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第19話 ストーキングされていました

お読み頂きましてありがとうございます。

「なによ! 労働者の当然の権利として休みはあるのよ。」


 老舗ホテルでランチを楽しんでいると『くノ一』が目の前に座った。今日は休みらしく忍者装束は着ていない。どちらかと言えば身体の線を誇示するような服だ。


 考え事をしながらゆっくりと食事を進めていた俺に取っては鬱陶しい限りだ。


「誰もそんなことは言ってないだろ。なぜ傍に寄ってくるかな。」


 感情が表情に出てしまったらしい。


「いいじゃない。私だってホテルでランチを楽しむ権利くらいあるでしょ。このところ、静香さんや紫子様と始終出掛けているんだって?」


 からかいに乗ると思っているんだろうか。無視することにしよう。


「はあ。こんなに席が空いているのに、わざわざ相席をお願いしに来るか?」


 周囲を見回さなくても、席はそこかしこに空いているのが見える。まあオフィス街でもない限り平日のランチタイムなんてこんなものだろう。


「何処に座ろうと私の勝手でしょ。」


「ああ、そうだな。じゃあ俺が移動することにするよ。すいませーん!」


「ちょっと待ってよ!」


 俺が食べかけのランチを移動して貰おうと手を挙げようとしたところ『くノ一』に腕を引きずりおろされる。


「なんだ?」


「そこまで邪険にしなくてもいいじゃない。」


「はあ。お前俺に好かれていると思っているのか?」


「思ってないけどさ。こんな美少女が一緒にランチをしようと言っているんだから素直に頷きなさいよ。」


 この言動がウザがられている原因だと解ってないのか。


「何が目的だ?」


「ちょっとくらい、お喋りしたいなあって。」


 こいつは紫子さんの怒りを買った所為で『渋沢グループ』の従業員のみならず、『甲賀忍者衆』の方々からも無視され、必要事項以外は何も会話が無いらしい。


「はあ。俺は考え事をしているんだ。邪魔だスマートフォンに向かって喋ってろよ。」


「それじゃあ。私が変な人じゃないの。」


 皆、十分に変な女だと思っていると思うぞ。


「じゃあ忍者屋敷でカメラ小僧を相手にお喋りすれば。」


「嫌よ。奴らセクハラ紛いの質問しかして来ないんだよ。優しくすると触ってこようとするし。」


「まあいいじゃないか。イロモノ系『くノ一』なんだし。チヤホヤされて嬉しいだろ。」


 以前調べたときにも胸の奥をきわどい角度で撮影されていたり、ローアングルの写真も出回っていたから露出系コスプレイヤーと思われているのかも知れないがさすがに言えないよな。


「喧嘩売ってる?」


 早く消えてくれないかなと思ってやっていたことがやっと解ったらしい。


「考え事をしているんだから邪魔なんだよ。どっか行けよ。」


「悩み事?」


 どれだけ罵られようと会話が出来ないよりはマシらしい。


「しつこいな。そうだよ宝くじをどう換金しようか悩んでるんだよ。」


「宝くじって。また当たったの。いいなあ。奢ってよ。それでいくら当たったの?」


 前に当たったときには行方不明中だったくせにこいつ良く知っているな。誰だ喋ったのは・・・一人しか思い浮かばない。そう言えば口止めし忘れた。


「100万「また100万当たったの? ディナーご招待ね。」」


「誰がお前に奢るかっ。話を聞けよ。100万円が90本に1000万円が9本だ。1等はなかなか当たらないもんだなあ。」


 『超幸運』スキルのお陰でジャンボ宝くじは1等が当たるもんだと信じていた。だから静香さんと紫子さんにアチコチ連れ回されるたび、目に付いた宝くじ売り場で買っていたのだ。


「・って合計1億8千万円じゃないっ。」


 計算早っ。絶対にお前の物にならないものに目の色変えるなよ。


「へえ。お前算数は出来るだな。頭悪そうに見えるのに。」


「それ小学生の問題じゃない。私が換金してきてあげようか?」


 どれだけ貶されても会話を続けられるなんてある意味凄いな。


「お前持って逃げる気だな。」


 いちいち付き合う俺も俺か。


「ソンナコトシマセンヨ。」


 こんなに職場環境が悪くなってそこに大金が転がって来たら大抵の人間は持って逃げるだろう。まあ俺の『超探索』スキルに掛かればどこに居ても見つけ出せるがな。


「お前に任せるわけが無いだろ。静香さんか紫子さんのどちらに頼もうか迷っているんだよ。どちらに頼んでも片方が傷つくだろ。」


 紫子さんの仕事が忙しそうだったから、静香さんと昼食に行ったり、静香さんとアキエちゃんが家族の団欒を邪魔するのが悪いと思って紫子さんとお酒を飲みに行っても、誘わなかったほうの機嫌が悪くなるんだよな。


「私が傷つくのはいいの?」


「いいぞ。存分に傷ついてくれ。」


「なんでよ。そんなこと、どちらに頼んでも快く応じてくれるわよ。なんなら2人同時に頼んで見れば?『ハーレム野郎』と罵られて嫌われるといいんだわ。」


「お前。声デカいよ。」


「もちろんワザとよ。さあ私を憎んで~。」


「壊れてやがる。仕方が無い。お前の休みの日はルームサービスでも頼むか。」


 この近辺って寂れていてチェーン店くらいしかランチを食べる所が無いんだよな。このホテル、建物は古いがきっちり清掃されていて飯も旨いんだよな。余所を探す気にもならない。


 ホテルのコンシェルジュから問い合わせれば教えてくれるだろう。拙いか。理由を話したら、出入り禁止になりそうだもんな。


「止めてよ。今日も12時前からロビーで待っていたのよ。」


「怖いわ。お前ストーカーかよ。本気で出入り禁止にして貰うぞ。」


「私を舐めないで。このホテルのことなら詳しいのよ。何処のドアがいつも開いているとか知ってるし、リネン用の階段を使えば誰にも見られずに部屋の前まで簡単に行けるし、怪力を使えば部屋の扉を蹴破ることなんて容易いわ。」


「部屋に押し入って何する気だよ。」


 今夜から『超結界』スキルで結界を張って寝るか。


「そりゃあ。貴方の貞操を奪えば皆から憎悪を向けられるかな。」


 本格的に壊れているぞ。


「経験も無いのに何言ってんだ。そんなお前に押し倒されたからって欲情するように男の身体は出来ていないんだ。」


「紫子様なら欲情するの?」


「母親よりは若いんだから、なんとか・・・何を言わせる!」


「マジ?美少女でナイスバディーの私に欲情せず、あんな年増に欲情するの。変わってんね。」


「お前に言われたくないっつの。」



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