風との出会い
1話 風との出会い
気が付いたら草原にいた。
困惑しながら辺りを見渡しても遠くに木々が見えるだけで、他には何も見えない。
慌てて自分の身を確認すると、布で作られた簡素な服と麻袋をぶら下げているだけだった。
「・・・どこだ。ここ」
思わず呟いた独り言に、反応するものはもちろんない。
いや、よく見ると淡い光のようなものが空中にポツポツと現れた。
訝しながらも近づくと、光が僅かに点滅している。
警戒しながらも触れると、光が一際強くなり、手に吸い込まれるように消えていった。
すると、自分の中にもう一人入ってきたかのような奇妙な感覚に陥り、思わず目を閉じて頭を抱えてしまった。
違和感が収まるのを感じてゆっくりと瞼を開けると、
「うわっ!」
そこにはさっき光ってたような光が、比べものにならないくらいはっきりと、そしてたくさん浮いていた。
不思議な光景に呆然としていると、頭の中から自分では無いような声が聞こえてくる。
(・・・大丈夫?)
その静かに、しかし明瞭に聞こえた声に辺りを見渡してしまったのは、仕方がないだろう。
もちろん辺りには人はおらず、よくわからない光が浮いているだけだった。
(ボクは外にはいないよ。君の中だよ)
中だって???
なんでそんなところから奇妙な声が聴こえてくるんだ・・・
そう思っているとさっきと同じ声で、
(きみがさっき触れたじゃないか。ボクはきみと精霊契約した精霊だよ)
と、言ってくる。
「精霊だって?それに契約って・・・」
(きみにボクたち精霊が見えたのは、きみにその資格があったからだよ。
契約もきみが願いながら、触れた時に成立したんだよ)
「僕が願った?」
意味が分からない言葉に首をかしげていると、
(そうだよ。助けてって願いがボクたちを呼んだんだ)
・・・確かに訳わからないところに放り出されて助けてほしいと思ったけど、それだけで?
(普通はみんなボクたちに気づきもしないけど、きみにはぼくたちと意思疎通できる力があるんだ)
「それできみは?」
(自己紹介がまだだったね。ぼくは”風”。”音”を司る風の精霊さ)
と、決まり文句の様なことを言ってくる。精霊流なのだろう。
それにしても、この光たちが視界を遮って前が見えないんだけど・・・
(ここの精霊たちはきみの力で集まったボクたちの分身みたいなものだよ。
意思があるわけじゃない、意識すると姿を隠すこともできるよ。
試しに力を使ってみて。基本的には、想うだけで使えるよ)
そう促されて、散ったり、集めったりするイメージをすると、
光がイメージ通りに動いていた。
「すごい・・・」
そう呟いてしまった。
(それがきみの力だよ)
。
「それで他にもなにかできるの?」
自分からみると、光が自在に動くだけで何かできるようには感じられない。
(もちろんこれだけじゃなくて加護として、自分の力にすることができるんだ)
自分の力にだって?
(試しに自分の足に精霊を移動するように命じてみて)
言われるがままに命じてみると、
足に力が集まってくる。
(そのまま進んでみて。)
「うわ!!!」
そう叫んでしまった。
軽く蹴っただけなのに、5m位進んでいた。
(これがボクたち風の力だよ。身体能力を上げたり、刃物とかの切れ味を上げることができるんだ)
・・・すごそうな力を使えるみたい
そこでふと、思ったことを言ってみた。
「そういえば、精霊って風だけなのか?」
風の精霊というからには、他にもいるんじゃないか?
そう思っていると
(今わねー。ここには風の精霊しかいないし、きみはボクとしか契約してないから、他の精霊の力は使えないんだ。
違うところに行けば他の精霊はいるよ)
精霊も生息する場所は決まってるのか?
(もちろんだよ。火があるところには火の精霊、水があるところには水の精霊がいるよ。
ちなみに、契約したボクの力はどこででも使えるけどね)
そんな答えが返ってきた。
これからの方針が決まった瞬間だった。




