込むように吸い込んで行くのが見えた。


おお!


俺は期待と恐怖が入り混じった声を上げた。


ミイラ化した吸血鬼の顔はみるみるめんどりの血を吸収して、生ける人間のような肌を取り戻しつつあった。

復元しつつある吸血鬼がますます東洋人そのもののように思えるのだが、ここまでの流れを見るとどうやら本物の吸血鬼だ、間違いない!


吸血鬼がせき込み始めた。


「う〜!ゴホッゴホッ!あ〜気持ち悪い〜!うぇ〜!気持ち悪いよ〜!」


…日本語?

…え?日本語?空耳アワー?


困惑する俺の前で吸血鬼は棺に手をかけて起きようとして棺の横に転がり落ちて、苦し気に身を捩らせた。


だらりと下がった俺の手で首無しめんどりがまだもがいていた。



…なんなん?不良品?返品効く?


俺は床に落ちて髪や衣服から埃をフローリングの床に振りまきながら身を捩り苦しんでいる吸血鬼を見つめていた。

気を利かせたルンバが床を滑ってきてせっせせっせと埃を掃除している。


「ぐぅあああああ~胸が焼ける~!なんだこの丸い奴は!あっちいけ!」


吸血鬼はうざそうにルンバを押しやりながらなんとか身を起こした。

吸血鬼は立ち尽くす俺を見ると声をかけてきた。


「ボッセ、チーノ?ハポン?…ユー。ジャパニーズ?」

翻訳機がポルトガル語、と告げ「お前は中国人か、日本人か?」

と、そして英語、と告げ「お前は日本人か?」

と教えてくれた。


「…アイアムジャパ…日本人です」


俺は翻訳機のスイッチを切って答えた。


「そうか、日本語通じるんだな。

 君がわれを復活させたのだな?

 胸が焼けて気持ちが悪い、何か飲み物か果物かなんか無いか?」


何が何だか判らないが30代半ば位の少し貧相な顔の男が人間以外の何かと言う事は確からしい。

俺は動きを止めためんどりの死体をかざした。


「生き血ならここに…」

「ふざけるなよ!けだものの血を飲めと言うのか?

 胸が焼けて気持ちが悪いと言ってんだろうがぁ!」


吸血鬼が叫んだ瞬間にその形相が変わり、目が赤く光り、鋭い牙がむき出しになり、顔中に異様に筋肉が盛り上がり、まるで映画に出てくる凶悪な吸血鬼のそれになった。

(ああ!吸血鬼だ吸血鬼だ凶悪な吸血鬼だ!間違い無い!不良品じゃない!)

