第18話 罰は無期限に延長されるそうです
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「なあ頼むよ。真は『甲賀忍者衆』にとって娘同然なんだ。探して出してくれないか?」
翌日になって望月さんだけでなく。『甲賀忍者衆』のSPたちが揃ってやってきて頭を下げられた。
「えっ。まだ見つかって無かったんだ?」
昨日、総出で探しに行ったんだから、見つかっているとばかり思っていたのだがそれでも見つからなかったようだ。
ここは老舗ホテルのパーティー会場で、今日は紫子さんの誕生を祝うパーティーが開催されている。
「ダメよ。今日は私のパートナーを務めてくれる約束でしょう。」
そう言って胸元の開いたドレスを着た紫子さんが腕を組んでくる。その柔らかな感触に腕が吸い込まれそうだ。今日の午前中いっぱいでホテル内のエステで行った施術の効果なのか。露出した肌も顔も同じ人間とは思えないくらい磨かれ、とても孫が100人も居るような女性とは思えない。
紫子さんを直接救出した効果なのか。昨日から離してくれないのである。似合うとも思えないタキシードを着せられてこの場に居る。40代最後の年を謳歌するとか言っていた。俺に拒否権はあるのだろうか。
「ですが奥様。持たせた干し飯も尽きたはずです。何とか今日明日中には見つけたいのです。」
今時、干し飯なんて存在するんだ。なんだろう沢の水で喉を潤し、ふやかしながら食べるのだろうか。
「そうやって皆して甘やかすから我儘な娘に育ったのが解らないの!」
確かにあの突っかかり様は頂けないが、さすがに命の危険さえ出てきたのであれば手を貸すのもやぶさかでない。
「どちらの言い分も解りますから、『甲賀忍者衆』の方を3人ほどお借りしましょう。それから俺が救助に関わったことは内緒でお願いします。」
『超探索』スキルを使い、『甲賀忍者衆』の3人に対してスマートフォンで連絡を取りながら追い詰めていく。4人ともウィンドウには点と表示されており、3方向から追い詰めれば簡単に捕まえられると思っていた。
俺が直接救助に関わったことを知れば、どんな顔をするかとも思ったが紫子さんのようになっても困るので黙って貰うことにしたのだ。
「まだ終わらないの?」
3方向から追い詰める方法で3度ほど試してみたのだが上手くいかない。事前に察知した『くノ一』が2者間の僅かな隙を突いて猛スピードで逃げ去っていく。
「ええ。近付いてくる人を全て敵だと思い込んでいるみたいです。仕方が無いので何処かへ追い詰めてみます。」
近くというほどでは無かったが『世界料理博物館』があったので、最終目的地点は日本の屋台村にある忍者屋敷だ。あそこへ到着すれば知り合いも沢山居るだろうし、追手が『甲賀忍者衆』だと解るだろう。
「へえ。セクシー系『くノ一』に転向したのか?」
パーティーの後、『世界料理博物館』で働く『くノ一』を見に行った。日本村の屋台料理で飢えを凌いだ奴は罰として1ヶ月間、忍者屋敷でアルバイトを命じられていた。
「何を見ているのよ。いやらしいわね。」
落ち込んでいるかと思えば、相変わらずのようだ。忍者装束はアチコチ擦り切れ下着が見え隠れしていた。『世界料理博物館』のお客様には大受けでお客様サービスである写真撮影もその姿でこなしていた。
「相変わらずだな。その忍者装束のままで罰を2ヶ月に延ばして貰うか?」
「大馬鹿さんは何の権限があって言っているのよ!」
「俺は静香さんを守り通したぞ。しかも誰かさんの所為で警備体制が緩んで、紫子を強奪されたが無傷で奪還した。役立たずには発言する権限も無いことが解らないらしいな。」
「うぐっ。」
ここで俺が救出に関わったことが判れば、心が折れ兼ねないので黙っておく。
「いいじゃないか。忍者屋敷のアイドルだったんだろ。これでもっと人気が出るように振る舞えば、今回のミスも帳消しに出来るくらい。貢献できるさ。」
どうも、この女が図に乗っていたのは忍者屋敷でアイドル扱いされた所為だったらしい。SNSを漁ってみたところ、ポーズを作って撮って貰った画像データが沢山発掘されたのだ。
「なによ。そのタキシード笑ちゃうわね・・・両手に花なんて荷が重すぎるんじゃない。」
矛先が俺の衣装に向かう。ダメだこりゃ。完全にセクシー系『くノ一』に決定だな。
「その辺りで止めておけ。キチンと両側の女性の顔を見て判断したほうがいいと思うぞ。」
両手の花はその沈黙が怖い領域に入るくらい怒りの波動が伝わってきている。おおくわばらくわばら。
「えっ。静香さんでしょ。と・・・ゆ・ゆ・ゆ。」
『くノ一』の顔が真っ青に変わっていく。ようやく自分が首の皮1枚繋がっているだけであることに気付いたらしい。




