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第29話 パパラッチしました

お読み頂きましてありがとうございます。

「地下の家具屋で壁もキッチンもバスもトイレも注文できるよ。全て同じ店で購入すると1週間で家具も壁も配置された状態で完成する。不思議だよね。まあお姉さんも突っ立ってないで入りなよ。」


 開けた扉から覗き込んだ状態だ。不思議でもなんでも無い。ここがダンジョンならば壁が出現しても不思議じゃないし、上下水道も『ゲート』を使えば簡単だ。


 『お菓子屋』さんはスタスタと最奥の窓まで紫子さんを引きずっていくとベランダに出た。部屋は200平米くらいだろうか。窓まで近付くとベランダというには広すぎる。しかも板張りになっていてサンルーフバルコニーとして使えそうだ。


「えっ。ジャグジーまであるの?」


 さらに奥から隣を覗き込んだ紫子さんが驚きの声をあげる。なるほど、それを見せたかったのか。


 追いついた俺も覗き込むと此方の部屋のベランダの3倍くらいある広さの中に余裕で5人は入れそうなジャグジープールが設置されていた。


「なるほど、3つの家はバルコニーで繋がっているのか。」


 こんなものがあれば、隣にパパラッチが現れても仕方ないだろう。


「バルコニーの手前のリビングから共用しているんだ。ちっ仲良く昼寝してやがる。」


 リビングでは男の子と女の子がソファーで寄り添い寝ていた。しかもベビーベッドが2つ置いてあり、そこでもすやすやと赤ちゃんが寝ている。


 『お菓子屋』さんはセリフと違って満面の笑みを浮かべている。


「SNSで自慢することだけあって『十万石』のお孫さん可愛いわねえ。」


 紫子さんがファンらしくSNSも常に確認しているらしい。


「あれが娘さん夫婦なんですか?」


 10代かな。ふたりともムチャクチャ可愛い。


「違う違う。あれは僕の奥さん。奥さんなのっ。全く油断も隙もない奴なんだから。」


 後ろで『中田』さんが泣き喚く。


「ええっ、そうなんですか? あそこいる男の子の方がお似合いなのに。」


 あの女の子と「中田』さんでは年齢が2回り以上離れていそうだ。


「そう思うよね。お似合いよね。お産も立ち会っていたし、良くお風呂に入れているからか子供は良く懐いているのよね。ミルクも良くあげていたし、離乳食はあの子の手作りだし、良い父親になりそうだよね。」


 志保さんも追い付いてきて隣を覗き込むと微笑まし気な様子を見せている。お産って、赤の他人で男性が立ち会えるものなのか?


「そうだな。なんでこんな奴にくれてやったかな。時々後悔するんだよな。」


 『お菓子屋』さんが本当に憎たらしそうだ。まあ未成年の娘さんを取られたらこんなものか。


「志保さんもお義父さんもそれは無いよ。」


 『中田』さんは泣きが入っている。からかい易い男だな。だから下僕あつかい

されるんだな。


「志保さん志保さんといつまでも懐いていないで、子育てのひとつも手伝ってやれよ。本当に愛想尽かれるぞ。」


「『中田』くんはマンション内で男女問わない『ロリコン』で有名だから、大葉くんも気をつけてね。」


「それって、アイツが広めているだけだから・・・、可愛い顔してやることはえげつないんだから。全く嫌いだ。」


 嫌いだと言いながら可愛いとか言っちゃってるよ。真正のロリコン男かよ。


「その割りには彼の初主演の映画で助演男優賞取ったよね。現場でも随分、入れ込んでいたと聞いたわよ。」


 そこでやっと彼の正体を気付いた。『チヒロ』くんだ。男の娘女優主演作品で『中田』さんは詐欺師役で出演しており、『チヒロ』くん演ずる主人公を騙そうとして逆に騙されるというコミカルな役で助演男優賞を取っている。主人公が諭した場面ではボロボロと涙を零すシーンが評価を得ているのだ。


「その写真どうするの?」


 思わず、スマートフォンを出して『チヒロ』くんを何枚も撮影していた。パパラッチのことを馬鹿に出来ない。


「中田家離婚危機という文章でSNSで拡散し・・・もちろん冗談です。」


 咄嗟にごまかしておく。生『チヒロ』の写真だ。何が何でも死守したい。


「なんだ冗談なのね。言ってくれば拡散するのを手伝おうと思ったのに・・・ねえ『十万石』」


「おう絶対『いいね』を付けるぞ。」


「止めて、それ洒落にならないから。絶対に止めてよ。」



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