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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

駅のエスカレーター【夏のホラー2020】

作者: 江渡由太郎 原案:J・みきんど
掲載日:2020/07/17

 これはわたしが実際に体験した恐怖体験である。


 定期試験というあの忌まわしい出来事があってからは、退屈で平凡な毎日の繰り返しであった。


 いつものように授業が終わると、もう遊ぶ元気などなく直帰したくて仕方がない。


 教室では饒舌の友人の幹博も終点下車なので、地下鉄の車内では眠ってしまっていた。


 わたしは終点でバスに乗り換えるが、幹博はこれから札幌市から千歳市へと電車へ乗り換えての帰路なのだ。


 地下鉄に乗っている時はお互い既に疲れ切っている為、体力温存の為に少しでも休んでおこうとするのが暗黙の了解であった。


 終点のこの地下鉄駅は開通工事の時から変な噂が囁かていた。


 掘削中に人骨がたくさん出てきたというものから始まり、開通後には終電が終わるとたくさんの黒い人影が無数に駅のホームに現れるなどお決まりの噂ではあるが、作業員や駅員からの話なので嘘ではなさそうであった。 


 では、何故この終点の地下鉄にこんなにも怪奇現象が起こるのか。


 それは、この土地一帯が昔はお寺の墓地であったのだという。


 お寺が別の場所へ移転した際に、お墓も遺骨も移されたという話ではあるが、何処まできちんとなされたかは不明である。


 このような経緯があるからこの土地一帯でいろいろな噂話や心霊現象の目撃談が絶えないのである。


 わたしもこの地下鉄の駅では決して通りたくない場所がある。


 駅改札口で幹博と別れたわたしは地上階へ上がるための四番出口へと向かった。


 地下鉄の駅の改札口から地上にある四番出口に出るには、長いエスカレーターを利用しなければならない。


 毎晩この時間にそのエスカレーターに乗っているのはわたし独りだけだったはずなのに、階段ベルトの上で動き続ける階段から降りる少し手前辺りから異変を感じた。


 わたしは人の気配を感じて振り返ると黒い人間の姿をした何かが立っていたのだ。


 毎晩エスカレーターを利用している最中はわたしの他には誰もいなかったはずなのに、わたしの背後にはいつもいつの間にか真っ黒な人影みたいなのが立っている。


 嫌な感じがしてたまらずに慌ててわたしはエスカレーターを降りてから外へと続く階段を登った。


 そして、地上の出入口前で真っ黒なその人影が来るかどうか確認するために待っていた。


 だが、結局のところ一度も誰も階段から外へ向かって上がって来なかったのだ。


 この話を帰宅して直ぐに母に話した。


 そして、明日もわたしはエスカレーターへ行くと話していたのだ。


 母には何度も行くのは止めるように説得されたのだが、わたしは何かに魅入られているかのような執着を示し説得は受け入れられなかったのだ。


 その後の数日間、駅のエスカレーターに現れる黒い人影は毎晩、わたしの背後の方に少し離れて立っているのだが、毎晩少しずつエスカレーターの段差を一段、また一段と確実にその距離を縮めて近づいてきた。


 遂に木曜日の夜には彼の真後ろにまで近づいていた。


 わたしはうなじの毛が逆立つような悪寒が走り、後ろを振り返った。


 そこには人間の形をした漆黒の闇のような黒い姿の中で光る真っ赤な目が妖艶な輝きを放っていた。


「……皆……報いを受ける……」


 赤い目は確かにそう呟いた。


 わたしはこの出来事を生涯忘れることができないと震える声で母へ電話していた。


 金曜日の夜もわたしはエスカレーターに乗ってしまっていた。


 その夜に限ってわたしはエスカレーターに乗った時、自分が自分ではないような状態で夢を見ているような虚ろな感じであり記憶が全くなく、階段ベルトの上で動き続ける階段から降りる瞬間に我に返ったのだ。


 わたしはその夜は背後を振り返ることができないくらいの恐怖を必死で押し殺しながら、慌てて外へと向かった。


 振り返らなくともわたしの背後にピッタリと居たのが気配で感じ取れたからである。


 あの日からずっと、わたしはあの駅の四番出口を避けている。


 あの黒い人影はわたしの真後ろまで迫ってきていた事を考えると、次回は命にかかわることかその黒い人影に取り憑かれるのではないかという恐怖しかない。

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[良い点] 恐ろしい体験談ありがとうございます!
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