俺は恐怖と歓喜に打ち震えながら答えた。


「失礼しました。それでは処女の乙女がいます。

 お好きに血を吸ってください。」


吸血鬼の顔が元の少し貧相な感じの人間の顔に戻り、悲しそうにかぶりを振った。


「だから…胸が焼けて気持ち悪いんだよ。

 こんな生臭いものじゃなくてさぁ~

 気が利いた冷たい果物とかないのかな~?」

「はい、果物ですね?今持ってきます!」


俺は微かな違和感を感じながらもめんどりとナイフをテーブルに置いて寝室を出るとキッチンに向かった。

冷蔵庫を開けると、この前スーパーで買った甘くてうまいと評判な梨をいくつか掴んで寝室に戻った。


「あのう…こういうものしか無いんですが…」

「おお!梨か!懐かしいな!そうそう!こういうのが欲しいんだよ!」


吸血鬼は俺の手から梨を受け取り、俺を見つめた。


「このまま食えと?梨は皮を剥かないと駄目だろう?」

「あ…すみません」

「まぁいいそのナイフと隣に置いてある大仰な皿をよこせ。」


俺は吸血鬼が指さした「悪魔への供物用皿中型(海外サイト48100円)」と「悪魔収監用サタンナイフ(メルカリ74890円)」をとって吸血鬼の前に置いた。

吸血鬼は皿に梨を置き、その一つを手に取るとナイフを器用に操り梨を4つに切り、エレガントに皮を剥き始めたが、自分の手の汚れを見て顔をしかめた。


「おい、ナプキンがいるよね…」

「はい!ただいま持ってきます!」


俺は寝室を出てキッチンのハンドタオルをとって引き返した。

吸血鬼は手を拭い、梨の皮剥きを再開した。

全ての梨を処理して皿には皮を剥いた梨がきれいに並べてあり、皮と芯が脇に寄せられた。


吸血鬼はエレガントに梨を摘まむと口に運び、恍惚の表情を浮かべて味わった。


「あのう…お料理上手そうですね…」

「われはコックも執事もやっていたからな…もともとは奴隷だったのだが苦労して這い上がったんだよ。」

「なるほど…」


吸血鬼はエレガントに口と手を拭くと2つ目の梨を摘まんだ。


「でも…あなた日本人ですよね?」

「そうだ、われは下総の漁師だったんだ。

 海がしけで荒れて難破してわれだけが助かった。

 そしてメリケンの捕鯨船に拾われてメリケンに連れて行かれた。

 上陸すると奴隷として売られたんだ。」

「なるほど~!」

「まぁ、話すと色々と長くなるな。」


俺が納得して頷いていると吸血鬼が皿をもって立ち上がり眠らされている処女の乙女の元に行った。


「彼女はどうして寝ているんだ?」

「あのう、あなたへの生贄として睡眠薬を飲ませて眠らせています。」


吸血鬼は俺の顔をじっと見て顔をしかめた。


「生きている人間を生贄に…だって?

 お前は鬼か?」


吸血鬼が処女の乙女の顔を優しく叩いた。


「起きなさいお嬢さん。

 おいしい梨でも食べるかい?」


吸血鬼が何回か処女の乙女の頬を叩くと、処女の乙女はゆっくりと目を開けた。

処女の乙女が吸血鬼を見ると目を見開いて悲鳴を上げ頭の横に置いてあった「悪魔儀式用鋼鉄製ろうそくスタンド2個セット(アマゾン123000円)」の一つを掴んで吸血鬼のこめかみに思い切り叩きつけた。


「うぎゃぁああああ!」


吸血鬼はこめかみの皮膚が破れて派手に出血して梨が乗った皿を派手にぶちまけて床に転がった。

骨が見えるほどのひどい傷だったがそれはみるみる出血が止まり傷が塞がっていった。


(なんという再生能力なんだ…本物だ…やっぱり本物の吸血鬼なんだ…しかし…)


ルンバが出動して梨の皮を掃除し始めている横で吸血鬼が頭を振りながら身を起こした。


「なんて野蛮な奴らなんだ!」


俺は茫然と吸血鬼を見つめ、処女の乙女もろうそく立てを握りしめて状況が判らずに、吸血鬼を見つめて固まっていた。


寝室には立ち尽くす俺,、床で身を起こして不快極まりない表情の吸血鬼、鋼鉄製ろうそく立てを握りしめ息を荒くしながら俺たちを油断なく交互に見る処女の乙女。

とてつもなく気まずいトライアングルが形成された中をルンバがあちらこちら動き回り床を掃除している。

とりあえず何とかこの状況を収めないといけないと俺は感じて深くかぶったフードを外して顔を出した。


「あのう…皆さんいまどういう事が起きているか良く判らないと思うので…とりあえずリビングに行って俺が説明します。

 あ、すみません、靴を脱いでこれに履き替えていただけますか?」


俺は用意していたスリッパを出して吸血鬼の前に並べ、吸血鬼は素直に靴を脱いでスリッパに履き替えてくれた。


処女の乙女は極めて警戒する表情で俺を見つめ鋼鉄製ろうそく立てを握りなおした。


「あんたと床の人が先に行ってよ。

 変な真似したらこれでぶん殴るからね。」


吸血鬼もこの状況がどんなものなのか知りたいらしく、床から立ち上がると服の埃を叩いて落とし衣服の乱れを直した。

ルンバが吸血鬼の周りをぐるぐると這いまわり、せっせっせと埃を掃除している。


「われも賛成だ、君達は何者なのか、ここはいったいどこでどんな時代なのか教えてもらおう。」


そして俺を先頭に、あちこちを物珍し気にきょろきょろと見まわす吸血鬼、鋼鉄製ろうそく立てを握り油断なく俺たちを監視する処女の乙女の順番で寝室を出てリビングに向かった。

