反省会
王都マテリアルは中心から緩やかな円錐を描くように居住区が広がっているため、外側に行くほど交通の便が悪くなり地価が安くなっている。そのため後発で居住の許可が下りた人間以外の種族は大概外側に住んでいることが多い。
ドンという姓のドワーフ夫妻の家もマテリアルの外周に位置している。
そこを仮のアジトとして無断で利用しているギルドがあった。マテリアルファミリーである。
「えー、それでは第20346回反省会を始めたいと思います。」
「そんなにやってないっつの。」
キャット族のエマリルに突っ込んだのはドワーフのマリリ。ツッコミモーションをショートカットに入れているのかチャットより手の方が早かった。
「まずボクからいいかな?」
そんなマリリが今度は手を上げ椅子から立ち上がった。
「みんなこの前はありがとう。特に死んじゃったバグゼンやレブには悪かったね。おかげさまで武器の納品が間に合い、中々の大金をゲットしました!」
そういうとテーブルの上に金袋を乗せ、みんなに金額を見せた。
「おお〜思ったより稼げたな!やっぱり素材が大手に独占されてるっていうのはデカイな。」
テーブルに足を乗せているダークエルフのセスラは、椅子を傾けゆさゆさと身体を動かしている。
そこをマリリがすかさず蹴りを入れると、セスラは椅子ごと地面に叩きつけられた。
セスラは1のダメージを受けた。
「何すんだよ!」
「えっ?フリでしょ?」
「そこで相談なんですけど。」
次はエルフのフィーエが手を上げる。
「このお金はみんなで稼いだということでギルド資金としますが、使い道について何か意見はないかしら?ちなみに私の提案ですけどギルド用の馬車を買ってみてはどうかしら?ちょっとしたアジトのかわりにもなりますし。」
馬車はギルドコンテンツの中では初級の方で、少人数のうちは全員乗せて移動できるためメンバー全員に利点がある。
「いいと思うでヤス。確かデスペナを軽減できるし復活も馬車からだからジメトモの3人には非常にありがたいでヤス。」
地面の友達略してジメトモ。キルシュ、バグゼン、レブヤースがよく死んで地面に転がるのでいつのまにかそう呼ばれていた。
「ワレハ、イドウソクドガ、ウレシイ、デアル。」
「あはは、オークは移動速度が遅いもんね〜」
バグゼンを煽るように足を向け椅子をゆらゆらさせるエマリル。
そのわずか1秒後にマリリの足払いによってエマリルは地面に叩きつけられた。
エマリルは1のダメージを受けた。
「何するのよ!」
「フリでしょ?」
「フリだけどw」
「キルシュはどうかしら?」
フィーエは寡黙な人間キルシュに意見を聞く。
「・・・回復を多く用意できるのはいい。」
「ああ、マスターの鬼引きのときはフィーエのヒールだけじゃ足りないんだったな。」
セスラはキルシュの肩をポンポンと叩く。
「ボクも荷物が置けるのは嬉しいかな。素材は取れるときに取っておかないと後々苦労するからね。あと物を作りながら移動出来るのもいいね。」
「座ってる方がMP回復が早いですものね。」
「はいはいはーい!」
今度はエマリルが勢いよく手を上げた。
「私馬車より移動速度速いんだけど!」
「・・・」
「・・・」
「なるほど、自分が引くから馬は要らないと。」
「なっ!」
「いやー、餌代が浮くでヤスな。」
「俺様がムチで叩くから馬車馬のように働けよ?」
「ムシロ、ジンリキシャ、デアル。」
「馬マル・・・」
「ちょ、ちょっと待って!乗らないとは言ってないでしょ!」
「エルは馬車反対派ですか?」
「賛成派です!ちょっと自慢しましたごめんなさい!馬車を引っ張るのは嫌!」
「それじゃあみんな賛成ということで馬車クエストを受けときますね。素材集めと馬の育成が少々大変なようですので、皆さんご協力をお願いします。詳細はギルド板に書いておきますね。」
「おk」
「おほん!それじゃあ、私からもご報告があります!」
エマリルが再度立ち上がりえへんと胸を張る。
「お、馬車馬不要論でも始める気か?」
「違う!来月末の日曜日にオフ会やるんでみんなスケジュール空けとくように!」
一瞬の沈黙の後みんな一斉に声を出した。
「えええええええ!?」
「ちょっと待て、聞いてないぞ!」
「不参加は認めませ〜ん。」
「ワレノ、ニクタイビヲ、ミセルトキガ、キタ、デアル!」
「自分は逆に引かれそうで怖いでヤス・・・」
「・・・」
「エル、本気なの?」
「もちのろんろん。」
「も〜ボクどうなっても知らないからね。」
「ふっふふ、楽しくなってきた!」