第2話 異世界転生しました
お読み頂きましてありがとうございます。
「うーん。森の中に出てきたのはラッキーだったのか?」
それにしても、この木は杉に良く似てるなあ。しかも等間隔に並んでいるということは人工的に植林されたところなのだろう。剣と魔法だけの世界では無さそうだ。
魔法で高度文明化された世界なのかな。『ウインドーカッター』などの風魔法で多くの木材を切り出してハゲ山にしてしまったとかかも。それで近くの農民が植林したんだ。
林道らしき道を下っていくと、少しずつ頭が冷静になっていく。
少し開けたところに出たときのことだった。
カー、カー。アホー。
突然、黒い物体が飛んできた。危機感に『超鑑定』スキルが勝手に働いてくれる。
「なんだ。烏か。びっくりさせやがる。異世界にも烏がいるんだなあ。」
動物の生態は地球と似ているのかもな。モンスターはどんな生態なんだろう。ゴブリンとかいるのかなあ。
そこまで思い浮かべたとき、俺は大きなミスを侵していることに気づいた。
「ヤバい。俺って何も攻撃手段が無いじゃないか。さっきの黒い物体がモンスターだったら、異世界転生直後に即死なんてバカな結末に陥るところだ。危ない危ない。」
確か魔法使いの最上級である『魔導士』スキルをガチャで引いたはずなんだよな。
「まずは『ステータスオープン』だったよな。何々、『魔導士』スキルは・・・。」
目の前にウィンドウが立ち上がり、注意事項がズラズラと記載されていた。ウィンドウは自分だけしか見えないらしい。他人が居るところでウィンドウを見たり、タッチしたりするとキチガイ扱いされるかもな。気をつけようっと。
しかし、注意が長い長すぎる。めんどくさいなあ。あとは斜め読みして、最後に出現した【閉じる】ボタンを押すとスキル欄の右上に透けて見えていた【詳細】ボタンを直ぐに押した。
『魔導士』スキルは属性魔法を扱えるの最上位スキルで『聖女』スキルのような聖魔法関連のスキルや『空間』スキルのような異世界転移関連のスキルは取れませんと書いてあった。
なるほどなあ。ラノベなら聖魔法には部位欠損どころか蘇生のような治癒魔法や回復魔法、それから転移魔法が使えたはずで習得出来ないのは痛いな。でも水魔法関連にも回復系の魔法があったはず。この世界でスキルレベルを上げていけば、いつかは習得できるはずである。
ありきたりだが属性魔法の攻撃手段といえば火魔法の『ファイヤーボール』だよな。
何々、無暗唱で使えますが、まずは声に出して慣れたほうが良いでしょう・・・か。なるほどなあ。なかなかの親切設計だ。呪文まで書いてある。
「われ、1パーセントの魔力を捧げる『ファイヤーボール』」
セリフと同時にイメージをして両腕を前に突き出す。こういうのはイメージが大事だと聞くから昔見た異世界転生モノのアニメのシーンを脳裏に思い描く。1パーセントでは少ないだろうが、慎重に増やしていけばいいのである。まあ魔力切れで突然死なんて最悪の結果も怖いからな。
目標は何も無い空間だ。数百メートル先には別の山がそびえ立っているが、全然届かないだろう・・・と、そのときは思ったのだ。
結果は最悪だった。
『ファイヤーボール』は成功した。成功したができあがったのは、目の前にあった山に、向こう側の空まで見える真っ黒い穴が出来たのが結果だ。
何が起こったんだ?
『超鑑定』スキルが勝手に発動する。どうやら火力の温度が高過ぎて一瞬で燃え尽くしたらしい。
まあ何にしても山火事にならなくて良かった。火事なんかになって煙にまかれて死んだなんて最悪すぎる。
兎に角、火力が強過ぎたのは確かだ。
「『ステータスオープン』って、バカだな。俺って本当にバカだ。」
魔力の欄は思った通り『MP』と記載されていたが本来数値が表示されているところに『∞(無限大)』が表示されていたのだ。
無限大の1パーセントは無限大だ。なんと最大出力で魔法を放ってしまったのだ。『無限魔力』スキルが関係しているに違いない。
それにしてもパーセンテージで魔力を捧げて魔法が発動する『魔導士』スキルと文字通り魔力が無限にある『無限魔力』スキルの相性は最強で最悪だ。
火魔法の『ファイヤーボール』は偶然、高燃焼スキルになっただけだったから良かったものの、水魔法関連で水が出る魔法を放ったら洪水が発生するだろう。こりゃ魔法の使いどころが難しいぞ。
下手をすれば、世界を壊してしまう。そうなれば、この世界の自浄作用が働いて排除されてしまうに違いない。
とりあえず『魔導士』スキルは封印だな。と言っても魔法を使うことは諦めていない。この世界の魔法使いから教えて貰う方法で実現できるかもしれないし、魔力を注ぐだけで使えるスクロールがあるかもしれないからだ。