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第14話 年齢は関係ありません

お読み頂きましてありがとうございます。

「どうしたの?」


 あれから、パーキングエリアに迎えに来た車に乗り込み老舗ホテルに着いた。


「全く活躍出来なかったなと思って。」


 夜通し開けていたというホテルの会議室に座り込み、頭を抱え込んでいると別室で休んでいた静香さんが起き出してきて、声を掛けてくれた。


「大丈夫。監禁場所を見つけ、助けに来てくれた貴方は私のヒーローだわ。」


 そういって後ろから抱きついてくる。


 俺TUEEEが出来る絶好の機会を逃してしまった。きっと膠着状態に陥り、颯爽とスキルを使い、敵を倒し脱出できると踏んでいたのである。まさかあんな展開になるとは思わなかった。


 お婆さんは金銭も全額、身元保証もしてくれると言ってくれたがなにかしっくりと来ない。そこまでしてもらえる内容じゃ無いと思うが無戸籍で無一文じゃ如何ともしがたいので黙って貰っておいた。


 あのときとは状況が変わってしまったので次は戸籍を取得できる方法を考えようと思っているのだが、全く思い浮かばない。まあ『超結界』スキルがあれば警察にも出入国在留管理局にも捕まらないので国を追い出されることも無いだろう。


「しかし、ここを撤収するのかと思ったのに後始末に時間が掛かるなあ。」


 身の代金もしっかりと戻ってきたのにである。このホテルにはどれだけ滞在してもいいし、食事も出るというので当分居座るつもりなんだがなぜか会議室で待機させられている。


「実はSPがひとり戻って来て無いらしいの。」


「あれっ。パーキングエリアで点呼してたよな。」


 崩壊した廃墟をそのままにして、警察や消防が駆けつける前に皆でパーキングエリアまで戻って来た。あとはホテルまでピストン輸送したはずだ。


「今回は臨時に入っていた子が居たのよ。」


「あーっ。そういえば、忘れてた! 服部真さん。でもスマートフォンで連絡取り合っていたんじゃ無かったのか?」


 居たよ。俺よりも活躍していない奴。俺が乗った誘拐犯の車を追いかけてきたところまでは確認したが、爆破騒ぎで忘れていたのだ。


「スマートフォンはGPSで確認したところに落ちていたらしいの。心配だよね。」


 あれだけ大騒ぎして、強引に参加したというのに何も貢献せずに行方不明だ。


 確か『超探索』スキルで知っている人間は探せるはずだ。ウインドウを開き、探索範囲を広げていくと・・・居た。パーキングエリアから廃墟までは曲がりくねっているが東に向けて一本道なのだが、それよりも随分北に逸れていっている。


 どう考えても山に入り込んだとしか思えない場所に居たのだ。


「大丈夫なんじゃないかな。周囲には高速道路も沢山通っているし、一般道もあるし、民家も無いわけじゃない。」


 北海道の草原のど真ん中に放置されたら途方に暮れるしかないが、ここは本州だぞ。道に出れば道沿いに移動すればいいし、民家を見つければ助けを求めればいい。俺も山の中に放り出されたがまず考えたのは道沿いに降りていくことだった。


「心配じゃないの?」


 ここで突然探しに行って一発で見つけたら、いくらなんでも拙いだろう。


「別に・・・。子供じゃないんだし、そのうち帰ってくるだろ。」


 あれだけ絡まれたんだ。出来れば顔を合わせずに終わらせたい。向こうも顔を合わせ辛いだろう。


 俺がそう答えると突然ニコニコしだした。


「そうよ。そうよね。じゃあ何処かへ出掛けましょう。遊びに行く約束したよね。」


 昨日は殆ど寝ていないだろうに元気いっぱいだ。遊びの約束したなあ。それでニコニコしたのか。


「タフだな。身体は大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。こんなことくらいでメゲてなんていられないの。なんといっても今回は五体満足で帰って来れたんだもの。遊びに行かなくちゃ。いいでしょママ。」


「また赤ちゃん返りかしら、紫子(ゆかりこ)と呼んでっていつも言っているでしょ。しかし、随分と気に入ったのね。年下は趣味じゃないって言ってたのに。」


 【ゆかりこ】って読むんだ。『超鑑定』スキルで読み仮名はウインドウをタッチしないと出てこないからな。間違って【しこ】とか言わなくて良かった。なかなか雅やかな名前だ。


「うん。見た目は若いのにしっかりとした考えを持っているみたいで頼りがいがあるのよね。それに鍛えているように見えないのに力強いし。なんで、これで年下かなあ。」


「貴女の見る目が無かっただけでしょ。この子ったら16歳でアキエを産んだのよ。バカでしょ。」


「言わないでっ。っていつも言っているでしょ。もう。子持ちのオバさんなの。引く? 引くよね。」


 頬っぺたを膨らましている姿はとてもアラサーには見えない。若くして子供を産むと子供のままなのかな。


「あら、大葉くんは知ってるわよ。知っていて助けに行ってくれたんだから。」


「えっ。本当?」


 静香さんは心底驚いているようだ。子持ちかどうかなんて何が違うというのだろう。見ず知らずの若くて綺麗な女の子でも俺のような天涯孤独の身の上なら心配する家族も居ないだろうから誘拐されたと聞いても可哀想だなと思うだけで命の危険を犯してまで助けに行こうと思わない。


「アキエちゃんには逢ったよ。そんな子の親を奪うなんて卑怯なことを見逃せるわけは無いだろ。兎に角、遊びに行くんだろ。アキエちゃんも誘って皆で行こう。」


 明らかにお金持ちの紫子さんに恩を売っておけば、今後の生活が楽になるだろうなという打算はあった。だけど子持ちかどうかなんて全く関係無いんだけど。何を言い争っているのか理解できないな。











「お母さんのことだから、この辺りで遊びに行くとしたら『世界料理博物館』でしょ。母さんはすぐに酔っ払うから詰まんないんだよね。」


「『世界料理博物館』か。俺は初めてだな。どういうところなの? アキエちゃん案内してよ。」


 紫子さんの生家だというあの家にアキエちゃんを迎えに来たところだ。この様子だとちゃんと家族できているみたいだ。ただ年齢が近すぎるのかそれとも静香さんが子供過ぎるのか。親子というよりは姉妹って感じだ。


「お兄ちゃんも行くの? お母さんのお守大変だよ。頑張ってね。『世界料理博物館』は世界の屋台の建物で民族衣装を試着したり、屋台料理を楽しめるんだよ。」


 俺がアキエちゃんにお願いすると直ぐに乗ってきた。このくらいの年齢の子供は頼りにされることを嬉しいと思うらしい。


「へえ。楽しそうなところだね。」


「それに所々に動物も飼われていて、触れ合ったりできるのよ。」


 そう言いながらテキパキと出掛ける用意をすると腕を組んできた。もう150センチくらいある立派なレディーだな。これは子供扱いしないほうが良さそうだ。


「待ってよアキエ。私が道々説明しようと思ったのに・・・。」



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