能力
教室に怪我だらけで入ってきた竜二に全員が唖然としている中、俺だけは竜二のもとに走って行った。
「おい、竜二どうした? 何があったんだよ」
俺がそう聞くが竜二は誤魔化すように「いや、大丈夫だよ」と答えて席に座ろうとする。
だから俺は竜二の胸ぐらをつかんで強引に聞く。
「ちょっ、アキ」
千夏が止めようとしてくれるが、俺はそれをかき消すように言った。
「大丈夫かなんて聞いてねぇんだよ!! 何があったのかって聞いてんだ!!!」
俺は初めて竜二に怒鳴った。自分でもなんでこんなに感情的になってしまったのか分からない。
さっきの母親の話を聞いたからだろうか。
竜二の点数は昨日からずっと低かったから心配になったのかもしれない。
竜二も珍しく怒鳴り返してきた。
「親父に殴られたんだよ!! 才能がないやつは努力なんてするなってな!!!」
俺たちは睨み合う。先に折れたのは竜二だった。
竜二は俺の胸ぐらを掴んだままヘナヘナと座り込み、振り絞るような声で言った。
「俺の今までの人生を全部否定された気持ちになったよ。いや、気持ちになったんじゃない。否定されたんだ」
それを聞いた千夏が我慢できずに駆け寄って竜二を抱きしめる。
彼氏の前でそれはどうなんだろうかと思ったが止めはしなかった。
「そんなわけないよ!! 努力が報われないわけがないもん!! 実際順位が分かるまでは1位候補は竜二が筆頭だったじゃんか!! 才能なんかに負けないでこれからも努力しようよ! そしたらいつか必ず報わるはずだよ!!!」
その言葉は竜二以外の心には刺さった。
しかし竜二は俺たちが思っていたより冷静ではなかった。
「お前がそれを言うのか…?」
「え?」
竜二は千夏を投げ飛ばして言った。
「クラス2位、学年5位のお前が! お前が努力を語るのか!!? お前に何がわかんだよ!!!!」
俺は投げ飛ばされた千夏に駆け寄り、肩を貸して起こしながら言う。
「お前、今日は休め」
できる限り優しく言ったつもりだったが、俺はしっかり怒りを隠し切れていただろうか。
竜二は千夏に小さな声で謝りながら教室を出て行った。
当然こんな時にサボって親に許してもらえる訳がないので、家にはしばらく帰らないのだろう。
俺は千夏を保健室に運ぶ。千夏は机に頭を打ったらしく、思いのほか重症だ。
名前 渡辺 竜二
クラス順位 33/36
学年順位 199/217
都内順位 8,625,348/9,179,426
〈称号〉
才能の超越者
「師匠、話ってなんですか?」
僕、中野空が師匠である神崎に問う。
「おぉ、来たかくぅーちゃん」
「その呼び方はやめろと何度も言っているはずですよ」
僕はそう言うが、実際はすでに諦めている。この師匠はいつまで経っても僕のことを子供扱いする。
「で、そちらの方は?」
僕は師匠の後ろに知らない人がいたので、呼び出されたのもこの人に関係する話だろうと思い、本題に無理やり入らせる。
「あぁ、この人はな橘さんと言ってな。単純に言えば強い人だよ」
あまりにも単純すぎて何もわからない。
ただ順位を見れば只者じゃないことはわかる。
「もしかして、僕らと同じですか?」
僕が師匠に聞くと橘さんから返答が返ってくる。
「そーだよ、中野くん。俺はエーラス・ダンロス症候群だ」
その瞬間僕はこの人を信頼した。
名前 中野 空
クラス順位 1/36
学年順位 1/217
都内順位 3/9,179,426
〈称号〉
最強の記憶力(隠蔽済み)
〈能力〉
超記憶症候群
名前 神崎 美琴
ニート順位 1/9,993
都内順位 2/9,179,426
〈称号〉
計算の悪魔
〈能力〉
サヴァン症候群
名前 橘 優希
殺し屋順位 1/3
都内順位 8/9,179,426
〈称号〉
脅威の柔軟
生粋の殺し屋(隠蔽済み)
〈能力〉
エーラス・ダンロス症候群
リアルが忙しくて投稿が遅れました。
明日も投稿します。