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自転車

彼は自転車を漕ぐ。後ろからは大型トラック。

「わっ!」

その男性はバランスを崩し、倒れた。大型トラックは側面で自転車と接触してしまっていた。



翌日。

「あー。暇だ!」

 藍花は両手を上げて、伸びをする。

「事件が起こらないことはいいことだろう」

 羽紀は淡々と言う。

「何しているの?」

 藍花は羽紀の机の上を覗き込む。

「昇進試験の勉強」

「何!? まさか! 課長の座を狙っている!?」

 藍花は信じられないと言わんばかりに驚く。

「お前も頑張れよ」

 羽紀はぴしゃりと彼女に言う。

「う」

 藍花は言い返せなかった。

《メールです》

 パソコンから、メールの着信音が聞こえた。

「あ。誰だろう」

藍花はメールを開く。

『From 槻真冬』

「Nooo!!」

 藍花は思わず、叫ぶ。

「何だよ」

羽紀はパソコンの画面を覗き込む。

「なるほどな」

『昨夜のひき逃げ事件について』

「昨夜のひき逃げ事件っていうと」

 藍花は羽紀の方を見る。

「自転車のやつか」

「そうかも」

 藍花は頷く。

「課長! パトロールに行ってきます!」

藍花は敬礼しながら、立ち上がる。

「え!?」

 課長の真狩砂雪は驚く。

「行ってきます」

羽紀も敬礼する。

「ちょっ、ここは待機部署なんだけど……、聞いてないね」

真狩砂雪はぽつんと室内に取り残された。



ゴォォォ。タイヤは高速で回る。運転は藍花。新設されたバイパスを行く。

「槻真冬」

 藍花は呟くように言う。

「はい」

すると、槻真冬は立体映像で姿を現す。

「今回は何?」

 藍花は槻真冬に尋ねる。

「証拠を探してほしいのです」

「証拠?」

「N-システムによると、二台の大型トラックが事故現場を通っています。そして、その二台の大型トラックは同じタイヤ痕なのです。それにより、どちらが死亡させたのかが、まだ、分かっておりません」

 槻真冬は淡々と説明する。

「なるほど、それを調べてほしいと」

 羽紀は腕組みをする。

「はい」

「分かった。調べとく」

 藍花は頼もしく、答える。

「お願いします。では、失礼」

槻真冬は立体映像の姿を消していく。

「どうする?」

 藍花は羽紀へ尋ねる。

「とにかく、防犯カメラの映像を集めよう」

「うん!」

 藍花は笑顔で頷いた。



一時間後。

「結構、集まったね?」

 藍花はDVDのたくさん詰まった紙袋を覗き込む。

「警視庁に戻ろう」

 羽紀は両手の紙袋を警察車両に積みながら言う。

「うん」



警視庁鑑識課。

「はい。これ。防犯カメラの映像」

藍花はドンッと机の上にDVDが大量に入っている紙袋を置く。

「お待ちしておりました。話は槻真冬さんから聞いております」

 鑑識課の男性はそう言い、紙袋を受け取った。

「あとはよろしくお願いします」

「はい」

男性は笑顔で頷いた。



交通課。

「あー。あとは待機するだけか」

 藍花は再び、伸びをする。

「そうだな」

 羽紀はそれを見て、少し微笑む。すると。

「何を頼まれていたんだ?」

 課長、真狩砂雪の声が聞こえた。

「え? 課長?」

「どうしたんですか?」

 二人は尋ねる。

「私も一応、警察官ですからね。昔、地域課にいた時は、よく、無作為抽出メールの餌食になっていたものです」

 課長は微笑む。

「そうだったんですね」

「驚きました」

 二人は驚いた。



「失礼します」

 槻真冬が姿を現す。

「え!?」

「今度は何だ?」

 二人はそちらへ振り向く。

「何も手掛かりがつかめませんでした」

 槻真冬は立体映像の瞳を開く。

「え!? そうだったの!?」

 藍花は驚く。

「あの防犯カメラの映像には何も手掛かりが映っていなかったのか」

「えぇ。その通りです」

「そっかぁ」

藍花は落ち込む。

「それで? 何か用がないと来ないよな?」

 羽紀は深く聞く。

「もう一度、証拠を探してもらいたく」

「もう一度?」

「今度は一般の家屋にも設置されている防犯カメラまでお願いします」

 槻真冬はそう頼む。

「分かりました。行こう」

「うん!」

 藍花は羽紀の声に、頼もしく頷いた。すると。

「お久しぶりです。槻」

 課長だった。

「こちらこそ」

槻真冬は微笑む。そして。

「では、失礼」

彼は姿を消して行った。



一時間後。

「結構、集まったけど?」

「ここで最後にしよう」

 羽紀は家屋を見上げる。

「いいけど、この家は事故現場の目の前だけど、何も付いてないよ?」

 藍花はまじまじと家屋周りを見る。

「よく見ろ」

「ん?」

 藍花は羽紀の指さす方を見る。

「庭の木の所にボイスレコーダーが設置されている」

 羽紀は指さしながら、そう言う。

「あ。本当だ」

 藍花は、それを見つけた。

「きっと、隣人と騒音トラブルでも抱えているんだろう」

「なるほど!」

 藍花の表情が明るくなる。

「では、さっそく」

「うん! 行こう!」

 藍花は笑顔になって、頷いた。



警視庁鑑識課。

「槻?」

「もちろん、います」

槻真冬は藍花の声に反応し、立体映像で姿を現す。

「この音声、証拠になるかも!」

藍花はUSBメモリをパソコンにつなげた。そして、鑑識の男性が再生ボタンを押す。すると。

「これは」

《痛ってぇ。あのトラック、ぶつけやがって!》

「ということは!」

 鑑識は驚く。

「犯人は、後続車の大型トラックですね。捜査一課に確保へ向かわせます。一応、ガードレール係も出動して下さい」

 槻真冬はガードレール係へ出動要請をする。

「はい!」

 藍花は頼もしく、敬礼をした。



ゴォォォ。捜査一課とガードレール係は警察車両で走る。犯人の住宅へ着くと、捜査一課は車両を降り、玄関へ向かう。すると、接面している駐車場から自動車が急発進していった。

「あいつだ! 行くぞ!」

「はい!」

 園馬進は叫ぶ。そして、捜査一課とガードレール係は後を追いかけた。



ゴォォォ。ガードレール係は見る見るうちに車間距離を詰める。

――よし!

藍花はハンドルのボタンを押す。すると、前方から鎖が飛び出し、犯人の逃走車両の後方タイヤに絡まった。そして、車両を急停止へとおいやった。

「くそっ!」

犯人は走って逃げようとしたが、あとから来た捜査一課刑事の二人に確保された。

「よぉし! 一見落着!」

藍花は笑顔になった。

「だな」

 羽紀も少し微笑む。

「ありがとうございました」

槻真冬は姿を現す。

「あ」

「来ていたのか」

 二人はそちらへ振り向く。

「私はいつも超個体状態ですよ」

 槻真冬は珍しく微笑む。

「それもそうだった」

藍花は照れ笑いをした。


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