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 屋敷に再び戻りタオルを借りる。

 玄関ホールに置かれた高そうな椅子に腰掛け、泉太朗はタオルに顔を埋める。

「ふわふわ」

「美咲さん、俺たち帰れないんですよ…」

「だったら泊まっていきなさい」

「いいんですか?」

「帰れないなら仕方がないでしょう。さっきまでお客様だったのだから放って置くわけにはいかないわ。さっさと付いて来なさい。鈍間」

「ありがとうございます」

「棘がすごい」

「ほら、優しい人でしょ?」

 何か言いたげな泉太朗をよそに藤園はにっこり笑う。

「そこの部屋に試作品の洋服があるからそれに着替えなさい。私の家を濡らさないでちょうだい」

「はーい」

 案内された部屋で三崎美咲監修の洋服を漁る。

 次のシーズンから大々的に売り出すと注目されている商品だ。

「悪い人ではないのはわかったけど口が悪過ぎて印象が良くないんだけど」

「俺は慣れましたよ。昔からこうですから」

「そんな前から知ってんのか?」

「えぇ、まぁ。そんな事よりカメラ大丈夫ですか?」

「親の形見だからな。撮り終わったらジャケットぐるぐる巻いてる。これだけは大切なんだわ」

 鞄を上からぽんぽんと触る。

 藤園は無言で微笑む。

 早々に着替え終えて泉太朗は部屋の中をうろうろと歩き回る。

 入間の家には絶対にないものが沢山ある。

「しっかしすげぇ家だな。絨毯とか高級なやつだろ。売ったら幾らになるんだろうな」

「恩を仇で返すのはダメですよ」

「わかってるよ」


 入間は藤園に疑うような目線を向ける。

「藤園。お前、まだそんなことしてるのかって言われてたよな」

「それが何か」

「どっかのエリートみたいな風体してるけど、お前本当は無職なんだろ!顔が良いから金持ちの女の紐なんだな⁉︎本職で稼げてないオレがいうのもアレだけど、自分の金で買った方がかっこいいんじゃないか?あ、これは僻みじゃねぇぞ」

 言い訳を交えつつくどくどと憶測で小言を言う泉太朗を見て藤園は腹を抱えて笑う。

「やだなぁ、ちゃんとお仕事してますって」

 部屋の扉をノックする音とともに執事の声がする。

「入間様、藤園様。お食事のご用意が出来ました」

「ありがとうございます、すぐ行きます。泉太朗さん行きましょ」


 ダイニングに行くと長テーブルに4人分の豪華な食事があり美咲と波津子が着席している。

「わー、美味そう」

「すみません、俺たちまで」

「泊まるのに出さないわけにいかないでしょ」

 皆が品良く食事を取るなか、泉太朗はガツガツと食べ進める。

「品の無い人ね」

「面白い人でしょう」

 呆れた顔をする美咲に藤園は微笑み掛ける。

「波津子ちゃん、留学するんだっけ?」

「えぇ、そうよ。被服について学びに行くの。洋服が主流になりつつある今だからこそ多くを学べると思うの」

「へぇー、偉いね」

 談笑する藤園と波津子を横目に泉太朗は無言で食事に向き合った。

 自分だけに流れる場違いな空気を感じた。

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