ソファに案内しようと思ったけど、吸血鬼の埃で汚れた服を改めて見た俺はリビングに面したダイニングのテーブルに案内した。

俺が椅子に腰かけ、その向かいに吸血鬼が座り、処女の乙女はしばらく考えた後で吸血鬼の横の椅子を引き出すと距離を置いて吸血鬼の隣に座り、テーブルの上に鋼鉄製ろうそく立てを置いてその上に両手を置いた。


「え~ゴホン、まず、コーヒーでも入れますから…」

「変なもの飲み物に入れないでしょうね!」


睡眠薬入りハーブティーを飲んで意識を失ったトラウマを持つ処女の乙女は俺を睨みつけた。


「ああ入れません入れません大丈夫だから心配しないでください」

「もしも変なもの入れたら意識を失う前にあんたの頭をかち割るからね!」

 

処女の乙女が底光りする鋭い視線を俺に向けた。


……ひゃぁああああ!怖い怖い怖い!

処女は怖い処女は怖い処女はやっぱり怖いんだよいろんな本で読んだけど処女は怒ると情け容赦なくて土下座して謝ってもその頭をサッカーボールみたいに蹴とばして血まみれで動かなくなるまで蹴るんだよ恨みも忘れないんだよ容赦ないんだよこの処女の乙女はこの先誰かに処女をささげない限り俺への恨み怒りが消えないんだよこの女が処女でいる間はいつ残酷極まりない手段で命を奪われるかもしれないよ高校の時に俺の童貞を奪った教育実習生の先生も処女の女の人は取り扱いに注意よとか言ってたよ大学の新人歓迎コンパで俺の体を貪った先輩の女の人も処女は怖いよと言ってたよマジだよマジに処女は怖いよ彼女が処女でいる間は俺は凶悪な追っ手に追われる獣道みたいな人生を歩むんだよ怖いよ怖いよ怖いよ…ジャンヌ・ダルクも処女だったもんね怖い怖い…


そんな思いに囚われながら俺は震える手でお湯を沸かし3人分のコーヒー豆を挽きフィルターをセットしてコーヒーを淹れた。


その間吸血鬼はあちこちを物珍しそうに見回し、処女の乙女はコーヒーを淹れる俺の手を注意深く見つめていた。


俺は額の汗を拭い、3人分のコーヒーと砂糖ミルクをテーブルに並べた。

吸血鬼はカップを手に取り香りを嗅いでからゆっくりと一口飲んで幸せそうにため息をついた。

処女の乙女は疑い深い目で俺を見つめて顎をしゃくり、先に俺にコーヒーを飲むように無言の圧力をかけた。


俺がコーヒーを飲むと処女の乙女はカップを手に取り注意深く香りを嗅いで一口飲んだ。


「さて、いったいどうことか説明してくれるかしら?」


処女の乙女はこの状況の黒幕が俺だと見抜いて、俺に説明を求めた。

寝室のごみをあらかた片付けたルンバがダイニングにやって来て吸血鬼や処女の乙女の足元をぐるぐる回って掃除を始めた。


「ゴホン、ええとまず説明すると、こちらに座っている人は実は吸血鬼で俺は彼を復活させるために…」

「そんな戯言誰が信じるのよぉ!

 あ~!こいつうざいんだよ!」


俺の説明をぶった切って怒鳴った処女の乙女が足元を動くルンバに鋼鉄製ろうそく立てを叩きつけた。


「ピギャァアアアア~!」


火花が散り軽く爆発したルンバは悲鳴を上げて壁に突進して激突、ガタガタと震えた後でまた少し破裂音を立てて埃取りのアームで弱弱しく俺にサヨナラしてから完全停止した。


吸血鬼は凶悪な顔面に変化した。


「何をするんだこの小っちゃくて丸い奴が可哀想じゃないかぁああ!」


吸血鬼は常人離れしたスピードで処女の乙女から鋼鉄製ろうそく立てを取り上げると頑丈な鋼鉄製ロウソク立てを両手で握りしめ、ぞうきんを絞るように絞り上げると鋼鉄製ろうそく立てはめきめきと折れ曲がった。


「きゃあ~!何?じゃああなたは本当に…きききき…吸血鬼…」


処女の乙女が金切り声で叫び、吸血鬼は無残に折れ曲がった鋼鉄製ろうそく立てをテーブルに置くと高らかに言い放った。


「そう!われは吸血鬼!マイケル・四郎衛門だぁ!」


……え?

マイケル?

四郎衛門?

……え?

ちょ…








続く







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