順位付け
「才能カースト」
始まります。
ある政治家は言った。この地球には眠ったままの才能がたくさんあると。
その政治家はニヤリと笑ってこう続けた。
「才能による順位を人間につけよう」
ある科学者は言った。それならばいい物があると。
その科学者はゲラゲラ笑いながらこう続けた。
「このブレスレットをするとね、使用者の才能に順位が付けられるんだ」
これらの発言は正式な法律として実現され、「才能可視化ブレスレット」の着用が義務化された。
この日、人間の才能に順位がつけられた。
「アキラー!! 今朝のニュース見た!?」
俺の彼女である石上千夏が元気に話しかけてくる。
「あぁ見たよ。今日から東京都民はブレスレットをしなきゃいけないんだろ? 普通にめんどくせぇよなぁ…」
俺が千夏とそんなことを喋っていると急に後ろから肩を組まれる。
「そうかぁー? 俺は面白そうだと思うけどな!」
俺の友達の渡辺竜二だ。竜二はイケメンでスポーツ万能というハイスペックなモテ人間である。
「それは竜二の点数が高いからでしょ! 私たちみたいな才能がない人間は低い順位をみんなに見られるなんて嫌なの!!」
竜二に向かってべーっと可愛く舌を出した千夏が今日も可愛い。
「なんだっけ、確か適応能力、コミュニケーション能力、頭の回転の速さ、発信力、規律性、、、だっけ?」
「そうそう! でもあくまで才能だから、努力を怠らなかった時の最大値を示すらしいよ!」
「なら努力家の竜二くんは順位低いかもなぁ!!」
俺が竜二に煽るように言うと竜二はわざとらしく悲しそうな声で言った。
「そうかもなぁ、もしかしたら低いかもしれないよなぁ…」
「あと何か特別に秀でた才能がある場合も加点なんでしょ? なら竜二はバスケの才能があるんだから絶対大丈夫だよ!!」
千夏が竜二の背中をバシバシ叩きながら言う。
「それもそっか」
そんなことを言って3人で笑っていると先生が教室に入ってくる。
ガタガタガタガタッ
みんなが慌てて自席に戻る。
「おはよう、では出席を取ります。天野」
「はい」
俺の苗字は天野なので返事をする。
「石上…………中野は今日もいないのか…………最後に渡辺」
「はい!」
出席確認が終わり、生徒たちにブレスレットが配られる。
「えー、今日からこのブレスレットをつけることが義務になりましたからね。必ず身につけるように」
HR終了の鐘が鳴って先生が教室を出ていった。
するとおちゃらけキャラの田中がみんなに呼びかける。
「あのさっ! 提案なんだけどさっ! みんなで一斉に付けない!?」
「いいじゃん! 面白そう!!」
「俺もその意見に賛成!」
田中の取り巻きの中川と吉田がそれに同調する。
クラスのムードメーカーである田中の意見ということもあり、クラスはすでに一斉に付ける雰囲気になっていた。
「じゃあいくぞ! せーの!!」
俺も千夏も掛け声に合わせてブレスレットを付けた。
その瞬間俺とクラスメイトたちの頭上に順位が表示される。
ちなみに俺の数字はこう。
名前 天野 明
クラス順位 24/36
学年順位 157/217
全国順位 7,864,383/9,273,217
うん、ノーコメントで。
千夏はこう!
名前 石上 千夏
クラス順位 2/36
学年順位 2/217
全国順位 21,231/9,273,217
さすが俺の彼女!今日も可愛いぜ!!
「おい、こいつクラスで最下位だぜ!!」
「ぶーーっ!! マジじゃん、だっさー!」
今みんなからバカにされている最下位の人物とは意外な人だった。
それは一斉に付けることを提案したムードメーカー田中だ。
名前 田中 幸次郎
クラス順位 36/36
学年順位 212/217
全国順位 8,898,639/9,273,316
笑い者になっていた田中を助けたのは学級委員の白金だ。
名前 白金 美彩
クラス順位 5/36
学年順位 19/217
全国順位 191,352/9,273,216
「低い人を見下すんじゃなくて、1位の人を称えましょう!! 1位は誰なの?」
誰からも返事はない。
「えっ、てことはまさか…」
「「「「「中野!?」」」」」
クラス35人の声が重なった。今日休みなのは中野だけだ。そして多分みんなが同じことを思っただろう。
俺、中野の顔見たことねぇや。名前も知らねぇや。
名前 中野 空
クラス順位 1/36
学年順位 1/217
全国順位 3/9,273,216
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