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第11話 静香さんを騙しました

お読み頂きましてありがとうございます。

 某日某所。


「なんだと本当か? 使えない部下の持ちやがって。まだ連絡とれねえのか?」


 『隠密』の男がスマートフォンを切ると冷めた目で厳つい顔の男に悪態を吐いている。


「どうしたんですか?」


「監視していた『影』の報告によると若干遅れは生じているものの、金を受け取りは上手くいったらしい。」


「それなら成功じゃないですか。」


「だか金を持ってきた男も車に乗せてこちらに向かっているらしい。お前の部下、バカじゃないのか。監禁場所に案内してどうする気だ。」


「携帯に繋がらねぇ。クソ。そんな奴は殺せばいいだろ。」


 厳つい顔の男がスマートフォンから流れる無情にも繋がらないことを告げるアナウンスを聞くとスマートフォンを床に叩きつけ、画面が粉々に砕け散る。


「昭和時代じゃねえんだ。死体を始末することが、どれだけ危険なことでどれだけ大金が掛かることか解っているのか? 万が一、2人が離れたがらなければ2人共始末するしか無い。3千万円でも足が出る。今は代わりにムショに行ってくれるバカも居ないんだぞ。」


「じゃあ、どうするんだよ?」


 厳つい顔の男がさらにイライラと言葉を吐き出す。


「俺らも顔を隠すしかない。男も同じ場所に監禁する。万が一、女を連れ出すかと思って目出し帽を持ってきて正解だったようだ。」


「そんなもの持ってきて無い。」


 厳つい顔をした男の表情が歪む。


「バカ。コレを使え。」


「えっ。頭領はどうするんですか?」


「帰る。余りにもバカバカしい展開だから帰る。とりあえず2人を明後日の夜まで監禁しておけば良い。罰としてお前ら全員、明後日の夜まで目出し帽を被り続けること。」


「メシが食えないじゃないですか!」


「バカ過ぎるだろ。目出し帽を良く見ろ。口も開いている。兎に角もうお前らは考えるな! 考えれば考えるほど、拙い行動に繋がるようだ。」















 およそ30分後、目的地と思われる廃墟が見えてきたので『超結界』スキルで結界を解除する。結界の端に引っ掛かっていたお婆さんのスマートフォンが落ちていくが気付いた様子も無い。石ころか何かと思っているんだろう。


 来る道の所どころに高級乗用車が止まっていて怪しいことこの上ない。その時、1台の乗用車が廃墟から出て行った。来た道をそのまま向こうの方向に去っていったので運転手の顔も見えなかった。


 『超鑑定』スキルはウインドウに乗っていた2人の名前と所属する組織などを表示していたが聞いたことも無い企業名だった。後でお婆さんに聞いてみよう。


 仕方が無い、戦力が低下したと思えばいいよな。


 廃墟には何本もの電力線や電話線が伸びており怪し過ぎる。電力会社や電話会社とは契約を結んでいるはずなのに警察とかが調べに来たりしないのだろうか。


「早く降りろ! もたもたするなっ。」


 痛いはずなのに蹴り飛ばしてくる。自分が痛い目にあってでも痛めつけたいなんて、サドなのかマゾなのか解らない男だ。


 廃墟に入っていくとこれまた目出し帽を着けた奴らが勢ぞろいしていた。ここはプロレスラーのファンクラブか何かか。トラのマスクを着けている奴は居なかった。


「事情は解った。兎に角、会わせてやれそのまま同じ部屋で監禁だ。」


 どうやらこの男がボスのようだ。もったいつけるように指示を出す。見える範囲内で5人、倍の人数が居ても想定内だ。だが少しだけ違和感が残った。ボスもそこまで知恵が回るように見えない。本当に主犯格なのだろうか。


 ボディチェックを受け、財布以外()も持っていないことを確認されると、押されるようにして監禁場所と思われる場所に入り、ドアを閉められた。


「静香さん。大変だったね。覚えているかな。15年前の正月に本家にご挨拶に伺った大葉です。あの頃は子供心に綺麗な人と思った覚えがあるけど、さらに磨きが掛かって美女になっていて嬉しいよ。」


 出会いのストーリーはお婆さんと作り上げてあった。毎年、正月は別の場所にある大きな屋敷で親族婚族分家、大きな会社のオーナーを中心に挨拶を受けるのだとか。その年によって数も相手もマチマチで誰に会ったかは記帳された名簿を見ないと解らないらしい。


「大きくなったわね大葉くん。いい男に育って、今度遊びに行こうよ。」


 心細かったのか女性のほうから抱きついてくる。力強く抱き止めようと思ったが、手近な所にソファを見つけたのでそこまで移動する。


 この女性は割と褒め言葉に弱く騙されやすいらしいことは聞いていた。誘拐されたときもホスト風の優男が傍に着いていたらしいことまで解っている。


 薄暗い場所だが『超感覚』スキルのおかげで昼間同然に見える。だけど監禁期間が長いのか化粧は厚塗りを重ねていることまでハッキリ見えた。静香さんは化粧の濃さを除けば、かなりの美女だ。


 しばらく抱きしめていると寝息が聞こえてきた。安心したらしい。


 そこで『無限収納』スキルで収められているスマートフォンを取り出して、1番目に登録してある番号に掛けるとすぐにお婆さんが電話に出た。


「ゴメン。寝てしまったよ。」


 お婆さんは静香さんの声を聞きたがるが寝息を聞かせるだけにしておく。


「この場所は解っているよね。真さんからは・・・そうなんだ。兎に角、行動を起こしてください。後の連絡は手はず通り、メールでお願いしますね。」


 小さい声で手短かに要件と伝えると再び『無限収納』スキルでしまい込み、誰も入って来れないように部屋に『超結界』スキルを発動させた。


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